ダンジョンに念能力者がいるのは間違っているだろうか? 作:気まぐれな暇人
そしてお気に入り登録して下さった皆様にも感謝を
1晩で、UAが1000以上増えていたことに正直ビビっております。
やっぱり、ダンまちとHUNTER×HUNTERのネームバリューは凄いんだなぁと思い知らされました。
今後も出来るだけ続けていきますので、暖かく見守っていただければ幸いです。
「結局わかんなかったんだよね?クラムのこと」
「そうらしいわ」
あたしの双子の姉、ティオネに昨日の話し合いの結果を確認するが、やはり分からずじまいだったと知らされる。
「けっ、秘剣だかなんだか知らねぇが、ワケわかんねぇもん使いやがって」
今回の同行者であるベートは、八つ当たり気味に手頃なモンスターを蹴り飛ばす。
けどこれは仕方ないと思う。だって…
「仲間の私達にも教えられないこと、なのかな?」
「そうなんでしょうね、団長達にも教えないってことは」
あたしは目の前に立ちはだかったミノタウロスを、ウルガで斬り捨てる。
このあたりの階層だと、斬りごたえのある敵がいないのでつまらない。
「つまりアイツは俺達も信用してねぇってことかよ」
「ベートそれは言い過ぎだよ!」
あたしは、クラムはそんな薄情な奴じゃないと、反論するが、
「ならなんで俺達に話さねぇ」
そう返され思わず黙り込む。
冒険者にとって、手の内が知られることは確かに不味い。
特に魔法使いは、他人に自分の魔法が知られることを嫌う傾向にある。
だが仲間にまで教えないというのは…
「俺はアイツに背中は預けられねぇな」
その言葉を否定できるだけの理由を、あたしは持っていなかった。
「とは言っても、近々遠征をするって団長が言ってたわ。遠征中もそんなこと気にしてたら、死ぬわよ?」
「るっせぇなァ、分かってるよ。ンなことは。だがな、自分の手の内も見せられねぇような奴を、俺は仲間だとは認めねぇ」
ベートは強さに拘り、自分より弱い人を見下すようなことを言うが、ファミリアの団員には仲間として接している。
だけどクラムだけはそう見ないと、そう見られないと。
なんだか家族がバラバラになってしまうようで、辛い。
「はぁ…、分かったわ。とりあえず団長には伝えてみるから。ティオナも落ち込んでないで、手を動かして」
あたしが考え事をしている間に、先程とは別のモンスターの一団とエンカウントしたようだ。
ダンジョンを舐めていると死ぬ。
それはあたし達、第一級冒険者でも変わらない。
あたしは一度迷いを振り捨て、戦場へ駆ける。
だが、どうかクラムが私達を信じてくれる日が来るのを、願わずにはいられない。
――――――
ギルドの入口の前にある広場。
いつも出勤の際に通っている道ではあるが、今日はなんだか別の場所のように見えた。
いつもはまだ薄暗い時間に通るからかもしれない。
だが理由がそれだけでないことは、私自身がよく分かっている。
中央にある噴水の周りには、一人で誰かを待つように黄昏る男性。
花のように笑顔を満開に咲かせ、想い人を見つめる女性。
幸せそうに我が子を見つめる夫婦。
ここはよくデートの待ち合わせとして使われる場所なのだ。
そんな場所で同行者を待っている私の心も、知らず知らずに浮き足立つ。
そして……
「すいません、ラムさん。お待たせしてしまいましたね」
「うんん、大丈夫。今来たところだから」
こういう場合、普通は男性が待つものらしいのだが、今回は私が悪い。
だって緊張しすぎて、約束の一時間前に来てしまったのだから。
彼も約束の時間から三十分も早く来てくれたのだから、そんなに申し訳ない顔をしないで欲しい。
「そのセリフは男性が言うべきだと思うんですがね」
「ほらほら、そんなに気にしないの。
今日はお茶しに行くんでしょ?
私楽しみにしてたんだから」
「そうですね。では早速、と言いたいところですが、まだ時間も早いですし、少し寄り道して行きましょうか」
そう言って歩き出す彼に着いて行く。
さりげなく握られた手の感触に、思わず顔が熱くなる。
それに私が歩きやすいように、歩幅に気を使ってくれる彼の気遣いに、心も暖かくなった。
そうして連れてきてくれたのは、最近同僚の中でも人気で、よく話の話題に上がる、少しお高めの洋服店だった。
「クラムくん?なんでここに?」
「ラムさんが、以前仕事は制服だから、私服はあまり持っていないって話していたでしょう?
ですから丁度いい機会ですし、少し買っていきませんか?
お金は俺が出しますから」
「そ、そんな。悪いからいいよ」
「俺がそうしたいので、買わせてください」
そんなことを言われてしまえば、無下にするのは申し訳なくなってしまう。
結局、女性の店員さんがオススメしてくれた服を、上下3着も買ってしまった。
会計の時言われた値段に少し顔が青くなった気がする。
彼は特になんの問題もなさそうに払っていたが…。
「く、クラムくん。やっぱり悪いから自分で…」
「そんな機会でも無ければ、ラムさんに服を買ってあげることなんてないですから、俺に払わせてください」
笑顔でやんわりと断られてしまった。
受付嬢のお給料も決して低い訳では無いが、こんな贅沢をして暮らせるほどではない。
今回みたいな買い物をした日には、今月は、明日から1日1食にしなければならないだろう。
「俺はあんまり趣味とかないので、お金は結構溜まってるんです」
そう笑顔で言ってくる彼に、心の悪魔が「彼と結婚すれば一生安泰だぞ?」と囁きかけてくるが、財力だけを理由に結婚しようだなんて彼に申し訳がないと、必死に誘惑を振り払う。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして。さ、約束したお店に行きましょうか。それとも靴とかも見に行ってみます?」
「もう大丈夫だから、お茶しに行こ!」
ちょっと悪戯っぽく笑って、そう聞いてくる彼に、慌てて行き先を決定する。
これ以上何か買われたら、私の胃がおかしくなっちゃう。
◇◇◇
「…何か浮かない顔だね?」
彼の紹介してくれたお店は、小さいながらも小洒落ていて静かな空間に、ほんの僅かに聞こえてくる外の喧騒が、まるで別世界のように感じる。
出されたお茶も絶品で、注文したクッキーと一緒に食べると、それはもう絶妙な味の調和を私に教えてくれた。
そんな私の様子をニコニコと見ていた彼だったか、何か少しいつもと違うように感じたのは、決して気のせいではなかった。
「…わかっちゃいますか?」
「そりゃ私は貴方の担当で、五年も付き合いがあるんだよ?そのくらい分かるよ」
その言葉に苦笑いを浮かべた彼は、ひと口お茶を含み、口を湿らせてから言葉を紡いだ。
「ラムさんは、俺の能力について何も聞きませんよね」
「そりゃ私は担当とは言っても、あくまでギルドの受付でしかないからね。言いたくないことは無理には聞けないよ」
「そうしてくれて、正直俺もとても助かってます。
ですけど昨日、フィンさんに俺の能力について質問されましてね。
その時は答えられないと言って誤魔化したんですけど、今思えば、それは仲間である彼らへの侮辱なのではないか。
そう思えたんです」
彼について、私はそれほど多くのことを知っている訳では無い。
幾つかスキルがあることや、一つだけ魔法が使えるなど、資料では知っていることはあるが、彼がいつも何を考え、何を思っているのか。
私には知る
「クラムくんは、それを団長さん達に教えたいのかな?」
「えぇ、それなりに有用な能力を持ってますし、なにより仲間に後ろめたいような、そんな感じがするんです」
「ならなぜ教えられないか、聞いてもいい?」
彼は少し躊躇うような様子を見せる。
こんな彼は初めて見るかもしれない。
こんな時に不謹慎かもしれないが、新鮮な感じだ。
「俺の能力が外に漏れた時、他の神が騒ぎ出すんじゃないかと思ってるんです。
以前もあったでしょ?
うちの主神が、
あった。
それは、クラムくんの急成長の具合が明らかにおかしいと、他のファミリアの主神達が騒ぎ出したのだ。
一大ファミリアのロキ・ファミリアと言えど、この火消しにはかなり苦労したと聞く。
「喋るとファミリアの皆に迷惑がかかる。だから喋れない、ってこと?」
「えぇ、まぁ
…それに怖いんです」
「怖い?」
「俺の急成長の理由もこの能力に関係があるので、これを知られた時、彼らが俺を卑怯者と呼ばないか」
本当に、こんなに弱々しい彼を見るのは初めてだった。
いつも笑顔で、無茶ばかりやって来る彼が、こんなにも素直に弱さをぶつけてくれるのは。
私を信頼してくれている気がして、とても嬉しかった。
「クラムくん、貴方はファミリアの皆を信頼しているんでしょう?」
「はい、勿論です」
「ならそんな彼らを信じてあげなさい」
その言葉に、彼は驚いた表情をして、今日一番の笑顔を私に向けた。
「でもその前に、俺が一番に教えるのはラムさんがいいです」
…その言葉は卑怯だと思う。
初めて水増し要素(主人公視点)無しに話が進められた。
大体3000字前後を目安に書いてるんですが、やっぱり安易な方法があると、それに頼っちゃう私の悪い癖。
いい加減治さねばならないとは思ってるんですが…。
いや、別に主人公視点が無駄だと言っている訳では無いのですがね。
今回の話ですが、出来るだけ心理描写を丁寧に書くことを心掛けてみました。
上手い作品は、自然と登場人物に感情移入しちゃうんですよね。そういった作品を目指し、今後も精進して行きます。
まとまった戦闘描写のある話は、もう少し先になります。
あまり期待せずお待ちください。
ではまた次回。