ベル君が賢者に憧れるのは間違っているだろうか?   作:もさま

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なんとかコツコツ書き進めてます。

おかげさまで合計10万字を超えました。
卒論2本分書いたと思うとなかなか感慨深いですね。



勇気(ブレイブ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリルカが誤って魔導書(グリモア)を読んでしまって数日後の事、私はロキとフィンに先日の出来事について順を追って話していた。

今この場には私を含めたこの三人しかいないが、それはロキに人払いを頼んだからだ。この話を他のものに聞かれるのは具合が良くない、特にティオネに聞かれれば面倒極まりない結果が待っているだろう。

 

「…とそんなところだ。そこでこのリリルカについて、お前達に相談した訳だ」

 

①例の灰被りの少年(ベル・クラネル)と本屋で再会し、以後彼に時折講義の場を設けていたこと。

②その縁で偶然リリルカを助けたこと。

③そのリリルカが誤ってベルが持っていた魔導書(グリモア)を読んだこと。

④その後リリルカから身の上話を聞いたこと。

⑤私としてはリリルカをソーマファミリアから引き抜きたいと思っていること。

上記の5点をなるべく簡潔に二人に伝える。ロキにしろフィンにしろ、ここまでそれなりに長い付き合いもある。このような話だが二人は途中で口を挟むことはしなかった。

 

「…リヴェリア、今回はどういう風の吹き回しだい?君らしくないな」

 

話し終えた結果としては、おおよそ二人とも予想通りの反応、つまるところ渋い顔をしている。よりにもよってあのソーマファミリアだ。当然の事だろう。

 

「そらまぁリヴェリアはうちらのママやし、光るもんのある子を見掛けて勧誘するのはかまへんよ?せやけどな、両親ともに根っからのソーマファミリアの子ってのは正直頂けんで?」

 

魔導書(グリモア)を読んだといったけれど、将来的にでもいいが、戦力として期待出来そうなのかい?」

 

「そこは五分といった所だな。彼女は力を欲していたから何かしら攻撃が出来る魔法を得る可能性は高いとは思うが、それが有用なものかはステータスを更新しなければ判断出来ないだろう。」

 

ロキはその細い目で値踏みをするようにこちらを覗き込む。勿論これまでの信頼はあるが、それとファミリアの運営に関わる事は別問題なので無条件に受け入れられるよりもこの疑い深い眼差しは好ましい。

一方フィンの目線の方は疑いというよりも、ならばなぜそんなことを言い出すのか理解できない、というような色が強いだろうか。

 

「…戦闘面で言えば指揮系統のスキルに目覚める可能性は高いと踏んでいる。ベルの話を聞く限り、戦闘能力の無い状態でダンジョンに潜り、生存に神経を割き続けた為か非常に目端が効くようだ。彼女の指示を受けることで背中に目が生えたようだと話していた。自衛の手段が少なかった為、他者への指示にも慣れているのだろう。加えて境遇故か口も良く回る。」

 

「なるほど、確かにそれは稀有な才能だ。僕が直接指揮を取れないときも少なくないし、深層の攻略時にはどうしても攻略班と待機班に分かれる事になるからね。とはいえその才能が発揮されるのはいつになるか分からない話だ。それは君にも分かっているだろう?」

 

私達のファミリアは攻略陣の一丁目一番地だ。私とてその自負はある。故にフィンが言いたいことも良く分かる。我々に必要な戦力足り得るのか?という疑問は当然のものだ。

分かってはいるが、今回に限っては私が注視したい部分はそこにない。

 

「短期的なメリットはほぼ皆無。長期的に見ても必ず戦力になるとは言い切れない。加えてソーマファミリアの団員だ。我ながららしくないと、確かにそう思う。だがリリルカはこのファミリアに欠けている資質を補ってくれる人材になり得ると考えている」

 

「資質…ね。ソーマファミリアの子がかい?」

 

「ウチらに欠けているもん…ね」

 

二人の目線がより険しくなる。

それも無理の無いことだろう。私が逆の立場でもやはりこのような目を向けた事だろうから。

他のファミリアの人材に自分達のファミリアに無い長所がある、ましてやそれがソーマファミリアとなれば目線は険しくならざるを得ないだろう。ソーマファミリアは酒造を除けば取り柄らしいものが見当たらないゴロツキファミリアと言っても過言ではないのだから。もっとも、その酒造についても主神のソーマがやっていることなので、こと団員に関しては長所を上げる方が困難かもしれない。

 

「悪く言えば生き汚さや生への執着、良く言えば慎重さや苦境にあっても命を投げ出さない覚悟だ。このファミリアではアイズやベート、ティオネ達姉妹といい命知らずな者が多い。だからこそ強くなれた面も大きいが、泥を啜る覚悟もまた備えるべきだろう」

 

「まぁ…、生き急いでる面は否定出来んなぁ…」

 

「だけどリヴェリア、それは冒険者としての資質とも言えないかな?…アイズに関してはリヴェリアの言う覚悟をもっと持たないと危ないかもしれないけどね」

 

「そうだ。私から、いやファミリアの誰から見てもアイズの有り様は危うい。敵を討つ、強くなる、それも結構なことだが、ファミリアはその名の通り家族のような共同体だ。時には周りの団員達の為に自分を省みなければいけない」

 

ファミリアは家族のような共同体、これは偽らざる本音だ。若い団員達のことはどうにも歳の離れた弟や妹、或いは姪や甥のように感じてしまう。

特にアイズに対してのそれは他の団員達に対するものよりも更に強い自覚もある。

 

「せやけどなぁ、コソ泥なんぞウチの家族にはいらんで?」

 

「あぁ、ロキの言う通り僕もこのファミリアに"溝鼠"は求めていない。僕は英雄(ヒーロー)でなくてはいけない。勇者(ブレイバー)でなければいけない。君も知っているだろう?」

 

睨み付けるような目線をフィンが向けてくる。彼の野望の為には不要な瑕疵は無いに越したことはないのだ。当然その要因になり得るものもなるべく排除したいと望んでいる。

だとしても女性に向けるそれでは無いだろうと文句の一つも言いたくなるが。

 

「いや、掃き溜め(ソーマファミリア)にあってもリリルカは腐っていない。溝鼠ではなくもっと気高い小動物さ。あそこまで忍耐強いのはなかなか稀有なことだと思う」

 

「…なんや、めっちゃ高評価やんか。採点の厳しいリヴェリアが珍しいな」

 

「その根拠を聞いてもいいかい?」

 

不意にフィンの視線が玩具を見付けた子どものような輝きを持つ。なだらかに垂れた眦が僅かに開かれた為だ。

容姿と相まって、何か悪戯をなそうとする悪童のようにも見える。

 

「そうだな、まずあれだけ劣悪な環境にあってもまだ諦めていないことだ。両親が神酒(ソーマ)に呑まれて、ファミリアの団員からは悪意ばかり向けられ、助けてくれた老夫婦にもソーマファミリアのせいで見捨てられ、それでもなお生き抜こうとするのは並大抵のことではない。復讐しようという気概すら失せるものが大半だろう」

 

リリルカから聞かされた境遇は悲惨の一言だ。子どもらしい幸せな時間というものとはあまりにも距離がある。神酒(ソーマ)の代金として売春宿(イシュタルファミリア)に売られなかったのは幸運だったと力無く笑いながら、なおあれだけ気丈に振る舞える者はそうそういないだろう。

 

「そしてこれらの事情を話せる相手がずっといなかった事も話しぶりから窺えた。一度でも話したことのある内容というものは自然と以前の流れをなぞるか、または頭の中で整理し推敲してから話すものだが、彼女は自分の口から出てくる言葉にも驚いている様子だった。物心ついてからずっと一人きりで自分を守り続けられるというのは心の強さと言えないか?」

 

フィンは顎に手を添えて、目を閉じる。その後親指の様子を確かめるように口許に親指を添えた。親指の脇から見えた口角が僅かに上がったように見える。

 

「…うん、続けてくれリヴェリア」

 

恐らくは何らかの疼きを親指に感じているのだろう。

それが何なのかは、僅かに上がった口角が答えというところか。

ここまでは思った通りにいっている。南瓜の馬車を拵えてやるといった手前、フィンの興味を勝ち取るのは私の仕事だ。約束を違えることは矜持に反する。

 

「リリルカは強い子だ。これだけの事を己のなかで抱え続けられるものはそう多くない」

 

彼女は助けを乞うのではなく、不義理を嫌った為に事情を話した。内に抱えたものに耐えられなくなったという側面も大きいだろうが。

だが、そうなるまでリリルカはその小さい身体で抱え続けてきた。

雑踏で踏みにじられた草が、しんしんと続く厳冬を越えた先で春風に花を芽吹かせるように、リリルカはきっかけ次第で化けるだろう。私はそこに可能性を見た。

 

「そもそも事情を話したのも魔導書(グリモア)を読んだせいだ。同情を買おうという意図のものではない。現状、リリルカはステータスを更新出来ないから、このままでは魔法を覚えることはない。だがそれをベルは心配するだろう。なぜ魔法を覚えないのか?そうなれば必ずベルはその先の事情に立ち入ろうとする。だから私が同席している時にリリルカは事情を打ち明けた。九魔姫(ナインヘル)の私が対応するならばベルが必要以上に危険に踏み込むことも無いだろうと。話し出すまでに何度もベルを見て、私を見て考えていた」

 

「はぁ、なるほどなぁ。確かにそら大したもんや。そんだけいっぱいいっぱいな中で、拙いなり人に気遣えるんは貴重かもな」

 

「…」

 

腹の中は決まっているのだろう。フィンはもはや親指を確かめることもなく楽しげに目を瞑っている。

さて、仕上げに掛かろう。

 

「なによりいじらしいだろう?老婆心も湧くというものだ」

 

「ふっ、リヴェリアが言うと説得力があるね」

 

「放っておけ。貴様も40を越えているだろうが。…なぁフィン、英雄(ヒーロー)の演出には、相応しいお姫様(ヒロイン)が必要だと思わないか?お誂え向け、彼女は小人(パルゥム)だ」

 

フィンは何も答えず、しかしもはや隠すこともなく笑みを浮かべていた。

その小さな背中に小人(パルゥム)全体の重すぎる希望を背負ったフィン、他人の悪意を抱えきれないほどにバックパックとともに背負ったリリルカ、対照的なようで何処か二人とも似ている部分がある。

 

「あー、なるほどなぁ。こら、話をするのは三人でってのも納得や。ガレスが酒飲んでティオネに溢したらえらいこっちゃやで…」

 

ロキはその場面を想像して身震いをした。私もその場面を想像すると頭を抱えたくなるので無理からぬことだ。

下手をすればファミリアの拠点がティオネの暴走で潰れかねない。

 

「さて、お膳立ては済んだが…」

 

約束通り南瓜の馬車は拵えた。この先はリリルカ次第だ。勇者(フィン・ディムナ)の前で勇気を示せるかどうか。何も出来なければそれまで。私の見込み違いだったということだろう。

だが実のところそれほど心配はしていなかった。目は口ほどにものを語る。リリルカの目には奥に輝く亜麻色の光が宿っていたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で?君は何処の誰でベル君の何なんだい?返答次第じゃ訴訟も辞さない覚悟だよボクはぁ!」

 

小人(パルゥム)である私と比べてもさして背の高さが変わらない小さな女神様が腕組みをして仁王立ちで凄んでいる。迫力は残念なことに全く無いと言っていいだろう。

ただ一点だけ、私とは主張の大きさが全く異なる部分がある。これがトランジスタグラマーというものなのか、交差した両腕が半ばその胸に乗っている。これだけは凄い迫力だった。着ている純白のワンピースも私が着たならば恐らく前側の裾だけ随分余ってマタニティウェアのようになるだろう。

 

(胸囲の格差です…)

 

内心ぐぬぬと思いつつ表情を取り繕い深く一礼をする。

 

「あなたがヘスティア様ですね。わたくしはリリルカ・アーデと申します。どうぞよろしくお願い致します」

 

「あ、これはご丁寧にどうもベル君の主神のヘスティア…、って違わい!礼儀正しいのは感心だけど、今そこは重要じゃないんだよ!」

 

優しくて面白い神様とはベル様が仰っていたが、なるほど確かにからかい甲斐のありそうな神様だった。ノリツッコミの動きのキレは完全に広場の大道芸人のそれだ。

 

「神様、アレですよ。前に言っていた小人(パルゥム)のサポーターの女の子ですよ」

 

「まぁそれは薄々分かっていたとも。そこじゃなくて、なんでそのサポーター君が()()()()()()()()()()に来ているのかって聞いているんだよ!」

 

頬をハムスターのように膨らます姿は何とも庇護欲を誘う愛らしい姿だ。ベル様は何とも思わないのだろうか?不思議だ。慣れというものは恐ろしい。

 

「愛の巣って…。じゃなくて神様、それには色々事情がありまして…。実はダンジョンの帰りにリリの宿まで送ってたんですけど、リリの部屋の前に柄の悪い人達が居てですね…」

 

「そういう訳でしてベル様のご厚意でこちらに連れてきて頂いたんです」

 

ベル様は帰りしな自分のファミリアの拠点(ホーム)に来るよう提案してきた。実際この時間帯にソーマファミリアの目を盗みながら宿を取るのは非常に骨の折れる作業だった為渡りに船ではあった。

改めて部屋を見渡す。ベル様は汚いところでも良ければ是非来てくれと言っていたが、確かにこれはかなり散らかっている。そもそも廃教会の隠し部屋?なので拠点(ホーム)にする前は全く整備がされていなかったのだろう。廃墟一歩手前という様相だ。

 

「ベル君、優しいのは結構だけどそもそもどういう事情でそうなってるのかとか把握してるのかい?この子が悪いかも知れないよ?」

 

「そこは勿論僕も分かっています。事情も知ってますし、近日中に解決出来るかも知れないんです。でもそれまでリリの安全は確保してあげたいんです」

 

あの後、リヴェリア様に近日中に招待状は出すからそれまでは自分で何とかして見せろ、との言葉を頂いた。勿論ベル様もその場に同席していた。

頭のはてなが消えないベル様にリヴェリア様の発言の意図を説明すると、「準備が整うまでは一緒に」とダンジョンへの誘いを受けた。おかげで金銭的には幾らか余裕が出来ていた。

止せばいいのにベル様はとんだお人好しである。一人にさせるのを良くないと考えたのだろう。おかげで今回も助けられたので感謝の一念しかない。

 

「いやまぁ、そこまで考えてるならボクも文句は無いけども…」

 

「女の子を夜に、しかも危ないかも知れないのに放り出すなんて男らしくないじゃないですか。神様、ここは僕の顔を立てると思って…」

 

「図々しいお願いとは思いますが、どうかよろしくお願い致します。勿論泊めて頂く以上リリに出来ることは何でも致しますから」

 

「若い女の子が何でもなんて軽々しく言うもんじゃないぜ全く!サポーター君も家事くらい出来るんだろう?泊まっている間は家事をこなすこと、あまり長居せず解決すること。これを守れるなら仕方無いから置いといてあげるよ。」

 

ヘスティア様はそこまで一息で言い切ると再び仁王立ちになり目を吊り上げた。

 

「たぁだぁしぃ!ベル君に色目使ったら即刻叩き出すからね!!」

 

「ちょっともう!神様、恥ずかしいですよ!」

 

実のところ、私はベル様に助けられた時に生まれて初めて異性への好意と言うものを意識した。

吊り橋効果かも知れない、それでもこうやって手を差し伸べてくれる男なんてこれ迄一人も居なかったのだ。まして冒険者なんて十把一絡げに最低な連中だと信じていたのだから。

今でもベル様の人のよさはとても好ましいとは思っている。

 

(でも、アレを見せられてしまいますとね…)

 

ベル様と出会いたったの一週間ほど。この短い間だけでも、ベル様の朱色の瞳はいつも九魔姫(ナインヘル)リヴェリア様の居る方に漂って輝いていた。どれだけ鈍感でもあの姿を見せられれば、彼がどの様な想いを深緑の貴人に寄せているのか理解しないものは居ないだろう。

 

(まぁ、いいんです。リリには過ぎた人ですから…)

 

初恋と失恋は二つで一つ、と昔から言われてきた理由も分かるというものだ。とはいえ一週間で失恋する者もそう多くはないと思うけれども。

 

「ご安心をヘスティア様」

 

声を掛けながら右手で小さく手招きをする。

ヘスティア様は怪訝な顔をしながらもこちらに近付いてくる。目の前まで来たヘスティア様に私は耳打ちをする

 

『リヴェリア様への態度を見てベル様に挑戦しようと思うほどリリは自信過剰ではありません』

 

『なぁにぃ!?やっっっっぱりリヴェリア嬢にぞっこんなのかいベル君は!?』

 

『そりゃあもう、あっちにリヴェリア様が行けば顔があっちに向き、そっちにリヴェリア様が行けばそっちを向き、手を動かそうもんなら穴の空きそうな目線を指先に向けてますよ』

 

『ぐ、ぐぬぬぬぬぬぬぬ、おのれリヴェリア嬢めぇ…』

 

百面相をしながら小声で叫び小さく地団駄を踏むというなんとも器用な怒りを現しながら歯軋りをするヘスティア様に思わず吹き出す。一通り怒りを露にしたあとにヘスティア様はこちらに向き直った。

 

『…とりあえず君がベル君に何もするつもりが無いことは分かったよ。君から嘘の気配は感じないからね。…なぁ、サポーター君、ちょーっと相談なんだけどぉ』

 

『…リヴェリア様のベル様に対する様子を教えて欲しいんですか?』

 

『いや!ほんと君は話が早いね!気が利くよ!…で、どうなんだい?』

 

『そうですね…、弟?弟子?生徒?そんな感じの目線だったと思います。多分見込みのある若者だって思ってるんじゃないですかね』

 

『貴重な情報ありがとう!いや、助かったよ!』

 

満面の笑みで私の手を握るヘスティア様に面食らう。ソーマファミリアしか知らない私からするとここまで距離感の近い神様も居るのかと驚いてしまう。

なお、ここまでのやり取りは全て小声のため、ベル様は何の話か分からずこちらを見ながら怪訝な顔をしていたが、ヘスティア様と手を取り合っているのを見て笑顔を綻ばせた。

 

「なんだかよく分かんないけど、神様もリリもすぐ仲良しになれたみたいですね!よかったです!」

 

考えても分からないものは分からない、とりあえず二人とも仲良しに見えるので嬉しい。ベル様の表情からはそんな感じの事が読み取れた。

何ともまぁ、何処までいっても毒気の無い人だなと笑えてくる。

 

「そうだね、ベル君。ボクは結構このサポーター君を気に入ったよ。しっかりしてるし、彼女がついてるならベル君を外に安心して送り出せそうだね!」

 

「はい!リリはしっかり者なのでいつも助かってます!…ってあれ?もしかして心配させるほど僕ってうっかりしてました?」

 

「ハハハ!ベル君もようやく自覚が出てきたみたいだね!」

 

「酷いですよぉ神様ぁ」

 

漫才のようなやり取りに吹き出してしまう。思えばベル様の周りにはいつも明るい空気が流れている。私もこれまでの人生で一番笑っているかもしれない。

こういう人を人たらしとでも言うのだろうか。

こんな風にファミリアで笑いあえるのならば、そんな冒険者ならば、私もこうはならずに済んだかも知れない。

 

「改めて、短い間ですがお世話になります」

 

私は頭を下げ、そして覚悟を決める。

 

(勇気を示す、それも勇者(ブレイバー)に。リヴェリア様も、そしてこれから話をするフィン様も、リリに戦力としての期待を掛けている訳はありません。他のメリットだってろくに用意出来ません。ならば私に求められているのは…)

 

自分の掌を見下ろす。皹に血豆、細かな古傷が満遍なく残っていて、指先と付根の皮が厚ぼったくなっていることが一目で分かる。庇護無しに生き残るにはあらゆる雑用をこなさなければいけないからと、酷使された私の手はきっと同世代の女の子達に比べて凄く醜い。けれどもこれが唯一の武器だ。泥を啜って這いずって、なお足掻いた生き様そのものだ。

 

(必死に生きること、しぶとさ、リリが示せるとすればこれだけです。これだけが私の勇気(ブレイブ)です)

 

 

 

後に、庇護無き者の母(クレイドル)と称された小人(パルゥム)の聖母はこの時から歩みを始める。

炉の神(ヘスティア)がもたらした聖火(ベルクラネル)は確かに少女の闇夜に輝き、道を示したのだ。

 




お察しの方も多いかと思われますが、リリはヘスティアファミリアとは、別の道で活躍させる予定です。
お待たせさせた分頑張って更新していきたいと思います。
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