私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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書くことは何もない!(ドンッ!


では、どうぞ。


第三十八話 私と彼と埋まる身体と

瞼が、重い。

身体が、だるい。

動いてないのに頭がクラクラする。

まるでベッドにめり込んでいるかのような違和感。かけられた毛布は軽いはずなのにひどく重く感じられる。そう、それこそ柔らかい鉄の板のよう。

 

「大丈夫、ゼシカ?暑くない?」

 

「え、えぇ。全然、平気よ、こんなの。

でも、もう一枚かけて貰ってもいいかしら。ちょっと寒いから…」

 

「それは…難しいかな。もうだいぶかけてるし…」

 

「あら…そう。

あなたが言うなら、そうなのね…」

 

詳しく聞く気もなくなるくらいの脱力感。

心配した彼の顔がボヤけた目の前でダブって見える。

額の上に風が通り、涼しくなったかと思うと、背筋が痺れるような冷たさが訪れた。

…あぁ、濡れタオルを交換したのね。

 

「ふふ、ありがと。気持ちいいわ」

 

「…ねぇ、本当に大丈夫?」

 

椅子に座る彼は心底不安気に聞いてくる。

今日で、三度目、だったかしら。

 

「だいじょーぶだって。大魔法使いゼシカ様が、夏風邪なんかに遅れはとらないわよ」

 

「……そこまで言うなら、信用するけど…。何か飲みたいものとかある?」

 

「そうね…でも、やっぱり水かしら。薬草とか、どくけしそうとかで作った栄養水じゃなくてね…普通のお水…」

 

あんまりろれつが回ってない気がする。

以前、酔ってなに言ってるかわからなくなったこともあるけど…それよりも酷い感じだわ。

 

「わかった。それならすぐ…って、ごめん、さっき飲んだので終わりだったみたいだ。ちょっと汲んでくる。

…ついでに、タオル用の水も用意してくるから、少し遅くなるかも」

 

桶の中を覗き、氷が減っていることを確認した彼は、朝持ってきた時のようにお盆の上に水差しと桶を乗せる。

 

「そ、そう、わかったわ。零さないでね?」

 

「うん。

一人にするけど…平気?」

 

「えぇ、平気よ。ほら、早く行って行って」

 

硬い筋肉を動かして微笑んでみる。

上手くできてるか心配だけど……。

 

「…わかった。すぐ戻ってくるけど、眠かったら寝てね」

 

「はーい」

 

ちゃんと笑えてたみたいで、彼も微笑み返してくれた。

変な間があった気がするけど…多分、気のせい。

カタリ、と、椅子から立ち上がる音がする。お盆を持ち上げるカタカタという音も。

あれよね、風邪の時って音に敏感になるわよね。だから、かしら。

 

「(すぐ、戻るから)」

 

そんな音よりもはっきりと、彼の呟きが聞こえたのは。

 

「(うん、待ってるわ)」

 

彼の真似をして、小さく言葉を吐く。

当然彼には聞こえてない。

早足で部屋から出て行った彼の背中を私はボーッと見つめる。

開けられたドアから入ってくる新鮮な空気。今日は比較的涼しいからか、その風が熱のある顔に当たって気持ちいい。

でも、そのドアはすぐに閉められる。

まぁ、当然よね。換気は別にしても、これ以上余計な菌を連れてきたらいけないもの。

 

「ホント、イヤんなるわ。せっかくの彼の休日なのに」

 

寝返りを打った気になってボソボソと嘆く。

今日は、映画館一緒に買い物に行く予定だったのに…。彼には悪いことしちゃったな…。

 

「…それもこれも気温の変化のせいよね。暑い、寒い、雨、また暑い…そんな風になったら、誰だって体壊すわよ」

 

ここ数日を思い出し、いもしない[気温]という魔物に悪態をつく。

少し前みたいに、マヒャドで冷やすくらいしないと死ぬ暑さの時もあれば、メラやギラで暖炉をつけようか迷うくらい寒い日だってあった。どころか、雨が降ってて暑いなんて時もあったし、勘弁してほしい。

 

「あなたも気をつけて…って、今いないんだった」

 

重い首を動かして椅子の方に顔を向けるも、そこにはあの人はいない。

…まだ、戻ってきてないか。

 

「…寂しいわね…」

 

鼻詰まりによる苦しさとは別のものが、私の胸を握り掴んでくる。キュウ、と音がしそうな締め付け感。

心細い…。

 

「やっぱり、いて貰えば良かったかしら…。

眠れればいいんでしょうけど、ずっと寝てたから、もう眠くないし…」

 

時計が指すのは十三時。

起きた時は確か九時で、寝たり起きたりを何回かしたから、でも、計二時間くらいは寝たはず。

…眠くないわけよね。

 

「体を起こしてみようにも、風邪なんて久々だから、言うこと聞いてくれないし…」

 

そう、そうなの。

どうして旅の間はオークニスに行っても風邪を引かなかったのに、健康的な日々のはずの今の方が風邪を引いてるんだろう。

………わからないわ。

 

「まぁ、咳が出て無いだけマシなんでしょうけど」

 

幸いなことに、風邪の代名詞である咳もくしゃみも殆どしていない。

代わりに、重だるい、クラつく、ボーッとする、が特に出ているけど、じっとしていればいい分、まだ辛うじて楽だ。

ホント、ギリギリのラインの楽さだけど。

それでも、辛いことには…代わりに、無いけど…ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ、起きた。

おはよう、ゼシカ。気分はどう?」

 

部屋の扉と枕を半々ずつ見ていた私が次に見たのは、彼の優しい顔だった。

 

「…私、眠っちゃったのね。全然眠くなかったのに…」

 

「…!起きて平気なの?」

 

「え?」

 

彼の声でようやく気づく。

無意識のうちに、私は身体を起こしていたみたいだ。

あれほど重だるくて寝返り一つ打てなかったのに、気にならないほどすんなりと。

 

「……みたいね。うん、まだ少しだるいけど、もう平気そう。クラついたり、ボーッとしたりはしないし」

 

そう言うと、彼は大きく息を吸い、僅かに止めた後一気に吐き出して、膝に膝をついた。

 

「よかったぁ………!

治らなかったらどうしようかと思ったよ……」

 

「バカね。そんな大げさよ、風邪くらいで」

 

冗談ぽく笑って答える。

でも、彼は真剣な目をして私を見た。ドキリと、心臓が縮みそうな視線で。

 

「風邪をバカにしたらダメだよ。今はもう、回復呪文の発達のおかげで治り易いかも知れないけど、ちょっと前までは普通に亡くなった人だっていたんだ。だから、全然大げさなんかじゃない」

 

彼の瞳の奥にあるのは、悲しい色。

もしかしたら、お城で見てきたのかも知れない。そうやって亡くなっていく人を…。

 

「って!治ったかも知れないけど人にする話じゃないよね!ごめん!

別に落ち込んでほしいとかそう言うわけで言ったんじゃ…」

 

「うん、わかってるわ。

それだけ心配してくれたって、ことでしょう?」

 

慌てて弁明する彼に、私は微笑んで頷く。

そうだ。彼が珍しく怒ったような顔をしたのは、それだけ私を心配してくれていたというコト。

だから謝るべきは私の方。

でも、多分、今は謝るべき時じゃないっていうのもわかる。

こういう時は…そう。

 

「ありがとう、あなた。嬉しい」

 

お礼を言うんだと思う。

 

「…うん、僕も、ゼシカが楽になってくれて嬉しいよ。

症状は軽くなったって言ってたけど、寒かったりはどう?」

 

「そうね、寒さはまだあるわ。

今日はもう、ずっと寝てた方がいいかしらね」

 

「だね。ゼシカは安静にしてて。家事は心配いらないから。

それと、具合が悪くなったらすぐ言ってね」

 

「うん。わかった。ありがと」

 

そう言って、私はもう一度ベッドの上に横になった

それから間も無くしてまた私は眠りにつく。

次に起きた時には、殆ど身体の調子は戻っていて、寒気だけが残ってた。

二枚かけるのじゃ暑いけど、一枚じゃ寒い。…人肌で丁度よく温まる、そんな寒気。

それを知ってるのか、私を包むのは、人肌の優しいぬくもり。

 

彼に、感染らなきゃいいけど…。

 

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 




ナースコスゼシカとか出ないかなぁ…。シスターコスでもいい…。

ではまた次回。
さよーならー
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