どすっ。
薄い腹に靴の爪先を、勢いをつけてめり込ませる――もう何度目になるだろうか。
東洋のカスバ=
事の発端=麻薬取引に必要な額の札束がぎっしり詰まったアタッシュケースを、仲間が目を離していたほんの僅かな隙を突かれ、貧相な子供に盗まれた。
幸いにも小さな盗人を迅速に発見・捕獲することはできたため損害は被らずに済んだが、
「目ェつけた相手が悪かったなクソガキ。ガキだろうが落とし前はキッチリつけさせてもらう」
誰かが言ったそんな理由から、盗人=少年の貧相で小さな
始めこそ激しく怒りをぶつけていた同僚たちもそのあまりの無反応さに困惑しだし――そして、一貫して無反応/無抵抗な少年を未だ執拗に嬲り続ける自分を畏怖の目で見てくる。
どすっ。
さらに一撃――咥えていた煙草の灰が落ちた。
蹴られた勢いで仰向けになる少年=痩せ衰えた野良犬のような躯に痛々しい無数の痣――この1時間でできたもの/元からあったもの=半々――日常的に暴力に晒されていたのだろうか。
咥えていた煙草を床に吐き捨てる/靴の裏で擦り消す――スラックスのポケットからピースの箱を取り出し何本目になるかわからない煙草に着火/苛立ちと共に白煙を吐息。
恐ろしくつまらない。
苦痛への耐性/希薄すぎる感情――何より一番気に入らないのが、この、何の色もない茫洋とした目だ。
年端もいかない子供が生に頓着していないという事実=生きようという意志が全くない、濁った汚らしい目――自分がこの世で一等嫌悪し、侮蔑するものが目の前にある。
鼻血と埃で汚れた服の胸ぐらを掴む/無理矢理引き起こす。少年=無抵抗――まるで手を抜かれた
「おい」
――沈黙。
「お前のその口は飾りか?」
――沈黙。
「野良犬ならそれらしく"
――依然、沈黙。かと思いきや、
「……――――よ」
「あン?」
蚊の羽音の方がまだデカいんじゃなかろうかと思えるほど小さな声――耳を寄せる。
「殺して、いいよ」
耳に飛び込んできた掠れ声――まるで道端に落ちているゴミについて気紛れに言及した程度の無関心さ。
なんだと貴様――理不尽な苛立ちが横暴な怒りへと変換。
「……いいだろう」返答=不機嫌に唸る黒豹のように。「今からやることにべそかかず命乞いもしなかったら、そしたら殺してやる」
ふつふつと煮えたぎる怒り=絶対に命乞いをさせてやる――まだ10年そこらしか生きていない子供が生への執着を捨てることがどれほど愚かしいことか、身をもって理解させてやる。
そのために分析/考察――躯の痣から日常的に殴る蹴る等の単純な暴力を受けている様子/しかし
ポケットから取り出した安物のナイフ――それを捉えた少年目が若干ながら恐怖の色を滲ませたことで確信を得る。
やはり
柔らかな左の口角に切っ先を添え――力を込めた。
「い゙っ――」
ぶちん。
「あ、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」
ぶつん。ぐちゃっ。ぶちぶちっ。
少年=絶叫/悶絶/痙攣――その頭部を靴の裏で踏みつけ固定/切れ味の悪いナイフを鋸のように前後へ動かしながら、口輪筋→頬筋へと徐々に頬を切り裂いていく。
「ア゙ア゙ア゙、い゙、ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
狭い部屋の中に充満する悲鳴/見開かれた目/ボロボロと零れ落ちる大粒の涙/同僚の誰かが呻く声――全てを意に介さず続行。
「や、だ……!いた、い……いたい……!」
面白いくらいに仰け反り暴れる細い躯を体格差と体重で押え込む=枯れ枝のような脚が虚しく空を搔く。
やがて刃が左耳へ到達――だらしなく垂れる頬肉=真っ赤に染まった口腔内が丸見え。
口内に流れ込んだ自分の血で
そこから左側と同じように、筋繊維をじわじわと裂いていく――ぶちっ。ぶつぶつ。ぶちん――耳を
「お、おい。そこまでしろとは――」
「元はお前がやり出したことだろうが」口を出そうとしてきた同僚を