ダンジョンに念能力者がいるのは間違っているだろうか?   作:気まぐれな暇人

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早速、誤字の報告をして下さった三の丸様、ありがとうございました┏●
そしてお気に入り登録して下さった皆様にも感謝を

1晩で、UAが1000以上増えていたことに正直ビビっております。
やっぱり、ダンまちとHUNTER×HUNTERのネームバリューは凄いんだなぁと思い知らされました。
今後も出来るだけ続けていきますので、暖かく見守っていただければ幸いです。


その4 それぞれの想い

 

「結局わかんなかったんだよね?クラムのこと」

 

「そうらしいわ」

 

 あたしの双子の姉、ティオネに昨日の話し合いの結果を確認するが、やはり分からずじまいだったと知らされる。

 

「けっ、秘剣だかなんだか知らねぇが、ワケわかんねぇもん使いやがって」

 

 今回の同行者であるベートは、八つ当たり気味に手頃なモンスターを蹴り飛ばす。

 けどこれは仕方ないと思う。だって…

 

「仲間の私達にも教えられないこと、なのかな?」

 

「そうなんでしょうね、団長達にも教えないってことは」

 

 あたしは目の前に立ちはだかったミノタウロスを、ウルガで斬り捨てる。

 このあたりの階層だと、斬りごたえのある敵がいないのでつまらない。

 

「つまりアイツは俺達も信用してねぇってことかよ」

 

「ベートそれは言い過ぎだよ!」

 

 あたしは、クラムはそんな薄情な奴じゃないと、反論するが、

 

「ならなんで俺達に話さねぇ」

 

 そう返され思わず黙り込む。

 冒険者にとって、手の内が知られることは確かに不味い。

 特に魔法使いは、他人に自分の魔法が知られることを嫌う傾向にある。

 だが仲間にまで教えないというのは…

 

「俺はアイツに背中は預けられねぇな」

 

 その言葉を否定できるだけの理由を、あたしは持っていなかった。

 

「とは言っても、近々遠征をするって団長が言ってたわ。遠征中もそんなこと気にしてたら、死ぬわよ?」

 

「るっせぇなァ、分かってるよ。ンなことは。だがな、自分の手の内も見せられねぇような奴を、俺は仲間だとは認めねぇ」

 

 ベートは強さに拘り、自分より弱い人を見下すようなことを言うが、ファミリアの団員には仲間として接している。

 だけどクラムだけはそう見ないと、そう見られないと。

 

 なんだか家族がバラバラになってしまうようで、辛い。

 

「はぁ…、分かったわ。とりあえず団長には伝えてみるから。ティオナも落ち込んでないで、手を動かして」

 

 あたしが考え事をしている間に、先程とは別のモンスターの一団とエンカウントしたようだ。

 ダンジョンを舐めていると死ぬ。

 それはあたし達、第一級冒険者でも変わらない。

 

 あたしは一度迷いを振り捨て、戦場へ駆ける。

 だが、どうかクラムが私達を信じてくれる日が来るのを、願わずにはいられない。

 

 ――――――

 

 ギルドの入口の前にある広場。

 いつも出勤の際に通っている道ではあるが、今日はなんだか別の場所のように見えた。

 いつもはまだ薄暗い時間に通るからかもしれない。

 

 だが理由がそれだけでないことは、私自身がよく分かっている。

 中央にある噴水の周りには、一人で誰かを待つように黄昏る男性。

 花のように笑顔を満開に咲かせ、想い人を見つめる女性。

 幸せそうに我が子を見つめる夫婦。

 

 ここはよくデートの待ち合わせとして使われる場所なのだ。

 そんな場所で同行者を待っている私の心も、知らず知らずに浮き足立つ。

 

 そして……

 

「すいません、ラムさん。お待たせしてしまいましたね」

 

「うんん、大丈夫。今来たところだから」

 

 こういう場合、普通は男性が待つものらしいのだが、今回は私が悪い。

 だって緊張しすぎて、約束の一時間前に来てしまったのだから。

 彼も約束の時間から三十分も早く来てくれたのだから、そんなに申し訳ない顔をしないで欲しい。

 

「そのセリフは男性が言うべきだと思うんですがね」

 

「ほらほら、そんなに気にしないの。

 今日はお茶しに行くんでしょ?

 私楽しみにしてたんだから」

 

「そうですね。では早速、と言いたいところですが、まだ時間も早いですし、少し寄り道して行きましょうか」

 

 そう言って歩き出す彼に着いて行く。

 さりげなく握られた手の感触に、思わず顔が熱くなる。

 それに私が歩きやすいように、歩幅に気を使ってくれる彼の気遣いに、心も暖かくなった。

 

 そうして連れてきてくれたのは、最近同僚の中でも人気で、よく話の話題に上がる、少しお高めの洋服店だった。

 

「クラムくん?なんでここに?」

 

「ラムさんが、以前仕事は制服だから、私服はあまり持っていないって話していたでしょう?

 ですから丁度いい機会ですし、少し買っていきませんか?

 お金は俺が出しますから」

 

「そ、そんな。悪いからいいよ」

 

「俺がそうしたいので、買わせてください」

 

 そんなことを言われてしまえば、無下にするのは申し訳なくなってしまう。

 結局、女性の店員さんがオススメしてくれた服を、上下3着も買ってしまった。

 会計の時言われた値段に少し顔が青くなった気がする。

 彼は特になんの問題もなさそうに払っていたが…。

 

「く、クラムくん。やっぱり悪いから自分で…」

 

「そんな機会でも無ければ、ラムさんに服を買ってあげることなんてないですから、俺に払わせてください」

 

 笑顔でやんわりと断られてしまった。

 受付嬢のお給料も決して低い訳では無いが、こんな贅沢をして暮らせるほどではない。

 今回みたいな買い物をした日には、今月は、明日から1日1食にしなければならないだろう。

 

「俺はあんまり趣味とかないので、お金は結構溜まってるんです」

 

 そう笑顔で言ってくる彼に、心の悪魔が「彼と結婚すれば一生安泰だぞ?」と囁きかけてくるが、財力だけを理由に結婚しようだなんて彼に申し訳がないと、必死に誘惑を振り払う。

 

「あ、ありがとう」

 

「どういたしまして。さ、約束したお店に行きましょうか。それとも靴とかも見に行ってみます?」

 

「もう大丈夫だから、お茶しに行こ!」

 

 ちょっと悪戯っぽく笑って、そう聞いてくる彼に、慌てて行き先を決定する。

 これ以上何か買われたら、私の胃がおかしくなっちゃう。

 

 ◇◇◇

 

「…何か浮かない顔だね?」

 

 彼の紹介してくれたお店は、小さいながらも小洒落ていて静かな空間に、ほんの僅かに聞こえてくる外の喧騒が、まるで別世界のように感じる。

 出されたお茶も絶品で、注文したクッキーと一緒に食べると、それはもう絶妙な味の調和を私に教えてくれた。

 

 そんな私の様子をニコニコと見ていた彼だったか、何か少しいつもと違うように感じたのは、決して気のせいではなかった。

 

「…わかっちゃいますか?」

 

「そりゃ私は貴方の担当で、五年も付き合いがあるんだよ?そのくらい分かるよ」

 

 その言葉に苦笑いを浮かべた彼は、ひと口お茶を含み、口を湿らせてから言葉を紡いだ。

 

「ラムさんは、俺の能力について何も聞きませんよね」

 

「そりゃ私は担当とは言っても、あくまでギルドの受付でしかないからね。言いたくないことは無理には聞けないよ」

 

「そうしてくれて、正直俺もとても助かってます。

 ですけど昨日、フィンさんに俺の能力について質問されましてね。

 その時は答えられないと言って誤魔化したんですけど、今思えば、それは仲間である彼らへの侮辱なのではないか。

 そう思えたんです」

 

 彼について、私はそれほど多くのことを知っている訳では無い。

 幾つかスキルがあることや、一つだけ魔法が使えるなど、資料では知っていることはあるが、彼がいつも何を考え、何を思っているのか。

 私には知る(すべ)がない。

 

「クラムくんは、それを団長さん達に教えたいのかな?」

 

「えぇ、それなりに有用な能力を持ってますし、なにより仲間に後ろめたいような、そんな感じがするんです」

 

「ならなぜ教えられないか、聞いてもいい?」

 

 彼は少し躊躇うような様子を見せる。

 こんな彼は初めて見るかもしれない。

 こんな時に不謹慎かもしれないが、新鮮な感じだ。

 

「俺の能力が外に漏れた時、他の神が騒ぎ出すんじゃないかと思ってるんです。

 以前もあったでしょ?

 うちの主神が、神の力(アルカナム)を使ってるんじゃないかって疑惑」

 

 あった。

 それは、クラムくんの急成長の具合が明らかにおかしいと、他のファミリアの主神達が騒ぎ出したのだ。

 一大ファミリアのロキ・ファミリアと言えど、この火消しにはかなり苦労したと聞く。

 

「喋るとファミリアの皆に迷惑がかかる。だから喋れない、ってこと?」

 

「えぇ、まぁ

 

 …それに怖いんです」

 

「怖い?」

 

 

「俺の急成長の理由もこの能力に関係があるので、これを知られた時、彼らが俺を卑怯者と呼ばないか」

 

 本当に、こんなに弱々しい彼を見るのは初めてだった。

 いつも笑顔で、無茶ばかりやって来る彼が、こんなにも素直に弱さをぶつけてくれるのは。

 

 私を信頼してくれている気がして、とても嬉しかった。

 

「クラムくん、貴方はファミリアの皆を信頼しているんでしょう?」

 

「はい、勿論です」

 

「ならそんな彼らを信じてあげなさい」

 

 その言葉に、彼は驚いた表情をして、今日一番の笑顔を私に向けた。

 

 

 

「でもその前に、俺が一番に教えるのはラムさんがいいです」

 

 …その言葉は卑怯だと思う。




初めて水増し要素(主人公視点)無しに話が進められた。
大体3000字前後を目安に書いてるんですが、やっぱり安易な方法があると、それに頼っちゃう私の悪い癖。
いい加減治さねばならないとは思ってるんですが…。
いや、別に主人公視点が無駄だと言っている訳では無いのですがね。

今回の話ですが、出来るだけ心理描写を丁寧に書くことを心掛けてみました。
上手い作品は、自然と登場人物に感情移入しちゃうんですよね。そういった作品を目指し、今後も精進して行きます。

まとまった戦闘描写のある話は、もう少し先になります。
あまり期待せずお待ちください。

ではまた次回。
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