私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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どうぞ。


第四十三話 私と旦那様と解け合う日

今日は、何から何まで普通の日だった。

いつものように彼を起こして。

作った朝食を一緒に食べて。

彼を送り出す。

 

残された私は、少しだけお仕事に恨みを持ちながらも、朝食の後片付け、掃除、洗濯、買い物、便利そうな魔法の開発、休憩の読書、昼食、と代わり映えのない時間を過ごした。

…ただ、その読書する本が初めて読んだのってのはあるけど、それ以外はなんてことのないいつもと同じ時間。

 

彼が、帰ってくるまでは。

 

「ただいま」

 

「…おかえりなさい」

 

恥ずかしくて小さくなってしまう声。

テーブルの上に並ぶ料理と、椅子に座って俯く私。

部屋の扉を開けて立つ彼は、どこかぎこちなく私を見ていた。

 

「…荷物、置いてくるね」

 

俯いたまま、ちらりと彼の顔を覗く。映るのは、染めた頬を指先でかく彼の姿。

 

「うん…」

 

小さく頷いて彼に答える。

戸惑うような間の後、いつもより少し早く階段を登っていき荷物を置いてきた彼は、ゆっくりと椅子に座る。

 

「あなた、手、洗ってないわよ?」

 

「あ、あぁ!そうだった!ごめんごめん、すぐ行ってくる!」

 

慌てた様子で立ち上がり、小走りで洗面所に行ったかと思うと、数秒のうちに帰ってきて、再び椅子に座る。

 

「…じ、じゃあ食べましょうか」

 

「うん、いただきます」

 

いつもならありえないほどに静かな食事。黙々と勧められる箸に、私は少しずつ不安を募らせる。

 

本当に良かったのか。

今日がその日だったのか。

彼は疲れているんじゃないか。

嫌なのに、無理して私に合わせているんじゃないか。

 

今日の夕飯は、ずっとそんなことばかり考えて、終わってしまった。

 

 

 

 

 

お風呂は、珍しく別々に入った。

提案したのは私で、彼は少し考えた後に頷いてくれた。

 

湯気の音が聞こえそうな浴室。

目一杯伸ばした脚。浴槽の端に背中をもたれて、顎先までお湯に浸かる。

全身を包むちょっと熱めのお湯。

でも、私の身体を火照らせるのは、そんなお湯よりも熱いモノ。

 

「…とうとう、彼と…」

 

口にする言葉を隠すように、水面に小さな泡ぶくが出来た。

 

 

 

 

 

うっすらと暗い寝室。

いつもと同じはずのベッドに腰掛けているだけなのに、今日は初めて泊まった宿屋のように他人の物に感じられてしまう。

彼が、お風呂から出てくるまで後数分くらいかしら。

低反発の、寝心地がとっても良いベッドに手を押し当ててその反発を楽しむ。

 

「今更だけど、このベッドホントに持ちがいいわよね」

 

高まる緊張を紛らわすように呟いて、枕に顔を押し付ける。

心臓の音がハッキリと聞こえる。

ドクン、ドクン、と少し早くて力強い音。

 

タン、タン、タン。

 

ドアの先から聞こえる足音。

もう、彼は出てしまったみたいね…。

 

「…出ました」

 

「お、お帰りなさい」

 

敬語になってしまう会話。

それは、これから先にするコトのせい。

 

「………その、少し、話しましょうか」

 

「…うん」

 

隣に腰を下ろす彼。

ほかほかとしていて、とてもいい匂いがする。

 

「私たち、もう一年以上も一緒に生活してるのよね」

 

「うん」

 

「不思議ね。本当なら、一生出会うはずがなかったかもしれないのに。それどころか、あんな出会いだったのに、今じゃこうして一つ屋根の下、同じベッドで隣り合って眠ってる」

 

「うん」

 

「私ね、いつも思うの。

あなたと、結婚して良かったって。一緒に暮らせて嬉しいって。出来るなら、一生を終えても、ずっと一緒にいたい。そう思ってしまうくらい、幸せなの」

 

「うん」

 

「…だから、私は、あなたとの子が欲しい。

今でも充分幸せだけど、でも、私はもっと幸せになりたいって思っちゃったの。ユリィとミーティを助けた日からずっと、もしも私たちに子供がいたら、って毎日思ってた。

みんなで食べるご飯。みんなでする買い物。二人じゃしないけど、子供がいればするような遊び。

全部…全部したいと思っちゃう」

 

「…うん」

 

一言、二言と話すにつれて赤く火照っていく顔。

あの子たちを助けてから半月間、ふと気がつけば子供がいたら、と考えていた。

その想いを、今、彼に打ち明けた。

私は、ね。心の奥底から、どうしようもないくらい本心から、あなたとの子を成したいと思ってる。そうすることで世界中の全てから嫌われてしまっても、構わないと思ってる。

その気持ちのほんの僅かでも、伝わって欲しい。

 

「ゼシカ」

 

「…はい」

 

彼の、力強い、頼りになる声。

ベッドの上に置かれていた私の手の上に重なる、温かな彼の手。

私は、恥ずかしくも嬉しい気持ちになって、彼を見る。

視線の先にあるのは、同じように…ううん、私よりも真剣な眼差しで私を見据える彼。

 

「ゼシカ。

僕は、ゼシカのことが大好きだ。世界中で誰よりも愛してる。例えゼシカを愛することで世界を敵に回すような日が来たとしても、生涯、ゼシカを愛していられるくらい、好きだ。

だから、僕と…子を成して欲しい。

この人生をかけて、ゼシカと、これから生まれる子を命に代えても守るから」

 

「…はい…!

私で良かったら、こっちこそ、よろしくお願いします…!」

 

私の頬を伝うのは、あの日…結婚式の日に流れたものと同じ涙。

寂しさや悲しさ、辛さや苦しさとかからくる負の感情とは真逆の涙。

私と同じ想いをしてくれていたことによる嬉し涙。

流れた一滴が、伝い切った時、私たちは今までで一番想い合うちゅーを交わした。

 

 

 

ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーーー ーーー

 

彼に包まれる私。

まだ、身体が熱い。

直に触れ合う彼の身体は、その全てから熱を感じる。

少しだけ荒いままの彼の呼吸が、私の前髪を揺らしてる。

ちょっとくすぐったいけど、嫌じゃない。ううん、むしろ、好き。普段はこんなに寄り添い合うことがないんだもの、思わず微笑んでしまうくらい嬉しいコト。

 

「…ねぇ、あなた」

 

「なに、ゼシカ」

 

「…なんでもないわ。ただ呼んでみただけ」

 

昂ぶる心に任せてただ彼を呼んでみる。たったそれだけのことなのに、いっぱいになったと思っていた気持ちが更に満たされていく。

 

「ね、ゼシカ」

 

「ん?なに、あなた」

 

「ただ呼んだだけだよ」

 

「…ふ、ふふ。うふふ」

 

「あはは」

 

子供のような仕返しが、もっと私の気持ちを満たす。

思わず笑ってしまうのは、そんな嬉しさが溢れてしまったから。

 

「ねぇ、あなたって、明日はお休みだっけ」

 

「うん。明日は休みだよ。

…明日は、ゼシカとずっといたかったから、休みにしてもらった」

 

「…そっか。

じゃあ、まだイケるわね?」

 

「…うん。もちろん。

むしろ、僕からお願いしたいくらい」

 

「あら、言うじゃないの。途中でへばらないでね?お父さん」

 

「それはこっちのセリフかもしれないよ、お母さん」

 

薄い明かりの中、私たちは、今日何度目かわからないちゅーをして、もう一度硬く手を握り合った。

彼の体温を、全身でしっかりと感じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 




ここまでようやく来た気がします。
次回、最終話。

それではまた。
さよーならー
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