私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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それでは、どうぞ。


第六十一話 私と彼と準備と

快晴の下、飾り気がないのにどこかオシャレなタイルの上を楽しげに鳴らして歩く二つの影。

右がウェーナーで、左がルイーサ。

その少し後ろを歩くのは、私と彼。

ここは、すっかりお決まりの買い物先となったサザンビーク城下町のバザー。

私たちが旅をしている時に開催したバザーの後、出店者達が『まだ閉めたくない』とかなんとか言って、長期的な[なんちゃって]バザーが始まったのだ。

流石に本来のバザーほどの活気はないけど、それでも、普段の買い物やちょっとしたショッピングくらいなら充分以上に揃えることができる。

だから、ご飯の献立がマンネリ化した時とか、珍しい小物や服が欲しくなった時とかによく訪れる。

そんなバザーに今日訪れたのは献立や小物に困ったからでも、新しい服や日用雑貨が欲しくなったからでもない。

 

「ねぇ、父さん!今日は休んでくれてありがとね!」

 

「お母さんだけじゃ不安だったし、嬉しい!」

 

立ち止まって振り返り、改めて彼にお礼を言う二人。

本当は今日、彼は仕事だったんだけど、『二人の大切な買い物をそろそろしたい』って言ったら、一週間前から休暇申請を出してくれて、おかげで丁度いい頃合いに買い物に行くことができた。

…ついさっきのルイーサの発言については私から反論出来ないわ。

確かに世界中を旅したおかげで色んな武器や防具を知ることが出来たけど、基本は彼に勧められた物を装備していたから、詳しい性能のことを聞かれると『多分』とか『大体』って言い方になっちゃう。

 

「ダメじゃないかルイーサ、そんな言い方したら。お母さんだって、二人のことを思って色んな装備を提案してくれたんだよ?」

 

「もー!子供扱いしないでよー!」

 

ルイーサの頭の上に手を乗せて優しく叱る彼。

そろそろ大人の扱いをしてほしい時期の彼女は、そんな子供っぽい叱り方に不満を感じて両手で拳を作って気を付けの姿勢をとる。

 

「はいはい。わかりました、お姫様」

 

そう、やっぱり小さな子をあやすように言うと。

 

「むぅー!そういうのがヤなのー!」

 

両手を縦にフンフンと上げたり下ろしたりして抗議する。

以前までなら通用したご機嫌の取り方も今のルイーサは満足してくれないみたい。

 

「ごめんごめん。

お詫びに後で肩車してあげるから、許して」

 

「それなら許してあげる!」

 

なんて言ってても、やっぱり単純みたい。

もうひとゴネすれば抱っこくらいはしてもらえたのに、あそこで諦めちゃうようじゃまだまだ子供だわ。

 

「あ!父さん、母さん、もしかしてあそこ!?」

 

それまで楽しげに歩いてただけのウェーナーが大きな声を出して指を指す。その先にあるのは、鉄のよろいやまほうの法衣を飾っている屋台があった。

いつの間にか一つ目のお店に着きそうだったんだ。

なら、もう必要な事を話し始めてもいいわね。

 

「さてと、二人は欲しい物の候補は決めてるの?ここだと、安い物からそれなりに高価な物まであるし、大体は揃ってるはずだから、とりあえず言ってみて。

買うかどうかはそれから決めるわ」

 

そう言うと二人は、彼の肩掛けカバンの子供用から四つ折りにされた紙を二枚ずつ取り出し、私と彼にそれぞれを手渡す。

彼と顔を見合わせて二人の準備の良さに少し驚きつつ、中身に目を通す。

えぇっと、なになに?

 

「ルイーサの欲しいのが、みかわしの服か賢者のローブ…?それに、バスターウイップとキトンシールド…」

 

「こっちは、ドラゴンメイルかシルバーメイル。それにドラゴンシールドとドラゴンキラー…」

 

隣で読み上げる彼の声が少しずつ落ち込んでいく。

…もちろん、私の声もだ。

ウェーナーもルイーサも、いつの間にこんな余分な知識を得てたのかしら…

 

「…ダメ」

 

「かな…?」

 

キラキラと悲しげに目を輝かせて私達を見る二人。

その問いに対する答えは。

 

「無理!そんな高価な装備を揃える必要性もなければ、お金の余裕もないわ!」

 

当然NOだ。

 

「えー!」

 

「ケチー!」

 

「あのねぇ!?」

 

ルイーサだけならいざ知らず、ウェーナーまでも口を尖らせて不満を露わにする。

この子達、自分で選んだ装備が総額でいくらかかるか分かってるのかしら。そもそも、錬金釜じゃないと作れないのだってあるし!!

 

「ゼ、ゼシカの言う通り、ちょっと無理かな…。

キトンシールドとドラゴンキラーなら確か旅の時に使ってたのが残ってたと思うけど、それ以外のは買わないとないかな…。

今は魔物が出るわけじゃないし、最低限の装備で大丈夫だと思うよ…?」

 

今にも卒倒するんじゃないかって雰囲気の彼が優しく諭すと、二人はそれとなく顔を見合わせると、再び私たちに向き直り。

 

「じゃあ、それで我慢する」

 

「父さんの言う通り、強いのを待ってても使わなかったら意味ないもんね!」

 

満面の笑みで頷いた。

…ま、まさか。

 

「…お父さんとお母さんのこと、騙したわね?」

 

ジトりと、粘り気のある視線を向けて二人を観察する。

 

「そ、そんなことないよー?」

 

盛大に目をそらして冷や汗を流すウェーナーと。

 

「ほ、ほしいのが全部貰えなくてざんねーん…!」

 

私の視線を遮るために後ろを向くルイーサ。

これは間違い無いわね。

この二人は、多分どこかで家の倉庫の中を見た。その時に、どうしても欲しいと思う装備を見つけて、貰えそうなチャンスを待った。

で、今日がそのチャンスの日。ここぞとばかりに用意したフェイクの欲しい装備品と一緒に提示して、[この中なら、まぁこれくらいなら…]と言う状況を作り、目当ての物を手に入れようとしたわけだ。

つまり、私達を謀って欲しいものを手に入れようとした。

確かに賢いやり方ではあるけど、こんな手段を覚えさせたら人から信用されなくなってしまう。

 

「はぁ…全く。なんでこう悪知恵を働かせるのかしらね。

いつもなら別だけど、今回みたいな場合なら別よ。流石に無条件で上げるわけにはいかないけど、ちゃんと理由を教えてくれればプレゼントしたのに。

…でーも。

あなた達二人がそんな悪い子なら話は変わるわ。あなた?この子達に旅の装備を買ってあげるの、やめましょ」

 

「「えぇ〜!?」」

 

この世の終わり、みたいな顔をして落ち込むウェーナーとルイーサ。

そんな二人を見て、彼とアイコンタクトを取る。

 

「そうだね。二人がお父さん達を騙そうとしてたなんて知ったら、とてもプレゼントする気にはならないかな。

お母さん、今日はもう帰ろうか」

 

「そうね。本当はお昼も外で済ませようと思ってたけど、それもやめね」

 

「「そ、そんな!」」

 

彼と一緒に二人に背を向けて入口の門の方までゆっくり歩いていく。

背中に感じるのは[行かないで]という、切実な思い。

 

「(もう一押し必要かしら)」

 

「(うーん、もう少し様子を見てみよう)」

 

彼にしか聞こえない声で話しつつ、後方をチラッと確認する。

見えるのは、お互いに顔を見合わせる今にも泣きそうなウェーナーとルイーサ。

 

「あ、そうだ。あなた?」

 

「ん?どうしたの?」

 

わざとらしく大きな声で彼を呼び止める。

別に何か用があって彼を呼んだわけじゃない。後ろで立ち止まったままの二人を観察するためだ。

彼も私の意図に気がついてくれたみたいで、すぐに益体のない話に付き合ってくれた。

そうやって少しの間会話をして、二人をもう一度チラリと見る。

見えるのは、ルイーサに何かを話すウェーナー。

距離があるのと、あっちもヒソヒソと話しているから声は殆ど聞こえないけど、雰囲気から察するにどうやって謝ろうかと話し合ってるみたい。

 

「(私たちももう少しここで話しましょうか)」

 

薄く微笑んで頷いた彼に、今日のお昼の話をし始める。

何を食べたいか、とか、どのくらい食べたいか、とかそんな話をしていると、程なくしてウェーナーとルイーサが小走り気味に寄ってきた。

 

「あ、あの…」

 

「お父さん、お母さん…」

 

私たちは会話をすぐにやめて二人に向き直る。

ウェーナーもルイーサも半ベソをかきながらどうにか言葉を繋いでいて、次に何かを口にすれば涙が溢れてしまうのは見ていてわかった。

けど、私も彼も返事を返すだけでそれ以上は何も言わない。

僅かな間の後、ウェーナーとルイーサはお互いに顔を見合わせると。

 

「「ごめんなさい!!」」

 

目一杯頭を下げて、謝った。

 

「父さんと母さんを騙すようなことをしてごめんなさい!」

 

「私たち、あの装備がどうしても欲しかったの!でも、こんなに怒るなんて思わなくて…その、ごめんなさい。もうしません!」

 

すすり泣きながらキチンと理由を説明してくれる二人。

私は、彼と頷きあってから、二人の子供の頭に手を回す。

それから、ウェーナーと、ルイーサの顔をそれぞれ見つめて、抱きしめた。

 

「よく謝れたわね。偉いわ、二人とも。

そ。人を騙してでも欲しいって気持ちはわかるけど、本当にしたらダメ。最初はいいかもしれないけど、その内誰からも相手にされなくなっちゃうわ。そうなったら嫌でしょう?

だからお母さんとお父さんは怒ったの」

 

そう言って、泣きじゃくる二人の頭を撫でてあげた。

 

「うんうん。大丈夫、大丈夫よ」

 

 

 

 

一通り泣き終えると、小さく嗚咽をこぼす二人が口を開く。

 

「もう、怒ってない?」

 

「えぇ、怒ってないわ」

 

「父さんも?」

 

「うん。父さんも」

 

私たちの気持ちを知ると、次第に顔が明るくなっていった。

すっかり鼻をすする音も聞こえなくなって、二人が完全に泣き止んだことを確認して立ちあがる。

 

「さて!それじゃあ防具屋さんに行くわよ!」

 

「「え!?」」

 

「どうしたのよ。今日は元々そのつもりで来たんでしょ?」

 

「で、でも…」

 

「私たち悪いことしちゃったし…」

 

「何言ってるのよ。ちゃんと自分達が悪かったってこと、分かったんでしょ?それに、もうしないって反省もしたんだし、何も問題ないじゃない。

ね、あなた?」

 

「うん。

でも、次は無いからね?忘れないように」

 

言い終えて、私がルイーサの手を。彼がウェーナーの手を握る。

それから防具屋さんの方まで引っ張り気味に歩いていくと、困惑してた二人の顔に笑顔が現れてくる。

 

「ねぇ父さん!僕ね、本当はたびびとの服が欲しかったんだ!」

 

「私、皮のドレス!」

 

「それなら大丈夫。お父さんとお母さんに任せて」

 

「あ!それとドラゴンキラー!」

 

「キトンシールド!!」

 

「…それは、今後のあなた達次第ね。良い子に出来たら、考えてあげるわ」

 

「「やったーー!!」

 

私はルイーサと。彼はウェーナーと。そして、ルイーサはウェーナーと。手を繋いで陽気に歩く。

訪れる別れの日を、意識の外に追い出すように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be next story.

 

 

 





ゼシカにバブみを感じておぎゃりたい最高に尊い。
こんなはるか古の言葉がこれほど適合するキャラクターがいるでしょうかいないでしょういません(確信)

それではまた次回。最終回でお会いしましょう。
さよーならー
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