やっぱ可愛いですねゼシカ。めっちゃ好き。
今回のお話はウェーナーとルイーサが旅立った後です。
クラン・スピネル編のあとですね。
では、どぞ。
二人が旅立ってから、どのくらい経ったんだろう。
ふと、そんなことが気になった。
「えーっと…やだ、もう三週間も経ってるの!?」
想像してた以上の月日の流れに目を見開いてしまう。
最初は辛くて寂しくて悲しくて…でも、誇らしかった旅立ちだったけど、一日、また一日と日が経つにつれてそんな感情はどんどん薄くなっていった。
今あるのは、怪我してないかな?とか、他の人に迷惑かけてないわよね?とか、とにかく不安な思いばっかり。
…けど、二人とも元気過ぎるくらい元気だってことがこの手紙からは伝わってきて、少しだけ安心してる。
「全く。もうパルミドに着くなんてね」
あんなに危なっかしい町、出来ることなら一生行って欲しくなかったけど…
でも、今あの辺りにはゲルダさんとヤンガスたちが住んでるし、多分大丈夫。
いつ届くかは分からないけど、念のために後でゲルダさんに手紙も書いておこうかしら。間に合ったら、私たちの時みたいに何かを盗まれる、なんてことはきっと無くなるはずだし。
「…はず、よねぇ」
ソファに寝転がって天井を見上げても、この不安な気持ちが晴れるわけじゃない。それどころか、気休めにもならないみたい。
「うーーん!!!心配よねぇ〜……」
手すりに膝をかけてパタパタと動かして気を紛らわせようとしても、やっぱり不安は消えてくれそうにない。
「…こうなったら」
身体を起こして座りなおし、壁に掛けてあるカレンダーを確認する。
幸い明日から何日かは彼が休みだし、多分問題ないはず。
「そうすると、それっぽい服を見繕わないといけないわよね…」
パルミドで着ててもおかしくない服って持ってたかしら?
「ま、それはあの人が帰ってきてからでいっか。今の私だと、焦り過ぎて変なの選んじゃいそうだし」
それより、あのバッグはどこにしまったっけ。何日滞在するかわからないし一応ちゃんとしたのじゃないとダメよね?
「……ふふ」
……なんて、自分の決断力の速さに思わず笑ってしまった。
アレから少しは大人になったと思ってたけど、やっぱり全然みたい。
相変わらず、私はこうと思ったら行動しないといられないのね。
「待ってなさいよ、ウェーナー、ルイーサ!」
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賑やかなのに寂れた空気。
僅かに鼻を攻撃する異臭に、所構わず歩き回ったり、横になっている人々。
洗濯物を干すロープに止まっただけなのに、汚れて見える小鳥。
「……久しぶりに来たけど、相変わらずとんでもない町よね…」
「う、うん。旅でもしてないと来ないだろうね」
ため息を漏らしながら入り口近くにあるカジノの前を歩くのは私と彼。
『パルミドは心配だから二人を見に行きたい』
昨夜彼に伝え、返ってきたのは『僕も』と言う嬉しい言葉だった。
それからすぐに用意を終え、翌日…つまり、今日の朝早くにルーラして来たというわけ。
到着して一番最初にかけられた住民からの言葉が『ここを通りたければ金を払え』なんだから、来ることができて本当に良かったわ。
「それにしても、よくこんな服があったわね」
そう言って、今彼が着ているヨレヨレの布の服に改めて驚く。
彼は昔から綺麗に整頓するタイプの人だったから、まさかこんなにパルミドに適した服を準備できるとは思っていなかった。
「僕も驚いたよ。まさか、旅を始めた頃の服が残ってるなんて思いもしなかった」
「あー、なるほど。通りでヨレヨレなのね」
彼の説明に納得しつつ、慣れない髪をいじる。
バレないように後を付けるのが前提なわけだけど、もしもの時を考えて、私は髪を下ろして、彼はバンダナを取って、ボサボサにばらけさせた。
驚いた事に、髪がボサついてても女性らしく見えるらしく『悪くないね…』なんて、彼が呟いてた。
嬉しいようなそうじゃ無いような、ちょっと複雑な気持ち。
「さて。まずは二人を探さないとだけど…」
辺りを見回してウェーナーとルイーサの影を探す。
けど、所狭しと家屋が密集してるパルミドだと視界が悪くて見つけられそうにない。
「あなた。そこの見張り台から探してみない?」
「だね。あそこなら見つけやすいかも。
それに、うっかり遭遇、なんてこともないだろうし」
頷いた彼と、少し周りを気にしながら見張り台の方へと向かう。
探してる途中で二人に見つかったら大変だしね。
「……そういえば、これってハシゴだったわね」
到着して見張り台の頂上を見上げ、ため息がこぼれる。
「先に登った方がいい?」
「ううん。あなたにだったら構わないから、私が先に登るわ」
この町じゃいつ何時誰に覗かれるか分かったものじゃない。あの時はズボンタイプの装備があったから良かったけど、今は丈が長めのヨレた皮のドレスだけ。とてもじゃないけど、下に安心できる人がいないのに登る気にはなれない。
「ホント、スカートが長めで良かったわ。これで短かったら悲惨だもの」
「あはは。誰かに見られる心配しないで済むから良かったよ」
二人で笑い合いながらハシゴに手を掛ける。
すると、風に乗った魔力の余波を微かに感じた。
「ルーラ、かしら」
「うん、多分。入口の方だ」
ハシゴから手を離して、隠れるようにして入口の方を覗く。
ちょっとしてから現れる、二つの影。
その正体は、私も彼もよく知っている人物だった
「「(ウェーナーとルイーサ!!)」」
どこからか帰ってきた後らしい二人の服は薄汚れてて、見える地肌には小さな傷がいくつか見える。
駆け出したくなる気持ちをグッと抑えて、真っ直ぐに進んでいったあの子達の後を追う。
「(何か、持ってるね)」
「(卵……かしら?)」
ウェーナーが小脇に抱えた、子供の頭くらいの大きさの白っぽい何か。多分、動物か魔物の卵だわ。
「(どこに持っていくのかしら)」
「(この方向だと……酒場、かな?)」
コソコソと物陰に隠れながら後をつけ、着いた先は彼の予想した通り酒場だった。
二人が扉をくぐった後、少し待ってから中に入る。
蝶番を軋ませながら閉じられていくのは宿屋側の扉。やっぱり、同じように待ってから中を覗く。
「いらっしゃ……どうかしたかい?」
「あ、いえ、ちょっと…」
カウンターにいる受付人に不審げに訪ねられるけど、事情を説明するわけにもいかない。彼と一緒に愛想笑いを見せながらそそくさと階段を登っていった。
……なんだか、ドロボウみたいで落ち着かない……。
「(ええっと……?)」
「(あ、あそこ)」
二人の後ろ姿が屋上へと登る階段に消えていく。
こんなところからどこかに行けたっけ?
「(ねぇ、ゼシカ。もしかしてだけど)」
悩んでる私の耳元に彼の不安げな声が届く。
「(もしかしてだけど、あの子達、情報屋の所に行きたいのかな?)」
「(……まさか。
確かにこの街はややこしいけど、一度行ったことがあるなら間違えないんじゃ…)」
「(…………だって、僕たちの子供だよ?)」
「(うっ…)」
彼に言われ、何も言えなくなってしまう。
正直な話、旅の途中で私と彼は何度も道に迷ったりしていた。
特に、サザンビークのお城の中を見て回っていた時が酷くて、魔法の鏡が保管されてる宝物庫に着くのに二時間くらいかかった。
ヤンガスの鼻は効きすぎて壁の向こう側のとか、そもそも別の宝物とかに行き当たるし、ククールは面白がって何にも言わないしで大変だったのを今でも覚えてる。
「(……そうね。もう少しここで様子を見てみましょうか)」
「(うん)」
彼と頷き合い、辺りを見回してからそこで少しの間待った。
およそ十分後。
階段を降りてくる足音が聞こえてきた。
多分、二人分の音だ。
「……この感じだと、上で迷ったみたいね」
なんとなく微笑ましい気持ちになりながら彼と頷く。
思ってた通り、二人は場所を間違えたみたいだ。
「(っと、それよりゼシカ。ここから少し離れよう)」
「(それもそうね)」
彼について行き階段から距離を取ると、一分もしないうちに人影が現れる。
思った通り、ウェーナーとルイーサだ。
……けど、さっきとは何かが違うように見える。
「(……卵、持ってないね)」
「(ホントだ。あれ?じゃあ、ここから情報屋のところに行けたの?)」
彼の指差す先を見ると、確かにウェーナーが抱えていた大きな卵がなくなっている。
私達の記憶が正しければ宿屋の屋上からは情報屋のところには行けない。なのに、依頼されてるはずの卵が無いって事は……
「(そもそも、情報屋の依頼じゃなかった……?)」
「(のかもしれないね。僕達のただの早とちりだったのかも)」
「(そ、そっか…)」
言われてみればそうだ。
あの子たちが情報屋の依頼で【魔物か動物の卵を取ってきてくれ】と頼んだなんて話は誰からも聞いてない。
私達が、この町ならあの人しか依頼しないって勝手に思っただけだわ。
「あ、あはは。なんだ、そうだったのね」
さっきまでの微笑みが嘘のように引っ込んでいく。
代わりに出てきたのは、見守ってたつもりがただの勘違いだったっていう、恥ずかしさ。
ちょっと考えれば気がついたかもしれないのに。
あの子たちのことを信用していなかったわけでは決して無いけれど、やっぱりどうしても心配になってしまう…
だから思い込んでしまったのかも。
「でも、良かった。二人が他の人に助けを求めてもらえるくらい立派になってて」
「……そうね。ちょっとだけ怖かったけど、余計な心配だったみたいね」
依頼の達成を喜んでいるのか、階段から降りた少し先で興奮気味に会話を交わす私達の子供。
二人とも凄く良い顔で笑って、一階まで降りていく。
「………あなた、行きましょうか」
「だね。
屋上から?」
「そうね。ここまで来て鉢合わせたら台無しだし」
「分かった」
彼の手を握り、ウェーナーとルイーサが降りてきた屋上への階段を登る。
登り切った先から見える場所には、大切そうに卵を抱える女の子と、母親らしき女性がいた。
「多分、あの人ね」
「うん。嬉しそうだ」
彼女たちを一瞥して彼と頷き合う。
次の瞬間には、地面に足はついてなくて、気がつけば家の前にいた。
「それじゃ、ちょっと遅いけどお昼にしましょうか。
今日はあの子たちが好きだったご飯にする?」
玄関を開け、中へ入りながら提案すると、彼はにこりと微笑んで頷いた。
To be next story.
ゼシカ好き。結婚する(鋼の意思)(届かぬ想い)
次回はいつになるかわかりませんが、多分投稿します。
それではまた次回。さよーならー