カンピオーネ! 魔刃の王の物語   作:一日

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第四話 旅先に神様はつきもの

 男は茫然としている。

 

 先ほどまで、心を鬼にして行っていたことが全てに泡になったというのがまず一つ。わずかとはいえ、神の強大さを見せつけられたというのもある。何より、存在しないはずの七人目のカンピオーネに遭遇した挙句に、自分がさっきまで喧嘩を売っていたという事実が彼を混乱させていた。

 

 神具を使って見せたことから只者でないことは分かっていた。手を抜いた状態で自分たちを圧倒できるほどに高いレベルの体術。そして、先ほど神の攻撃を受け止めようとした際の尋常ではない呪力の高まり。

 

 すべての状況証拠が彼がカンピオーネであることを物語っている。

 

 「おい」

 

 血まみれになった左腕をだらりとぶら下げた魔王が近づいてくる。彼の目は激情に燃えており、体からは途方もない怒気と殺気が放たれている。とても勝てる相手ではないと、強制的に悟らされる。

 

 「さっきの事は全部水に流してやる。だから、お前の知っていることを全て教えろ」

 

 この男ならば━神に勝てるかもしれない。ならば、自分にできるのは全力でこの男をサポートするだけだ。

 

 「仰せのままに。王よ」

 

 

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 「ひと月前のことです。私達の結社の魔女がとある霊視を受け取りました。エルナが神の寵愛により、極光の鎧を得るだろうと」

 

 ここは、エドヴァルドたち━フィンランド聖堂騎士団が所有する物件の一室である。質素なテーブルを数人で囲んでいる。主に会話しているのは榊と、この騎士団の首領である。既に前線は退いたとのことだが、衰えてなおその筋肉質な体格は往時の実力を想像させる。

 

 目を引くのはやはり榊だろう。神の攻撃で傷をおった左腕は現在包帯におおわれている。治癒の霊薬による治療を試みたものの、回復阻害の呪いがかかっているようで効果はなかった。

 

 「極光の鎧……なるほど、やはりあの神の名はオーディンか」

 

 「ええ。極光の鎧は夜空を駆ける際にオーロラを放つというワルキューレの鎧のことで間違いないでしょう。ワルキューレは伝承によっては人間から変化する存在であるともされています。そしてそれを行うのは、オーディンであると」

 

 「あの距離まで気づかせない魔術の腕と、攻撃に使用した槍を考えれば間違いはないだだろうな」

 

 多彩なルーン魔術に複数の使い魔、そして必中の槍。軍神である以上は、それなりの武芸の使いでもあるだろう。

 

 榊は先ほど掌握したばかりの自らの権能の特性を思い浮かべる。高い汎用性を持つ代わりに決定打に欠ける。如何にして相手の魔術の守りを貫くか、そこが恐らくこの戦いの急所になるはずだ。

 

 「あの神の相手は俺がしよう。新米では不安かもしれんが太刀打ちできる人材はとりあえず他にいないからな。まぁ何とかして見せるさ。問題は━」

 

 「エルナの相手、ですね」

 

 瞑目し黙り込んでいたエドヴァルドが、口を開く。

 

 「まず間違いなくワルキューレとなった彼女は襲い掛かってくるだろうな。流石に神と一緒に相手にするのは避けたい。殺していいのなら━」

 

 「私が相手をするからお前は手を出すな」

 

 神殺しを相手取っての有無を言わさぬ強い口調に、周りのメンバーの顔が青ざめる。対して榊は、何も言わずにエドヴァルドの顔を見続けた。

 

 「家族の問題は、家族の中で片付ける。だから、手をだすな」

 

 「……わかった。あんたに任すよ。負けた場合はどうなるか知らんがね」

 

 あちこちから安堵のため息が聞こえる。魔王の勘気を買わずにすんで安心したのだろう。

 

 「で、神様の居場所は?」

 

 首領の方へと視線を向ける。

 

 「ええ。カイヴォプイスト公園にとどまっているようです。呪力の反応が途切れないことからエルナを造り替えている最中なのでしょう。周辺の人払いについても、現在進めています。あと三〇分もすれば終わるはずです」

 

 カイヴォプイスト公園はバルト海に面した広い敷地を誇る公園だ。暴れるのに何の支障もない。

 

 「……ですが、その傷は、支障ないのですか?」

 

 神を相手に負傷したまま戦うなど自殺行為に他ならない。榊とて、そんな愚かなことをするつもりはない。

 

 「治す術に心当たりはある。また霊薬をもらえればどうにかなるはずだ」

 

 ただ、見られたくないから出ていってほしい、と告げると彼らは素直に席を立った。出ていく際のエドヴァルドの目は、失敗すれば殺す、と告げていた。

 

 「殺されないためにも頑張りますか、と」

 

 椅子から降りて、床の上に足を組んで座る。結跏趺坐(けつかふざ)と呼ばれる形だ。床の冷たさが気になるところではあるが、それを問題視している状況でもない。

 

 深く息を吸い込み内功、すなわち呪力を練り上げる。この状態ならば、痛みに対してある程度の耐性がつく。

 

 左腕の包帯を激痛に耐えつつ、外す。オーディンの槍━おそらくグングニル━によって、手のひらは貫通し、肘から肩にかけては深い裂傷が刻まれている。よく見れば、傷口に黒い靄のようなものがかかっている。これが、傷が治るのを阻害している要因だろう。

 

 再度息を吸い込む。

 

 立花家には、傷を癒し邪を払うとされる『息吹』と呼ばれる呼吸法が存在する。榊は今まで単純に自己治癒能力を底上げするだけの呼吸法だと思っていた。が、呪術の存在を知ったいまでは違う。神道にも同様の名称で呼ばれる技術が存在するからだ。

 

 平安時代付近まで天皇家の護衛を務めていたという立花家の歴史が真実ならば、陰陽師塔から影響を受けていてもおかしくはない。

 

 何より、榊の勘がこの方法で治ると告げている。

 

 練り上げた呪力を呼気と共に傷口へと吹きかける。

 

 靄は、榊の思った通りに払うことができた。これで霊薬も通常通りに効果を発揮するだろう。

 

 この傷の借りは権能という形で返してもらう。榊は決意を胸に、部屋を出た。




カンピオーネ! XVI 英雄たちの鼓動 の感想
〇馨さんの体を乗っ取った二郎真君をぼこぼこにするエピソードを考えなきゃ
 と思ったらそもそも、第四の権能で塩化解除できるからお札いらなかった。

〇最後の王は、漂流譚でいけば日本武尊かと思ってたらまさかの桃太郎=吉備津彦の可能性が微レ存? たしかに桃太郎も貴種漂流譚か。
 雉=鳥=太陽、犬=狩り=狩猟民族→騎馬 猿=猿? まっさか~

〇風の王はだれだ? アキレウスじゃなければそれでいいか。アキレウスは王じゃないから可能性は低いと信じたい

〇257ページエロすぎ。
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