私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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フォーグのキャラ崩壊ですが…
やはり、免れませんでした…

それではお楽しみ下さい。


第六話 私と旦那様と宿泊先

「やったわね、お兄ちゃん」

 

「お手柄だ、妹よ」

 

暗闇に灯る二対のろうそくの炎。

それに映されたのは、同じく二対の笑み。

 

「さて妹よ。実験台のあの二人、どうくっ付けてやる?」

 

「安心しなさいお兄ちゃん。私には4つのプランと1つの奥の手があるわ。

…まぁ、軌道に乗ったら5つ目のプランを追加する予定なんだけどね」

 

「その5つ目のプランってのは?」

 

「恋愛成就&ハネムーン大作戦(仮)が正式に宿泊プランの1つとして追加された場合、カジノの一角を宿泊プランで泊まった人たち用にするの。

…あらかじめ当たりやすくなったスロットを置いてね」

 

片方の炎が揺らめぐ。

 

「なるほど。それで自分のパートナーの運が強いと思わせて更に、好きになってもらうわけか」

 

「さっすが私のお兄ちゃんね。全くその通りよ」

 

「そもそもの実験台が二人しかいないとなると、専用のスロット台ばかり当たるのは他の客が不審に思うから、今回は組み入れなかったのか」

 

「またまた大正解。

回数制限なんかをつけて試してみても良かったんだけど、万が一、お客の暴動でも起きたらいくら何でも二人に申し訳ないしね」

 

「確かにな。

では本題だ。他の4つのプランと1つの奥の手を教えてもらえるか?」

 

「オーケー。それはね…(ごにょごにょ)」

 

炎に照らされた顔の1つが、もう1つの顔に近づいて耳打ちをする。

 

「なるほどなるほど。なかなか悪くないじゃないか。

よし、手配は任せておけ」

 

「もちろん、そっち方面はお兄ちゃんの役割だしね」

 

「はっは、それもそうだな!」

 

僅かに笑い声が室内に響く。

とても明るく、されど企みに満ちた商売人特有の笑い声だ。

 

「それじゃあお兄ちゃん、明後日までにお願いね?」

 

「明日中には済ませておくさ」

 

そうして聞こえたのは小さな吐息の音。

揺らぐ炎は白くて細長い煙を出して、消えた。

 

 

 

 

 

 

「ほ、ほら!見てよあのカジノ!大きいね!ねぇゼシカ!」

 

おどおどとする彼の言葉はまるで聞こえていないかのように、私はプイッと全く関係ない方を見る。

 

「くぅ…

あ、あそこに美味しそうなケーキ屋さんが…!」

 

「…私今ダイエット中なんだけど」

 

酷くぶっきらぼうに答える。

 

「うっ…そっか、ごめん…」

 

声と共に肩を落とす彼。

 

(うぅぅ…ごめんなさいあなた…でも、許して…)

 

思ってもいないのに、怒ったようなフリをするのがこんなに辛いなんて思いもしなかった。

顔を引きつらせながら、必死になって不機嫌な表情を作る。

 

「(何が簡単なお芝居よ…全然簡単じゃないじゃないの…!)」

 

遡ること2日前。

ワクワクとドキドキと、ほんの少しの緊張感をもって夕飯を作っていた時。

少し大きめの封筒が届いた。

宛名はフォーグで送り先は私。

中身は2つで、片方は一般的に見られるごく普通の手紙。

もう一方は薄い本のような物。

最初に開けた手紙の内容はこんな感じだった。

 

『試したいことが多くあるため、本来なら一泊二日の予定だったがこちらの都合により二泊三日となった。すまない。

さて、その大作戦についてだが、実験台の君達が初めからラブラブで来ていたら宣伝にもならない。

そこで1つ芝居をしてもらいたい。

なに、簡単な事だ。

不仲な関係。倦怠期。実は好きではない。

理由は何でもいい、要はラブラブでは無いように演じて欲しい。

 

もし適当な設定が思いつかないのであれば、不肖、私が書かせていただいた台本に沿ってもらえれば助かる。これならそこまで難しくはないはずだ。

同封しておく』

 

そうして同封されていた台本の内容がついさっきの会話だ。

 

彼と話し合った末、フォーグの台本を演じる事となったのだが…

 

「ゼシカ…!あの!」

 

「何よ?またケーキの話だったら凍らすわよ」

 

「…ごめん。

砂糖控えめって書いてあったからアレなら…って…思ったん…だけど…。

ホントに…ごめん」

 

弱々しくて哀しげで、どうにかして私を振り向かせようとする夫の役を、迫真の演技でこなす彼。

あまりの演技力に、彼を直視…どころか指先をちらりと見る事すらできない。

と言うか、本当に演技なのかと疑っているくらいだ。

 

「わかってるなら静かにしてて。

そーいう、マゴマゴしてて頼りないところ?

ホントにムカつくから」

 

胸の下で腕を組み直して、ふんっ!とそっぽを向く。

もちろんこれも台本通りの動きだ。

 

当たり前だけど、さっきのセリフは全部嘘。

確かに彼を、何も知らなかった頃はイライラもしたけど…

それは彼の持つ優しさなんだと気がついた時からは、むしろ大好きなのだ。

 

演技と分かっていても、心にもない言葉を言うのは結構堪える。

…ちょっとだけ、ラプソーンに操られている時の事を思い出した。

…チェルスのコトも。

 

「ゼ、ゼシカ!ほら、着いたよ!今日はここに泊まるんだ!」

 

彼に声をかけられて我に戻る。

まずい!

えぇっと、次のセリフは…確か…!

 

「ふ、ふ〜ん。あなたにしては良いところ選んだじゃないの。

まぁまぁってところね」

 

慌てたせいでちょっとだけ棒読みになってしまったけど、何とか忘れずに言えた。

 

「…だってほら、前に来た時に『ここに泊まりたい』って言ってたからさ…」

 

「えっ?」

 

そんなセリフは台本になかったはず。

ここは、『世界で一番のカジノが楽しめるし、ここの宿屋なら喜んでくれると思って』なのに。

私は思わず彼の方を見てしまう。

 

「あはは…フォーグたちに怒られちゃうね」

 

彼は照れ笑いしながらそう言った。

 

「ンンッ!!」

 

ズギュゥゥゥウン。

そんな効果音が聞こえる。…気がした。

どくやずきん…いや、キラーマシーンの弓で痛恨の一撃を喰らったかのような衝撃に、胸を掴む。

 

私のボリューム満天な胸の上からでもわかる鼓動の高鳴り。

火照る身体に染まる頬。

これが、俗に言う魅了系の攻撃…!

旅の途中で、ククールやヤンガスやモリーさんが女人系の魔物に片っ端から受けて、当然の如く行動不能に陥っていた攻撃!

 

「ど、どうしたのゼシカ!?そんなに苦しそうに胸を押さえて…!」

 

だ、だめ…

そんなに優しい言葉をかけないで…

今、私を気遣うようなコトばかり言ったら…心臓が止まっちゃう…からぁ…

 

「な、何でもないわ…!そ、それよりほら、早く入りましょうよぉ…」

 

緩まりそうになる言葉をどうにか締めて、目の前にある宿屋の入り口に行くよう促す。

 

「で、でも!」

 

「大丈夫、大丈夫よ…!

…ほら、見ての通りピンピンしてるし、ね?だから行きましょう?」

 

心配性な彼の前で、二度三度ジャンプして元気な証拠を見せる。

それを見た彼は、渋々といった風な顔をして。

 

「それならいいんだけど…

辛くなったら教えてね?すぐに回復魔法を使うから」

 

「も、もちろんよ!

さ、行きましょう!ユッケたちが待ってるし!」

 

言いながら入り口の扉に手をかける。

 

本当に嘘なんてついていない。それだけは誓って言える。

むしろ、元気すぎるくらいに元気だ。

まさか、彼が覚えていてくれただなんて思いもしなかった。

それにあの照れ笑いした顔…

あれだけで、今夜から一週間は困らなそうだ。

 

「それじゃ、開けるわよー!」

 

溢れ出る喜びに振り回されないよう、無駄に声を出して扉を開ける。

すると、その先には…。

 

「「いらっしゃいませ!御二方!此の度はベルガラック宿屋にお泊まりいただき、誠に有難う御座います!」」

 

フォーマルな服で身を包んだフォーグとユッケが居た。

 

 

 

 

「「では!お楽しみ下さいませ!」」

 

妙に上機嫌で言ったかと思えば、フォーグとユッケはそさくさとどこかへ消えてしまう。

 

まぁ、いない方が休まるからいいのだけど。

しかし、それにしても…

 

「うわぁ…何よこれ…。

悪趣味っていうか、何ていうか…」

 

ユッケたちに案内された部屋ーーー名義上は【ロマンスルーム】と呼ぶらしいのだけど…

 

「うぅん…旅で疲れた時に案内されたら、僕でも怒るかも…」

 

困惑する彼。

彼の言葉はもっともだ。

 

赤が強めのピンクで全体は照らされている。

部屋に置かれているのは、少し小さめのダブルベッドと若干大きめの枕。それに、二人掛け用のソファ1つにテーブルが1つ。

更に部屋の奥に行くと、中身が丸見えのシャワールームと脱衣所。

その入り口付近には、これでもかと並べられているタンス。その数、およそ5つ。

一体何が入っているんだか。

 

「兎に角、部屋の明かりをどうにかしなくちゃね」

 

そう言って、彼と辺りを見回す。

と、ベッドの置かれている近くの壁の上の方に、それらしいスイッチを見つけた。

 

「あれかな?

…何でこんなとこにあるのかしら」

 

「変だね…

よし、ゼシカは待ってて。僕が押してくるから」

 

「ん、わかった」

 

彼は警戒しながらベッドまで行き、その上に乗ってスイッチを押した。

すると瞬く間に、雰囲気がガラリと変わった。

ムード溢れる部屋から、どこにでもある部屋。

つまり、ごく普通の、民家のような明かりが灯ったのだ。

 

とはいえ少し光がキツイ。

どこが灯っているのかを確認すると、どうやら明かりの元は天井の四隅と同じく天井の中心らしい。

五つの方向から照らされているのだから道理で眩しいはずだ。

 

「ふぅ、よかった。何もなかったわね。

ま、ダンジョンとは違うんだし、なにか起きてもせいぜいタライが降ってくるとかぐらいでしょうけど」

 

笑いながら彼のいるベッドに視線を戻す。

そこでは両膝と手をついた状態…所謂四つん這いの格好になっている。

 

「あら、どうしたのあなた。

早くベッドから降りて、一緒にこの中を見回らないと」

 

「あ、うん。そうしたいのはやまやまなんだけど…」

 

「…どうしたの?」

 

一向に動く気配のない彼。

流石に疑問を感じた私は彼の元まで行くと。

 

「なに、この看板…?」

 

彼の身体で隠れていた部分には、真新しい看板があった。

ついさっきまではなかったのにあるという事は、明かりを変えるためのスイッチを押したから、だろうか。

 

「えぇーと、なになに?

『ベッドから降りたければ、その上で相手と三十秒間抱き合え』…ですって!?」

 

「そうみたいなんだ…」

 

言いながら彼が足を動かすと、ジャラジャラという金属の擦れる音がした。

見れば、彼の足首には囚人がつけるような黒鉄の鎖が。

 

「なぁるほど、こんな風に攻めてくるのね、あの二人は…」

 

「後これ、時間が過ぎるごとに締め付けがきつくなるみたいなんだ…」

 

「はぁ!?

……ホントね、微弱だけど確かに魔力を感じる。

しかも、かなり特殊で複雑な感じのね」

 

もちろん、私ほどの大魔法使いともなれば手間をかければ解呪は可能だ。

しかし、これを解呪する時間は無い。

 

「なんか、棚ぼたみたいな感じで納得いかないけど…

ユッケたちの思惑通り抱き合いましょう」

 

口ではそう言っても内心は穏やかじゃなかった。

三十秒、つまりはいつもの三倍の時間も全身を密着させるというコト。

それでかかる心的負担は並では無い。

普段だって必死に、ばくばく動く心臓をどうにか落ち着かせて抱き合っているのに、それを三十秒も続けるのだ。

その時はきっと、永遠とも言えるくらい長い時間だろう。

 

いいえ、待って。

体感とはいえ、永遠とも言えるくらい長いあいだ抱き合っていられるの…?

 

それは…悪く…無いわね。

 

「さ、じゃあ早速抱き合おうかしら!」

 

「え、あぁ、うん。あ、待って!」

 

そういうと彼は、何かを確かめるように身体を何度か揺らす。

 

「…ゼシカ、今気づいたコトが一つあるんだ」

 

途端に真面目な顔になる彼。

どうしたというのだろう。

 

「へ?もしかして、鎖取れちゃった?」

 

それはまずい!

もとい、ある意味では大変だ。

すぐにユッケかフォーグに知らせなければ。

 

…別に、残念がってなんか無いわよ?

 

「ううん。

今ね、横向きで寝ようと思ったら、無理だったんだ」

 

「えっと…つまりどういうコト?」

 

「つまり、僕の下にゼシカが横になって、その上に僕が重なるようにしないと抱き合えないってコト。

…みたい」

 

「…はい?」

 

急な話に頭がついていかない。

待って待って待って。

私の考えだと、二人で横向きになった状態で抱き合うカンジだったんだけど…!?

 

けど、彼の言い方だと…

端的に考えて、彼が私を押しつぶすような形で抱き合うコトになる。

それは文字通り、彼の全体重が私に襲いかかるわけで…

当然、私はそれを全身で受けなければならない。

 

そんな…そんなコトって…

 

「あの、ゼシカ?そろそろ本当に足首が限界みたいなんだ…

まさか、両足首と左手首が鎖で繋がれているなんて…僕がもっと気をつけていたら…」

 

「いいわ!やりましょう!早速!今すぐに!」

 

「え、あ、うん!わかった!」

 

彼の両足首と左手首が締め付けられているのに迷っている暇はない。

私は、彼が大きめに開けてくれたスペースに身体を入れる。

僅かに顔を撫ぜる彼の息が、私が今、どれだけ彼の近くにいるのかを物語っている。

 

「そ、それじゃあ、行くよ…?」

 

「ば、バッチコーイ…」

 

ゆっくりとだけど、素早く。

慎重だけれど、大胆に。

それは多分、私が彼を下から見ているから感じるコトだ。

 

むに…と、彼の胸が私の胸と微かに触れる。

一瞬だけ、戸惑うように彼は止まると、けれど再び、動き出す。

むにゅ…

むににに…

普段とは比べ物にならない圧迫感と、胸の潰れていく感覚。

押される感覚の次に来たのは、締め付けられる感覚。

彼の右腕が私の背中に回り、私も両腕を彼の後ろに回す。

 

幸せが、歓びが、彼の想いが、私を支配していく。

 

ここがどこなのか。

 

誰に招待されたのか。

 

そんなものは全て頭の外に出て行ってしまうほどの充足感。

 

私の胸が完全に押し潰された時には既に、彼の顔が、ほぼ私の真横にあった。

 

「…あなた」

 

「な、なに?」

 

感極まる、というのは今みたいな気持ちのコトを言うのだろう。

 

「ちゅーしても…いい、かな」

 

「……」

 

彼は少しだけ黙ると、私に顔を向ける。

それは、『してもいい』という合図だった。

 

私は目を閉じて、彼に唇を重ね…

 

【プァー!プァー!プァー!】

 

ようとした時、部屋に大音量のラッパが鳴った。

 

「「っはぁ、はぁ、はぁ!」」

 

あまりにあまりの出来事に、緊張だったりなんだったりとは全く違う別の驚きに心臓が早鐘を鳴らす。

間違いない、あと一つ上のびっくりだったら死んでいた。

 

「ユッケ!!!!」

 

私は怒鳴りながらも、ついさっきのコトを思い出す。

あと少し。

あとほんの少しというところで、彼と…その…そういうところまでいけそうな雰囲気だったのに…!

 

「こ、これは安心出来そうにないぞ…!」

 

彼の言葉で目が覚めた。

ユッケはともかくとして、フォーグは継承のしれんの時に、自分が勝ちたいという理由から私達の夕飯に眠り薬を入れるような奴だった…!

 

「いいわよ、そういうつもりならとことんまでやってやるわ!」

 

かんっぜんにあったまきた!

こうなったらあの二人に徹底的に教えてあげなければ。

 

「いい、あなた!絶対にあの二人の思い通りになんかさせないわよ!」

 

「だね。

これはイタズラにしてはちょっと、度が過ぎてる。

少し、お灸を据えたほうがいいかも…!」

 

珍しく彼もやる気らしい。

 

そんな時に、どこからともなく乾いた木がぶつかるような音がした。

 

【楽しんでもらえたかしら?それじゃあ次は食堂へレッツゴー!】

 

とだけ書かれた看板が、二人掛けソファの後ろからニョキッと生えている。

音の元はこれだろう。

 

「ふっ、いいわ。行ってやろうじゃないの。

いいかしら、あなた?」

 

「勿論。お腹も空いたコトだしね」

 

私たちの意見は一致した。

お腹に手を当て、顔を見合わせて頷き、次なる戦場へと足を運ぶため、部屋のドアに手を掛けた。

 

その時の私たちは知らなかった。

ドアの先に起きる、想像もしなかった事を。

 

 

 

 

 

To be next story.

 




ぁぁぁぁぁ
ゼシカが可愛いんじゃぁぁぁ-
私のところに来てホスィ…
え?それは無理?そんなぁ…

そんな事より!
次回は食堂で事件が起きる模様!
ユッケの考えた4つのプランとは?奥の手とは!?
次回、そのうちの1つが明らかに!?(なるとは言っていない)

それではまた、次回の更新で。
さようなら。
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