カンピオーネ! 魔刃の王の物語   作:一日

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ついに、第三の権能の神の名前が明かされます。


第四話 鋼の名

 ヴォバン侯爵の呼ぶ『狼』たちは、駆逐した。新たに呼び出したところで、どうにでも対処できる。これは、ヴォバン侯爵にもわかっているはずだ。恐らくは次の権能を使ってくるはずだ。

 

 「我が下僕は『狼』だけではないぞ」

 

 やはり。闇から現れるは『狼』ではなく『死人』。かつて侯爵によって命を奪われ、今もなお使役され続ける存在。

 

 『狼』にしたように銃撃を加えるが、大半は剣によって弾かれ、当たったとしてもさしたるダメージを与えることができていない。徐々に彼我の距離が縮まっていく。

 

 「汝が冷たきを以て我が敵を止めよ、『(イーサ)』!」

 

 護堂たちの方へ向かおうとしている『従僕』を優先的に、打ち抜き凍てつかせて動きを止める。

 

 このまま攻められ続けるのは性に合わない。榊は反撃に出ることを決意する。

 

 「エリカ! 護堂! 自分の身は自分で守れよ!」

 

 一声かけて、神速を発動する。

 

 「ぬ!」

 

 侯爵までの直線状の敵の頭を蹴り砕きつつ、侯爵へと空中を駆け抜ける。

 

 侯爵の首めがけて蹴りを放つが、獣じみた反応で躱された。

 

 着地してすぐさま振り向き、侯爵をにらみつける。

 

 「俺の蹴りがぶれたのは……気のせいじゃなさそうだな」

 

 その証拠に、置き土産代わりに放った弾丸もそらされている。侯爵の権能でこの現象を起こせそうな権能は……

 

 「『疾風怒涛(シュトルム・ウント・ドランク)』━」

 

 反射的に弾丸を放つ。弾丸に刻んだルーンは『防御(エイワズ)』。イチイの木を意味することもあるルーン。

 

 弾丸から光の木が芽吹き、主を護る盾と化す。その直後に、雷が直撃する。

 

 その隙に移動を開始するも、雷に行く手を阻まれる。神速と『防御(エイワズ)』を駆使して雷を躱しつつ接近を試みるも、上手く行かない。

 

 エリカたちの方を見れば、『狼』や『従僕』の相手で手一杯の様子。まだまだこの戦いも終わりそうにない。

 

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 リリアナは付近の建物から、戦場を眺めていた。エリカの相手をすることも考えたが、カンピオーネ同士の戦場などという何が起こるか分からないところで戦うことは控えたためだ。どうせ、ヴォバン侯爵もリリアナの助太刀など必要としていない。また、日本のカンピオーネ二人の権能にはまだ謎が多いため、それを調べるという目的もある。

 

 榊が神速の権能を行使した瞬間、リリアナに霊視が舞い降りる。

 

 「速き足で勇壮なる兵と共に戦場を駆け抜けた神……巨大な木馬……」

 

 霊視が終わったところで、得られた情報と既存の情報を整理していく。

 

 「巨大な木馬か。あの御方はトルコで神を弑逆されたとの事だったな。と、なればやはりトロイの木馬か」

 

 トロイの木馬によって攻め落とされた都市トロイアは現在のトルコ北西部に位置している。

 

 「トロイア戦争の参加者で神速の持ち主……木馬からすれば『疾き足のオデュッセウス』か?」

 

 躱すことが出来たの偶然だった。

 

 雷光により一瞬だけ見えた影に反応して、大きく横へと飛ぶ。

 

 視界に移るのは古代の鎧を着込んだ戦士。まさしく、トロイア戦争の時代に使われていた鎧だ。先ほどの霊視の影響なのか、神速を得る権能によって生み出された存在なのだと気づく。

 

 「神速だけではないのか」

 

 確かに黒王子(ブラックプリンス)アレクの所有する権能『電光石火(ブラックライトニング)』も、神速だけでなく、雷の姿となることでその性質を得ることも出来ると聞く。同じく立花榊の権能も単純に神速を得るだけではないということだろう。

 

 校庭の方を見れば、同じ姿をした戦士が次々と『狼』や『従僕』を蹴散らしている。あの戦闘力を見る限り易々とは勝てそうにない。

 

 リリアナは武器を構えて、死闘の覚悟を決める。

 

 戦士と相対して脳裏に浮かぶのは、蟻のイメージ。だが、これでこの権能の元となった神の名を確信する。

 

 「『疾き足のアキレウス』!」

 

 後に、賢人議会はこう名づける。『勇壮なる神兵(ブレイブ・ミュルミドネス)』と。

 

 

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 護堂もいい加減じれていた。

 

 『雄牛』の力で、『狼』や『従僕』の相手をしているが、そう長くは持たない。『狼』はともかくとして、『従僕』にはやはり手こずってしまう。

 

 丁度、ヴォバン侯爵の意識は榊へと向けられている。今のうちに大技を一撃くれてやるとしよう。

 

 「━我がもとに来たれ、勝利のために。不死の太陽よ、我がために輝ける駿馬を遣わし給え。俊足にして霊妙なる馬よ、汝の主たる光輪を疾く運べ!」

 

 ウルスラグナ第三の化身。太陽の象徴たる『白馬』を天より招来するための呪文。

 

 それを護堂は、高らかに呼ばわった。

 

 「む? 太陽━天の焔、だと……?」

 

 ヴォバンの視線がそれた隙に、榊は巻き込まれぬように距離を取る。

 

 天より降る白いフレア。

 

 鋼鉄さドロドロに融解・蒸発させる超々高熱の塊が地上に迫る。

 

 この瞬間、『狼』の群れが消えた。

 

 「……え?」

 

 と裕理がつぶやき、護堂も驚愕した。

 

 ヴォバンの姿形が変わったからだ。人の形から、銀の体毛を持つ直立歩行する狼━人狼へ、そして完全なる狼の姿へと。

 

 銀の狼に化身したヴォバンの体は、、一気にふくれあがった。

 

 隊長三〇メートル前後。ありえないサイズの巨体にまで膨張してしまった。

 

 ━オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォンッッッ!!

 

 巨大な咆哮が、嵐の中に響き渡る。

 

 太陽のフレアが凝縮された巨大な白き焔に、銀の大巨狼は一気に踊りかかった。牙をむき、その巨大な顎で焔にかぶりつく。

 

 「……何だよ、それは。常識外れにもほどがあるぞ」

 

 信じがたい光景に、護堂は呆れた。

 

 呑み込んでいる。

 

 大巨狼が太陽のフレアを文字通りに喰らい、呑み込もうとしている。

 

 「まさか『白馬』の焔を吸収……いえ、喰らってしまうだなんて。どういう怪物なの?」

 

 ついにヴォバンが変化した巨狼は、『白馬』の焔を喰らい尽くしてしあった。

 

 あまりの驚きに、護堂は気づくことができなかった。背後から『従僕』が近づいていることに。

 

 「護堂!」

 

 榊の鋭い声に、護堂は後ろを振り向き、そこで初めて『従僕』に攻撃されそうになっていることに気づく。

 

 『鳳』を使うには速さが足りず、かといって躱すことはできない一撃。そう悟った護堂はよけようとあがきつつも、死を覚悟する。

 

 その瞬間、世界が一気にスローになった。まるで『鳳』を使ったかのような感覚。だが、自分はまだ『白馬』を使ったままだ。ならば、これは━

 

 『従僕』の攻撃を躱しつつ己の手足を見やる。そこには古代の鎧━榊が使役する『神兵』たちが身に着けているものと同じだ。

 

 榊、そしてエリカとの一瞬のアイコンタクト。そのまま、裕理を抱えてひた走る。おそらくエリカも逃亡を開始したはずだ。殿(しんがり)を榊に任せて。

 




第三の神の正解者は3名(7w76kxZ/Ncさま、@@@さま、宮野雅さま)でした。
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