私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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子供たちが出てくるクランスピネル編、スタートです。

では、どうぞ。


二章 クラン・スピネル編
第四十五話 私と彼と愛し子たちと基礎と


透き通る風。

澄み渡る空。

耳に心地いいのはたなびく草花たち。

難しい顔をしたルイーサと、ワクワクを抑えきれてないウェーナー。

子供達の前に立つのは、私と彼。

 

「さて、今日はルイーサが剣術、ウェーナーが魔法のお勉強よ。いつも通り、それぞれが私たちの出した課題のところまでクリアしたら交代ね!」

 

「はーい!」

 

「はーい…」

 

今にも飛び上がりそうなウェーナーは、大きく返事をするとすぐに私の元まで駆け寄ってくる。

対するルイーサの重い重い足取り。

毎度のこととはいえ、剣術を教える彼の顔はやっぱり晴れてない。

 

「ルイーサ。貴女が剣術が苦手なのはわかるけど、イヤだからっていつまでもやらないでいると一生できないままよ?」

 

「分かってる…。でも、私、魔法の方が得意だし、剣は別に…」

 

「じゃあ、代わりにお母さんがお父さんに教えてもらっても良いのかしら?」

 

「……やだ。

やる…」

 

いつもと同じ説得方法でようやくその気になるルイーサ。

ホント、私と彼が絡もうとすると、阻止するためならなんでもやるのよね。

 

「ルイーサ?いつも言ってるけど、お母さんも剣は苦手だったんだ。でも、毎日短剣で練習したおかげで、剣も使えるようになったんだ。

だからルイーサも頑張れば…」

 

トボトボ歩くルイーサの元まで近づいて屈む彼は、サイドテールに結われた頭を撫でる。

 

「分かってるって!ほら、早くやろうお父さん!」

 

それを払いのけたいけど払いのけられない、みたいな感じで手をどかすルイーサ。

難しい年頃ね…ホント。

 

「…はいはい。じゃあ、今日はドラゴン斬りをマスターしよう。この間までにやった剣の振り方と握る時の力のこめかた。そして、魔力を刀身に伝わらせるタイミングと量。

それらを間違えずに出来るようになれば、出来るはずだから、頑張ろう」

 

これも毎度のため、彼はどこか楽しそうに立ち上がる。

 

「…はーい」

 

ルイーサは彼の取り出したひのきの棒を握る。

その瞬間から、少し雰囲気が変わる。

 

「ルイーサは魔力量がゼシカに似て多いからそこを特に気をつけてね」

 

「はーい…」

 

けど、やっぱり気のせいだったのか、そっぽを向いて返事を返されてしまい、彼は苦笑いをした。

…なんで私に似てるって言うといつもイヤそうな顔するのかしらね。

 

「母さん。いつまでそっち見てるの?早くやろうよ」

 

「あ、あぁごめんなさい。

えぇと…この間はどこまで行ったっけ」

 

スカートを引っ張り催促してくるウェーナーの頭を撫でてあげる。

どうして兄妹でこうも違うのかしらね。…どっちに似たのかしら。

 

「メラが使えるようになったから、今度はメラミの練習だよ!」

 

「そうだったわね。

じゃ、まずはメラを出してみましょうか」

 

「はい!」

 

元気よく手を挙げ、すぐに詠唱に移る。

親の私が言うのもなんだけど、ウェーナーは剣も魔法もどちらも筋が良い。まるで、サーベルト兄さんのようだ。

今ではすっかり懐かしくなってしまったサーベルト兄さんの記憶。昔は事あるごとに思い出してたけど、今はもうそんな事はない。

…少しさみしい気もするけれど、でも、もう影を追わなくて良いのよね。

おかあさんが認めてくれて、サーベルト兄さんの意思を継いだあの人がいるんだもの。

 

「…母さん?」

 

「え、あ、ごめんなさい。

メラを作ったのね。良いわ。それじゃあ、今度はそのメラに更に…」

 

ウェーナーと同じように手のひらにメラを作り、形が崩れないように保ちながら更に魔力をこめて大きくしていく。

その思考の傍ら、考えるのは記憶の中にいるサーベルト兄さんのこと。

大丈夫よ、サーベルト兄さん。ウェーナーとルイーサは私たちのようにはさせないから。二人は、私たちが必ず護るから。だから、見守っててね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空腹が考えを遮る頃、ルイーサはようやくドラゴン斬りを使えるようになった。

先に終えていたウェーナーは、私と軽食を食べながら二人の授業風景を見ている。

 

「…ねぇ母さん」

 

「ん?どうしたの」

 

食べ終えたウェーナーは、キラキラと輝かせた瞳を私に向ける。

 

「母さんはさ、どんな剣が使えるの?」

 

「…そうね…確か…」

 

期待に胸を膨らませたウェーナーに、どこか得意げに言おうとして、けど、そこから先が出てこない。

………アレ?私、もしかして…アレ?

 

「……すっごい良いのが入りやすいくらい、かしらね…」

 

「…???」

 

思い出してきた。

私、最初は短剣を使ってて剣も握れるようになったけど、その頃にはムチの方が向いてるのがわかったり、お金がなくて武器を売り払ったこともあって少しの間素手でも戦闘してたりしたから、あんまり剣を使ったことなかったんだわ…

 

「…お母さん?なに、その顔」

 

「へ!?あ、ルイーサ!?」

 

鏡で見るまでもなく冷や汗をかいてるだろう私の顔をジトついた目で見てくるのは、額に汗をにじませているルイーサ。

少し後からやってきた彼と一緒に、私たちの座ってるベンチに腰を下ろした。

 

「ねぇ父さん。父さんはドラゴン斬りとかメタル斬りとか色々知ってるけど、母さんはどんなの使えるの?」

 

「ちょ、ちょっとウェーナー!」

 

私の答えられなかった質問を今度は彼にされてしまう。

あ、アレだけ毎回ルイーサを説得するために私の話をしてたのに、今更「大したことなかった」なんて言ったら、ルイーサがなんていうか分かったものじゃない…。

あなた、上手いことお願い!

 

「…うん、そうだね。

お母さんは取り立ててすごい技を使えたってわけじゃないよ」

 

「えっ!そうなの!?」

 

率直な彼の言葉に目を見開いて驚くルイーサ。

…なんていやらしい目を向けて笑うのかしら。この子。

 

「でもね、代わりにお母さんが剣を握った時は、必ずと言って良いほど重い一撃が入ったんだ。致命傷って言っても良いかもね。

別にお母さんは筋肉があるわけじゃないけど、狙い所っていうか、弱点を見つけるのが上手だったんだ。

短剣には急所に当たるだけで敵を仕留められる物もあったから、それのおかげかも」

 

「…ふーん。そうなんだ」

 

「だから、必要ならお母さんから短剣の使い方を教えてもらったほうがいいかもね、ルイーサ」

 

「はーい」

 

彼の言葉に渋々頷いたルイーサは、まだ手に持っていたひのきの棒をくるくると投げながら回して器用に遊んでる。

私の想いが通じたのか、彼が上手いこと説明してくれたおかげでルイーサに勉強をしなくて良い口実を作らせなくて済んだ。

 

「…そうだ。たまにはゼシカの剣も見てあげようか?」

 

「え?わ、私は良いわよ!魔法とムチさえあれば大体どうにかなるし」

 

彼の突然の提案に慌てて首を振る。

もしここで下手をすればせっかく無くした口実を作ることになるかもしれない。それはダメだ。

 

「…そっか、なら、もししたくなったら教えてね。いつでも教えるから」

 

そう思って拒否をしたわけだけれど、彼はとても寂しそうな目をしていた。

……わかったわよ…。

 

「…と、思ったけど、やっぱり少し見てもらおうかしらね。

いきなり変な人が襲ってきた時、ムチも魔力もなくて、でも近くにひのきの棒はある、って場面は考えられそうだし!」

 

言いながら立ち上がり、彼に向き直る。

そんな寂しそうな顔されたら、イヤとは突っ張れないじゃない。

 

「よし!それならこれ、握ってみて!」

 

同じく立ち上がった彼に渡されたのは、どこからか取り出したひのきの棒。ベンチから少し離れてから、それを剣を構えるようにして握る。

 

「…うん、構え方は凄くいい。ゼシカはほぼ真下から切り上げるタイプの使い方をするから、直感で出来るドラゴン斬りとかが覚えられなかったんだろうけど…」

 

なにかを呟きながらひのきの棒を構える私の身体のあちこちを触り、姿勢や重心の置き方なんかを変えていく。

ちょっと、くすぐったい。

 

「…そうだね。これで後は全身のバネを使って下から思いっきり相手を切り上げるつもりで振り上げて、その時にメラ系の呪文を唱えるつもりで刀身に魔力を込めれば出来ると思う。

…いや、確かゼシカはギラ系も使えたっけ?」

 

「えぇ、使えるわよ」

 

「なら、僕と同じくギラ系の呪文を唱えるつもりでやったほうがいいかも。要領は同じだから、好きな方でいいんだけどね」

 

「ならギラでいくわ。その方があなたも教えやすいでしょうし」

 

私の言葉に彼は頷き、早速言われた通りに刀身に魔力を流してみる。

えっと、確か、思いっきり切り上げて魔力を込める、だったわね。

 

「…てりゃ!!」

 

言われた通り…かは分からないけど、彼の言ったように思いっきり切り上げる。

ただ、あまりにも力を込めすぎたからか、切り上げた後に余剰分の力でくるりと体が回転する。

剣を振るう音とギラの出る音がしたから、多分成功してると思うんだけど…。

何も言わない彼の方を覗くようにして見る。

そこにあるのは、とても驚いた表情の彼と二人の子供たち。

…失敗、しちゃったのかしら。

 

「ゼ、ゼシカ」

 

「は、はい!なにかしら!!」

 

戸惑いの中で急にかけられる言葉に過剰に反応してしまう。

 

「そ、そっか、そうだね。ゼシカはムーンサルトとか人離れした身体能力の持ち主だっけ。それならこの威力も頷ける…かな」

 

「え、何々?私何かしちゃったの??」

 

含みのある言い方に不安が増していく。

失敗したわけじゃなさそうだけど、何故かこう、怖いものを見るような感じだ。

 

「母さん、ほら、あそこ」

 

ウェーナーのわずかに震える指先が示すのは、家とは反対側の、石碑がある方の木々。

…ただ、さっきまで見えてたはずの木が無い。というか、上半分が斜めに切れてなくなってる…?

 

「今後の課題は目を瞑らずに使えるようになることだね。そうしないと、どれだけ威力があるのか分からないし、そもそも敵に当たらないこともあるから。

……対人用の自衛手段としてはあんまり使って欲しく無いかな…」

 

「分かったわ。見てないけど、とんでも無いってことがよく分かったから、あんまり使わないようにするわね」

 

私の持つひのきの棒を預かる彼は、そう言うと、別のことを教えてくれようとしているのか、もう一度私の身体を触り始めようとする。

 

「お父さん!休憩は終わり!早く続きしようよ!」

 

けれど、私の番は終わりらしい。

用意していた軽食を食べ終えたルイーサが彼のズボンの裾を激しく引っ張り、続きをしてほしいと抗議している。

 

「え、ああそうだね。

じゃあゼシカはまた今度。あ、次は僕にも呪文教えてほしいな。バイキルトとかフバーハとか」

 

「もちろん良いわよ。まぁ、呪文に関しては才能の問題が大きいから、できるかは分からないけどね。

でも、出来る限りのことは…」

 

「お父さん!!ほら!!」

 

私の言葉を遮るようにして、更に強く裾を引っ張り出すルイーサ。

理由は…まぁ、私のを見たからでしょうけど、対抗心だとしてもお勉強に積極的になってくれるのは嬉しい。気が変わらないうちに、進めた方がいいわね。

 

「じゃ、今日はこのまま続けましょうか」

 

私の意図を理解して頷く彼。

ウェーナーもルイーサも喜んで頷いてくれた。

 

 

 

その日のお勉強は、珍しく夕陽が出るまで続けられた。

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 





と、こんな感じで進んでいこうかと思います。
それではまたお付き合い下さいませ。

さよーならー。
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