カンピオーネ! 魔刃の王の物語   作:一日

1 / 44
 オリ主がオリ権能で原作に絡んだりしてく話です。原作は読んでいるものとしてある程度はしょりながら進めていこうと思っています。


第一章 日ノ本の魔王たち
第一話 魔王邂逅す


 ここはイタリア、かつてはアウグスティヌス帝が宮殿を構えたその跡地である。時刻はすでに深夜0時を回っており、昼間ならともかくこの時間では人はいない、はずだ。しかし、横倒しになった石柱群に囲まれた空地に人影が三つあった。

 

 「はじめまして。草薙護堂、お会いできて光栄ですよ」

 

 そういって挨拶をするのは『紫の騎士』。中世のテンプル騎士団をルーツにもつ結社の一つ、『百合の都』に所属する人間だ。

 あいさつを受けたのは、草薙護堂という名の少年。今この場にいる唯一の日本人だ。本来彼はこの場にいるような人間ではないのだが、神殺しという偉業を成し遂げたがゆえに彼は魔術師たちから畏敬の念を受ける存在となったのだ。

 

 「草薙護堂です。いろいろと馬鹿げた体質にはなっていますが、みなさんに恐れ入ってもらえるほどの人間じゃありません。どうか普通に相手をしてください」

 

 「……ご謙遜をおっしゃる。今のお言葉だけでも、あなたが只者ではないとう証明になりますな。そのイタリア語、普通に習い覚えたものではありますまい?」

 

 「左様。それは『千の言語』━長年魔術を学び、言霊の奥義を悟った達人のみが会得する秘術です。あなたほどのお年で使いこなす者は、なかなかおりません」

 

 老人二人が口々に言う。この二人はそれぞれ魔術結社『雌狼』と『老貴婦人』の総帥だ。

 

 護堂はカンピオーネとやらになって以来、外国人との交流で困った経験は少ない。三日も一緒に過ごしていると、相手の言葉を自然と聞き分け、会話できるようになるのだ。 

 便利だが無茶苦茶な能力だと思っていたが、そんなタネがあったとは……。

 返答に詰まっていると、隣でエリカが高らかに言い放った。

 

 「さあ、役者もそろったことだし、そろそろ始めましょう。『紫の騎士』殿、立会人をお願いできるかしら?」

 

 「待てエリカ、俺は何も話を聞いてないぞ!」

 

 一体何を始めるというのだ!? 猛烈な不安感に駆られた護堂が叫ぶ。エリカには何度もはぐらかされてしまったが、他の魔術師たちがいる今の状況なら話を聞けるはず。そう護堂は判断した。

 

 「……二か月前我々はゴルゴネイオンなる神具を入手しました。これは古き地母の徴で、不朽不滅なる物体。そして何よりも厄介なのは、おそらくはこれを狙ってまつろわぬ神が現れることです」

 

 まつろわぬ神。神話に語られる神々が神話より抜け出し、現世に現れた存在だ。彼らは神であるがゆえに人に関心など持たないが、ただそこにあるだけで人に災厄をもたらす。炎の神が現れればあたりは火の海となり、戦の神が現れれば争いが起きる。それこそが彼らの生業なのだから当然のことなのだが。そしてまつろわぬ神に対抗できるのは、魔術師ではない。同じ神か、神殺し━カンピオーネのみである。

 

 『紫の騎士』の言葉を引き継いでエリカが語る。

 

 「そして残念なことに本来私たちが頼るべきサルバトーレ卿はあなたとの戦いの影響で療養中。そして他のカンピオーネとはつながりがないか、つながりがあっても状況を悪化させそうな人物しかいないの。そこで私『赤銅黒十字』とつながりがあって、徒に状況を悪化させそうもない護堂に白羽の矢が立ったの」

 

 あなた、という言葉がやけに強調されて聞こえたのは護堂の気のせいではないだろう。こういえば、お人よしの護堂は負い目から拒否しづらくなる、それを計算しての言い方だ。

 

 「しかし我々としては、あなたがゴルゴネイオンを託すに値する人物なのか、そもそも本当にカンピオーネなのかを確認したいと考えています。それを確認するためにエリカ嬢との決闘をしていただきたい」

 

 「決闘ですって!? 俺とエリカが!?」

 『老貴婦人』の総帥の言葉に、護堂が驚愕する。

 

 「なるほど。『紅い悪魔(ディアボロ・ロッソ)』が相手なら魔王の力を試すには十分だだろうな。しかし、その必要性はない」

 

 その声に護堂たちは振り向いた。声が聞こえるまで誰もそこに人がいるとは思っていなかったからだ。

 

 横倒しになった脊柱に腰かけ、壁に背を預けている男がそこにはいた。180はありそうな背丈に、引き締まった体。服装はGパンとTシャツにジャケットを羽織ったラフなものだ。そして、何より目を引くのがその顔につけられた仮面だろう。狐を模したその仮面は明らかに和の雰囲気を感じさせる。

 

 「紅い悪魔(ディアボロ・ロッソ)』と魔王と思しき人間の組み合わせ……不穏な気配を感じて後を尾けていて正解だったようだ。よもや東京にまつろわぬ神を呼びよせようとしているとはね」

 

 尾行されていた━大騎士たるエリカと野獣じみた直観を持つ護堂の二人に気づかれずに。更には誰にも気づかれずにこの場に現れた手並み。この地球上で一体どれだけの人間が為しえるか━エリカは警戒レベルを最大に引き上げた。

 

 「あなたは日本の━正史編纂委員会の方ですか?」

 

 日本には欧州のように魔術結社が存在しない代わりに、政府直轄の正史編纂委員会が呪術に係わることを取り仕切っている。

 

 「ふむ、まぁ係わりがないこともないが…正式に所属しているわけではないな。だがまぁ、日本の代表者として扱ってくれて構わんよ。どうせこの場には私しかいないからね」

 

 曖昧な言い方だが、日本の関係者であることは間違いないようだ。日本の、それも首都たる東京に神具を持ち込む今回のたくらみ、易々と頷いてはくれないだろう。

 

 「さて、とりあえず日本の代表者としての意見だが…それを持ち込むことはとても受け入れられんなぁ。草薙護堂氏が無人島にでも引きこもってくれるなら話は別だが……見たところ学生のようだ。そういう訳にはいかんだろう?」

 

 「う……でも、さすがに日本まで持っていけば神様だってやって来れないんじゃ━」

 

 「君とて神殺しならば神々のでたらめさわかっているはずだ。私はとてもその危険な賭けに乗る気にならんな」

 

 護堂が言いきらぬうちに、男が言い放つ。その無礼さを見咎めたのか、『紫の騎士』が眉をひそめる。

 

 「卿よ、カンピオーネに対してその態度、あまりに無礼ではないのですか?」

 

 「確かに私が単なる魔術師であればそうだろうな。だが、私も神殺し(・・・)でね。彼とは同格なんだよ」

 

 「神殺し? 馬鹿な!? 日本のカンピオーネは草薙護堂一人のはずだ!」

 

 「確かにそう簡単には信じられんだろうな。ふむ……いいことを思いついたぞ」

 

 男の顔は仮面で見えないが、想像はできる。間違いなく彼は、不敵な笑みを浮かべているはずだ。

 

 「賭けをしようじゃないか。エリカ嬢に代わり、私が草薙護堂氏と戦う。そして勝った方がゴルゴネイオンの処遇を決める。これならば、私と草薙護堂氏の実力も確認できる。ルールは2時間以内に私の仮面を壊すこと。これができれば私の敗北を認めよう。いかがかな草薙護堂君?」

 

 「ふざけるな! 誰が決闘なんてするか! 話し合いとかもっと穏便な方法で━」

 

 「残念だがこれが話し合いの結果だよ。私と彼らとの意見は平行線。ならば、賭けをもって結果を出す。これが最も後腐れがないと思うが?」

 

 護堂が顔をしかめる。代替案を思いつかないからだ。それに、どちらにせよエリカかこの男のどちらかと戦う羽目になりそうだ。それなら、見知ったエリカよりもこちらの男の方が戦いやすい━

 

 「その勝負、受けましょう」

 

 護堂はそう判断した。

 

 

 「納得が速くて助かるよ。だが、さすがは神殺し。見事なまでの前言撤回ぶりだ。それでは騎士の方々! 立会人をお願いする」

 

 護堂が何か言いかけたが、有無を言わさず話を進める。

 

 「わかりました。私が立会人を勤めましょう」

 

 『紫の騎士』が一歩前に出る

 

 それを横目に男は護堂の正面、5m程度離れた所に立つ。

 

 「それではご両人、再度ルールを確認します。二時間以内に仮面を壊せれば草薙護堂氏の勝ち。そして勝った方がゴルゴネイオンの処遇を決める。異存はございませんか?」

 

 二人が同時に頷く。それを確認して、『紫の騎士』は手を掲げた。

 

 「お二人の御武運をお祈りします。━始めよ!」

 

 言葉とともに『紫の騎士』の手が振り下ろされる。

 

 「立花 榊(たちばな さかき)、いざ推参(おしてまいる)

 

 護堂が気づいた時には、男が目の前にいた。




2013/07/28 一部表現及び誤字修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。