ダンジョンに念能力者がいるのは間違っているだろうか?   作:気まぐれな暇人

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評価バーに色がついてた。
正直結構驚きました。

今後もぼちぼち続けていきますんで、暇でしたらお読みください。

今回は三人称視点でお送りします。


その16 邂逅

 日も沈み、オラリオに夜の帳が下りた頃、この街の一角でとあるファミリアの宴が始まろうとしていた。

 

「遠征みんなご苦労さん!

 今夜は宴や!存分に飲み明かせぇ!」

 

 ――カンパーイ!!

 

 そんな掛け声と共に始まったロキ・ファミリアの大宴会。

 場所は、美女揃いのウエイトレスと、肝っ玉母さんとも呼ばれる女主人が名物の『豊穣の女主人』。

 

 次々とテーブルに運ばれてくる酒や料理を消費しつつ、会話に花を咲かせる各々。

 だが酒が入れば騒ぎが大きくなるのは必然でもある。

 

「団長、もう一杯どうぞ」

 

「ありがとう、ティオネ。だけどさっきから尋常じゃないペースで飲まされてるんだけど、僕を酔い潰してどうするつもりだい?」

 

「ふふ、他意はありませんよ。さっ、もう一杯」

 

 と、恋の駆け引き(?)を行っているところもあれば、

 

「ガレス!飲み比べや!付き合え!」

 

「いいじゃろう、また返り討ちじゃろうがな」

 

「ちなみに勝った方はリヴェリアのおっぱいを自由にできる権利付きやぁ!」

 

「なにっ!?俺も受けるぞ!」「俺もだ!」「私もっ!」

 

「リヴェリア様…?」

 

「言わせておけ」

 

 等と勝手に人の身体を景品に掲げる(アホ)がいたりする。

 そんな中、幹部の一人であるクラムはと言えば…

 

「お、アーニャちゃん、お久しぶり〜。元気してた?」

 

「クラムじゃニャいか。まだ生きてたのかニャ?」

 

「はっはっは、相変わらず酷い言い草だね。

 ところでお土産にマタタビ持ってきたけど、ほしい?」

 

「猫扱いするなニャ!」

 

 顔見知りのウエイトレスをイジって遊んでいた。

 彼はこの店に足げく通っている。

 その際、よく彼女をからかうのだが、大抵の場合ヒートアップしたアーニャがこの店のお母さんこと、ミアに怒鳴られて慌てて仕事に戻ることになる。

 

「アルベルトさん、お久しぶりです。最近顔を見せないので何かあったのかと思いましたよ」

 

「あ、リュー、久しぶり。ごめんね、最近忙しくて。

 ところでシルちゃんは?」

 

「シルならあそこですよ」

 

 そう言って示されたのはカウンターの一角。

 縮こまっている少年に話しかけるシルがいた。

 

「あの子は?」

 

「シルが連れてきたお客さんです」

 

 ――あぁ、お客さん(生贄)

 

 強く生きろよ、少年。と心の中でエールを贈り、食事へと戻る。

 彼ら彼女らが酒を飲んでいると、どうやら狼が一匹、出来上がってしまったらしい。

 

「おいアイズ!あの話聞かせてやれよ!」

 

 アイズの斜め向かいに座っていたベートが何やら催促しだした。

 そんな様子の彼に、小首をかしげるアイズ。

 

「ほら、変える途中で逃がしたミノタウロス!

 最後の一匹を5階層で始末しただろ!?

 あん時いたトマト野郎のことだよ!」

 

 その言葉で分かったしたのだろう。

 アイズの顔に理解の色が浮かんだ。

 

「ミノタウロスって、17階層で逃げ出したアレ?」

 

「それそれ!俺達が追っかけてた奴がどんどん上層に上がって行ってよっ、結局追いついたのが5階層だった訳だ。こっちは遠征帰りで疲れてるってのによ」

 

 そこで一旦口を閉じたベートに、アイズは少し嫌な予感を覚える。

 

「そしたらいたんだよ、いかにも駆け出しって感じのひょろい|冒険者<<ガキ>>が!」

 

 ゲラゲラと笑いながら話すベートと、それを興味深げに聞く周りの団員。

 そしてカウンターの隅で小さくなっていく白髪の少年。

 

「その子がミノタウロスに追いかけられたって話?

 無事だったの、その子?」

 

「あぁ、アイズが間一髪の所で細切れにしてなっ、そうだろアイズ!」

 

「それでそいつ、頭から全身血塗れになって、真っ赤なトマトになっちまったんだよ!」

 

「うわぁ…、ご愁傷様」

 

 笑いが最高潮に達したベートと、その様子を想像したのか顔をしかめるティオナ。

 

「しかもそいつ、叫びながらどっか行っちまってよ!

 ウチのお姫様、助けたやつに逃げられてやんの!」

 

 その言葉に周囲がどっと笑いに包まれる。

 その様子を輪の外から眺めながら、クラムは先程の白髪の少年を『観た』。

 

(かなりオーラが荒ぶってんなー。

 つまりあの子が当事者ってことか?)

 

 通常垂れ流しであるオーラだが、感情の昂りによってその流れは大きく変わる。

 凝を使ったクラムにはその様子がしっかりと見て取れた。

 

「いい加減にしろ、ベート。ミノタウロスを逃がしたのは我々の不手際だ。にもかかわず、巻き込んでしまった少年を酒の肴にするなど、恥を知れ」

 

 未だ騒いでいるベートに、リヴェリアが口を出した。

 しかし酔ったベートも止まらない。

 

「けっ、流石は誇り高いエルフ様。

 だか救えねぇヤツを擁護して何になんだよ」

 

 リヴェリアの言葉で完全に火がついてしまったベートは、止まることを知らない。

 

「アイズ、お前はどう思うよ。あんな奴が俺たちと同じ冒険者を名乗ってんだぜ」

 

「…あの状況じゃ、仕方ないと思います」

 

「なんだよ、いい子ちゃんぶっちまって。

 …なら、質問を変えるぜ。

 俺とあのガキ、ツガイにするならどっちがいい?」

 

「ベート、君、酔ってる?」

 

「うるせぇ、ほら、選べよアイズ。

 俺とあのガキ、どっちかを」

 

「…私はそんなことを言うベートさんだけは、ごめんです」

 

 フィンの言葉すら無視したベートに対し、嫌悪感を滲ませながらハッキリと拒絶する。

 

「無様だな」

 

「黙れババアッ。

 じゃあ何か?お前はあのガキに好きだの愛だのと言われたら、受け入れるのか?」

 

「ありえねぇよな?自分より弱いやつが、お前の隣に立つ資格はねぇ。

 他ならぬお前がそれを認めねぇ」

 

「雑魚じゃ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねぇ」

 

 直後、白い影が彼らの横を通り過ぎて行った。

 

「ベルさん!?」

 

 店員の少女の言葉にも耳を貸さず、その少年は店を飛び出して行く。

 

「あ?なんだアイツ?」

 

「この店で食い逃げとはやるなぁー」

 

 そんな呑気な言葉を放つものがいる一方で、アイズは先の少年の後ろ姿が目から離れなかった。

 その様子を見ていた一人の店員、リューがクラムに近づく。

 

「アルベルトさん、すいませんが、先程の少年を追ってもらえませんか?」

 

「…了解。どうやらウチの不始末みたいだしね」

 

「すいません。本当はこんなことをお願いするのは筋違いなのですが」

 

 手元にあった酒を一杯飲み干し、立ち上がる。

 

「まあリューの頼みだしね。

 気になる様なら今度一杯奢ってくれればそれでいいよ。

 あ、ついでに俺の分とさっきの少年のお会計はこれでお願い」

 

「…ありがとうございます」

 

 そう言って金貨が入った小袋を一つ、リューに押し付けた。

 

「それにしてもリュー、君ってさ」

 

「はい?」

 

「ホント、シルちゃん大好きだよね」

 

 その言葉に耳まで真っ赤になった彼女を少しだけ笑って、椅子の背に掛けていた外装を纏いドアへと向かう。

 

「あん?クラム、どこ行くんや?」

 

「お仕事だよ、ロキ。

 友人に少し頼まれちゃってね」

 

 隣で破天荒娘(ティオナ)によって吊し上げられたベートを一瞥して少し笑う。

 そんな彼にアイズは聞いた。

 

「クラム、さっきの…」

 

「ん、アイズも気づいてたんだ。多分そうだよ」

 

「なら謝らないと…」

 

 アイズには先程飛び出していった少年が、話題となった人物であるとわかったようだ。

 戦闘中の彼女からはまるで想像出来ないような、友人と喧嘩別れをしてしまって困っているような年相応の少女がそのにはいた。

 

「なら今度会ったら謝ってやりなよ。今日は俺が行くからさ」

 

「…うん、分かった。お願い」

 

「あいよー」

 

 店の隅で行われていたその会話を、何を勘違いしたのか、吊るされた狼がそちらを睨みながら唸っている。

 猿轡を噛まされているので何を言っているのかさっぱり分からないが。

 

「おやおや、ベートももう少し丸くなれば可能性があるのにね。どう思う、アイズ?」

 

「?」

 

「ハハハ、これはかなり厳しいみたいだな」

 

 何を言っているのか分からずきょとんとした表情をみせる少女に、思わず笑ってしまった。

 今のところベートの恋は成就しそうにないらしい。

 彼はその様子をひとしきり笑いながら、夜の闇に消えていった。




最近部屋にコタツを入れました。
あの吸引力ヤバいっすね。
抜け出せません。

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