ラブライブ!~太陽と月~   作:ドラしん

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お待たせ致しました。

永らく更新を途絶えさせてしまい申し訳ありません!

ちょくちょく書いてはいたんですがモチベーションが上がらず中々進みませんでした・・・

しかし最近少し上がってきたので一気に完成まで打ち込みました!

しかし文字数がまさかの17000字って・・・

無理矢理1話で終わらせようとするんじゃなかった・・・

でも次回予告もあるし1話で終わらせたかったんだいっ!

というわけで今回は今までより長いですので心して閲覧して下さい。

では第10話、始まります。


第10話【少しの勇気を君に】

「うへー・・・もふもふ・・・」

 

「ことりちゃん、すっかりハマっちゃったみたいだね」

 

とある休み時間。

 

高坂さんと園田さんに連れられた俺と太陽は飼育小屋までやってきた。

 

「・・・アルパカなんて居たのかこの学校」

 

そこに居たのは二頭のアルパカと恍惚な表情を浮かべアルパカと戯れている南さんだった。

 

「このもふもふの毛・・・愛くるしい瞳・・・ああ、すきぃ~・・・」

 

「・・・南さん、完全にアルパカの虜だね」

 

「もうことりちゃん!チラシ配りに行くよ?」

 

「もうちょっとぉ~・・・」

 

高坂さんが声を掛けるが南さんは離れる様子はない。

 

こりゃ重症だな。

 

「もうことり、6人にならないと正式な部として認めて貰えないのですよ?」

 

「うーん。そうだよねぇ~・・・」

 

「こりゃダメだ」

 

太陽もどうやらお手上げらしい。

 

確かにこういう状態になった女の子を引き剥がすのは難しそうだ。

 

「・・・可愛いかな?」

 

「えー?可愛いと思うけどな~。特にこの首周りのふさふさした毛とか・・・幸せぇ・・・」

 

南さんはさらにアルパカに近づくと、密着しながら首周りを撫で始めた。

 

「こ、ことり?危ないですよ?」

 

「え?大丈夫だよ・・・わっ!」

 

南さんが視線を一瞬園田さんに移した瞬間、アルパカに頬を舐められた。

 

南さんは舐められた衝撃で尻餅をついてしまった。

 

「こ、ことり!?な、なんてことを・・・ここは一つ弓で!」

 

いやいやダメだろ!?

 

モンスターハンターかよ。

 

「ダメだよ!」

 

園田さんの暴走にさすがの高坂さんも気づいたみたいだ。

 

「くそ!こいつよくも南さんを!」

 

まずい、こいつもこいつで暴走しだしたぞ。

 

「落ち着け太陽。相手はアルパカだぞ?」

 

「だからなんだ!俺を止めるな冬夜ぁぁぁ!!」

 

ああ!うるせぇこいつ!

 

少しは冷静になれよダメイケメンが!

 

「・・・グルル・・・」

 

俺の背後で茶色の毛をしたアルパカが唸っている。

 

この状態は確か・・・

 

「ぺっ!!」

 

ビチャ!!

 

「あ・・・」

 

アルパカは凄い勢いで口から唾を吐き出した。

 

真っ直ぐ飛ぶ唾はそのまま俺の方へと向かってくる。

 

しかしいち早く危険を察知していた俺は咄嗟にしゃがみ、唾は俺の頭の上を通過。

 

その先にいた人物は・・・

 

「・・・よくも・・・やってくれたなぁぁぁぁ!!!!」

 

現在ぶちギレなうの太陽だった。

 

「うん。やっぱり俺の知識は正しかった。アルパカは危険を察知すると臭い唾を吐くというのは本当だったみたいだな」

 

「ちょっと氷月君!説明しなくていいから早く朝日君を止めてよ!」

 

「お、落ち着いてね?朝日君」

 

「早まってはいけません朝日さん!」

 

「℃¥$¢£@§*&#%∂∝ω★※!!」

 

完全に怒りで崩壊してしまった太陽は謎の言葉を発しながらアルパカの元へ走り出す。

 

そんな太陽を三人がかりで止めようとしているが、それでも太陽の力の方が強かった。

 

「仕方ないな」

 

このままだとマジでヤバそうなので俺も太陽の元へ向かう。

 

その時、俺達の目の前を一人の女の子が通りすぎた。

 

「大丈夫だよ~。よしよし。うん、いい子いい子」

 

女の子は慣れた手つきでアルパカを撫でると、先程まで威嚇していたアルパカは嘘のように大人しくなった。

 

凄いな・・・一瞬で止めたぞ・・・

 

「・・・へ?」

 

その様子を見た太陽は足が止まり、怒りもどこかへ飛んでいったみたいだ。

 

「良かった・・・朝日君落ち着いたよ・・・」

 

「はぁ・・・疲れました・・・」

 

「ありがとう!怒りを収めてくれて。アルパカの扱い上手だね!」

 

高坂さんは女の子の元へ向かい、お礼の言葉を述べる。

 

・・・ていうかよく見たらあの子ライブに来てた小泉さんじゃん。

 

「飼育係なので・・・」

 

慣れた手つきで水を交換する小泉さん。

 

なるほど、飼育係だったのか。

 

「・・・嫌われちゃったかな?」

 

「いえ、ただ遊んでただけだと思います」

 

「そ、そうなの?良かったぁ・・・」

 

心配そうな表情を浮かべていた南さんだったが、小泉さんの言葉により安堵の表情に変わった。

 

よっぽど好きなんだな。アルパカが。

 

「あ、でも・・・あの男の人の事は苦手になっちゃったかもです・・・」

 

ぷっ!あいつ嫌われてやんの。

 

女の子には好かれてもアルパカには好かれなかったみたいだな。

 

ざまぁみろ。

 

ちなみに太陽は先程「臭い!着替えてくる!」と言いながら全速力で走っていった。

 

「・・・おお!よく見たら花陽ちゃん!」

 

「あ、ライブに来てた!」

 

あ、今気付いたのね。

 

「ねぇ花陽ちゃん!」

 

正体が小泉さんとわかった瞬間、高坂さんは凄い勢いで詰め寄った。

 

「は、はい・・・」

 

見ろ。完全に畏縮してるじゃないか。

 

「アイドルやらない!?」

 

「穂乃果ちゃんいきなりすぎ・・・」

 

「え、えっと・・・」

 

突然の勧誘に当然小泉さんは困惑。

 

南さんもツッコまずにはいられなかったようだ。

 

それにしても勧誘下手くそかよ。

 

「で、どうかな花陽ちゃん!?悪いようにはしないからさ」

 

そんな悪そうな顔で言っても説得力0なんだけど。

 

小泉さんはしばらく考えた素振りを見せると、顔を上げ口を開いた。

 

「・・・西木野さんがいいかと・・・」

 

「え?ごめんもう一度いい?」

 

思いの外小泉さんの声が小さく、高坂さんは思わず聞き返した。

 

「西木野さんがいいと思います。歌も上手ですし、可愛いですし・・・それにμ'sの曲を作ったのも西木野さんですし・・・」

 

うんあれ?曲の事さらっと言ったな。

 

小泉さんも知ってるのかよ。

 

「うん!だよねー。私もあの子の歌好きなんだー」

 

「・・・だったらスカウトすれば良いのでは?」

 

「したよ。キッパリ断られちゃったけど」

 

西木野さんはもう勧誘済みか。

 

まぁ断るだろうな。西木野さんの性格と現状じゃ。

 

「あ・・・ごめんなさい・・・」

 

「え?ううん。花陽ちゃんが気にする事はないよ!こっちこそごめんね。急に誘っちゃって」

 

「い、いいえ!大丈夫です・・・」

 

「もし、気が変わって入りたいって思ったらいつでも言ってね?私達放課後はいつも屋上で練習してるから」

 

「はい。わかりました」

 

話に一区切りがつくと別の女の子の声が響いた。

 

「かよちーん!早くしないと授業に遅れちゃうよー!」

 

・・・かよちん?

 

小泉さんの事か?

 

そのあだ名の由来は一体何?

 

「うん、今行く!ではすいません失礼します」

 

ショートカットの子に呼ばれた小泉さんは丁寧にお辞儀すると、ショートカットの子の元へ走っていった。

 

確かあの子は星空さんだな。

 

ライブに来てたのを覚えてる。

 

「うーんダメかー。また別の人を探すしかないね」

 

「そうですね・・・さ、私達も教室に戻らないと授業に遅れますよ」

 

重要なのは一歩を踏み出せる決定的な何か。

 

小泉さんは必ずアイドルに興味がある。

 

何か一つでも悩みを越えれるきっかけがあればきっと入ってくれるはずだ。

 

「まだ時期じゃない・・・って事か」

 

迫るにはまだ時間がいる。

 

今はただ、彼女の動向を見守るしかない。

 

俺は三人の後を追うように、校舎内に入っていった。

 

・・・結局太陽戻ってこなかったな。

 

 

 

 

 

 

「かよちん!部活どこ入るか決まった?」

 

6時限目が終わり、クラスメイトは次々に帰る支度を始めている。

 

そんな中ショートカットの女の子、星空凜は浮かない表情をしている小泉花陽に話し掛けていた。

 

「ううん。まだ」

 

「まだなの?確か申請今週までだよ?」

 

「うん・・・わかってるんだけどなかなか決まらなくて・・・凜ちゃんは決まったの?」

 

「うん!凜は陸上部に入るつもり!あ、もしやりたい事ないなら一緒に陸上部入ろうよ!」

 

凜からの問いに花陽は思わず俯いてしまった。

 

「・・・かよちん?」

 

「・・・」

 

凜は黙りこくってしまった花陽の真下に潜り込むと、少し微笑みながら話した。

 

「かよちん、もしかしてスクールアイドルやりたいの?」

 

「・・・!・・・」

 

花陽は分かりやすく反応してしまった。

 

「やっぱり!」

 

「そ、そうゆうわけじゃ・・・」

 

「ダメだよ。かよちん、嘘つくと指合わせるからすぐわかるんだ。それにポスターを熱心に見てたのも知ってるんだよ?」

 

凜にスクールアイドルをやりたい事を言い当てられてしまい、また俯いてしまった。

 

「かよちん可愛いからアイドルに向いてるよ!やりたいなら今すぐ先輩にμ'sに入れてくださいって言いに行こう!」

 

凜は花陽の手を引っ張り連れていこうとする。

 

しかし花陽は躊躇した。

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「・・・かよちん?」

 

「あ・・・ごめんね」

 

脳裏に浮かぶのは今日の授業。

 

朝ポスターを見た時は勇気を貰えた。

 

しかし授業中に訪れた音読の時間でそれは崩れる事になる。

 

先生から指名された花陽はいつもより声を張り読み始めた。

 

だが途中で噛んでしまい、そのまま止まってしまった。

 

クスクスと聞こえる笑い声。

 

そして先生により強制的に終わってしまった

花陽の心を砕くには充分だった。

 

「どうしたの?昔からアイドル好きだったのに」

 

脳裏に浮かぶのはテレビに映るアイドルを夢中で見つめる小さい頃の自分の姿。

 

確かに昔からアイドルは好きだった。

 

アイドルになりたいとも思っていた。

 

しかし花陽の中の理想と現実は大きくかけ離れていた。

 

「・・・もし、私がスクールアイドルやるって言ったら凜ちゃんもやってくれる?」

 

なんでも良かった。

 

夢だったアイドルをやる時に抱いている不安や恐怖を少しでも取り除けるきっかけが欲しかった。

 

一番の親友にすがる花陽だったが、凜の返答はまたも花陽の足を止めるものだった。

 

「だ、ダメだよ!凜はアイドルには向いてないよ・・・」

 

「そんなこと!」

 

「そんなことあるよ!凜ってあまり女の子ぽくないし、髪だって短いし・・・だから凜には無理だよアイドルなんて」

 

ハッキリと拒絶の言葉を述べた凜。

 

花陽はそんな凜に言い返す事が出来ず、そのまま帰路についてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ん?」

 

次の日の放課後。

 

練習に向かおうとした俺は、ポスターの前に誰か居る事に気づいた。

 

「あれは・・・西木野さん?」

 

熱心にポスターを見つめており、手にはメンバー募集のチラシが握られていた。

 

「・・・やっぱり興味あるんだな」

 

西木野さんが浮かべる迷いの表情。

 

そこからは、微かにスクールアイドルをやってみたいという思いを感じた。

 

「・・・はぁー・・・」

 

西木野さんは小さくため息をつくと、その場から離れていった。

 

その際、何かを落としたのが目に入った。

 

「・・・?・・・」

 

西木野さん、落とした事に気づいてないな。

 

仕方ない。今日はバイト休みだし届けるか。

 

俺はポスターの元へ歩き出した。その時だった。

 

「・・・ん?小泉さん?」

 

俺がたどり着くより早く小泉さんが西木野さんの落とし物を拾っていた。

 

小泉さんも見てたんだな・・・

 

「生徒手帳だ・・・」

 

ふと小泉さんの口から漏れた言葉。

 

西木野さんが落としたのは生徒手帳だったみたいだ。

 

「・・・なら大丈夫か」

 

俺よりも小泉さんが届けた方がいいだろう。

 

ここは小泉さんに任せて俺は練習に・・・

 

「あ・・・あの!」

 

はい呼び止められました。

 

なんで?

 

「・・・」

 

「氷月先輩・・・ですよね?」

 

あれ、小泉さんに名乗ったっけ?

 

「うんそうだけど自己紹介したっけ?」

 

「あ、えっと・・・高坂先輩から聞きました。朝日さんの事も」

 

・・・あのおしゃべりサイドテールめ。

 

絶対に大事な相談とかしたくないタイプだな。

 

「それに、2年生に男子二人が編入になったって騒ぎになりましたし」

 

げっ!?そんなに騒ぎになってんの?

 

そうゆうのは太陽だけでいいよ!

 

「なるほどね、だったら自己紹介する手間が省けていいや。で、何か用?」

 

とりあえず用事をさっさと済ませてしまおう。

 

親しくもない男を呼び止める程なんだ。よっぽどな用があるんだろう。

 

「あの・・・これ、拾ったんです・・・」

 

そう言うと小泉さんは西木野さんの生徒手帳を俺に見せてくる。

 

うん見てたから知ってる。

 

「西木野さんの生徒手帳だな。それがどうかしたの?」

 

「きっとこれが無いと困ると思うんです・・・だから・・・」

 

え、小泉さんまさか・・・

 

「届けに行くのに、付いてきてほしいです・・・」

 

「・・・」

 

マジかぁぁぁぁ!?

 

いやなんとなく話の流れでそう来そうだなとは思ったけどなんで俺!?

 

「えっと・・・今日は星空さんと一緒じゃないの?」

 

「凜ちゃんは用事があるみたいで先に帰っちゃったんです。あれ、先輩凜ちゃんの事・・・」

 

「ああ、ライブの時高坂さん達に自己紹介してたでしょ?それで覚えた。小泉さんの事も西木野さんの事も」

 

まぁ西木野さんは前から面識あったけど。

 

「そうなんですね」

 

「で、付いてく話なんだけど何で俺なの?」

 

「えっと・・・先輩しか居なかったので・・・」

 

「いやそうだけど小泉さんは嫌じゃないの?俺なんかと一緒で」

 

普通親しくもない男と二人きりになるのは嫌だろ?

 

しかもこんな髪の長い不気味な風貌の男なんて。

 

「・・・いえ、私は嫌じゃないです」

 

うーん・・・なんか、最近の女子高生積極的過ぎない?

 

「やっぱり・・・ダメですよね?」

 

なかなか答えを出さない俺に、泣きそうな表情を浮かべる小泉さん。

 

その様子を見た俺はすぐさま答えた。

 

「わかった。小泉さんがいいなら行くよ」

 

そう。俺はOKの返事を出した。

 

普段の俺なら絶対に断るだろう。

 

しかし、上手くいけば小泉さんと西木野さんどちらも引き込める可能性があると感じた俺は付いていく事を選んだ。

 

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」

 

小泉さんは泣きそうな表情から一変して笑顔を浮かべた。

 

凄い良い笑顔なんだけど・・・抵抗とかないのだろうか?

 

まぁいいか。

 

「で、西木野さんの家は何処か知ってるの?」

 

「あ・・・えっと・・・」

 

「・・・知らないんだね」

 

「ごめんなさい!今すぐ先生に・・・」

 

「いいよいいよ。俺わかるから」

 

確か西木野さんは家は病院だって言ってたよな。

 

ここらへんで病院って言ったら西木野総合病院しかないだろ。

 

それにそこら辺なら俺の新聞配達の区域だし。

 

「わかるんですか!?」

 

「あ、誤解しないでね。ストーカーとかじゃなくて本人が家が病院だって言ってたから」

 

小泉さんはμ'sの曲を西木野さんが作った事を知ってたしきっとその経緯も知ってるんだろう。

 

俺と西木野さんが面識ある事も。

 

「あ、そうなんですか」

 

うん。やっぱり知ってるみたいだな。

 

 

 

 

 

 

 

「すいません・・・私が付いてきてほしいってお願いしたのに・・・」

 

太陽に練習に出れないとLINEした俺は、小泉さんを連れ西木野さんの家へと歩き出した。

 

西木野さんの家を知ってる俺が必然的に先導する形になり、小泉さんが付いてきてるという状況になった。

 

「別にいいよ」

 

「でも・・・」

 

「そんなことよりさ」

 

このままだと小泉さんがずっと謝り続けそうなので話題を変える事にする。

 

「小泉さん、やっぱりアイドルに興味あるでしょ」

 

「え・・・」

 

俺の言葉に表情が変わる小泉さん。

 

その様子だと当たりだったみたいだな。

 

「μ'sのライブ。凄い熱心に見てたよね」

 

「・・・えっと・・・」

 

「高坂さんに勧誘された時はうやむやにしてたけど、本当はどう思っているか聞かせてほしい」

 

まずは今の小泉さんの気持ちを聞く。

 

ある程度予想は出来てもそれが正解とは限らない。

 

それによって俺が起こす行動が変わるから。

 

「・・・」

 

口を閉ざす小泉さん。

 

しばらくの沈黙が続いたが、小泉さんが答えを出す気配が無かった。

 

その様子を見た俺は立ち止まると、小泉さんの目を見つめながら言った。

 

「まだ答えが出せないならそれでもいい」

 

「・・・え?」

 

「君の中で満足出来る答えが出せたら教えてほしい。それまで待ってるから。俺も、高坂さん達も」

 

「氷月さん・・・」

 

例え、アイドルが好きでも興味があっても強要は出来ない。

 

無理に答えを出させても長続きしない事は目に見えている。

 

だから、たくさん迷ってたくさん悩んで自分なりの答えを出せばいい。

 

自分自身が納得出来るなら、それでいいから。

 

「さ、着いたよ」

 

小泉さんと話している間に気づけば西木野さんの家の前に到着した。

 

大きくそびえ立つ西木野総合病院の隣に建てられた豪邸。

 

表札には西木野と書かれていた。

 

「・・・大きい・・・」

 

思わず口から感想が溢れる小泉さん。

 

確かにここら辺では桁違いに大きい。

 

西木野さんってお嬢様だったんだな・・・

 

「確かに大きいな」

 

「これが、お嬢様って事なんですね・・・」

 

完全に萎縮してしまっている小泉さんをしり目に、インターホンを押す俺。

 

少し間が空くと、インターホンから女性の声が聞こえてきた。

 

「はい。どちら様ですか?」

 

「西木野真姫さんの友人の氷月冬夜と言います。生徒手帳を落とされたので届けに来ました」

 

「あらあらわざわざありがとうございます。今開けますので少しお待ちくださいね」

 

声の主は恐らく西木野さんのお母さんなんだろうけど、随分若々しい声だったな・・・

 

まさかのメイドとかだったりしないよな?

 

しばらく待っていると、家の扉が開き中から一人の女性が出てきた。

 

まるで西木野さんを大人にしたような風貌で控えめに言っても美人の一言だった。

 

「真姫の母です。わざわざ届けに来てくれてありがとうね?どうぞ中に入って下さい」

 

・・・いや若いな!?

 

本当に高校生の子持ちかよ!?

 

「あ、はい。お邪魔します」

 

「・・・」

 

「小泉さん、行くよ」

 

「・・・!・・・はい!」

 

西木野さんのお母さんを見つめながら固まっていた小泉さん。

 

わかるぞ小泉さん。

 

見えないよな、高校生の子供がいるお母さんに。

 

俺と小泉さんは困惑しながら西木野さんの家の中に入った。

 

 

 

 

 

結論から言おう。とても広い。

 

外観の時点で予想は出来ていたが、直に目の当たりにするのとは訳が違う。

 

リビングには数々の賞状が飾られており、いかにも高そうな絵画の数々。

 

そして天井にはシャンデリアときたもんだ。

 

こんな正統派な豪邸漫画でしか見たことねぇよ。

 

「今真姫、病院の方に顔を出してるからちょっと待っててね」

 

案内されたのは応接室みたいな所。

 

テーブルと無数の書物があり、中央にはいかにも座り心地の良さそうな巨大なソファーがあった。

 

西木野さんのお母さんは俺と小泉さんにお茶を出すと、「まさか真姫に男の子の友達がいるなんてね・・・」とぶつぶつ言いながらニヤニヤとした表情で出ていった。

 

友達じゃないです。なんて言えるはずもない。

 

「・・・なんか、落ち着かないですね」

 

西木野さんのお母さんが出ていったのを確認すると、小泉さんは部屋中をキョロキョロと見渡しながら口にした。

 

「・・・そうだな。まさか生涯でこんな漫画みたいな豪邸に入れるとは思わなかったよ」

 

「はい・・・同じ高校1年生とは思えません・・・」

 

その後もキョロキョロと部屋を観察していると、扉の外から話声が聞こえてきた。

 

「真姫、貴方にお客さんが来てるわよ」

 

「お客さん?」

 

「真姫・・・貴方も隅に置けないわね」

 

「・・・え?」

 

あ、早いとこ誤解を解かないとめんどくさい事になるな。

 

いやもうなってるか。

 

次第に足音は大きくなっていき、ついに扉が開かれた。

 

ガチャ。キィィィ・・・

 

木製の扉の軋む音。

 

部屋の中を見渡した西木野さんは、困惑した表情から驚きの表情に変わった。

 

「え、お客さんって貴方達なの!?」

 

「お、お邪魔してます!」

 

「よっ」

 

丁寧に頭を下げる小泉さんに対し俺は片手を上げるだけの簡単な挨拶。

 

こうゆうのって性格出るよね。

 

「で、何の用なのよ」

 

少しして落ち着いた西木野さんは対面のソファーに座る。

 

西木野さんの質問には小泉さんが答えた。

 

「あの、これを届けに来ました!」

 

生徒手帳を差し出す小泉さん。

 

「これ、私の・・・」

 

「これが無いと困ると思ったので・・・」

 

「そう。わざわざありがとうね」

 

西木野さんは素直にお礼を述べると、生徒手帳を鞄にしまった。

 

「で、貴方は?」

 

しまい終わると、西木野さんの視線が小泉さんから俺に変わる。

 

「ん?小泉さんの付き添い」

 

「付き添いって貴方達面識あったの?」

 

「いや、ほぼ初対面」

 

ライブの時とアルパカの時に会ったけど話してないし初対面に近いだろう。

 

「初対面!?小泉さんよく初対面の人を付き添いに選んだわね」

 

それは俺も思った。

 

「あ、えっと・・・私は一方的に氷月さんの事を知ってたので私は抵抗無かったです」

 

「ふーんなるほどね。で、貴方も貴方でよく初対面の人の付き添いを引き受けたわね」

 

うんそれも思ってる。

 

引き受けた自分が一番思ってるから。

 

「ちょっと理由があってね」

 

「・・・理由?」

 

「どんな理由よ」

 

「その内わかるよ」

 

うん最近よく使うけどこの言葉って凄い便利だよな。

 

君達を勧誘するため・・・なんて言えないし。

 

俺のはぐらかした答えに西木野さんは面白くなさそうな表情をすると、

 

「何それ意味わかんない」

 

と返した。

 

 

 

 

 

「で、小泉さん。話は変わるんだけどその生徒手帳ってどこに落ちてたの?」

 

初対面の付き添い問題が一旦落ち着き、少しだけ一息つくと俺は本題を切り出した。

 

俺がここに来たのは西木野さんの心を知るためだし。

 

「えっと・・・μ'sの勧誘ポスターの前です」

 

小泉さんがそう言った瞬間、西木野さんの表情があからさまに変わった。

 

「へぇーポスターの前ね。もしかしてアイドルに興味あるの?」

 

「いや!いたっ!」

 

勢い良く立ち上がる西木野さんだったが、そのまま勢い余りテーブルに足をぶつけてしまった。

 

あれは痛いなー・・・

 

ていうかわかりやすすぎるだろ。

 

「ぜ、全然興味なんか・・・」

 

ガタッ!

 

「きゃあ!!」

 

バタン!!

 

足をぶつけた事によりバランスを崩してしまった西木野さんは、後ろからソファーに倒れるとそのまま勢いよくひっくり返ってしまった。

 

コントかよ。

 

ちなみに西木野さんはスカートを履いていたのでちゃんと目は閉じましたよ。

 

「・・・ぷっ」

 

その様子を見た小泉さんは、ここに来て初めての笑顔を見せた。

 

・・・ような気がする。目閉じてるからわからないけど。

 

「わ、笑わない!」

 

「だ、だって・・・ふふっ」

 

うん。いい具合に緊張は解けたみたいだな。

 

「そろそろ目開けていいか?」

 

ずっと目閉じてるの辛いんだけど。

 

眠いし。

 

「・・・!・・・な、なんで貴方は目を閉じてるのよ!?」

 

「ラッキースケベ回避のため」

 

「・・・は?」

 

「あ・・・スカートだから・・・」

 

そう。正解だよ小泉さん。

 

「・・・っ!変態!」

 

いやなんでやねん。

 

むしろ褒められるべきでは?

 

「・・・開けるぞ」

 

痺れを切らした俺は目を開ける。

 

そこには自分を守るように抱き締める顔が真っ赤な西木野さんがいた。

 

「・・・いや俺が何をしたの?」

 

「う、うるさい!」

 

理不尽だ・・・

 

 

 

 

 

「・・・私がスクールアイドルに?」

 

西木野さんが落ち着いた所で、小泉さんが意外にもスクールアイドルを西木野さんに勧めた。

 

「西木野さんは可愛いし、作曲も出来るし、歌も上手だし絶対向いてると思うんだ」

 

小泉さんの真っ直ぐな瞳はしっかりと西木野さんを捉えていた。

 

その言葉が偽りじゃない事がわかるな。

 

「そ、そんなこと・・・」

 

「そんな事あるよ!私・・・西木野さんの歌好きなんだ」

 

「私の歌を?」

 

「放課後、いつも音楽室の前に行ってたの。西木野さんいつもピアノ弾いてるから。西木野さんの歌声はずっと聴いていたいって思える程好きで・・・だから・・・」

 

珍しく声を張る小泉さん。

 

一字一句はっきりと聞こえた西木野さんへの思いは、とても強いものだった。

 

しかし、その小泉さんの思いは西木野さんには届かなかった。

 

「私、大学は医学部って決まってるの」

 

西木野さんの表情が僅かに歪んだ。

 

その時、俺はある違和感に気づいた。

 

・・・作曲を決意したあの時と違う。

 

あの時感じたやってみようと思える喜びとワクワクとドキドキ。

 

そして瞳に宿っていた少しの希望。

 

それら全ては今の西木野さんからは微塵も感じられなかった。

 

今の西木野さんからはまるでどうしようもない諦めの感情が読み取れた。

 

・・・一体何があった?

 

「だから、私の音楽はもう終わってるってわけ」

 

正直西木野さんは引き込めると思っていた。

 

作曲を決意したあの表情。

 

あの状態の西木野さんならμ'sに入ってくれるんじゃないか。そう思っていた。

 

だが、その時とは状況が違いすぎる。

 

「貴方こそ、スクールアイドルやりたいんじゃないの?」

 

今度は西木野さんが小泉さんに話を振った。

 

まるでこれ以上自分の話になるのを拒んでいるように。

 

でも、時は今じゃない。

 

西木野さんを引き込むのは今じゃない。

 

「わ、私?」

 

「貴方、ライブの時夢中になって見てたじゃない」

 

「えっと・・・でも私・・・」

 

「うじうじしない!」

 

「は、はい!」

 

突然の西木野さんの大声に飛び上がってしまった小泉さん。

 

しかしすぐさま西木野さんは柔らかな表情になると、優しく話し掛けた。

 

「私から言える事は一つ。やりたかったら、やればいいじゃない」

 

西木野さんの言葉に小泉さんの表情に少しだけ希望が灯る。

 

ていうかその言葉俺が西木野さんに言った言葉じゃん。

 

「ま、この言葉、私が何処かの誰かさんに言われた言葉なんだけどね」

 

そう言うとチラッと俺を見つめる西木野さん。

 

覚えてたのか。

 

「もし、貴方がスクールアイドルやるなら、少しは応援してあげるから」

 

西木野さんはそう言うと、優しく微笑んだ。

 

そして小泉さんは・・・

 

「うん!」

 

笑顔で返すのだった。

 

 

 

 

 

「今日はありがとうございました」

 

用事が終わり、帰路につく俺と小泉さん。

 

少し歩いた所で、小泉さんは口を開いた。

 

「ん?いいよ別に」

 

俺は俺の為についていったに過ぎないからな。

 

「後送ってもらっちゃってごめんなさい・・・」

 

日も暮れてきており、人通りもすっかり少なくなった道。

 

さすがの俺もこの状態で一人で帰らせるほど無神経じゃない。

 

園田さんと南さんが襲われた件もあるしな。

 

「いいよ別に。気にしないで」

 

「ありがとうございます」

 

小泉さんのお礼の言葉を最後に会話は途絶えた。

 

あえてスクールアイドルの話題は出さない。

 

「あ・・・」

 

しばらく歩くと視界にに一軒の店が映った。

 

名前は穂むら。和菓子の店で、俺は利用した事はないが新聞配達でいつも来るため知っている。

 

「すいません、お母さんに買って帰りたいので寄ってもいいですか?」

 

なんて優しい子なんだ小泉さんは!

 

親に買って帰るなんて男子校じゃあり得ないぞ?

 

特別断る理由もないので、

 

「わかった」

 

とだけ返した。

 

ガラガラと和風な扉を開くと、中には背を向けた割烹着姿の女の子がいた。

 

・・・あれ、なんか見たことある姿だな。

 

俺達の存在に気づいた女の子は、勢い良く振り返った。

 

「いらっしゃいませ!」

 

「あ・・・」

「あ・・・」

 

同時に声が漏れた俺と小泉さん。

 

割烹着姿の女の子はμ's結成の発端である高坂穂乃果だった。

 

 

 

 

 

「ごめんね。私、店番があるから部屋で待ってて?」

 

店の奥に通されると、高坂さんの部屋に行くよう促される俺達。

 

なんか成り行きで入っちゃったけどこれって知り合いの女子クラスメイトの家にそれほど親しくもない女の子の後輩と二人きりでいるという凄いおかしな状況が出来上がってないか?

 

今日はなんかいつもよりも濃い一日だな・・・

 

高坂さんは店に戻り、俺と小泉さんの間に少し気まずい空気が流れる。

 

「・・・とりあえず行こうか?」

 

「そうですね」

 

このままいても仕方がないのでゆっくりとした足取りで階段を上った。

 

「・・・どっちだ?」

 

2階に上がると、左側に部屋が2つあるのが確認できた。

 

太陽から聞いた情報だが高坂さんには妹がいるらしい。

 

恐らくどちらかは高坂さんの妹の部屋だろう。

 

「こっちかな・・・」

 

小泉さんが躊躇なく手前の扉のドアノブに手を掛ける。

 

「いや、ノックした方が・・・」

 

しかし時すでに遅く扉が開かれた。

 

「ぐぬぬ・・・私もこのくらいになれればっ・・・」

 

俺はすぐさま扉を閉めた。

 

・・・だから言わんこっちゃない。

 

「えっと・・・今のは・・・」

 

「忘れるんだ。顔面パックした女の子が必死に胸を寄せてた所なんて君は見ていない。いいね?」

 

「は・・・はい」

 

俺が凄い勢いで迫ると小泉さんは困惑しながら頷いた。

 

「ちゃららららん♪ちゃららちゃらららん♪」

 

その時、もう一つの扉の向こうから微かに誰かの歌っている声が聞こえた。

 

・・・なんか聞きおぼえあるな。

 

「こっちの部屋から・・・」

 

「おいちょっと・・・」

 

小泉さんは何の躊躇いもなく扉を開けた。

 

なんでこういう時だけ積極的なんだよ!?

 

「ちゃーららーららーん♪ちゃらららーん♪ありがとー!!」

 

俺は光の早さで扉を閉めた。

 

「い、今のは・・・」

 

「いいか、君が見たのは幻想だ。扉の奥に普段は恥ずかしがり屋でクールな女の子がデビュー曲を鼻唄で歌っていた挙げ句満面の笑顔で観客に向かい手を振る練習をしていたなんて君の空想だ。わかったね?」

 

「は・・・はい」

 

さて、一刻も早くここを脱出・・・

 

ガチャ!

ガチャ!

 

出来ませんでした。

 

「く、空想じゃ無かった・・・」

 

園田さんとパックした女の子がそれぞれの扉から出てくると、ゆっくりとした足取りで近づく。

 

「見ました?」

「見ました?」

 

うん。これはマズイパターンだね。

 

こうゆう時は正直に・・・

 

「見ました」

 

そこから俺の記憶はない。

 

 

 

 

 

 

「勝手に開けちゃってごめんなさい!」

 

「大丈夫だよ。こっちこそごめんね?」

 

となるわけではなく、その後高坂さんがタイミング良く来てくれたおかげで事無きを得た。

 

「それにしても海未ちゃんが決めポーズねー」

 

「ほ、穂乃果が店番でいなくなるからです!」

 

いや理由理不尽。

 

「そういえば二人は付き合ってるの?」

 

そんな園田さんを気にも留めず高坂さんはニヤニヤしながらこちらに質問してきた。

 

・・・まぁそんな質問は来る気はしてた。

 

二人で来た時点で。

 

「つ、つきあっ・・・うう・・・」

 

高坂さんの質問に小泉さんは赤面しながらあわてふためく。

 

・・・いや否定しろよ。

 

「付き合ってないよ。ただたまたま会っただけで、目的地が同じだったから一緒に来ただけ」

 

全部説明するのはめんどくさいから適当にそれっぽい嘘でもつくか。

 

嘘も方便ってね。

 

「なーんだ。つまんないの」

 

俺が否定すると面白くなさそうな表情を浮かべながら高坂さんは離れていった。

 

「で、園田さんはどうしているの?俺達が通された理由は?」

 

「それはですね・・・」

 

ガチャ

 

園田さんが俺の問いに答えようとした時部屋の扉が開かれた。

 

「ごめん遅くなっちゃった!あれ?」

 

謝りながら入ってきたのはノートパソコンを抱えた南さんだった。

 

なんでいるの?と言わんばかりの疑問を浮かべた表情でこちらを見つめる。

 

「あ、ことりちゃん!」

 

「大丈夫ですよことり」

 

テーブルの上にノートパソコンを置くと、再び俺達を見つめる。

 

「たまたま道端で会って目的地が同じだったから一緒に来た。そしたら高坂さんに捕まり部屋に通された。なお、我々は付き合っていません。以上」

 

「はは・・・質問する前に全部答えたね。相変わらず察しが早い・・・」

 

南さんは答えるスピードの早さに苦笑いを浮かべるしかないようだ。

 

「で、俺達が通された理由は?」

 

「あ、それはこれだよ!」

 

高坂さんはそう言うと南さんが持ってきたノートパソコンを指差す。

 

・・・ふーんなるほどそうゆう事か。

 

「・・・?」

 

おっと小泉さんがキョトンとした表情をしている。

 

その様子に気づいた高坂さんが説明を始めた。

 

「花陽ちゃんは知らなかったね。実は私達のファーストライブの映像がネット上にUPされてたんだ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。誰が上げたかはわからないんだけどね。今日はこの映像を客観的に見て、どこが駄目だったか研究しようと思って集まったんだ」

 

「で、俺や小泉さんにも見てもらって何か意見を貰うために部屋に通されたってわけだ」

 

まぁいい心掛けではあるが、太陽監修の元行っている以上特に意見を言うつもりはないんだけど。

 

「準備出来たよ!」

 

どうやら高坂さんが説明している間に再生の準備が出来たみたいだ。

 

「よし!じゃあ早速観よう!」

 

「こんな大人数で私達のライブの映像を観るのは緊張しますね・・・」

 

「再生するよ!」

 

南さんが再生ボタンをクリックすると、少しのロードの後映像が動き出した。

 

画質は上々。

 

少し遠巻きからの映像ではあるが充分顔の判別は出来るしダンスもハッキリと見える。

 

歌もよく聴こえる。

 

しかし一体誰がこれを上げたんだ?

 

「ここのダンス上手くいって良かったよね!」

 

「うん!思わずガッツポーズしそうになったもん」

 

「私も音程を外すことなく歌えました!」

 

あれ、どこが駄目だったか研究するんじゃないのか?

 

ただの観賞会になりそうだがまぁいいだろう。

 

「・・・」

 

ふと隣を見ると、小泉さんは少し前のめりになりながら熱心に映像を見つめていた。

 

「あ・・・」

 

高坂さん達もそれに気づいたようで、小泉さんに視線を移していた。

 

「花陽ちゃん、そこじゃ観づらくない?」

 

「・・・」

 

高坂さんが声を掛けるが、映像に集中しており気づいていない様子だった。

 

それほど夢中になって観ているという事だろう。

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

「「「ふふっ」」」

 

そんな小泉さんの様子に高坂さん達が互いに目を合わせると、小さく笑った。

 

そして、次は園田さんが声をかけた。

 

「小泉さん!」

 

「・・・!・・・は、はい!」

 

これには気づいたようで少しビクッとしながら園田さんに視線を移した。

 

「本当にスクールアイドルやってみない?」

 

今度は高坂さんが声を掛ける。

 

「え?えっと・・・でも、私・・・向いてないですから・・・」

 

悲しく笑いながら断る小泉さんだが、すかさず園田さんが口を開く。

 

「私だって人前に出るのは苦手です。向いてるとは思えません」

 

「私も歌やダンスをよく間違えたりするし、運動も苦手なんだ」

 

「私は凄いおっちょこちょいだよ!」

 

三人がそれぞれの欠点を話す。

 

南さんが続けて畳み掛ける。

 

「プロのアイドルだったら私達はすぐに失格。でも、スクールアイドルならやりたいって気持ちを持って、自分達の目標を持って、やってみることは出来る!」

 

「それがスクールアイドルだと私は思います」

 

「だから、やりたいって思ったらやってみようよ!」

 

「最も、練習は厳しいですが」

 

「・・・海未ちゃん?」

 

「おっと失礼」

 

園田さんの言葉で笑い合う三人。

 

それを見た小泉さんの表情は、さっきよりも明るいものに変わっていた。

 

三人が小泉さんに向けて放った言葉。

 

これは小泉さんにとって、大きな勇気になっただろう。

 

「ゆっくり考えて、答えを聞かせて?」

 

「私達は、いつでも待ってるから!」

 

暖かく微笑みながら小泉さんを見つめる三人。

 

高坂さんの問いに対し小泉さんは、

 

「はい!」

 

と笑顔で返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

 

「・・・」

 

帰り道。

 

当初の予定通り小泉さんを送るため一緒に歩く俺達。

 

しかしそこには会話はなく、ひたすら小泉さんの家へと歩を進める。

 

世間ではこうゆうのを気まずいと言うんだろうけど、生憎俺はそうゆう感情は持っていないんでね。

 

小泉さんには悪いけど、話題を見つける気はない。

 

少しの間無言が続くと、突然小泉さんが足を止め口を開いた。

 

「氷月さんは、私にスクールアイドルが務まると思いますか?」

 

予想外の質問に思わず足を止める。

 

「・・・なんでそんな質問を?」

 

「皆さんの話を聞いて、勇気を貰えました。私にも出来るかも・・・そう思いました。でも、いざ加入しようとすると、やっぱり怖くなるんです・・・皆さんが出来ない水準と私が出来ない水準。これに大きな差があったら・・・皆さんが思っていた以上に私が出来ない人だったら・・・そう思うと怖いんです・・・」

 

高坂さん達の話や西木野さんの応援を聞いて勇気を貰えたのは間違いない。

 

でもまだ小泉さんの中では不安と恐怖が勝ってる。

 

今小泉さんに足りないのは、それを払拭する少しの勇気だけだ。

 

「確かに十人十色とあるように価値観は人それぞれ」

 

君は求めてるんだろう?

 

「多少のズレは必ずある」

 

背中を押してもらうのを。

 

「でも、やりたいという思いの前ではそんな不安や恐怖は関係ないんだよ」

 

「関係・・・ない?」

 

だから俺にそんな質問をしたんだろう?

 

「そうだ。難しく考えるな。いつだって答えは単純なんだ。やりたいからやるのか、やりたくないからやらないのか」

 

「・・・」

 

最終的な決断をするのは君だ。

 

「裏切らせない。絶対にだ。君の思いと決断は、必ず受け止める。あいつらも同じ気持ちのはずだ」

 

「氷月さん・・・」

 

だが、決断しやすいように俺が与えよう。

 

「今一度聞く。小泉花陽。

 

 

 

 

 

君は今、何がやりたい?」

 

 

 

 

 

少しの勇気を君に。

 

 

 

 

 

 

 

「かよちん。決めたんだね」

 

「うん」

 

次の日の放課後。

 

私達は屋上へ向かっていました。

 

昨日、氷月さんの言葉を聞いて決心がつきました!

 

 

 

 

「小泉花陽。君は今、何がやりたい?」

 

心臓の高鳴り。そして溢れてくる勇気。

 

氷月さんは裏切らせないって言ってくれた。

 

私の思いと決断を受け止めるって言ってくれた。

 

そして、やりたい思いの前では不安や恐怖は関係ない。

 

そう言ってくれた時、スッと今まで抱えていた不安や恐怖が軽くなった気がしたんです。

 

今なら胸を張って言える!

 

「私は、スクールアイドルがやりたいです!」

 

私はハッキリとそう返しました。

 

すると氷月さんは少し微笑みながら、

 

「そうか」

 

とだけ返してくれました。

 

それでも少しだけ、本当に私でも出来るかなと思いました。

 

だけど、その後に氷月さんが言ってくれたんです。

 

「小泉さん。【皆と一緒なら輝ける】」

 

その言葉は私が見たポスターに書いてあった言葉と同じ言葉でした。

 

「だから自由にやったらいい。難しい事は考えずにひたすら楽しめばいい。それだけで輝けるから」

 

その言葉を受けて大きな安心感が私の心を満たしました。

 

私は一人じゃない。

 

一緒にアイドルをやる仲間がいる。

 

それだけで充分でした。

 

こうして私はμ'sに入る事を決意したんです。

 

 

 

 

 

 

「いやー、それにしても遂にかよちんもアイドルデビューかー。友達として凄い誇らしいにゃ!」

 

右隣を歩く凛ちゃんが嬉しそうな顔で言いました。

 

「お、大袈裟だよ凛ちゃん」

 

「大袈裟じゃないにゃ!あれだけ憧れが強かったアイドルにいよいよなれるんだよ?さらにそのまま人気になって廃校が阻止されてその活躍が認められてアイドル事務所の社長にスカウトされてそのままデビューになったら・・・かよちん!サイン欲しいにゃ!」

 

「話が飛躍しすぎだよ凛ちゃん!」

 

「あはは、ちょっと舞い上がりすぎたにゃ」

 

でも、私の事でここまで喜んでもらえるのはとても嬉しいです!

 

「ところで、何で西木野さんもいるにゃ?」

 

「別にいいでしょ?小泉さんがちゃんとμ'sに入れるか心配だからついていってるだけよ」

 

そうです!実は左隣には西木野さんがいたんです!

 

実は朝に凛ちゃんにμ'sに入る話をしたんですけど、どうやら西木野さんもその話を聞いていたみたいで、ついていくって言ってくれたんです!

 

「別に凛がいるから大丈夫にゃ」

 

「だから心配なのよ」

 

「どうゆう意味にゃ!?」

 

「そのままの意味よ!」

 

「あ、あの二人とも喧嘩は・・・」

 

でも朝からずっとこの調子なんです。

 

二人は仲が悪いのかな・・・

 

「もうかよちん!ほっといていこう!」

 

すると凛ちゃんが私の右手を掴んでぐいぐいと引っ張っていきます、

 

私もつられてつい小走りになってしまいました。

 

「り、凛ちゃん?」

 

グイッ

 

「え?」

 

今度は左手も引っ張られる感触がしました。

 

ふと左手に視線を移すと・・・

 

「ふん・・・」

 

西木野さんが凛ちゃんに負けじと引っ張っていたんです。

 

「ちょっと!かよちんは凛が連れていくの!」

 

「私が連れていくわ!」

 

「「私!」」

 

二人の歩くスピードが次第に早くなっていき、ついには走り出してしまいました。

 

・・・ってそんなに走ったら足がもつれて!

 

「じ、自分で歩けるから手を離して・・・」

 

「ほら!かよちんが嫌がってるから手を離してよ!」

 

「そっちこそ手を離しなさいよ!」

 

「「ふん!」」

 

「だ、ダレカタスケテー!!!」

 

結局私はほぼ引き摺られる形で屋上へと連れていかれました。

 

 

 

 

 

「つまり、メンバーになるって事?」

 

屋上にはμ'sの皆さんがいました。

 

氷月さんや朝日さんの姿も。

 

「はい!かよちんはずっとずっと前からアイドルをやってみたいって思っていたんです!」

 

「それはどうでもよくって、この娘歌唱力結構あるんです!」

 

「どうでもいいってどうゆう事!?」

 

「そのままの意味よ!」

 

「え・・・えっと・・・」

 

いざμ'sの皆さんを目の前にすると強い緊張が私を襲います。

 

決めたはずなのに・・・

 

後もう少しで入れるのに・・・

 

「大丈夫だよかよちん、凛がずっとついててあげるから」

 

右隣から聞こえた凛ちゃんの声。

 

ふと視線を移すと、優しい笑みで真っ直ぐ私を見つめていました。

 

「凛ちゃん・・・」

 

「私も少しは応援してあげるって言ったでしょ」

 

次に左隣から西木野さんの声。

 

西木野さんも凛ちゃんと同じように優しい笑みで真っ直ぐ私を見つめていました。

 

「西木野さん・・・」

 

よ、よし!

 

いつまでもうじうじしてるわけにはいかない!

 

「わ、私・・・」

 

とんっ。

 

「あ・・・」

 

突如感じた背中を押された感覚。

 

でもそれは私の心を暖かく潤した。

 

うん。もう大丈夫。

 

ありがとう。凛ちゃん、西木野さん。

 

もう逃げないから。

 

私は覚悟を決めると、1歩前に出てハッキリと言葉にしました。

 

 

 

 

 

 

「私、小泉花陽といいます!一年生で、背も小さくて、声も小さくて、人見知りで、得意なものも何もないです・・・だけど、アイドルへの思いは誰にも負けないつもりです!だから・・・私を・・・μ'sのメンバーにして下さい!」

 

 

 

 

 

ハッキリとした声で、小泉さんはそう言った。

 

真っ直ぐ頭を下げて、自分の思いを口にした。

 

本心で、自分の言葉で、出した答えをハッキリと伝えた。

 

小泉さん・・・やっと言えたな。

 

「こちらこそ」

 

小泉さんの言葉に高坂さんが答える。

 

そしてそのまま一歩前に出ると、

 

「よろしく!」

 

満面の笑みで手を差しのべた。

 

そしてその手を小泉さんは、

 

「はい!」

 

満面の笑みで掴むのだった。

 

大丈夫。ちゃんと輝いてるよ。小泉さん。

 

「かよちん偉いよ・・・」

 

「・・・何泣いてるのよ」

 

「だって・・・って西木野さんも泣いてる?」

 

「だ、誰が!泣いてなんかないわよ!」

 

「それで、二人はどうするの?」

 

小泉さんの勇気に感動する二人に南さんが声をかける。

 

「どうするって・・・」

 

「え?」

 

予想外の問いに顔を見合わせる星空さんと西木野さん。

 

続いて園田さんが口を開いた。

 

「まだまだメンバーは、募集中ですよ!」

 

そう言うと南さんと園田さんは満面の笑みで手を差しのべた。

 

流れも雰囲気もタイミングもベスト。

 

これで二人も入ってくれれば廃校阻止へまた一歩近づける。

 

高坂さんも、南さんも、園田さんも、小泉さんも、太陽も、二人も入ってくれると思っているだろう。

 

 

 

 

 

だが、俺は知ってる。

 

 

 

 

 

「・・・」

「・・・」

 

払拭されていない何かを抱えてる二人は・・・

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい」

「ごめんなさい」

 

μ'sに加入しない事を。

 

 

 

 




小さい頃からトラウマを抱えた少女。

「向いてないよ!凛がアイドルなんて無理だよ・・・」

ピースはまだ埋まらない。

新しい自分と出会うまでは。

「星空さん、この後俺と遊びに出掛けないか」

「・・・え?」

自分を認めようとしない少女にぶつけた秘策。

「君が可愛くないって誰が決めたの?」

全てはμ'sに入ってもらうため。

「男の子っぽい?どこが」

5つ目のピースは、

「人それぞれ価値観は違う。でも、俺は君を可愛いと思ってるから」

「凛は・・・凛は・・・」

過去を越える。



~次回ラブライブ~

【第11話 過去と今】

お楽しみに。
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