私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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どうも、お久し振りです。カピバラ番長です。
宣言通り、今回よりビーナスの涙編がスタートいたします。

………気が向いた時更新ですけど(ボソリ)

さて、それでは本編どうぞ。


第三章 ビーナスの涙編
寒空の下に積もる白と橙色の暖かさに満ちた部屋と


暖炉に明かりの灯る時期になってもう半月。

薪の弾ける音で耳が温まり、炎で体を暖める。そんな季節。

不意に窓の外を眺めようとしても結露してて端っこのちょっとした隙間からしか覗けないけど、たったそれだけしか見えなくても、私の心は弾むようだった。

 

「はい、ホットミルク」

 

「ありがとう、あなた」

 

ソファに座ってる私に一階から飲み物を持ってきてくれたのは私の旦那様。

世界を一緒に救って、今はお互いに助け合うーーううん、ちょっとだけ、私の方が助けられてる、そんな関係の愛しい人。

 

「外、まだまだ積もりそうだったよ」

 

「ホントに?

また起きるのが辛くなるわねぇ……」

 

マグカップを受け取って、隣に座る彼に愚痴をこぼしてしまう。

 

「だね。

もう少ししたらまた早起きするし、それまでに少しは落ち着いてくれるといいんだけど」

 

ため息を漏らして窓の外に想いを馳せる彼。

けど、ガラスが真っ白に曇ってるせいで届いてるかはわからない。

 

「でも……」

 

「ん、どうしたの?」

 

カップをテーブルに置いて私に向き直る。

どうしてか真剣な彼の瞳。

真っ直ぐに、私の眼を掴んで離さない。

 

「……こうやって、暖め合うことも出来るしね。寒いのも、悪いことばかりじゃない」

 

気が付けば、私は彼に抱き寄せられていた。

 

「…もう。ミルクがこぼれちゃうでしょ」

 

まだ半分以上残ってるホットミルクをテーブルに手探りで置いて、彼の背中に両手をまわす。

ほんのりと冷たい彼の衣服。

頬のあたってる肩の辺りは少しだけ湿ってて、火照る私の顔をちょっとずつ冷ましていく。

そうして感じる、僅かな魔力。

……これは、もしかして。

 

「それにほら。

イタズラだって、季節があるか……!?」

 

楽しげに微笑む彼の顔が一瞬にして蒼白に変わる。

離れていくお互いの身体。胸元にはまだ彼の温もりが残っているけれど、私に笑顔をくれるのはもう少しだけイジワルな想い。

 

「残念。元魔法使いを舐めないでよね?」

 

「う、くぅ……。背中が……」

 

背中に両手を回して異物を取り除こうと弄る彼。

こういう時って、もがけばもがくほど取れないのよね。

 

「おおかた、外の雪を少し拾ってきてヒャド系の魔力で保ってたんでしょうけどおあいにく様。抱き合った時にぜーんぶお見通しよ」

 

ふしぎなおどりを踊ってる彼は驚いたような表情で私を見る。

ふふ、私のことを騙そうとするなんて百年早いわ。

 

「うぅ…全部溶けた……」

 

踊りをやめた彼は両肩を落として項垂れた。

微かに見えた服の背中部分には、小さなシミが出来ていた。

 

「上手くいってると思ったんだけどなぁ」

 

「ま、上手くいったらいったで踊ってもらったけどね」

 

「……冷たい?」

 

「あったかいかも」

 

「……失敗してよかった」

 

怯えた表情で私を見つつ、彼は安堵のため息を漏らす。

そこは当然私だもの。やられっぱなしにしておくわけがない。

どうにか外に出てもらって、呪文を使ったダンスをしてもらったはずだわ。

 

「さてと、そろそろ夕飯の準備でもしましょうか。

ふふ、今日はご馳走よ?」

 

そんなもしものことを考えながら、身体を伸ばしてから振り返り、右手を差し出す。

それを見ると、微笑みに変わった彼が手を握ってくれた。

 

「そっか。今日はクリスマスイヴか」

 

「えぇ、そうよ。

……二人が居なくなってから初めての、ね」

 

「プレゼント、届いてるといいね」

 

ウェーナーとルイーサのことを思い出してほんのり苦しくなる胸の奥。

本当は手渡ししたかったけれど、こればかりは仕方ない。

三日前に届いた手紙で居場所は分かっていても、着いた時に二人がそこに居てくれるとは限らないのだから。

でも、こういう時だからこそできることがある。

それは、サプライズ。

手紙が来た直ぐ後にその宿屋に飛んで、クリスマスのプレゼントを渡してもらえるようにお願いして来た。

こうすれば、本当にサンタさんが来てくれたみたいになって、二人に凄く喜んでもらえる。…はず。

まぁ、タイミング悪く、今日出発……ってなった場合は後でプレゼントを回収しに行って、先回りして二人に渡すことになるんだけどね。

それはそれで再会できるから悪くはないんだけど、どうせなら今日受け取って欲しい。

先回りして会う、なんて、しようと思えばいつでもできるもの。

 

「えぇ。本当に」

 

小さくため息をこぼしてドアを開く。

いけないわ。今日は年に一度の特別な日だもの。ため息なんてこぼしてたらバチが当たる。

 

「さ、行きましょうか。あなた」

 

ちょっとだけ頑張って笑顔を作り、もう一度彼に振り返る。

 

「…うん」

 

変わらず笑顔で頷いてくれた彼と一緒に、リビングへと続く階段へと脚を伸ばす。

……でも、寝室から離れれば離れるほど恐ろしいくらいに寒くて、一階についてもとてもじゃないけど料理なんてできなかった。

夕飯の支度を始めたのはキッチンとリビングが暖まった約一時間後。

それまでは彼と身体を寄せ合いながら、二杯目のホットミルクをすすっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、静かな夜が訪れた。

寂し気だったお腹は満たされ、地獄のような入浴を乗り越え、やっと帰ってきた寝室。

もう、冷え切ってしまっていたミルクに小さなメラを落として温め直し、ひんやりとした布団の中に彼と両足を忍ばせる。

身震いを覚えるのは一瞬の事。

直ぐに、彼と私の体温で快適な温度に変わった。

 

「ねぇ、あなた」

 

「なに?ゼシカ」

 

温め直したミルクを口に含んでいた彼の肩に頭を預けて呼んでみる。

まだまだ暖炉の火で暖まりきらない部屋の中で冷えていた頬に感じる心地のいい熱。

思わず、顔が緩んでしまう。

 

「明日、どこかに出かけましょうよ」

 

「いいね。どこに行こうか」

 

「そうねぇ……。

アスカンタとかどうかしら。映画館もあるし、楽しめそうじゃない?」

 

「うん、いいかも。

いま、何やってるかな」

 

「それは……明日までのお楽しみって感じかしらね」

 

「あはは。確かに」

 

彼の笑みにつられて小さく笑い、手にしていたホットミルクを近くの机に置いて彼の身体を抱きしめる。

 

「……あなた」

 

「ん?」

 

僅かに火照る頬を今度は彼の頬にくっつけて冷まそうとする。

けれど、熱は少しも引く様子はない。

 

「私、そろそろ横になりたいんだけど、あなたはどう?」

 

摺り寄せていた頬を離し、彼の視界に私が映るよう、身体を動かす。

 

「……そうだね。僕も、横になりたかったんだ」

 

「よかった」

 

持ったままだったマグカップを机に置いた彼を、私は身体を重ねるように押し倒し、寒くないように布団をかぶった。

 

「ふふ、真っ暗ね」

 

「うん。何も見えない」

 

「…じゃあ、何をしてもわからない?」

 

「かもね。

勿論、何をされるのかもわからないけど、平気?」

 

「えぇ。あなたになら」

 

小さな微笑みが、作られた暗闇の中で消えていく。

それから、ゆっくりと身体を降ろして、柔らかな空間に唇を押し当てた。

足元から流れ込んでくる、刺すような冷気。

いつもならすぐに足を引っ込めて暖かな避難所へと逃げるところだけど……。

今は、とっても気持ちいい。

ふふ、こんなに身体が暖かいんじゃ、暖炉はいらなかったかもね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

to be next story.

 

 




あ^~やっぱかわいいっすねぇ。
すこすこのすこ。
結婚したい。でも現実にはいない……。
あぁ、無情。

ではでは、またそのうちにお会いいたしましょう。
さよーならー

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