カンピオーネ! 魔刃の王の物語   作:一日

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お久しぶりで申し訳ないです。


第六話 旅先に反抗はつきもの

 前方からはオーディン。後方からはワルキューレと化したエルナが迫ってくる。

 

 オーディンが槍を振りかぶる。未だその間合いには届いていない。ということは、槍の投擲か魔術の発動か━

 

 横薙ぎにされた槍から、氷の矢が大量に放たれる。エルナの攻撃に対応しながらさばける量ではない。

 

 対抗して生み出すのは巨大な盾━いや、前後に生み出したそれは壁と呼んだ方が適切だろう。それで攻撃を防ぎつつ、さらに壁から刃をはやしてカウンターを狙う。

 

 慣れないためか変化させる速度が遅く、エルナにすら余裕で躱される。

 

 舌打ちしつつ、目の前を壁を蹴りつけてオーディンに向けて飛ばす。先読みで躱され、盾を避けるように炎が蛇体をくねらせて襲い掛かってくる。

 

 「━ッ! 切っても無駄なんだろうなどうせ!」

 

 後転で距離を取る。

 

 横合いからエルナが槍を構え突進してくる。盾で受けるも、脚が地についていないため大きく吹き飛ばされる。

 

 舌打ちしつつ着地した瞬間、総毛だった。足元へ視線を向ける。足元に転がった丸い石から伸びる茨が足へと絡みつく。間違いない。妨害の意味を持つ『茨(スリサズ)』 のルーン!

 

 こちらの動きを止めた以上、次に放たれる攻撃は間違いなく━

 

 「我が槍を躱すこと能わず。我が槍を止めること能わず。我が槍は汝に死を告げる、神託なり!」

 

 厳かに唱えられる聖句。かの神の持つ槍に膨大な呪力が集まっていく。放たれた一撃はまさしく死の宣告。

 

 流星の如き勢いで押し迫る死に対して、さきほどエルナの突撃を止めた際の盾をかかげる。

 

 盾と槍が火花を散らしせめぎ合う。だが、膠着状態はそう長くは続かなかった。こうしている間にもオーディンのかざす手のひらから放たれる呪力を受け、魔槍はジリジリと盾に食い込み獲物へ食らいつかんと唸りをあげている。後ろへ飛んで距離を稼ごうにも、足元の茨がそれを許さない。

 

 受け止めることをいったんあきらめ、盾ごと背後へと受け流す。その隙に剣を造り出して、ルーンの刻まれた石を茨ごと断ち切る。

 

 背後から再度迫りくる槍へと向き直り、槍へとかざした手に呪力を集中させる。

 

 イメージするのは盾ではなく、鋼の塊。それも四トントラックのコンテナよりも更に巨大な塊だ。

 

 鋼の塊とグングニルが衝突する。槍が勢いを衰えさえつつも、徐々に鋼へと食い込んでいく。鋼を変形させて、槍をその内へと取り込ませる。同時に、地面へとスパイクを打ちこみ固定する。

 

 グングニルを封じた榊は、背後から突撃してくるエルナへと向き直る。オーディンのことは一端意識から外す。

 

 ワルキューレと化した相手を、生け捕りにする。それも時間制限付き。

 

 「やれやれ……分の悪い賭けだな」

 

 言葉とは裏腹に、榊の顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

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 「エルナの相手をしてもらおうかと思ったが気が変わった。あんた、オーディンの相手してくれねぇか?」

 

 神殺しからかけられた言葉に、エドヴァルドは思わず顔をしかめた。事実上の死刑宣告に等しかったからだ。

 

 「といってもほんの数分だけだ。それにグングニルは俺が封じておく。それならまぁなんとかなるだろ?」

 

 相手の言葉を頭の中で反芻する。

 

 「そのわずかな時間でエルナを止めることが出来るのか? 曲がりなりにも神の眷属、そう簡単に止められるとは思えんが」

 

 「正直、分は悪いさ。それでもあんたらが闘うよりましだ。あんたら三人がかりで互角ってとこだろう? 殺さないように手加減しつつなら……圧倒的に不利ってわけだ」

 

 ま、なんとかしてみせるさ、と投げ遣りなコメント。だが、そこに悲壮感は漂っていなかった。

 

 エドヴァルドはため息を一つつき、提案を了承した。

 

 「いいだろう、死にもの狂いで神の相手をしてやるさ。娘のためだからな。その代り、エルナを必ず生かしてここに帰せ。必ず、だ」

 

 神殺しは力強く頷いたのだった。

 

 瞑想をやめて、目を見開く。呪力はすでに呪力は十分に高まっている。それは背後に立つヴィンセントとエリクも同様だ。

 

 二人の手が肩にあてられそこから呪力が送り込まれる。

 

 「大地を駆けるは無双を授けるベイヤード! 我が身を護るは決して傷つくことなきリディアの純鋼! 」

 

 響き渡るのは厳かなる三重唱。宙に描かれるのは赤き十字架。彼らの奥の手にして正真正銘の最後の切り札。神を相手に出し惜しみなどする余裕はない。

 

 「我が手には悪竜切り裂くアスカロン! 我が前の障碍を切り裂きたまえ、我が身を苦難より救いたまえ! 今ここに聖(セント)ジョージの奇跡をもたらしたまえ!」

 

 呪術により強化された脚力で神の背後へとまわり、神をも傷つける加護を込めた槍を突き出す。

 

 躱される。だが、神の頬には一筋の傷が出来ていた。

 

 動きを止めずにすぐに体を反転させて、槍を突き出す。だが難なく掴まれる。

 

 「人の子の身で我が身を傷つけるとは……見事なり。だが、己が分を知れい!」

 

 神の拳が放たれる。盾で受け止めるも、大きく吹き飛ばされる。榊の権能で作成した盾で、なおかつ加護を込めていなければ、腕ごと粉砕されていたであろう一撃だった。

 

 オーディンに奪われた槍の代わりに、剣を呪術で呼び出す。盾と同様、榊の権能で作成したものだ。それに加護を込め、斬りかかる。だが、当たらない。無駄だと分かりつつも剣を振り続ける。

 

 僅かに大振りになった攻撃に合わせて、槍で脇腹をえぐられる。続けて、槍で抉られた部分を殴打されて、吹き飛ばされる。

 

 立ち上がるどころか、呼吸ひとつ、身じろぎひとつできないほどの激痛に襲われる。それでもどうにか神の方へと視線を向ける。

 

 槍をこちらへ投擲しようとオーディンが槍を振り上げている。だが、その槍が放たれることはなかった。

 

 榊の飛び掛かりつつの一撃をいつの間にか回収したグングニルで防ぐオーディン。神と神殺しの戦いが再開された音が辺りに鳴り響いた。




 半年近くも休んでた理由は、活動報告にあげますので気になる方はそちらへお願いします。

以下、補足的な何か

 作中エドヴァルド達が使った呪文は、ゴルゴタの言霊等とは違い魔女術の影響を受けていないため、多少威力的には劣る。が、その出自の関係上、キリスト教以外の神格、もしくは竜蛇に属する相手にはよく効果を発揮する。オーディンに対しては、実際に異教と認定していた相手なので、効果が上がる模様。

 鎧と槍と馬を三人でそれぞれ一つずつ発動させることも可能。今回はエドヴァルドの希望もあり、一人で三つ全て発動させている。

とある人に聞かれたので追記
聖ジョージごとゲオルギウスは『鋼』か否か
 ・竜殺しの逸話を持つ
 ・彼が持つリディアの純鋼はどんな武器でも傷つかないとされる=不死
 ・彼が持つ槍、アスカロンの効果の一つがあらゆる暴力にさらされないというも
  のであり、不死と関連があると思われる
 ・名前の語源が農夫=大地を傷つけるもの。ついでに農夫と戦士の守護聖人でも  ある
 ・魔女に育てられて、武具ももらっている=女の庇護

 以上の理由から『鋼』ということで。
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