私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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今回はとうとう主人公君が語り手となります。
それでは、どうぞ。


第三十話 彼と私と百物語〜其の十五・終〜

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みなさんは、お風呂に入っている時に誰かに見られたような感覚を覚えることはありますか?

あるいは、暗い夜道を歩いている時に後ろから視線を感じて振り向いたことは?

 

これは、そんな誰にでもある些細な違和感を追求してしまった一人の少年のお話です。

 

その少年は昔から人の気配に敏感でした。

脅かそうと柱の陰で待ち構えている友人を逆に脅かすことができたり、隣の部屋から来た人を足音が聞こえるより早く知ることができたり。

少年はその不思議な[能力]とも呼べる力を持っていましたが、けれど、使いこなせているわけではありませんでした。

自分の意思で気配を探れるわけではなく、常に、周囲から見えない[気配]という情報を自動的に受けているのです。

けれど、生まれ持った能力のため特に不便はありませんでした。

ただ一つ問題があったとすれば、誰もが持っている力を持っていると思っていたこと、くらいでした。

 

ある時、今日の私たちのように、少年の友人の少女が仲のいい人たちを一つに集めて怖い話をしようと計画しました。

 

少年と少女を合わせ集まったのは八人。

お話をするのが八番目だった彼は、他のみんなの怖い話を出番が来るまでずっと聞いていました。

やがて、少年の前の人が話を終えます。

「さぁ、自分の番だ」意気込んだ少年は、何故か明るくなった部屋に疑問を持ちます。

 

「まだ、オレ話してないよ?」

 

少しばかり不機嫌になっていた少年。

でも、周りの人たちは笑っていました。

 

「何言ってるの?さっき話したばかりじゃない」

 

みんなを集めた少女にそう言われ、少年は首を傾げます。

 

「いや、まだ七人しかやってないぞ?」

 

「何言ってるんだか。元々七人じゃない」

 

楽しげに笑って答える少女に、少年は持ち前の力を使って辺りを見ることなく数えて、再び言いました。

 

「いや、数えたけど、やっぱり八人いるよ」

 

「…え?」

 

少女は驚いた顔をすると、すぐに人数を数え始めます。指先を使って間違えないように。

 

一、二、三…六、七。

 

「変なこと言わないでよ。やっぱり七人しかいないじゃない」

 

「そんなはずは…」

 

そう言って少年も少女と同じようにして数えます。

 

一、二、三、四…七。

 

「おかしい。感じたのは八人だったのに…」

 

それまで気配を察知する方法で間違えたことのない少年は頭を振ってもう一度数え直しました。

けれど、何度やっても七人しかいません。

それなら、と今度は気配で数え始めます。

 

「…八人…?」

 

「ねぇ、いい加減にしてよ。そんなので怖がる人いないって」

 

怯え気味に言う少女。しかし少年は、今度は両方の手段を使って同時に数え始めました。

 

一、二、三、四、五、六、七…………八。

 

少年が最後に指差した先。

それは、円を作るようにしてみんなで座っていた場所の、丁度中央部分でした。

 

「ね、ねぇ、本当にやめて。怒るよ」

 

少年の震える腕に捕まり力なく言葉を口にする少女。

何故なら、少年が最後に指差した円の中央…。そこには、風も無いのに揺らぐロウソクしかなかったからです。

 

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

 

「…今、僕の前で揺らいでいるロウソクのように…」

 

ゆらゆらと、左右に揺れるロウソクに彼は息を吹きかけ、消した。

まるで、何事もなかったかのように。

 

「…あの、それって実体験だったり…?」

 

怯えたように聞いてくる司会に、彼は笑顔を見せて首を横に降る。

 

「まさか。僕は経験したことないですよ」

 

それを聞くと安心したのか、司会はほっ、と胸を撫で下ろし、普段の調子に戻った。

 

「いやぁ〜良かった!ククールさんやゲルダさんたちのように、実体験だったらどうしようかと思いましたよ!

しかし、こんな話を作れるなんて凄いですね!流石勇者様!」

 

明るい司会の声に触発されたのか、会場からも声が湧き上がる。そのどれもが、彼を褒めるものだ。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

そんな賛美の声を遮るように彼は慌てながら立ち上がる。

 

「た、確かに僕は体験してないけど、このお話自体は僕が作ったものじゃないですよ!」

 

「…え?」

 

彼の言葉に耳を傾けるため静かになっていた会場が、今度は沈んだような雰囲気で静かになる。

それは、私も同じで…。

 

「え、えっと、では、今していただいたお話は…?」

 

顎が外れそうになっている司会。けど、彼は特に気にする様子もなく。

 

「はい。実際にあった話を僕が知っていたので、ここでお話ししました」

 

そう、言い切ったのだ。

 

「あ、明かりつけろー!」「うわぁぁ!ロウソク、ロウソクさっき揺れてた!勇者様の!!」「大丈夫?ここ、人増えてないわよね!?」「じ、実は俺、さっきあそこのに人影が…」「おい!こんな時に変なこというな、ばか!」

 

パニックに陥る観客。会場には一気に明かりが付くと、地震のような揺らぎが訪れ、瞬く間に会場から観客はいなくなってしまった。

残ってるのは、旅をしていたみんなと、司会の人のみ。

 

「あ、え、えっと…

と、取り敢えずお二人の点数を!」

 

流石はプロ。

こんな状況になっても、仕事を続行した。

 

「えっと…その、ミーティアは十一点を付けたいのですけど…」

 

「わしは十点じゃ」

 

おずおずとフリップを持ち上げるミーティア姫と、いつものように真上に掲げるトロデ王。

最高点は十なのだけど、それを決めたのはトロデ王たちだろうし、この場合はどうなるんだろう…。

 

「だったら、後でお触れなりなんなりで[一つだけ十一点まで付けても良い]とかなんとかだしとけばいいんじゃないか?

集計する元の予定を少し遅らせたりすれば、まぁ、文句は出ないだろう。

これ、一応遊びだしな」

 

「…ククールの言う通りじゃな。

今日のこの後にでもすぐにお触れをだしておくわい」

 

「ま、誰かさんのせいで恐ろしい儀式みたいになっちまったがな」

 

ククールはそう言うと、隣にいた彼を見て楽しげに微笑む。

 

「うむ。まさかボーイにバトルロードの才能だけでなく、怪談話をする才能まであったとはな」

 

満面の笑みでマフラーをたなびかせるのはモリーさん。

二人につられてなのか、それまで見ていただけだったゲルダさんとヤンガスも彼の元へ寄ってきた。

 

「あ、アッシ、ビビって震えちまったでゲス!やっぱ凄いでガスなアニキは!」

 

「ま、アタシらの応援が良かったってことかね。

にしても、よくあんな話持ってたねぇ。アタシもいろんなところに盗みに行って、そこそこ沢山の話を知ってるけど、ここまでのはなかったよ」

 

「あはは。僕も偶然知ってね。これなら、誰に負けないかなって思ったんだ。順番がよかったって言うのもあると思うけどね」

 

まるで旅をしていた頃のように広げられる会話に、でも、私は混ざれそうになかった。

…こんな、震えた腕をしたままじゃ。

 

「…えぇと、それではみなさん。今回のトロデーン百物語会は、ただいまを持って終了とさせていただきたいと思います!」

 

「お、おぉ!そうじゃな!

皆の者!ご苦労であった!後日、順位等々の連絡をするから、今日は一先ず自宅に帰るなりして疲れを癒してくれ!」

 

唐突にミーティア姫は会の終了を宣言し、トロデ王が後に続く。

 

「…!

そ、そうですねミーティア姫。それではまた明日、仕事の時にお会いしましょう。

それでは」

 

そう言うと彼は、他のみんなにも手短に別れの挨拶をすませるて、少し遠くで見ていた私のところへと足早に向かってくる。

 

「(ごめん、向こうで話しよっか)」

 

耳の近くで囁いて、私の手を引っ張るようにして会場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、ここなら大丈夫かな」

 

そこは私達の家。

会場を出て少ししたところですぐにルーラを唱えた彼は、家の外にあるベンチに座る。

 

「ゼシカもおいで。ここなら多分、誰も見てない」

 

「…うん」

 

言われるがままに彼の隣に座る。

まだ、震えは治ってない。だから、もう限界だった。

 

「…バカ」

 

「え?」

 

「バカ!あ、あなた!私が聞いてるの知ってるのになんであんな話したのよ!とんでもなく怖かったんだけど!?」

 

私が震えてた理由。それは言わずもがな、彼のお話しが超が付くくらい怖かったから。

普通の時に話すならまだしも、みんなを集めて完璧な雰囲気を作り、しかも、会場全員の心持ちが固まった頃にあんなお話をするなんて、私以外の人だって怖がるわよ!

実際、怖がって逃げてたし!

 

「あ、えっと…。特訓したし、平気かなって」

 

「ダメに決まってるじゃない!何が『僕の前のロウソクのように…』よ!バカ!」

 

「あ、それはその…ごめん」

 

「…わかれば、いいわよ」

 

冷や汗を垂らしながら謝る彼。

私は、そんな気もないのに出てきた涙の雫を拭う。

 

「…でも、やっぱり条件があるわ。今度は二つ」

 

「…なに?」

 

「…一つは、次からは絶対今回みたいな会には絶対に連れて行かないってこと」

 

潤むだけとは言え、涙まで見せてしまった私の言葉に耳を傾ける彼。

私は、そんな彼の顔を両手で包んで、目の前で言う。

 

「二つ目は、その、怖いから暫く私を離さないで寝て…って、こと…」

 

「…わかった。今度は絶対に守るよ。

特に二つ目は」

 

私の言葉に、彼は優しく頷いた。

 

「…バカ。絶対守るべきなのは一つ目よ一つ目」

 

「でも、もしまた一つ目を破ったとしたら、その時も二つ目のお願いしてもらえるかもしれないし」

 

「…ちょっと、元からとは言え、真面目な顔して言わないでよ。もし一つ目を破ったら今度はないわ。

りこ…べっき…一緒に寝てあげないから」

 

「…どれも嫌だから絶対守る」

 

「うん。それならいいわ。

それに、別にあなたが望むなら、毎日だっていいわよ?離れないで眠るの」

 

やっぱり、彼と話すのは私にとってとてもいいことみたいで、さっきまであった怖がりな気持ちは、もう、だいぶ和らいでいた。

…それでも、しばらくは私の抱き枕になってもらうけどね。

 

「…なら、これからはずっとそうしようか」

 

「あはは。じゃあ、そうしましょうか」

 

見慣れた彼の真面目な顔に今度は笑って返す。

その言葉が本気だったと言うことに気がつくのは、もう少し先のことで。

今日は互いに抱きしめあって眠った。

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 





今回の怖い話は元ネタはないです。自作ですね。でも、こういう系(怖い話してたら本物出てきた系)は結構聞きますから、強いて言うならそれら全てが元ネタになるのかもです。

さて、次回は誰が優勝したのかが判明します。
それではまた次回。
さよーならー
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