私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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特に書くことはない!

では、どうぞ!


第三十七話 彼と私と湖と

「さて、君たち二人に来てもらったのは他でもない」

 

場所はサザンビーク領東にある湖。旅の時ですら二度寄った程度の場所に、私たちはなぜか集められている。

…いえ、理由は知っているのだけど。いまいち納得できていない。

目の前で演説するかのように語り始めるのはフォーグ。

今日はユッケの顔をまだ見てない。

 

「我々はこれからここに娯楽施設を作ろうと考えている。

夢に見たことはないか?

最愛の人と、時の流れさえたゆたうように感じる水の上で愛を囁き合う日のことを…

すなわち!

カップルボート乗り場だ!」

 

ドン!と、効果音がつきそうなくらいの勢いで言い放たれたのは、聞き慣れない単語だった。

ボートって、船より小さいアレのことかしら…

 

「む、よく気がついたな。

ゼシカさんが今見ているそれのことだ。

君たち二人には例の如く実験台になってもらいたい」

 

差し出される二枚の紙に彼と目を通す。

なになに…?

 

[湖の上、揺蕩う影。見渡す限りの自然の中に映る、最愛の人。

進むボートは二人の行く末を雄弁に語り、響く水音は安らぎを与える。

永遠と変わらず流れる時の中、二人だけの世界。

 

そんな極上のひと時を、我々は提供いたします。

 

ビーク湖のほとりで、上で、愛を語ってみませんか?]

 

「なに、これ…」

 

「…さぁ」

 

「所謂、キャッチコピーだ。ユッケが考えた」

 

「いえ、それはわかるけど…って、あー、事業拡大ってわけ?」

 

「あぁ。その通りだ」

 

腕を組み頷くフォーグは、少しもしないうちに腕組みをほどき、ボートの方を手で指す。

 

「さぁ!早速乗ってもらおうか!そして感想を教えてくれ!」

 

「…どうする、あなた」

 

「まぁ、良いんじゃないかな。

前みたいな仕掛けも、流石にボートじゃできないだろうし」

 

彼の言葉に頷く。

そうよね。見た感じ仕掛けられそうな場所とか全然無いし、多分大丈夫。…よね?

 

「わかったわ。ちょっと興味もあるし、乗ってみましょ」

 

「よし。

では、あそこの暫定ボート乗り場に向かい、ボートに乗ってくれ。オールはわかるな?漕いだことがなくても使い方さえ知っていればあとは感覚でどうにかなる。

我々としては、一周してもらい地点ごとに見える風景等を些細に教えて欲しいところだが、あれは中々に体力がいる。途中で引き返してもらっても構わん。そうした場合、到達した地点までの景色・漕ぎ手の状況、乗り心地等々わかってる範囲で教えてもらうからそのつもりで行ってくれ。

ではまた二時間後くらいに会おう」

 

ボートの繋がれた湖のほとりから、何箇所かを指差したフォーグは、ざっと説明し、用は済んだとばかりにどこかへ消えてしまった。

 

「…ま、まぁいいわ。やることはいろいろあるっぽいけど、聞かれたら考えましょ」

 

「そうだね。まずは楽しむことの方が重要だろうし」

 

呆気にとられた彼と頷き合い、ボート乗り場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

細やかな風が水面を撫ぜる。

海と違い、波はないけれど、そんな細やかな風でボートはうっすらと揺らぐ。

潮気のない水の匂いが透き通るように香ってくる…。

太陽に照らされた湖は、星よりもまばゆい光をみせる。

とても、穏やかな時間。

 

「いいわね、こういうの。船に乗ってる時よりも水の上にいる感覚になるわ」

 

「うん。なんだか、優しい気持ちになるね」

 

湖の中心近くで風に揺られる私たち。

心なしか会話もゆっくりだ。

けど、疑問が一つある。

 

「ボートに乗ってすることってなにかしらね」

 

「それは…

書いてあったみたいに、ささやき合うんじゃないかな。愛を」

 

「…やってみる?」

 

彼の言う通り、ここはフォーグに見せられた紙に書かれていたことをするのがいいかもしれない。

…不安定なボートの上じゃ、抱き着く、みたいな動きは難しいでしょうし。

 

「…改めて言えってなると、ちょっと恥ずかしいわね…」

 

「…うん」

 

互いに視線を逸らして、ほんのり熱くなる頬に手を当てる。

思いつかないわけじゃないけど、こうして場を設けてっていうのは照れ臭くて言葉が出せない。

 

「………。

あ、あなた?」

 

「う、うん!?なに、ゼシカ」

 

取り敢えず呼んでみるも、やっぱり恥ずかしい。

でも、思い切って言わなきゃダメよね…!

 

「す、好きよ、あなた。愛してる!」

 

「うん、僕もだよ!」

 

必死になって振り絞ったのは、なんのひねりもない言葉。対する彼も、変哲のない普通の返事。

 

「ふ、ふふ」

 

「あはは」

 

訪れる沈黙の間、私たちは互いに顔を見あって、湖畔まで届きそうな声で笑いあった。

 

「なによ、『愛してる!』って、もっとマシな言い方ないのかしらね!あははは!」

 

「僕も僕だよ!もう少し気の利いた返事があるはずなのに!」

 

それは時が動き出すような賑やかさ。

私たちのせいで揺れるボートに、水中で刺激された魚たちが暴れだす。

ついさっきまでの静けさがウソのようだ。

 

「でも、思い返せば、結婚したての頃はそんなことばっかり言ってたわよね」

 

「そうだね。あの時からに比べて、僕たちも随分変わったよね。ゼシカが、こんなに甘えたがりだなんて知らなかったし」

 

「あら、それなら私だってあなたがあんなに積極的だなんて知らなかったわ。何回こっちが死にそうになったことか」

 

時間を忘れる湖の上で、昔を思い出す。そんな矛盾を楽しむ、贅沢な時間。

風は穏やかで、どこからか小鳥の鳴く声が聞こえる。水中の魚がヒレを動かすと音にならない音がした気がして、不思議な気持ちになる場所。

 

「困るわね。ここに施設が出来たら通い詰めちゃいそう」

 

「うん。思ってた以上に楽しいし、ホントに通いそうだ」

 

さざ波すら少ない湖の上で私たちは心ゆくまで会話を楽しむ。

次は、夕焼けを見たいね、なんて事を言いながら、素敵な時間を過ごした。

 

 

……陸に戻った時、フォーグとユッケに質問責めにあったせいで変に疲れちゃったけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 





ボートって、楽しいのかなぁ…。
酔いそう…。

ではまた次回。
さよーならー
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