…正直、あの人が怖い話するところが思い浮かばず、割と大変だった…
では、どうぞ!
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これはわしの友人と体験した話なのだが。
その友人は、その、とても臆病者なのだ。それを変えるべくわしの誘いに乗った。
つまりは、バトルロードだな。
彼の相棒はホイミスライムのホミン。彼に懐いていてとても賢く、また勇敢なホイミスライムだった。
彼らは必死に努力していた。
来る日も来る日も、素質のあるモンスターをスカウトするべく野を駆け山を駆け、時には海に潜ったりもしていた。
だが、ある日友人はふと思ってしまう。
自分に才能は無いのではないか?と。
無論、わしが見抜いた才能だ。無いはずがない。
だが彼は、持ち前の臆病さ故か自信を持てなかったのだ。
日々の日課であったモンスターの捜索、戦闘も二日に一度、五日に一度、と減っていき、最終的には半月〜一ヶ月に一度となってしまった。
が、彼は諦めたわけではなかったのだ。
今まで捜索や戦闘に使っていた時間を仕事に変え、自分で仲間にできないのならプロのハンターを雇えば良いでは無いか、とゴールドを貯めていたのだ。
私からすればそんなのはナンセンスなのだが…。本人が決めたのなら仕方がない。私も、出来る限り彼に協力したよ。
そうやって日々を過ごしていくと、彼はとうとう強いモンスターで作られたチームを連れて闘技場へやってきた。
うごくせきぞう、ストーンマン、ギガンテス。
どのモンスターも一筋縄では手に入らない強き者ばかり。
しかし、私はそこで気がつく。
「ホミンはどうしたのだ?」
私が尋ねると、彼は寂しげに頭をかいて。
「あいつは弱いから家に置いてきた」
そう、言ったのだ。
一番最初に仲間にしたモンスターは確かにバトルロードの編成からは外れやすい。
上へ上へと進むごとに対戦相手のチームは間違いなく強力なモンスターばかりになるからな。単なる戦力的な問題や、傷つけたくないという想いなどから外すオーナーは多い。
だが、戦いの場に…即ち、バトルロードで戦う日に、観客として相棒として連れてこない者など全くと言っていいほどいないのだ。
当然、私の選んだ者が…?と、私も悩んだよ。
しかし、彼の話を聞いて納得した。
「つい先日に、僕をかばってやられてしまったんだ」
ホミンは、既に亡くなっていたのだ。
私の手でも復活させられない、完全な死を迎えていた。
私は自分に腹が立ったよ。
彼がそんなことをする人物だと少しでも思ってしまったことにね。
そのせめてものお詫びと思って、翌日にホミンの墓参りをさせて貰ったのだ。
今思い出してもあのお墓は愛のこもった素晴らしいものだった。
…だから、かもしれん。
お墓の前で佇み、花を添え、私は手を合わせた。
するとどこからか、ウニョンウニョン、という音がする。
ホイミスライムを始めとする、あの触手が動く音だ。
「君は、もしかして新しいホイミスライムを手に入れたのかな?」
相棒を亡くしたオーナーは、相棒を忘れることができずに同じ種族に影を見てしまうというのはよくあることだ。
私はてっきり、彼もそうなのだと思ったのだが。
「いいえ。僕は捕まえても、買ってもいません。ホミンはホミンですから」
と、清く澄んだ目で言い切った。
彼自身、嘘をつくような人物ではないからな。すぐに信じられた。
ならば、今も聞こえているこの触手の音はなんだ?
彼の家は海辺にはなく、またホイミスライムが生息できるほど弱い生態系ではない。かと言って、上位種が蔓延るほどの危険地帯でもない。
わからなくなった私は素直に彼に尋ねることにしたのだ。
だが、帰ってきたのは彼の、酷く怯えた言葉だった。
「モリーさんも…聞こえるんですか…?」
言い合えるや否や私の手を取り、自宅へと彼は駆けた。
バタン、とドアが勢いよく閉められ、私も彼もへたりこむように玄関に座りこんだ。
「じ、実はホミンが亡くなった翌日から聞こえるんです。最初は、僕が忘れられなくて、いつまでも幻聴を聞いてるんだと思ってたんですけど…!」
いつになく慌てた様子で震える彼の話をよく聞いてみると、ここ最近、不思議なことばかり起きていたそうだ。
ホミンの寝床だった場所が乱れていたり。
保存庫の中から食材が減っていたり。
地震も風もないのに物が落ちたり。
閉じ忘れたドアが独りでに閉じられたり。
そのような些細な不思議がここ三週間ほどあったらしい。
彼が私に教えてくれると、ハッ、と気がついた顔をした。
「…丁度、ホミンが亡くなった時期からだ」と。
その瞬間から彼はおかしくなってしまった。いや、信じるようになってしまったのだ。
「ホミン…!ホミン…!ごめんよ…!僕のせいで…僕のせいで…!」
抱えた膝に頭を埋め、取り乱す。私の声も聞こえないほどに頭を振ってずっと、ホミンに謝っているのだ。
なにを謝っているのかまでは分からなかった。だが、それでも、心の底から謝っていることだけは私にも分かったのだ。
しかし、それでも幻聴は止まなかった。
それどころか、酷くなっていたのだ。
触手の動く音だけではない。ホイミを唱える音のようなものも聞こえるのだ。
私も腰を抜かしたよ。その場にへたり込み、何も考えることができなかった。パニックだったのだろうな。
そんな中で、彼は一際大きい声を出した。
「ごめんよホミン!お前はもう、死んだんだ!」
と。
その途端、パッタリと、不気味なほど静かになった。
自分たちの呼吸音だけが嫌に大きく聞こえるほどの静寂で、私も彼もようやく落ち着きを取り戻すことができた。
「…もしかしたら、ホミンは死んだことに気がついてなかったのかもしれません」
まだまだ乱れている呼吸の中で彼はそう言った。
私も、そうだろう、と頷き、その日は帰ることにした。後日、また改めて、と言ってね。
そうして彼がドアに手をかけて、開けた時…。
〔僕も入れてよぉぉぉ!!!〕
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「玄関の外で口から触手を生やしたような姿のホイミスライムが現れたのだ!
[ごめんよホミン]という話だ」
どこかカッコつけた感じでモリーさんはロウソクの火を吹き消した。
僅かな沈黙。それは、嵐の前の静けさのようで…。
「…いい話だと思ったのに。なんというオチなんですか…!!モリーさん!」
「んなぁ!?な、何故泣くのだ!!」
マイクを叩きつけんばかりの勢いで両手を振り下ろし、司会はモリーさんに激しく抗議し始めた。
そこから連鎖するように始まり、会場中から湧き上がる非難のような啜り泣く声。
私も、語り手の席にいなければ座布団の一つでも投げていたかもしれない。
「ど、どうしてあそこからそんなに怖い話になるのですかおじさま!ミーティアは、ミーティアはてっきり、優しいお話だと…」
どうやらそんな気持ちなのは私や会場の人たちだけでは無く、いつもならおっとりと温厚なミーティア姫もだったらしい。
「プ、プリンセス!?こ、ここは怪談を話す場なのだが!?」
「ですが!ですが!」
髪を振り乱し、必死に抗議するミーティア姫は正しくこの会場全員の代弁者だった。
「あ、あそこまで来ましたら、普通はお墓の前でホミンさんの笑顔を見ながら天国へ送り出す…ですとか!なのに…うぅ。ミーティアはとても悲しいです!」
そうして、とても悲しそうな顔をしたままプリップを書き上げたミーティア姫。
手元には。
[四点]
と、書かれていた。
「な、なんと…!私の、私のとっておきの怪談が、ミスター以下…!」
愕然とその場に両手をつくモリーさん。
それもそうだ。怪談として語るなら反感を買いやすい内容とは言え、ただのマヌケな話だったヤンガスに比べれば全然怖い。
その点数の理由についてかなり気になるけど…。
「違うだろー!」「そうじゃない!そういう怖いのじゃないんだ!」「それは怖い話とか怪談と言うよりは!」「そうよ!びっくり話よ!」「あれならいっそ良い話で終わらせて欲しかった!」
と、会場全体からそれらしい理由が沢山聞こえてくる。
そんな意見に頷かないわけではないけれど、流石にこのように非難轟々と言った感じだと、そこまで違くはなかったんじゃ?と思わなくもない。
「ひ、百物語会は一旦休憩に入りましょうか!
最後に、トロデ王の点数を教えてもらいましょう!なるほど、八点ですか!
それでは、休憩です!再開は十五分後!十五分後です!」
この状態だと続行は難しいと思ったのか、司会の人は口早に進めると、すぐに休憩へと移行した。
ほとんど真っ暗だったお城のホールはいつものように眩いばかりの明かり灯り、非難をしていた人たちも、ため息をついたり、それまでのお話を振り返ったり、お腹が空いたと子供に急かされたりしながら会場を後にしていった。
残ったのはトロデ王やミーティア姫を除く旅の仲間だった人たちだけ。
つまり、彼、私、ヤンガス、ククール、ゲルダさん、モリーさん、の六人。
「…モリーのおっさん、そう落ち込むな。オレは結構好きだったぜ」
「うぅ…ナイスガイ。私を慰めてくれるのか…。なんと心の広い…」
未だ両手両膝を地面につき、愕然としているモリーさんに、ククールが手を差し伸べている。
「あぁ。なにせ、これでも敬虔な使徒だからな。救いを求めるている人には手を差し伸べるんだ。
ま、それとは別にあの話がオレ好みってのは本当だけどな」
「そう…か。そう言ってくれる者が一人でもいてくれると私も救われる」
その手を取り、ゆっくりと立ち上がるモリーさん。
その顔には、すでにいつもの笑顔が戻り始めていた。
「さて、と。いよいよ残すところもあと二人。期待してるよ、バカップル」
「おいゲルダ!アニキたちその言い方はねぇだろ!
ですがアニキ!ゼシカ!アッシも期待してるでゲスよ!」
「あ、あはは。まぁ、楽しみにしておきなさい。すっごい話、してあげるから」
二人の期待に大口で答える。
…正直、私としてはこのまま帰りたいところなのだけど。
「うん。僕もゼシカも、それなりに怖いのを用意してきたから、楽しみにしてて。
…ククールに比べたら劣るかもしれないけどね」
「おいおい、勇者様がそんな情けない気持ちで戦いに臨んでいいと思ってるのか?
楽しみにしてるぜ」
ニヒルな笑みを浮かべて彼を一瞥したククールは会場の外へと歩き出していった。
「すまないな、二人とも。私のせいで微妙な空気の中話すことになってしまって。
いや、過ぎてしまったことを悔やんでも仕方がないなら
二人とも、私も!暗闇の中から応援しているぞ!」
申し訳なさそうに顔を伏せながらも、最後は笑顔と立てた親指を見せるモリーさん。
「だとさ。
それに、アタシもコイツも応援してるんだ。ま、頑張んな」
「頼んだでゲスよ!」
そうして、三人は会場の外に続く扉の方へと向かっていった。
残されたのは、私と彼。
「ねぇ、あなた」
「ん?」
「後に、引けなくなったわね」
「あ、あはは」
ギュッ、っと彼の手を握り、会場を見渡す。
やっぱりとっても広い。この空間を埋めるだけの観客の前でこれから私はお話をするんだ。
そう思うと身体が少しだけ震えてくる。
でも。
「お陰で腹が決まったわ。いいわ、やってやろうじゃないの。こんなの、世界を背負って戦った時に比べれば全然大したことないじゃない」
「…うん」
彼と顔を見合わせて、不適に微笑みあった。
To be next story.
今回の話の元ネタは「銀魂」(作・空知英秋)の中であった「寝る子は育つ」の中でされた「ごめんねジェリー」という、お話です。
…えぇ、ホラーサイトとかそういうところからの引用(?)でもなんでもないです。
全体的な話の流れというか、話のオチの後というか、だいぶ元の話と似ています。
ちなみに、元のお話はというと。
寝れない→ラジオ(ごめんねジェリー)→さらに寝れない。
といった感じです。
何言ってるかわからない?そんな時は調べてみましょう!
それではまた次回。
さよーならー