ダンジョンに念能力者がいるのは間違っているだろうか?   作:気まぐれな暇人

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どうも皆さんこんにちは、暇人です。
その名に反し、最近は何かと忙しい今日この頃。

寒くなってきましたのでお身体にはご注意ください。
この間久しぶりに風邪を引きまして、すぐ治るだろうとタカをくくっていたらかなり苦しめられました。
今年もあと二ヶ月、健康に気を使って頑張って行きましょう。

今回は三人称視点でお送りします。


その15 専属鍛冶師

 カンッ…カンッ…という金属がぶつかり合う音が、轟々と焔が焚かれた個室に響き渡る。

 灼熱の炎の前で黙々と槌を振り下ろすのは、ゴブニュ・ファミリアの団員の一人、アグナ・モルコルトである。

 ドワーフ特有の両腕の筋肉は、他のドワーフのソレと比べても遜色ない代物である。

 

「…まあいいだろう」

 

 打ち終わった剣の刃の出来栄えを確認し、お眼鏡にかなったのだろう、何処と無く満足した様子で一段落着いたアグナ。

 彼はこの、一仕事終わったあとの時間が好きだった。

 炉の火を落とし、少しづつ消えていく火を眺めながらその日の仕事を振り返る。

 この場所がもつ、独特な雰囲気を感じながら物思いにふけるのが好きであった。

 

 だからこそ不粋な侵入者には容赦はしない。

 

 ――ゴンゴンゴン

 

「親方ぁー!いる?いるんでしょ!?」

 

「喧しい!何の用だ、クラム!!」

 

 壊れるのではないかと思うほど乱暴に開けられた入口の先には、案の定、彼の専属の契約を結んだ男が立っていた。

 

「あ、親方、お久ー…、って危なっ!

 いきなり槌振り下ろす奴があるかよ!」

 

「うるせぇ、用がないなら帰れ」

 

 気分のいい時間を誰かにぶち壊しにされれば、誰でもそうはなるだろう。

 いきなり槌を振り下ろすのは、ドワーフくらいのものであろうが。

 

「そう言うなって。今日は酒持って来てんだからさ」

 

「…銘柄は?」

 

「『フレア』だよ」

 

 ニヤリと笑うクラムの様子に、不本意ではあるが酒があるなら仕方ないと、中へ招き入れるアグナ。

『フレア』は炎を意味し、その名の通り火を噴くほど強い酒として有名な一品だ。

 だがその生産数は少なく、市場にもあまり出回らないため、入手困難な物でもある。

 ドワーフである彼も大変気に入っている代物であった。

 

「で、何の用だ?」

 

 酒だけ貰えれば用はないとばかりに、早速本題を聞き出そうとするアグナに、思わず苦笑いを浮かべるクラム。

 もう少し会話を楽しもうという気はないのか、この朴念仁には。と思ってしまっても仕方ない。

 

「相変わらずだなぁ。

 まあいいや、今回来たのは、『氷刃』をもう少し重くできないかってのと、コレの注文」

 

 そう言って机の上に置かれた二つのブツを見て、思わず眉を顰める。

 片方は自身の最高傑作といえる一品であり、もう一つはとてつもなく面倒な代物であったからだ。

 

「…おめェ、この刀じゃ不満だと?」

 

 思わずドスの効いた声が出てしまっても仕方ない。

 それは自慢の一品であり、彼が我が子のように思う作品なのだから。

 

「いや、不満はないんだけどね?

 ほら、俺もレベルが上がって筋力値も増えたでしょ?

 だからちょっと今の俺には軽いかなぁ…って」

 

 慌てて言い募るクラムだが、彼の言い分も一理ある。

 本来レベルアップなど早々あるものでもない。

 そのため主武器を弄る事などほとんどないのだ。

 しかし彼の場合、異例の高速レベルアップにより武器の調整が間に合わず、後回しになっていたと言うことがあった。

 軽く感じる程度で、長さ、切れ味共に問題無かったので手を入れる必要性を感じなかったというのが主な理由だが。

 

「チッ、仕方ねぇ。だが重くするとは言っても、出来ることは限られるぞ?」

 

「その辺は親方にお任せします」

 

 その言葉には、絶対的な信頼がある、という訳ではなく、ただ専門外のことを言われても分からないので、丸投げしようという魂胆が透けて見えた。

 いや、勿論信頼があるからこその丸投げだが。

 

「ったく、どうなっても知らねぇぞ。

 で、こっちはどうすんだ」

 

 指差すのは厄介な方、黒い無骨な金属の塊であった。

 それはクラムが念能力の補助道具として使っている物で、魔法金属を使った物である。

 この金属を核にオーラを固定すれば、オーラの消費量を抑えられ、手から離れても強度もほぼ落ちず、状態を固定するのも楽になる優れものである。

 で、それの何が面倒なのかと言えば、その金属には『神字』が掘られているのである。

 

『神字』とは念能力者が、念能力を補助するために使われる特殊な字のことである。

 

 今回問題となっているのは、その神字を書くためには念を込めて字を掘らねば効果がないという点だ。

 型をつくって金属を流し込めば作れるものではない。

 ならどうするのかと言えば、

 

「うん、また親方と共同作業だねっ!」

 

「気色悪いこと言ってんじゃねぇ」

 

 クラムがアグナと一緒に金属を加工しながら字を掘るのだ。

 クソ暑い中で、汗だくの男が額を突合せて作業する。

 いったい誰得の光景だろうか?

 少なくとも二人にはそういう趣味嗜好はないと断言しておく。

 

「これは以前充分な数作っただろうが。

 何で突然そんな話を持ってきたんだ?」

 

「それはこの間の遠征で見かけた新種が原因だよ」

 

 アグナが詳しく話を聞けば、武器を溶かすという鍛冶師泣かせのモンスターが生まれているのだという。

 これには流石のアグナも少し目眩がした。

 

「つまりなんだ?これからコイツは消耗品になるってことか?」

 

「可能性は無きにしもあらず、だねぇー。

 あとはこれに『不壊属性(デュランダル)』を付けるって手もあるけど」

 

「ふざけんじゃねぇ。あれ一つ付けんのがどんだけ大変だと思ってんだ」

 

『不壊属性』とは、その名の通り武器や防具が破壊されなくなるものだ。

 勿論デメリットもあるが、それを補って余りある魅力がそこにはある。

 それが付いた武器、防具が他の物より0の数が違うことを考えればその価値も分かるだろう。

 そして一流の鍛冶師であり、第二級冒険者(Lv.4)のアグナが渋る程度にはその付与は難しいのだ。

 

「ダヨネー。ならやっぱり数揃えるしかないじゃん?」

 

「ったく、めんどくせぇ」

 

「ごめんごめん。お詫びに深層で取れた『星光石』あげるからさ」

 

『星光石』とは、ダンジョンの中には一部燐光が存在しない、本当に真っ暗な区画が存在し、その中で唯一光を放っている鉱石の事だ。

 その光が闇夜に煌めく星の明かりに見えたことから、その名がつけられたと言われる。

 これはその区画でしか採れず、しかもその周りには厄介なモンスターが集まってくることから、市場にはほぼ流通しない希少な魔法金属の一種である。

 

「…20キロ出せ」

 

「はぁー!?アホか、これ買おうと思ったら、キロいくらすると思ってんだ!10キロだ」

 

「19」「11!」

 

 そんな値切り交渉の末、結局15.2キロの鉱石で手を打つことになった。

 

「くっそ、マジかよ。これ採ってくるのホント苦労したのに…」

 

「ふんっ、こんな面倒な依頼をするんだ。このくらい貰わねばやってられんよ」

 

 勝ち誇った顔でコップの酒を煽るアグナ。

 実際にこの鉱石をこれだけ買おうと思ったら、相応の金銭を払う必要があるだろう。

 無論、これにはクラムの能力の口止め料も入っているので通常よりもお高めだ。

 そんなことをしなくても、仕事に誇りを持つ彼なら喋るとは思えないが、秘密とは何かと面倒を引っ張ってくるものである。

 

「…で、いつから造れる?」

 

「そうさな。今入ってる仕事が今週中には終わる。それからになるから来週の頭に始めるぞ。

 本数はどうする?」

 

「20本」

 

「チッ、吹っかけやがって。

 まあいいだろう。面白い土産の礼だ

『氷刃』はその後に仕上げてやる」

 

 そう言って立ち上がって、周囲の片付けを始めたアグナ。

 その後ろ姿に、一言だけ礼を言い、自分の分の酒を飲み干し立ち上がるクラム。

 お互い、迷惑をかけ、かけられた間柄だ。

 今更無用な言葉など不粋なのだろう。

 黙って仕事場を立ち去る彼には、相方とも言える男への確かな信頼があった。

 




備考
『星光石』は、以前書き忘れた『ブルークリスタル』と同様、オリジナルの鉱石です。

―――――――
今期は血界戦線が個人的に一番の注目作品だったんですが、やっぱり面白いですね。

それで観ていて思ったのが、ダンまちの世界よりあの世界の虚の方がよほどダンジョンなのではないか、と。
血界戦線の二次創作増えないかなァ…。
そんなことを考えていました。
ではまた次回。
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