私と旦那様と祝福された純白の日々   作:カピバラ@番長

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お久しぶりです。
気がむいたので投稿します。
めっちゃ短いです

どぞ


今はただ、静かに

 

 夢を、見てる。

頭が変にすっきりしてるからか、はっきり分かる。

……分かってしまう。

 

 「どうしたんだ、ゼシカ」

 

今ではもう遠い昔の記憶。

リーザス村からリーザス像の塔に向かう道を歩いてる時の記憶。

格好は…当然のようにあの頃の普段着で。

でも、隣にいるのはあの人じゃない。

 

 「ううん。何でもない。サーベルト兄さん」

 

 「そうか?ならいいんだけど」

 

 「……うん、何でもないの」

 

誇らしくてかっこいいけど少しだけキライだった鎧の擦れる音に紛れて聞こえるサーベルト兄さんの声。

優しくて、強くて、安心できる、あの、声。

 

 「ねぇ、サーベルト兄さん。少し、お話しない?」

 

 「話?」

 

 「そ。話。なんでもいいの。村の事とか、トラペッタの事とか。何だったら、村の中を走り回ってる犬の事でも何でも」

 

 「急に変な事を言うな。何かあったのか?」

 

 「ううん。別にそういう訳じゃないけど、ただ何となく、ね」

 

 「……?まぁいいけどさ」

 

近いようで遠かったリーザス像の塔までの道。それが終わったら、この夢はきっと終わり。

理由はないけど、確信してる。

だから、今のうちに沢山話をしたい。

日常だったあの頃をもう一度感じたい。

例えそれが私の造り出した幻影だったとしても、今は甘えさせて欲しい。

 

 「………そうだなぁ。ならそうだ。ゼシカの旦那の事でも話してみるか?」

 

 「え、えぇ!?」

 

 「いいだろ?お前だってそろそろそういう歳だ。計画は早いうちに立てておいた方がいい。なんていっても生涯の伴侶だからな」

 

 「そ、それはそうだけど!」

 

予想外な話題に思わず息が止まりそうになってしまう。

けど。

……けど。

 

 「…うん。悪く無いかも」

 

あの人の事を自慢できる最初で最後の機会かもしれない。

本当は少しだけ恥ずかしいけど、聞いてる人がいるわけじゃないし、いっそはっきり全部言ってしまおう。

……最近はあんまりそういう話題も出なくなっちゃったし。

 

 「意外だな。てっきり怒って先に行ってしまうものだと思っていたんだが」

 

 「私だって考えたことくらいあるわよ。ただ、そんな人いないと思ってただけで」

 

 「へぇ、是非聞かせて欲しいな」

 

 「勿論。サーベルト兄さんに負けないくらいいい人なんだから。嫉妬しても知らないからね?」

 

 「それは楽しみだ」

 

 「まず、すっごく強いの。それも世界中の人を助けられるくらい。なのにちょっと頼りないところがあって、けどそれがその人の優しさなの」

 

 「うん、それで?」

 

 「それでね……」

 

目の前にリーザス像の塔が見えてくる。

少しずつ、少しずつ近づいてくる。

あと少しだけ、この夢を見させて欲しい。

終わらないで欲しい、だなんて贅沢は言わない。もう少しだけ。後ほんの少しだけ。サーベルト兄さんと話がしたい。

それで、それで……。

 

 「それで、サーベルト兄さんはそんな人の事、どう思う?」

 

あの人の事をーー私の最愛の人の事を、どう思っているのか聞かせて欲しい。

一番最初に伝えたかった貴方に、私の愛してる人の事を『認める』って欲しい。

 

 「そうだな……」

 

塔の仕掛け門の少し手前で立ち止まって顔を顰めるサーベルト兄さん。

夢はきっともう終わり。

きっと……きっと、サーベルト兄さんの想いを聞く前に終わってしまう。

でも、だとしても。……お願いだから。

 

 「そんな人ならゼシカを……ーー」

 

そこで、サーベルト兄さんの声は聞こえなくなってしまう。

思っていた通りだけど、やっぱりショックな事には変わりない。

だけど。

だけど、もう一度。あの笑顔が見られたのだから。

これ以上望むのは、きっと我がままなんだと思う。

そう、思っていたら。

 

 「ーーと思うぞ。そんな人が本当にいるのなら」

 

ほんの少しだけ、サーベルト兄さんの声が聞こえた気がした。

 

         ーーーー        ーーーー

     

 夜明けは遠く、深淵を思わせる闇が世界を覆う時分。

ある部屋には薄く小さな柔らかい光が灯っている。

 

 「……ゼシカ?」

 

何かに気付き、目を覚ましたのは真なる意味での闇を払った、かつて勇者だった男。

 

 「………寝てる??」

 

彼の隣で安らかな寝息をたてている妻に対し、ふと、虫の知らせを覚え目を覚ましたようだ。

 

 ーー気のせい?

 

小首を傾げて不思議に思った彼は頭を軽くかきつつ、最愛の人が風邪を引く前にと毛布を掛けようとした。

そんな時に、彼は妻の目元に光る雫を見つける。

 

 ーーなんで……

 

疑問の中、旅の最中で見つけたどんな宝石よりも輝いて見えたそれは彼に一つの暖かな想像をさせる。

 

 「優しい、夢を見てるんだね」

 

近づいてみてみれば微笑みさえも浮かべている彼女。

彼はその微笑みが崩れぬように静かに毛布を掛けると、僅かに迷い、涙を拭かずに彼女を腕の中に収まるよう身を寄せる。

 

 「………大丈夫。その夢は、君が起きるまで僕が守るから」

 

決して力を込めず、けれど何人にも解けぬ堅さで、彼は少女を胸の内に抱いた。

そんな二人を薄い橙色の蝋燭が照らしている。

隣に飾られている、形見の鎧と共に。

 

 

 

 

 

 

end.





時にはセンチメンタルなお話でも。
という事で考えたこのお話。
実際、サーベルトが生きてたら二人の結婚の事を何と言ったんでしょうかね?
「ゼシカが認めたならいい」なのか「大事な妹を任せられるなら決闘だ!!」なのか。
主人公君は一応トロデーンの近衛兵ですし、曲がりなりにも(失礼)その王様にも認められている男ですから、ネームバリュー的には問題ない気はするんですけど、はてさて。

え、そもそもアニキが死んでなきゃゼシカ旅に出ないしダメなんじゃ、って?
嫌々、ラグサットとかいう馬鹿王子がいたし、アローザさんとも中悪かったしで遅かれ早かれ旅に出ていたと思いますよ。
そんで、トロデーンに寄った時に主人公と運命的な出会いを遂げ、ミーティア姫と天然かつまぁまぁ重たいラブコメを披露したと思います。

………ありだなぁ。


冗談はさておき、二億年ぶりくらいの話はこれで終わりです。
また何か思いついた時には書こうかと思います。
それこそ妄想力=ストーリーみたいな上のラブコメとか。
それではまたいつか。

さよーなら―

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