遅れまして本当に申し訳ありません!
今回は凛ちゃん加入回です。前回よりは文字数は抑えましたが10000字は越えてます…
さらに終わり方と次回予告が少し雑かもしれないですすいません!
それでも良ければ是非ご覧ください。
それでは第11話始まります。
とある一室。
少女はスカートを片手に姿鏡の前へ立っていた。
「・・・全然似合わない・・・」
その表情はどことなく暗く、次第に手に持っていたスカートをベットの上に投げる。
「・・・はぁ・・・」
深くため息をつくと、少女は小さく呟いた。
「やっぱり無理だよ・・・アイドルなんて・・・」
窓の外を見つめる少女。
少女の目に移る星は、輝く事はなかった。
「小泉さん。星空さんの過去に何かトラウマはある?」
場面は移り音乃木坂学院。
新しくμ'sのメンバーとなった小泉さんに星空さんの事を聞いてみることにした。
「はい、小学生の頃に・・・」
やはり星空さんにはトラウマがあった。
μ'sに勧誘した時の表情は、間違いなく過去を引き摺った表情。
何があったかは詳しくはわからないが、大体の見当はついている。
「あ、詳しく話さなくていいよ。そこまで親しくない人に自分の友達の過去を話すのは気が引けるだろう?」
「あ、いえ、そうゆうわけじゃ・・・」
「それにきっと星空さんも親しくない人に自分の過去を知られるのはいい気しないだろうし、そうゆうのはもっと信頼関係が出来てからだ」
例え小泉さんが俺を信頼していたとしても、あまり話したことがない星空さんが俺を信頼しているとは思えない。
こうゆうのは双方の了承を得てから出来るものだ。
「それもそうですね。あ、でも、私は氷月さんの事信頼してますから」
勘違いされたくないと思ったのか、真っ直ぐこちらを見つめながらハッキリと口にした。
「それは良かった。ありがとう」
俺は少し微笑みながらそれだけ返した。
「後、星空さんのトラウマも見当はついてる」
「・・・!・・・そうなんですか!?」
「ああ、去り際に言ってたんだ」
ふと脳裏に浮かぶのは勧誘を断った後に言っていた言葉。
「凛には無理だよ。アイドルなんて似合わないから」
悲しく笑いながら言っていたのを鮮明に覚えている。
「星空さんは服の事で他の人からバカにされた事はないか?」
俺は自分の予想が当たっているか小泉さんに聞いてみた。
「はい。とてもショックだったみたいです」
「やっぱりな」
どうやら当たっていたようだ。
アイドルが似合わないという事は、服について何かを言われた可能性は高い。
昔も今と同じショートカットだとすれば、言われた言葉は【男っぽい】【可愛くない】等だろうな。
だとすればその際に着用していたのはガッツリとした女性ものの服。
ワンピース。またはスカートといった所か。
「ありがとう。それだけ聞ければ大丈夫だ」
「いえ、私は何も・・・それにしても、本当に大丈夫なんですか?氷月さん」
「何が?」
「凛ちゃんの勧誘です!昨日の感じだと、μ'sに入ってくれそうにないですけど・・・」
そう。俺が小泉さんに星空さんの事を聞いたのはこれが理由だ。
小泉さんが入ってくれたため現在μ'sは4人。
そこに作曲のセンスがある西木野さんと、運動神経がとても良い(小泉さん情報)星空さんが加わればまた一歩女神に近づけると思う。
そこで俺はまずは時間を掛け一人ずつ勧誘する事を選んだ。
「大丈夫。さすがに強要はしないが、最低でも星空さんのトラウマは払拭させてみせる」
俺がそう言った瞬間、小泉さんの表情が凄く明るくなった。
星空さんの悩みは小泉さんと似ている。
【自分に自信がない】
これを払拭する事が出来れば、きっと星空さんはきっとμ'sに入ってくれるだろう。
「氷月さん・・・」
突如名前を呼ばれたため視線を小泉さんに移す。
次に、小泉さんは期待に満ちた表情を浮かべながら
こう言った。
「凛ちゃんを・・・助けてあげて下さい!よろしくお願いします!」
真っ直ぐ頭を下げる小泉さん。
そんな小泉さんに俺はこう返した。
「勿論」
次の日の放課後。
俺は星空さんを待つべく校門で待っていた。
今日はμ'sの練習の日ではあるが、バイトがあると嘘をついた。
星空さん勧誘作戦を行うため、珍しくバイトの休みを増やした。
作戦内容はこうだ。
まずは信頼関係を作るためなるべく星空さんと遊びに行く機会をつくる。
そしてある程度仲良くなった所で、星空さんの過去を星空さんから話してもらうようアプローチする。
星空さんのトラウマは小さい頃に他者から言われた着ていた服に関する悪口とみて間違いない。
となればその段階で誘うべきは服屋だな。
・・・でもそうゆうファッション関係は全く興味ないから全然わからん。
どう誘ったらいいかな・・・
「・・・あ、来た」
暫くの間誘い文句を考えていると、学校から星空さんが出てきたのが確認できた。
とりあえずまずは仲良くなる事だな。
俺は早速作戦を実行に移した。
「星空さん」
「にゃ!?」
俺が星空さんに話しかけると驚いたような表情でこちらを見つめた。
・・・驚く時も猫語なんだな。
「えっと・・・確か氷月さんで合ってますか?」
「合ってるよ」
星空さんとの面識は3回。
ファーストライブの時とアルパカ小屋で会った時と、小泉さんを屋上に連れてきた時。
いずれも直接的な会話はないから実質これが最初の会話になるな。
「どんな用かはわかりませんが、スクールアイドルはやりませんから」
真っ直ぐこちらを見つめながら冷たい口調でハッキリと言う。
まぁ星空さんの中では俺はμ'sのサポートか不気味な男っていう印象しかないからな。
その発言も冷たさも納得できる。
・・・あれ、これちゃんと一緒に遊びに行けるのか?
普通に断られるんじゃないか?
「ああ、スクールアイドルに勧誘するつもりで話しかけたわけじゃないよ」
「・・・?」
俺の言葉に可愛らしく首をかしげる星空さん。
一先ずここで一緒に遊びに行く事を了承してもらうのが最低条件。
小泉さんとの約束もあるし、失敗するわけにはいかない!
「俺が星空さんに声を掛けたのは一つお願いがあるんだ」
「お願い?」
「そう。良かったら…」
「星空さん、この後俺と遊びに出掛けないか?」
「・・・え?」
あ・・・なんか断わられる予感。
そうはさせん!
「いやいや、こんな不気味な奴から遊びに誘われて嫌なのはわかるよ!?ましてや全然親しくもない男からね!しかも二人きりなんて地獄とか思ってるかもしれないけど、そこをなんとか!一度でいいから俺と一緒に遊んでくれないかな?後悔はさせないから!お願い!」
年下に頭を下げる俺。
あぁ・・・俺は一体何をしているんだろう・・・
凄い恥ずかしさが襲ってきた・・・
「ぷっ・・・あははは!!」
少しの沈黙の後、星空さんの笑い声が聞こえた。
お、これはいけるかも・・・
「あはは、あ、ごめんなさい。氷月さんが必死すぎてつい・・・」
「いや、それはいいんだけど・・・答えの方は?」
反応は良さそうだぞ・・・
頼む!これでダメだったら俺は今すぐ消えてしまいたくなる!
「いいですにゃ。丁度今日暇ですから」
「ほ、本当に?」
「はい」
「・・・よっしゃぁぁぁぁ!!!」
きた!俺の必死の懇願が通じた!
こんなに嬉しいものなんだな・・・
「そ、そんなに嬉しかったのかにゃ・・・」
一方星空さんは少し引いていた。
「で、何処に行くんですか?」
「決めてない!」
「まさかのノープランかにゃ!?」
いやだっていかに誘いを引き受けてもらうかしか考えてなかったし・・・
「いやー面目ない」
「ここは無難にゲームセンターとかでいいんじゃないかにゃ?・・・あ、いいんじゃないですか?」
・・・やっぱりそれ凄い気になる。
「あ、敬語じゃなくていいよ。話しづらいでしょ?」
「ほんとかにゃ!?実はずっと話しづらいなって思ってたんだにゃ」
それは凄い伝わってた。
「あまり敬語とか使わないから慣れてなくて」
「同学年だと思って接してくれていいよ」
「ありがとうにゃ!」
よし、少しずつではあるが仲良くなれてる!・・・気がする。
「それにしても、氷月さんは凛の想像と違ったにゃ」
だろうな。俺もこんな自分は知らん。
「もっと暗い奴かと思ってたでしょ」
「えへへ、実は」
まぁ実際はもっと暗い奴だからな。
「でも、凄い話しやすかったから氷月さんとは仲良くなれそうだにゃ!」
「そっか。それは良かった」
よし、一先ずこれで第1段階はクリアだな。
その後も星空さんと他愛もない会話をしながら歩いていく。
勿論過去については触れていないし極力スクールアイドルの話題も出さないようにした。
星空さんの話を聞いて思った事は、小泉さんの事が大好きだということ。
やたら小泉さんにまつわる話が多かった。
そして小泉さんについてわかった事は、根っからのアイドル好きという事。
どうやらアイドルの事になると豹変するらしい。
何その二重人格。凄い怖いんだけど。
「あ、着いたにゃ」
そうこうしている内にゲームセンターに到着。
久しぶりに来たな・・・ゲームセンターなんて。
「よし、入るか」
自動ドアが開かれると、ゲームセンター特有の爆音のゲーム音が耳に飛び込んできた。
う、うるせぇ・・・
こんなにうるさかったっけ?
俺はあまりの五月蝿さに思わず少し顔をしかめる。
「氷月さん!何からする!?」
一方の星空さんは慣れてるのか余裕そうな表情だった。
うん。元気で何より。
「・・・まずはあっち行ってみようか」
「うーん・・・取れないにゃー!!」
一番最初にやってきたのはUFOキャッチャーエリア。
アームの種類も豊富で数々の機会が存在していた。
その中でも星空さんが目を引いたのは、真っ白な猫のぬいぐるみ。
それなりの大きさであり、難易度はそれなりに高そうだ。
「もう一回いくにゃ!」
「・・・もう1000円だぞ?諦めたら?」
「まだにゃ!あの猫ちゃんを手にいれるまでは帰れないにゃ!」
挑戦する事10回。
しかしぬいぐるみは少しも動く事なく、アームだけが悲しく動いている状態が続いていた。
「そんなに気に入ったのかあのぬいぐるみが」
「うん!一目惚れにゃ!」
確かにくりっとした可愛らしい目をしており表情も愛くるしい。
さらにふわふわとした毛並みは硝子越しでもわかるほどのクオリティ。
触り心地は確実に良さそうだ。
めっっっちゃ欲しい!!!
「むむ!ドンピシャにゃ!」
おっと!あのぬいぐるみに魅了されていた・・・
星空さんの声で我に返れたから良かったものの・・・恐るべし!あのぬいぐるみ・・・
「やっと取れた!」
隣からは星空さんの嬉しそうな声が聞こえる。
あーあ、嬉しそうに満面の笑みで頬ずりまでしちゃって…
羨ましいのは内緒だ。
「今日は楽しかったにゃ!ありがとうございます!」
「あぁ、俺も楽しかったよ」
気が付けば時間は19時になろうとしていた。
外も日が暮れてきた為ここで解散の流れに。
一先ずはこれで少しは仲良く慣れたかな。大分気さくに話しかけてくれてるし初日でここまでの進展は上出来だ。
「良かったら、連絡先交換してもいいかにゃ?」
おっとこれは予想外。
まさかそちらからその提案をしてくるとは…
丁度良かった。どうやって連絡先交換しようか困ってたんだよ。
「勿論。また遊ぼう」
「うん!」
こうして俺は星空さんと連絡先を交換した後別れた。
家まで送ろうか提案したが、ここから家が近い為大丈夫との事。
俺に家が知られたくないからとかではと思う。多分…
何はともあれ無事に星空さんμ’s勧誘作戦の第一歩が完了した訳だ。暫くはこうして学校帰りに遊ぶ日々が続くかな。
上手いこと過去の事を話してくれるまで心開いてくれるといいんだが…
俺は少しの不安と期待を抱きながら一人帰路についた。
それから2週間の月日が流れた。
星空さんとは連絡を取り合い、バイトが休みの日はなるべく一緒に遊べるように都合の良い日を調整した。
その結果何度か遊びに行く事に成功し、遊びに行かない日でも俺のバイトのある日は一緒に帰るぐらいの仲にまで発展した。さらに
「ねえ、星空さんって何だか他人行儀だから折角一緒に帰るようにもなったし凛の事名前で呼んでよ」
と提案してきた。
俺は少し抵抗はあったが、これも楠木坂に戻る為だと割り切り了承した。
「ああ、凛」
「うん!じゃあ凛も!とうくん」
「と…とうくん!?」
「冬夜だからとうくん。嫌…かな?」
「あぁいやあだ名で呼ばれた事ないからちょっと戸惑っただけ。全然大丈夫。寧ろどんとこい!」
口ではああ言ったが実際はむず痒くてしょうがない。
しかし数週間でここまで進展する事が出来たのは良い結果だ。
そして今日はついに星空さんμ’s勧誘作戦の大詰めの日。
休日に2人で遊びに出掛ける約束をする事に成功した俺は、一つの思いを固めた。
今日で星空さんのトラウマを払拭させる。
「ごめんなさい!待ったかにゃ?」
あれこれと考え事をしていると星空さんが到着。
うん時間通りだ。
「全然。早速行こうかほし…ゴホン!凛」
「うん!」
名前呼びに全く慣れない…
「この映画観たかったんだ!」
「今話題らしいな」
やってきたのは映画館。
映画を観た後、少し遅めの昼食を摂り街を適当にぶらつくという流れになっている。
本当は昼食の後に服屋に誘う予定だが。
「早速観るにゃ!」
映画は今話題のアニメ作品。
前作が大ヒットした注目株の監督が作った最新作のようだ。
何でも天気を題材とした作品らしい。
星空さん…紛らわしいからここでも下の名前でいいか。
凛はよっぽど楽しみだったのか始まる前からはしゃいでいる。
まぁ楽しそうで何よりだ。
「面白かったにゃー!」
観終わった。
あんまり映画は観ないが気付けば引き込まれていた。
話題になっているのも頷けるな。
「さて、この後は昼食だな」
「うん!お腹空いたにゃー…」
「何か食べたいものあるか?」
「ラーメン!」
「またか…」
これは凛と遊ぶようになって知った事だが凛は大のラーメン好きだ。
何度かご飯を食べに行く事があったが、殆どがラーメンであった。
そんなに食べてよく飽きないな…
「とうくん!早く行くよ!」
「分かった分かった」
全く、随分元気な猫娘だな。
「美味しかったにゃー!満足満足」
昼食を済ませた俺達は当初の予定通り街をぶらつく事に。
いよいよ凛のトラウマを払拭する時間が来た。
正直上手くいくかは分からない。凛自身が人懐っこい性格な為一見仲良くなっているように見えるが過去を話してくれる程心を開いてくれてるかは分からない。
しかし時間的にも今日が最初で最後のチャンス。
μ’sにはとにかく時間が無い。
1分1秒でも早く廃校阻止に近付きたい。
小泉さんとの約束もあるし失敗する訳にはいかない。
「なぁ凛」
「どうしたの?」
「恥ずかしながらあまり女の子と出掛けた事無いならこうゆう時何処行ったら良いとか分かんないんだ」
「あはは!確かにとうくんはあまり女の子の免疫があるタイプには見えないにゃ」
中々ストレートに言ってくれるじゃないか。
まぁその通りなんだけど。
「俺の勝手なイメージなんだけど、女の子って服屋好きだよね?凛は興味あるの?」
「うーん…凛はあまりファッションとかには興味ないかな。でも服屋が好きな女の子は凛の周りにもいるよ」
うん。まずまずの反応。
もう少し踏み込んでみるか。
「あ、そうなんだ。凛がファッションに興味が無いなんて意外だったな。詳しいかと思ってた」
「そうかな?」
「ほら凛可愛いし、結構服屋とか行ってそうだなって」
くっ…まさか太陽みたいな事を言う日が来るとは…
耐えろ…耐えるんだ俺!これも楠木坂に戻る為だ。
「か…かわっ…もうとうくん突然!」
「あ、ごめんごめんつい。他の人に言われたりしないの?」
俺がそう言った瞬間、照れていた表情が一変して暗い表情へと変わった。
「言われないよ。それに凛可愛くないし」
ここまでは計画通り。
凛が暗くなる事までは織り込み済みだ。これで過去の事が聞きやすくなった。
「君が可愛くないって誰が決めたの?」
「え?」
「誰かに言われたのか?まぁそれは人それぞれだしそう思う人もいるのは仕方ない事だけど俺は素直に凛が可愛いと思ったよ」
「だ…ダメだよそんなお世辞…」
「生憎俺はお世辞は嫌いだ。俺は思った事しか言わない」
俺がそう言うと凛は顔を赤らめ喋らなくなってしまった。
照れているのだろう。
「どうしてそんなに自分の事を認めたがらないんだよ。もう少し自信を持ってもバチは当たらないぞ?」
「…」
凛は俯いたまま喋らない。
表情が見えないため今凛が何を思っているかは予想出来ない。
これ以上踏み込むのは危険だな…
「凛の中に何か過去のトラウマがあるかもしれないから深くは聞かない。だけど、俺はきっと何度も言うよ。凛が可愛いって」
あぁー!!最高にキモい台詞吐いたぁ!!
この風貌でこの台詞はアウトだろう!もっと他に言葉あったじゃん何してんの俺!
俺が頭を抱えていると、喋らずに俯いていた凛が静かに口を開いた。
「よく、そんな恥ずかしい事言えるね」
…あら、これやらかしたやつ?
怒ってらっしゃる?踏み込みすぎたやつ?
凛は一度口を閉ざすと、徐に顔を上げる。
その表情はどことなく嬉しそうだった。
「ありがとう。始めて言われたから反応に困っちゃったけど本当に嬉しい」
…あぶねー!!大丈夫だったー!!
「そうか。それなら良かったよ」
凛の言葉に俺も少し微笑んで返す。
平然を装ってるけど心臓はバクバクしてるからな。
あー怖い。
「実はね。凛昔スカートを穿いて学校に行った時があったんだ。小学生の時に」
凛は近くにあったベンチに座ると、過去を振り返るように話し始めた。
これはもしや…トラウマを本人の口から聞ける!?
俺もベンチに座り凛の言葉を待った。
「そしたらね?同じ学年の男の子から凄いバカにされたんだ。今でも言われた言葉覚えてるよ」
そして凛の脳裏に男の子に言われた言葉がよぎる。
「男女がスカート穿いてる。似合ってない。男っぽいくせにスカートなんか穿くな…挙げだすとキリがないや」
「それから私はスカートを穿かなくなった。自分に自信が持てなくなった。そして、それが今もトラウマになった。払拭しようとしてスカートを穿いてみようって思った時もあったよ?でもスカートを見るとどうしても思い出しちゃうんだ。男の子にバカにされた時の記憶が鮮明に…」
悲しそうに話す凛の表情は今にも泣き出すんじゃないかと思うくらいに暗かった。
そりゃそうだ。今凛は自分のトラウマを我慢して思い出しながら俺に話してくれている。
もうチャンスは今しかない。
この機会を逃せばきっと凛のトラウマは払拭されないままだ。
必ずその呪縛を解いてみせる。
「ごめんね!折角のお出かけなのにこんな暗い話しちゃって」
自分のトラウマを話した凛はハッとしたような表情を見せると無理に笑いながら明るく繕う。
演技下手かよ。声震えてるぞ。
俺はベンチから勢いよく立ち上がると、明るい口調で凛に言った。
「よし、服屋行くぞ!」
「と、とうくん?なんで急に…」
座っていたベンチから割りと近場にあった服屋。
俺は凛の手を引くと、急いで店内に入った。
「ん?凛にスカート穿いてもらおうと思って」
俺の言葉に凛は驚きの表情を浮かべた。
「え?ちょ、ちょっと待ってとうくん!む、無理だよいきなりスカートなんて…」
「もったいないよ。絶対似合うから」
「で、でも…」
「小学生の時と今は全然違う。凛はどこからどう見ても女の子だし、一緒に遊んでて感じたけど寧ろμ’sのメンバーよりも女の子だと感じた」
「そんな…」
「それに別に皆が凛のスカートを見るわけじゃない。凛のトラウマを知った俺だけが見るなら別に大丈夫だろ?」
凛のトラウマを払拭させるにはちょっと強引な方法が一番効果的だと感じた。
凛自身があまり積極的じゃないなら俺が行動を起こさないといけない。
それにきっとこの方法なら上手くいく。
「それなら…大丈夫かな」
凛は少し迷いながらもしぶしぶ了承してくれた。
そして俺は凛に自信を持って伝えた。
「凛にスカート似合うって事証明させてみせる」
凛はよく分からない表情をしていた。
とうくんに可愛い伝えたいって言われた時とても嬉しかった。
男の人にそんな事言われた事無かったし何よりとうくんが勝手なイメージで申し訳ないんだけどあまりそうゆう事言わなさそうだったから余計に嬉しかった。
始めてかもしれないにゃ…かよちん以外の人に自分のトラウマ話したの。
そしてとうくんに連れられやってきた服屋さん。
凛の手には自分で選んだスカート。
とうくんになら見られてもいいかなって思ったけどいざ穿いてみるとなるとやっぱり不安。
似合わないって言われたらどうしよう…
その時は多分もう立ち直れないと思う。
正直、とうくんにここまで心を開くとは思わなかったにゃ。
風貌はお世辞にも明るいとは言えなくてどことなく近寄りがたい雰囲気を出していたから、話しかけられた時は凄くビックリしたにゃ。
でも一緒に遊んでみると話しやすくて楽しくて、凛の事を気遣ってくれる。
だからこそ自分のトラウマを話してみようっていう気持ちになれたのかも。
…よし、いつまでもうじうじしてる訳にはいかないにゃ。
きっと大丈夫…とうくんなら…
似合ってるって言ってくれるかな?
「準備出来た?」
試着室の外からとうくんの声が聞こえる。
「もうちょっとにゃ!」
とうくんにそう言うと、私はカーテンに手をかける。
ここで勇気を出さなきゃいつまでもトラウマは払拭出来ないにゃ。
それに折角とうくんがくれたチャンス。
絶対に逃すわけにはいかないにゃ!
そして私は勢いよくカーテンを開けた。
シャッ!
「え…」
カーテンを開けるとそこにはとうくん。
さらに、数名の店員さんがジッとこちらを見つめていた。
…これは一体どうゆうことにゃ?
「やっぱり俺の思った通りだ」
するととうくんが口元を綻ばせながら口を開く。
「凄い似合ってるぞ凛」
とうくんがそう言うと…
「とてもお似合いですお客様!」
「そのスカートお客様にピッタリですよ」
「スカートも喜んでますね。とても可愛いですよ」
店員さんが拍手をしながら凛を褒めてくれました。
その様子を見た他のお客さんも…
「え、あの子可愛い…」
「おかあさん。あのお姉ちゃん可愛い!」
「うん。スカート良く似合ってるわね」
と凛を褒めてくれました。
でもここまで褒められると嬉しい反面少し恥ずかしいにゃ…
「こ…これって…」
まだ状況を飲み込めていない凛を見てとうくんが話してくれました。
「実は凛がスカートを穿いてる間に俺が店員さんを集めたんだ。俺の友達が慣れないスカートを穿くから見て感想を伝えてほしいって。他のお客さんも感想を言ってくれたのは予想外だったけどね」
とうくんの話を聞いてさっきの言葉の意味が分かりました。
「凛にスカート似合うって事証明させてみせる」
これってこうゆう事だったんだ…
そうと分かると凛は嬉しさで思わず泣きそうになってしまいました。
凛の為に本当にありがとう…とうくん…
結果作戦は上手くいった。
試着したスカートは凛が凄い気に入ったようですぐに購入していた。
始めてあんな事したから緊張したけど頑張った甲斐があったな。
一先ずこれで凛のトラウマは払拭出来ただろう。
本人がスカートを進んで買ったのが何よりの証拠だ。
現在は凛の家に向かい歩いている最中。日が暮れてきた為帰路についていた。
ちなみに凛は鼻歌を歌いながら上機嫌で歩いている。
「そんなに嬉しかったか」
「当然だにゃ!危うく人前で泣きそうになったんだよ?嬉しすぎて」
あの時突然後ろを向いたのはそれが理由だったのか。
…後一つ気になる事があるんだが。
「ところで凛。さっきより凄い距離近くないか?」
そう。服屋に行ってからというもの歩いている時の凛との距離が肩と肩がぶつかりそうな殆ど近くなっていたのである。
こうゆうのは太陽の仕事だろ…
慣れてないんだよ俺。
「気のせいにゃ!」
目に見えて分かるように俺に対しての好感度が高くなった。
全然悪い事じゃないんだが、ここまで分かりやすくされると反応に困る。
だがこれでμ’sに勧誘しやすくなったのは確かだ。
凛のトラウマ払拭はあくまでも小泉さんと約束した最低条件。本来の目的はμ’sに入ってもらう事にある。
トラウマが払拭された今ならμ’sに入ってくれる可能性は充分にある。
勿論無理強いはしないが。
「凛」
「…?…どうしたんだにゃ?」
俺は立ち止まり、真剣な表情を浮かべながら凛に話しかけた。
凛も俺の表情を見ると立ち止まり、嬉しそうな表情なら疑問の表情に変わった。
さぁ作戦も大詰めだ。
このチャンスを逃すなよ俺。
俺はゆっくり息を吐くと、凜の目を見つめながら伝えた。
「凛。単刀直入に言う。μ’sに入らないか?」
「え?」
その瞬間、凛が顔がみるみる内に赤くなった。
「む、無理にゃ!凛がアイドルなんて向いてないにゃ!」
「誰が決めたの?それも昔言われた?」
「うっ…い、言われてないけど…」
「じゃあ凛がアイドルに向いてるか向いてないかなんて分かんないじゃん」
これは押せばいけるかもしれないな。
「でも、凛は髪の毛短いし…」
「髪の毛が短いアイドルなんていっぱいいるぞ」
「それに凛は可愛くないし…」
「それはさっき証明したろ」
「うぅ…」
「何を迷ってるんだ。俺は、君がアイドルに興味がある事を知ってる」
「え!?」
そう。俺は知ってる。
それに俺が気付かないとでも思ったか?
「勧誘のポスターを何分も見て難しい顔で行ったり来たりしてたのは誰だ?μ’sの練習をこっそり見に来たのは誰だ?これに関しては小泉さんが加入してからはさらに頻度が増えたな」
「き、気づいてたのにゃ!?」
「勿論。でも当然無理強いするつもりは無いよ。凛が本当に入りたくないなら断ってくれて全然構わない」
俺はそう言うと凛から背を向けた。
さて、そろそろ潮時かな。作戦もこれで殆ど終わった。
凛のトラウマを払拭させる事は出来たから作戦は成功と言えるだろう。
「…凛は…」
「答えは今じゃなくて良い。ゆっくり考えて、自分が後悔しない答えを出すんだ。俺は凛の出した答えを尊重する」
「…分かった」
俺が出来るのはここまで。
後は凛の答えを待つしかないな。
「さて、着いたな」
話している内に凛の自宅に到着した。
長かったような短かったような…あぁ本当に慣れない事するのは疲れる。
「じゃあな凛」
俺は凛に手を振るとそのまま歩き出した。
「待って!」
背後から凛の声が聞こえた。
ピタリと足を止め、振り返る俺。
そして凛は不安そうな表情を浮かべながら口を開く。
「もし、凛がアイドルを始めた時…とうくんは…凛に、また…可愛いって言ってくれますか?」
俺は振り返ると、凛の問いに対し口角を上げながら自信満々に答えた。
「何度だって言うさ。そして凛忘れるな?俺は、
絶対に似合うと思ったから君をμ’sに誘ったんだよ」
俺の言葉に凛が微笑んだ。
その笑顔は、太陽のように輝いていた。
「ほ…星空凛です!歌もダンスも初心者ですけど…体を動かす事はとても大好きで、体力なら負けません!そして何より、皆さんのライブを観た時からずっと、一緒にステージに立ちたいって思うようになりました!この前は自分に自信が持てなくて断っちゃったけど…もう逃げませんっ!この前は断っちゃってごめんなさい…でも、私、アイドルやりたいです!私も、μ’sに入れてください!」
次の日。
凛は答えを出した。
少しの緊張と沢山の決意を乗せて言葉を紡いだ。
そう。凛はスクールアイドルの道を選んだ。
「勿論だよ!これからよろしくね、星空さん!」
「はい!」
高坂さんが満面の笑みで迎え入れる。
凛も笑顔で応えるのだった。
表情で察するにもう迷いは吹き飛んだみたいだな。良かった良かった。
これで5人になった。ようやく折返し地点だな。
「お前…何したんだ?」
太陽がこっそりと話しかけてくる。
俺の手回しだと気づいたようだな。
さすが伊達に俺と友達なだけはあるな。
「…」ジーッ
「…」ジーッ
「…」キラキラ
ていうかよく見たら南さんと園田さんと小泉さんがこっちを見てるな。
あいつらも俺がなんかしたと勘付いたみたいだな。
小泉さんに至っては凄いキラキラした目で見てきてるし…
「…ん?何の事だ?」
まぁ凛のトラウマの件もあるし、ここでは伏せとくか。
「よろしくお願いします!【氷月先輩】!」
「ああよろしく、【星空さん】」
ちなみに名前呼びは二人の時だけと言ってある。
二人だけで何度も遊びに出掛けたり下校したって知られたらめんどくさいし、何より太陽が凄いうるさい。
凛は他のメンバーと自己紹介を交わしている。
どうやらもう仲良くなっている様子。
コミュニケーション能力高いなー…
「…!…」パチッ
「…!…」
ボーッと眺めていると凛と目が合う。
すると、凛は俺に向かいウインクしてきた。
「…なんか…ちょっと面倒くさい事になりそう…」
どうやら俺は、凛に凄い気に入られたらしい。
一方、その様子を陰から見つめている少女がいた。
「…アイドルなんて…」
自分に素直になった小泉花陽と星空凛を嫉妬の混じった目で見つめる。
「これで良いのよ。私には関係ない…これが私の人生」
自分に言い聞かせるように呟く少女は、赤い髪を靡かせながら屋上を後にした。
残るピースは4つ。
音楽を諦めた少女。
「私はスクールアイドルに興味ありませんし入るつもりもありません」
素直になれない少女。
「きょ、興味なんか!別にないです!」
翻弄される少女。
「真姫の事は家で決める。よそ者が首を突っ込むな!」
「真姫さんの事は真姫さんが決めます。貴方こそ首を突っ込まないで頂きたい」
考えた末に少女が選んだ道は…
「一度きりの人生だ。君の人生は君の物。君が出した答えに文句は誰にも言わせない!」
「…!…」
6つ目のピースを救うべく、氷月冬夜は動き出す。
〜次回ラブライブ〜
【第12話 青春の形】
お楽しみに。