私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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前回同様アローザさんが出てきます。

では、どうぞ。


第五十一話 私とみんなと在りし日の塔

実家に帰ってきて一晩が明けた。

久し振りに訪れた、なにも気を使うことのない夜は彼との会話を弾ませ、結局あんまり眠れなかった。

ま、その分楽しい夜を過ごせたから良いんだけどね。

 

「おはよう、ゼシカ」

 

「ん、おはよう、あなた」

 

二人仲良くベッドの上に起き上がり、まだ若干重たい瞼を擦る。

隣であくびをした彼は毛布を剥いでベッドから降りると、私の寝ている方まで回り込み。

 

「どうぞ、お姫様」

 

なんて言って、手を指し伸ばしてきた。

 

「もう。バカなこと言ってないで早く着替えましょ」

 

口では否定しつつもその手を取る。

目覚めて最初に目にしたのが愛しの王子様なんだから、手を握らないわけないじゃない。

 

「じゃあ、行こうか」

 

「うん」

 

彼に頷き、歩幅を合わせてもらいながら部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食後、食休みをした後にアルバート邸を後にする。

食事中、元気なウェーナーとルイーサとは反対に、かあさんは小さくあくびを

何度かこぼしていた。

今までおかあさんのあくびをする姿なんか殆ど見たことが無かったのに…。

多分、話疲れて二人が眠った後、残ってた仕事を片付けたか何かしてあまり眠れなかったんだろう。

 

「おばあちゃん!今日はどこに行くんだっけ!」

 

「リーザス像の塔だっけ?」

 

「えぇ。よく覚えてたわねウェーナー。今日は私たちの村にとってとても大切な場所、リーザスの塔に登って、頂上にあるリーザス様の像にお祈りを捧げに行くんですよ」

 

「「はーい!」」

 

おかあさんを挟むようにして両脇を歩くウェーナーとルイーサ。その少し後ろを彼といて行く。

ホント、よっぽど可愛いのね。私となんてロクに手を繋いで歩いてくれたこともなかったのに、今じゃ両方とも塞がってるじゃないの。

 

「…寂しい?」

 

「まさか。

たまには肩の荷が降りた気がして楽で良いわ」

 

彼の言葉に、大袈裟に背伸びをして答える。

本当はちょっぴり寂しいけど、気楽になったのも事実だ。二人の子供と一緒にいるのは楽しいけれど、その分重たい責任がついて回るから[気が休まるか]という意味では、全然余裕ないし。

 

「そっか。

じゃあ、僕が寂しいから、ちょっと良いかな?」

 

そう言って右の掌を見せてくる彼。

 

「…ふふ、なるほどね。

そういうことなら私もすこーし寂しかったの。お願い出来るかしら?」

 

彼の頷きを確認してから、その手を握る。

 

「…?どうかしたゼシカ?」

 

「う、ううん。なんでもないわ」

 

歩いているのは、実家から伸びる丘下までの道。八年くらい前までは、彼と毎日ここを通ってトラペッタの町まで行ったりなんかしてたのよね。

なんだか、結婚したばかりの頃を思い出しちゃって彼の顔をちゃんと見られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、すっかり綺麗になってるわね…」

 

「うん。あれだけ入ってたヒビとか欠けてた所が見当たらない」

 

村を出て東へ道なりに進み、到着したのはリーザス像の塔の入り口。

 

「開けてもいいー?」

 

「構いませんよ。

でも、一人だと重いでしょうからウェーナーと…ほら、お父さんも来て下さい。三人でやるといいでしょう」

 

少し後ろに立って様子を見ていた私たちに振り返り、おかあさんは彼を指名する。

彼は不思議そうに私を見るけど。

 

「分かりました」

 

と、返事をして扉のところへ向かった。

 

「じゃあ、僕が真ん中を持つから、ウェーナーとルイーサは端に分かれて」

 

「はーい。

ほらぁ、そっち持ってよお兄ちゃん」

 

「はーい」

 

「持った?

行くよ、せーの!」

 

両端に付いた子供達は彼の掛け声に合わせて一気に扉を持ち上げる。

ゆっくり上にスライドしていった扉は、彼が両手を伸ばしきることで完全に開かれた。

 

「うぅー。本当に重かった…」

 

「…指が痛い…」

 

その場でうずくまり、両手を見つめるウェーナーとルイーサ。

口には出してないけれど、彼も手を閉じたり開いたりして感触を確かめてる。

おかしいわね、私の記憶だと、ポルクかマルクでも開けられるくらいだったはずだけど。

 

「昔は魔物がここを守っているところもありましたからね。いなくなってしまった今、リーザス様の像を狙う悪党が現れないとも限りませんから、重たいものに変えたんです」

 

顔に出てたのか、いつの間にか側まで寄ってきていたおかあさんが理由を教えてくれた。

 

「なるほどね。彼の力でも開けるのが辛いのなら、並みの奴らじゃ進入できないってわけね」

 

「代わりに、村の力自慢が三人がかりでないと開かなくなってしまいましたけどね。致し方ないわ」

 

「まぁ、何かの行事の日にもしも揃いそうになければ私たちを呼ぶといいわ。私もそれなりに力はあるし」

 

「おばーちゃーん!おかーさーん!置いてっちゃうよー!」

 

話し込んでいると、すっかり元気になったウェーナー達が塔の中へと続くドアまで着いていたために、ルイーサに急かされてしまう。

 

「あの子は貴女によく似ているわね。私も、ああしてよく急かされたものです」

 

「…本当に?全然記憶がないんだけど…」

 

「…まだ幼い頃だったから、覚えてなくても仕方がないわね。

今でも思い出せるくらい、とても大変でした」

 

「そんなに…」

 

「はーやーくー!」

 

「はーい!すぐ行くわー!」

 

シビレを切らして今にも駆け出しそうなルイーサに大声で返事を返す。

隣のおかあさんに「はしたない…」なんて言われそうだし、すぐに駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ…きれー」

 

「これがリーザス様の像…」

 

近道を通り、十分と経たずに塔の最上階へ到達する。

それまで通ってきた道や部屋は、ささやかに飾り付けが施されていたりして定期的に人の出入りがあるんだなとわかったけど、塔の頂上、リーザス様の像が佇むこの場所だけは、私と彼が初めて出会った日から一つも変わっていなかった。

…ご丁寧に、私の放った火球で少し黒くなった場所までそのままだ。

 

「二人とも、静かになさい。ここは神聖な場所です」

 

私には見慣れたおかあさんの厳しい表情に、ウェーナーとルイーサは少し萎縮する。

けど、怒っているのではなく真剣なんだとわかると、おかあさんに倣って二人は静かに瞼を閉じる。

私も、彼とアイコンタクトをして瞳を閉じ、両手でリーザス様の像にお祈りを捧げる。

…今の私がリーザス様に望むものなんてあるのかな、って塔を登ってる間ずっと考えていたけれど、いざこうしてお祈りするってなると、欲が出るものなのね。

ーーーお願いします、リーザス様。私と彼と…ウェーナーとルイーサ。家族四人永遠に仲良く元気に暮らせますように。怪我をしても病気に罹っても、大事に至らず、幸せであり続けられますように。

…もちろん、おかあさんのこともよろしくね。

あ、後!もっともっと彼と愛し合えますように!

 

 

そうして、静かで穏やかな時間が訪れる。

耳に響くのは、流れ落ちる清らかな水と、仄かな飛沫の音。

心の安らぐ、心地の良い音。

流れる時間が悠久に感じられるほど落ち着いた空間。

 

 

 

 

 

「…二人共、きちんとお祈りできましたか?」

 

「「うん!」」

 

永遠にも、数分にも感じられるお祈りが終わる。

村の子たちはこんなに長くじっとなんてしてられないのに、この子達はソワソワせずにずっとお祈りしてられるなんてね。

流石、彼と私の子だわ。

 

「さてと、名残惜しいけど行きましょうか。

この後、どうするとか予定ある?」

 

「そうですね…。

そうだ。ウェーナーとルイーサは、昨日お話ししたポルトリンクの事を覚えていますか?」

 

「うん!」

 

「勿論!」

 

おかあさんの質問に、二人は顔を見合わせて目を輝かせる。

あんなにワクワクした顔を見るのは久し振りなんだけど、一体どんな事を話したんだろう?

 

「でしたら、これから見に行きましょうか。

私の屋敷よりも大きいのに、海の上に浮かぶ物を」

 

「「行くー!!」」

 

おかあさんの言葉に喜び、その場ですぐにジャンプしそうになる二人。

…まぁ、考えてみればポルトリンクで有名な物なんて一つくらいしか無いもんね。

二人とも、きっと驚くだろうな。

 

「…声を小さく」

 

「「((行くー!))」」

 

一瞬、厳しい目つきで二人を注意すると、すぐに頬を緩めて手を繋ぐお母さん。

そのまま手を引かれるようにして階段の方へと向かっていった。

 

「…もしかして、私よりも子供達と仲良かったり…?」

 

「あはは。もしそうなら、僕なんて知り合いレベルかもね」

 

僅か二日程度であの仲の深まり方、自分のおかあさんとは言えとても信じられない。

…違うわね。あのおかあさんだからこそ信じられないんだわ。

 

「…けど、ま、嫌い合うよりは全然いいわよね。

さ、私たちも行きましょうか」

 

「うん。

…はい」

 

「ん。

エスコート、お願いね。旦那様」

 

「もちろん。

絶対に離さないから安心してね」

 

「ふふ。バカね」

 

「あはは、お互い様」

 

最後に、リーザス様の像に一礼をしてから、おかあさんたちの後を追って塔を降りていった。

右手に灯るのは彼の温もり。

この胸を打ちつけるのは、柔らかな安心と僅かな恥ずかしさ。

結婚して、もうちょっとで十年経つっていうのに、あんな言葉で喜んじゃうなんて、私もまだまだ子供なのね。

 

 

 

 

 

To be nexst story.

 





リーザスの像の塔ですあった扉のくだりですが、実際はほぼ主人公君一人で持ち上げました。
ウェーナーはともかく、ルイーサのステータスは(普通の)魔法使いと大差がないため、それほど力はありません。ゼシカの娘ですが、それほど力はありません。
代わりにテクニック的なものを受け継いでいるので、ゼシカや主人公君がスキルを上げて得た常時発動系のもの(剣装備時会心率アップなど)を最初から持ってる感じですね。装備可能な武器は短剣と鞭だけですが、短剣で剣スキル(ドラゴン斬りなど)を応用した技を使えます。魔法使いとしての素養もゼシカに負けず劣らずなのでマダンテも覚えてしまう…。
ゲーム化された暁にはぶっ壊れロリとして名を馳せることでしょう。

また、ウェーナーはゼシカの持つ[マダンテ]と主人公君の持つ[ベホマズン]以外の両親の持つ呪文を全て使えます。装備できる武器も両親が装備できたものをそのまま出来ます。代わりに、レベルを上げたらスキルを振らないと常時発動系のものを得ることは出来ず、特技も習得しません。
ルイーサのように短剣でドラゴン斬りに似た技を使う、なども出来ないので、融通がきかないところはありますね。ただし、状況に応じて使う武器や技を選べるのはかなり強いはず。
さらに、ゼシカの上級呪文解放時のように、マダンテとベホマズンを習得するイベントもあります。


…まぁ、ゲーム化なんてされませんけど。

それではまた次回。
さよーならー
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