ダンジョンに念能力者がいるのは間違っているだろうか?   作:気まぐれな暇人

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9/17 念能力の設定の一部を改変
出口の設定箇所を3→1に変更


その3 ロキ・ファミリアと念能力者

「それで、どうだった?見せてもらえたのかい?」

 

「…ダメだった」

 

 僕の前でシュンと落ち込んだ様子で座っているのは、ロキ・ファミリアのエース、アイズ・ヴァレンシュタインだ。

 その様子を困った子を見つめるような優しい目で見守る、副団長のリヴェリアと、彼女をチラチラと見ながら、イライラしたように貧乏揺すりを繰り返すベート。

 

「フィンは知ってるの?クラムの力の正体」

 

 そう身を乗り出すように聞いてくる活発なティオナに、僕も苦笑いを返すしかない。

 

「残念ながら、僕も知らないんだよね。ロキは知ってるかい?」

 

 ベートのイライラした様子を肴に酒を飲んでいる、我らが主神に話を振る。

 

「いや、ウチも知らんわ。なんかようわからん力を使ってるいうことは、分かるんやけどな〜」

 

「そうか…」

 

 今回の話題は、たった5年でLv.6まで上り詰めた若き秀才である、うちのクラムだ。

 だが、彼について僕達が知っていることはあまりに少ない。

 しかし、今はっきりしている事は…、

 

「彼は、神の恩恵以外にもなにか力を持っている、という事だね」

 

 これはかなり重要な事だ。

 なんせそれを他の冒険者ができるようになれば、戦力は今までの比ではなくなる。

 

「リヴェリア、一応聞くけどアレは魔法ではないんだね?」

 

「あぁ、魔力は一切感じなかったからな。魔法ではないだろう」

 

 これは以前から確認していることだし、彼自身も魔法では無いとロキの前で言っているから間違いないだろう。

 

「ロキ、これは今まであまり意識しないようにしてきたことだが、彼は人間なのかい?」

 

「…どういう意味や」

 

 その疑問を初めて持ったのは、彼の入団試験の時。

 ロキの気まぐれで連れてきた少年を前に、僕はいつも通り手加減をして相手の力量を見定めようとした。

 

 だがそんな甘い考えが出来たのはそこまでだった。

 彼が臨戦態勢に入った途端、まるで獰猛な肉食獣を前にするようなプレッシャーを感じた。

 ロキが発する神の力に感じるソレよりも弱いが、荒々しいその気配に、正直怯んだ。

 そして気がついた時には彼を吹き飛ばしていた。

 

 後から聞いた話では、僕の攻撃をクラムは、幾らか避けたり捌いたりしていたらしい。

 つまり彼は神の恩恵もなしに、Lv6の僕の攻撃に抗ったということ。

 

 そんな事がありうるのか?

 

 いや有り得たのだ。

 なら彼は一体、ナンダ?

 

「…長!団長!」

 

「あ、あぁ、ティオネか。すまないね、少しぼぉっとしてしまった」

 

「少し顔色が悪いですよ?お休みになりますか?今なら私が献身的な介護を…!」

 

「落ち着きーや、ティオネ。で、クラムが人間か、ゆう話やったな。アイツは人間や、ウチの知る限りはな」

 

「…そうか」

 

 ならあの時感じた威圧感は一体何だったのか?

 

 …わからない

 

「ねぇねぇフィン、分からないんだったら、本人に聞いてみればいいんじゃない?」

 

「…そうだね。そうしようか」

 

 ここで悩んでいても始まらない。

 ティオナの言う通り、彼を呼ぶことにした。

 

 ◇◇◇

 

「で、お話とはなんですか?フィンさん」

 

 クラムは、いつも通りニコニコと笑顔を貼り付けている。

 相変わらず、その目からは何を考えているかは読み取れない。

 

「わざわざ来てもらって済まないね。話というのは、君のその能力について教えてもらえないか、ということなんだが」

 

 今この部屋にいるのは、僕と、リヴェリア、ガレス、そして主神のロキ。

 神は人の嘘を見抜くことが出来る。

 つまりこの場で適当な嘘を言って煙にまくことは出来ない。

 

 さてクラム、君はどうする?

 

「あー、その件ですか…。

 

 すいません、フィンさん。それについてお答えすることはできません」

 

「…何故か、聞いてもいいかな?」

 

 ロキはなんの反応も示さなかった。

 つまり彼の言葉に嘘はない。

 

「そうですね…、あまり細かいことまで言うことは出来ませんが、『言わない』のではなく、『言えない』んです。言えるのはこの辺までですかね?」

 

 つまり言えないだけの理由があるからこれ以上の詮索はするな、という事か…。

 

「わかった。

 

 だがこれだけは確認させてもらうよ。

 君は僕達と敵対するつもりは無いんだね?」

 

「それは勿論です。

 拾ってもらった恩もありますし、なにより俺はこのファミリアが気に入ってますから」

 

「そうか。わかった。話してくれてありがとう。もう下がっていいよ」

 

「はい、では失礼します」

 

 結局、彼から詳しい話を聞くことは出来なかったが、敵対するつもりはないと明言してくれたことは大きい。

 

 その後僕達は、彼について今後も注意深く動向を観察するということで、意見が一致した。

 

 ――――――

 

 突然の呼び出しにドキドキして部屋に入ったら、なんか幹部の人が勢揃いだったんですが?

 これって会社でいえば、社長とか取締役とかがいる部屋に、平社員が一人呼ばれたようなもんだよね?

 

 何その拷問

 

 必死に引き攣りそうになる表情筋を、意志の力で押しとどめる。

 だってフィンさんが、こっちめっちゃ見てくるんだもん。ニコやかだけど、目が笑ってナイ!

 

 目をそらしたら死ぬ、と思って必死に見つめ返しながらも、質問されたのは念能力について。

 

 ですよねー。むしろこれまで、正面切って質問してこなかった方が驚きですわ。

 いやこれまでも、何度も探りは入れられてたんだけどさ。

 しかぁーし、今回はガチみたいでロキたんもバックにスタンバイしとる。

 

 これは絶対逃がさないってことですね、わかります。

 

 とはいえ念能力なんてイレギュラーをこの世界に広めでもしたら、どんなことになるか分かったもんじゃない。

 特に娯楽に飢えた神々(馬鹿共)が。

 

「あー、その件ですか…。

 

 すいません、フィンさん。それについてお答えすることはできません」

 

 というわけで私は逃げさせてもらう!

 

 こういう時のために作っておいてよかった二つ目の能力。

 いやこの場面を直接乗り切るためのものでは無いけど、能力に定めた誓約を理由にすれば、いけるっ!

 

 俺のもう一つの能力、それはノブさんの能力をパク…、ゲフンッゲフンッ、オマージュさせてもらったものだ。

 

 無論、具現化系のエキスパートである彼の能力を、変化系の中途半端な能力者の俺が模倣する、なんてことは出来ないのは百も承知。

 

 ここで簡単に解説しておくと、ノブさんの能力は、四次元空間に創り出したマンションのドアから、予め登録しておいた場所へ好きにで入りすることが出来る、みたいな能力だったはずだ。

 詳しくはググって(ry

 

 俺がこれを完全に模倣するなんてのは無理なので、制約と誓約をガチガチにして、やっと一部具現化することに成功した。

 

 で、その肝心の能力がこちら

 

 ―――――――――

【一方通行の家】

 

 ・別次元に10立方メートルの正立方体を創り、具現化したドアから出入りすることが出来る。

 

 制約

 ・具現化したドアを解除する(消す)と、別の扉からしか出ることは出来ない

 ・入ってきたドアを消さなければ、他のドアから出ることは出来ない

 ・自身の具現化したドアからしか入ることは出来ない(出るのはその限りではない)

 ・出口として登録できる場所は1箇所

 ・登録するには専用の道具を予め配置しておかねばならない

 ・自分以外の生物(10cm以上)は12体までしか入れることは出来ない

 ・自分以外の生物を入れる場合、専用のアイテムを装備させねばならない

 ・他者に念能力の習得方法を喋ってはならない

 

 誓約

 ・具現化した能力の中では、この能力以外の『発』を使うことは出来ない。

 ・この能力に紐付けられたアイテムが破損した場合、一つにつき三ヶ月間、この能力を発動できない

 ・念能力の習得方法を他者に喋った場合、この能力は2度と発動出来ない

 

 ―――――――――

 

 すごくね?こんだけガッチガチに制約と誓約を付けて、やっと開発に成功したんだぜ?

 これの何倍も優良な能力使ってたノブさん、まじパネェっす。

 

 まあお気づきかと思いますが、念能力の習得方法について。

 取ってつけたようだけど、今回のような状況に備えて入れときました。

 その割に地味にシビアな内容になってるけどね。

 でもそのお陰でフィンさんの追求を逃れられたので万事オッケー!

 

 あの答え方はヒソカのを真似てみたけど、嘘は言ってないから勘弁。

 念能力について教えたら、絶対習得方法について教えろ、ってなるだろうから。

 

 この能力で必要なアイテムとか、出口の設置場所とかはまた今度。

 とりあえずフィンさんに帰っていいと言われたことを喜ぼう!

 

 シャバの空気は美味いぜ!




ご拝読いただきありがとうございます。
少しですが勘違い要素を入れてみました。

主人公は、入団試験当時の記憶がフィンに半殺しにされたというイメージが強く、気づいていません。
しかし、念能力者の『練』は、非念能力者を威圧してしまうという性質があるため、フィンは圧倒的なレベル差があるにもかかわらず彼に怯えてしまったのです。
最近はそういうものだと慣れてしまったようですが。

それと、今後主人公以外に念能力者を登場させるつもりはありません。
これ以上イレギュラーを増やしたら私が管理しきれないので…。
あと念能力へのツッコミはなしでお願いします<(_ _)>
多分穴があると思いますが、作中では使うつもりはないので無視してください。
そのへんはご都合主義ということで一つ。

ではまた次回。
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