ラブライブ!~太陽と月~   作:ドラしん

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にこにーファンの皆様お待たせしました!

念願のにこにー加入回ですよ!

どうせまた次回の更新まで日が空くんだろと思った方、残念でした!

睡眠時間を削ってなるべく早く仕上げました。

今は少しモチベーション上がってるから大丈夫だけどまたいずれ無くなるんだろうな…

どうやったらモチベーション上がるんだろ。

というわけで第13話始まります。


第13話【笑顔の力】

西木野さんがμ'sに加入してから数日。

 

俺は今神田明神にいる。

 

今日は1年生3人が加入し、初めての朝練。

 

全員の加入に関わった事もあり、せめて最初くらいは見届けようと思い来た。

 

「さすがに早すぎたか?」

 

普段の朝練スタート時刻よりやや早めについた俺。

 

仕方ない。上で待つか。

 

階段を登り切ると、そこには意外な人物がいた。

 

「あ、おはようございます!」

 

「おはよう。早いな、小泉さん…あれ?」

 

笑顔でこちらに振り向く小泉さん。

 

しかしその姿は明らかに変わっていた。

 

「気づきました?」

 

「気づくよそりゃ。眼鏡どうしたんだ?」

 

そう。いつも掛けているはずの眼鏡が無かった。

 

「μ'sに入った後の凛ちゃんや西木野さんを見て思ったんです。せっかくスクールアイドルになれたのに私には変化が無いって。凛ちゃんと西木野さんはよく笑う様になってとても輝いていました。でも、私には無い。だから、これは変化の第一歩として眼鏡をコンタクトに変えてみたんです」

 

なるほどね。俺からすれば小泉さんも輝いていたが…

 

まぁ悩んで自分なりの答えが出せたなら文句は無い。

 

「どう…ですか?」

 

小泉さんが不安そうな表情をしながらこちらを見つめる。

 

参ったな…こうゆうのは苦手なんだけどな。

 

「眼鏡の時とは違う良さがあるな。凄い可愛いよ小泉さん」

 

「か、かわっ…!」

 

あ、やべ。ちょっと直球すぎたわ。

 

でも本心だしな…

 

「ありがとうございます!」

 

顔を赤くしながらも笑顔でお礼を言う小泉さん。

 

あー…自分が着実に太陽に近づいてきてるのが嫌だ。

 

「ふわぁぁ…いつもこんな早起きしなくちゃいけないの?」

 

「仕方ないでしょ。朝練なんだから」

 

後ろから聞こえる二人の声。

 

どうやら2年生と太陽よりも早く1年生が揃ったみたいだな。

 

「眠いにゃー…あ、かよちん、氷月先輩おはようございます!」

 

「おはようございます」

 

「凛ちゃん、西木野さんおはよう!」

 

「早いな二人共」

 

「西木野さんに急かされて…ってえぇ!?かよちんどうしたの!?」

 

「あなた…眼鏡やめたの?」

 

「うん。コンタクトにしてみたんだ」

 

「凄い可愛いよかよちん!」

 

「ありがとう凛ちゃん!」

 

絶賛置いてけぼり中なう。

 

まぁ良いけど。

 

「いいじゃない。似合ってるわよ花陽」

 

「ありがとう!…ってあれ?今私の事…」

 

「あ…えっと、ほら、折角同じμ'sのメンバーで私達同い年なんだし、他人行儀なのはおかしいかなって思っただけよ」

 

頬を赤くしながら自分の髪の毛をいじる西木野さん。

 

その様子を見た小泉さんと凛は、互いに顔を見合わせると、

 

「「ふふっ」」

 

お互い微笑んだ。

 

そして、

 

「真姫ちゃーん!!真姫ちゃん真姫ちゃん真姫ちゃん!!」

 

名前を連呼しながら西木野さんの周りで飛び跳ねはじめた。

 

何がしたいんだこの猫娘は。

 

「ちょっと!そんなに呼ばなくてもいいでしょ!」

 

…と言いつつめちゃくちゃ嬉しそうな顔してるんだけど西木野さんは気づいてないみたいだな。

 

何はともあれ、西木野さんも1年生組に溶け込めそうで良かった。

 

さて、μ'sでも上手くやっていけそうだから別にこれ以上ここにいる意味無くなってきたな。

 

帰るか。

 

「仲良く出来そうで何よりだ。これからも頑張れよ」

 

「あれ、帰っちゃうんですか?」

 

「ああ、俺は別に練習を見に来た訳じゃないからな。お前ら1年生がちゃんとμ'sの中でも仲良くやれるか見に来ただけだから。特に西木野さん」

 

「な、なんで私なのよ!」

 

「一先ずだ。今の君らのやり取りを見て安心したわ。じゃあな」

 

俺は手を振って階段を降りた。

 

「…待って下さい!」

 

…と思ったんだが。

 

「どうした小泉さん」

 

「練習…見てください」

 

「え?」

 

「私達の練習、見てください!」

 

正直驚いた。

 

まさか小泉さんがこんなに積極的になるとは…

 

眼鏡無いから強気にいけるとかそうゆうタイプじゃないよな?

 

「そうね。あなたにも見てもらわないと困るわ」

 

「そうにゃ!と…氷月先輩も参加するにゃ!」

 

いやなんでそんなに俺に見てもらいたいんだよ。

 

そして凛今とうくんって呼ぼうとしただろ。

 

「何で俺なんだよ。別に俺アドバイス出来ないぞ?」

 

「別にいいわ。アドバイス出来なくても」

 

「居てくれるだけでいいにゃ」

 

「参加するって言うまでこの手離しませんから」

 

なんでこんなに俺は懐かれてるんだ?

 

こいつらが何考えてるか全く分からん。

 

「分かった分かった!参加するから一先ず離せ」

 

これで断れない辺り、俺も大分甘くなったな…

 

 

 

 

 

それから少しして2年先組と太陽もやってきた。

 

俺がいる事に驚いていたが、俺も参加すると分かった途端嬉しそうに朝練を開始した。

 

何なんだ一体…

 

しかし、朝練が始まって少しすると、南さんがしきりに周りを気にする素振りを見せた。

 

太陽を含む周りのメンバーは気付いていないみたいだな。

 

これは朝練に参加して正解だったかもしれない。

 

俺は立ち上がると、全体に声を掛けた。

 

「はい、一旦練習ストップして」

 

「「「「「「「…!…」」」」」」」

 

俺の一声に全員手を止める。

 

「どうした?珍しいな」

 

真面目な顔をした太陽が近づいてくる。

 

なんでこいつちょっと緊張してるんだよ。

 

「いや、気になった事があって」

 

「き、気になった事…」

 

「一体なんでしょう…」

 

「ドキドキするにゃ…」

 

「は、はい…緊張します」

 

「落ち着かないわね…」

 

いや皆緊張しすぎ。

 

「何!?何!?教えて!」

 

…ああ、こいつは例外だったな。

 

高坂さんはそうゆうタイプだったわ。

 

「南さん」

 

「は、はい!」

 

「…怒るとかじゃないからそんな緊張しないでいいよ」

 

「は、はい…」

 

あ、ダメだこりゃ。

 

早く終わらせた方がいいな。

 

「さっきから凄い周り気にしてるけどどうしたんだ?」

 

「えっ…と…実は凄い視線を感じてて…」

 

「視線?ことりちゃんに?」

 

「…誰でしょう?」

 

「ま、まさかストーカー!?」

 

「それはいけない!よし、俺に任せろ!」

 

「待て待て待て!勝手に話を進めるなお前ら」

 

全く…小泉さんがストーカーとか言うから太陽が反応しちゃったじゃんか。

 

視線は南さんというよりかはμ's全員に注がれてたと思うけど。

 

「視線に関しては俺も気付いてた。別にストーカーじゃないと思う」

 

感じ取れた感情は嫉妬や羨ましさ。

 

ストーカーならば好意が全面的に出るはずだ。

 

「どうするんだ?ストーカーじゃないにしろ練習に集中出来ないぞ?」

 

「俺が何とかする。お前らは練習続けろ」

 

「…大丈夫なの?氷月君」

 

「ああ、任せろ」

 

「こうゆう時の冬夜は頼りになるから南さん、安心していいぞ!」

 

…なんでこいつが偉そうなんだか。

 

まぁいいや。

 

 

 

 

 

朝練を続行するμ'sのメンバー。

 

俺は神社の裏に移動し、視線の正体を確認しようと音をたてずにやってきた。

 

「…上手く行ったな。ここら辺なはずだが…」

 

裏手に回り込み、恐る恐る歩を進める。

 

すると、神社の角からμ'sを見つめるマスクとサングラスを一人の少女を発見した。

 

「あの娘か。あれ、あの娘確か…」

 

あのツインテール、μ'sのファーストライブに来てなかったか?まぁいい。

 

俺は気付かれない様に背後まで忍び寄ると、肩に手を置き話し掛けた。

 

「おい」

「キャァァァァ!!!」

 

悲鳴をあげ完全に腰を抜かしたツインテール。

 

「どうした?」

 

「大丈夫ですか?」

 

悲鳴を聞きつけたμ'sのメンバーもこちらへやってきた。

 

「あ…あんたいつの間に…」

 

「あなたを油断させる為ですよ。そうしないと警戒されるでしょ」

 

「にしても物音たてなさすぎでしょ!」

 

「そこは意識したし、俺は存在感が昔から薄いんでね。で、μ'sに何か様ですか?」

 

俺がツインテールに問うと、ハッとした顔で立ち上がると指を指しながらマスクを外しながら言い放った。

 

 

 

 

「あなた達、とっとと解散しなさい!」

 

 

 

 

「…ふん…」パクパク

 

「穂乃果…ストレスを食欲にぶつけると大変な事になりますよ」

 

場所は変わりファーストフード店。

 

ツインテールの言葉にはあまり気を止めず放課後、いつもの様に練習を行おうとするが雨により断念。

 

ここ数日雨が続いてた事もあり、高坂さんは分かりやすくイライラしていた。

 

「雨、何で止まないの!?」

 

「私に言われても…」

 

「練習する気満々だったのに…天気も空気読んでよね」

 

俄然ムスッした表情の高坂さん。

 

気持ちは分からんでもないがな。

 

「うわぁ!ウンチだウンチ!」

 

「うるさい!」

 

何なら隣のテーブルが騒がしいな。

 

それに今聞いたことある声が聞こえたような…

 

「穂乃果ちゃん。明日も雨だって」

 

「そんなぁ…」

 

フードを取りに行ってた南さんと小泉さんが戻ってくる。

 

南さんの言葉に高坂さんは分かりやすく落胆した。

 

「…」ソ−

 

「…」

 

その時、衝立の隙間から伸びる手。

 

その手は高坂さんのポテトを全て掴み、そのまま隣のテーブルに消えていった。

 

一番近い席にいる高坂さんと太陽は気づいていない。

 

面白そうだから黙っとこう。

 

「あれ…無くなった…」

 

あ、ポテト無い事に気づいた。

 

「ちょっと朝日君!私のポテト食べたでしょ!」

 

「は?食べてないよ!」

 

「…」シュッ

 

その時、今度は素早い手付きで太陽のポテトを全て奪った。

 

「じゃあ何でポテト無いの!」

 

「知らないよ。自分で食べた量も覚えてないのかよ」

 

やれやれとした表情でポテトの空箱を持つ太陽。

 

「あ」

 

そしてポテトが無い事に気づき、止まる。

 

「おい!俺のポテト食べたろ!」

 

「食べてないよ!」

 

「自分のポテトが無くなったからって他人のに手を出すとかどんだけだよ」

 

「な!ちょっと私が意地汚いみたいな言い方しないでよ!そっちこそ自分で食べた量覚えてないの!?」

 

「何だよ!」

 

「そっちこそ!」

 

「ふ、二人とも落ち着いて…」

 

「そ、そうですよ。お店の人に迷惑ですよ」

 

「喧嘩にゃ喧嘩にゃ!」

 

「あわわ…ちょっと凛ちゃん楽しんでる場合じゃないよ。氷月先輩も笑ってないでどうにかして下さい!」

 

いやぁーこりゃ傑作だ。

 

面白いったらありゃしない。

 

「…」バン!!

 

収拾がつかなくなりそうなその時、テーブルを叩く音が響き渡る。

 

それにより大人しくなったμ's一同。

 

「に、西木野さん…」

 

「そんな事より、練習場所の話でしょ!」

 

「そ、そうでした…」 

 

「すいません…」

 

おお、高坂さんと太陽を一瞬で黙らした。

 

やるな西木野さん。

 

「教室とかは借りられないの?」

 

「うん…前に先生に頼んだんだけど、ちゃんとした部活じゃないと許可出来ないって…」

 

西木野さんの問いに対し、困ったような表情で返答する。

 

まぁ実はそれ、解決出来るんだけどね。

 

「そうなんだよね…部員が6人いれば、ちゃんとした部の申請をして、部活に出来るんだけど…」

 

南さんの言葉に反応する高坂さん。

 

てか気付いてないのかい。

 

「…6人?」

 

高坂さんの言葉に顔を見合わせるμ's一同。

 

「6人なら…」

 

小泉さんが高坂さんを見つめる。

 

その瞬間、高坂さんはハッとした顔をし立ち上がった。

 

どうやら気づいたみたいだな。

 

「そうだ忘れてた!部活申請すればいいじゃん!」

 

「忘れてたんかーい!!」

 

思わず隣のテーブルからツッコミが飛ぶ。

 

「あれ、今のは?」

 

今ので分かったわ。今朝のツインテールだろ。

 

「それより忘れてたってどうゆう事?」

 

西木野さんの言葉に視線が集まる。

 

西木野さんは気にならないのか?今のツッコミ。

 

「いやぁー、メンバー集まったら安心しちゃって…」

 

えへへと言いながら頭を掻く高坂さん。

 

それを見て西木野さんは、

 

「…この人達、ダメかも」

 

と呟くのだった。

 

「よし、そうと決まれば早速明日部活申請しよう!そしたら部室が貰えるよ。いやぁホッとしたらおなか減って来ちゃったー」

 

衝立に背を向ける高坂さん。

 

「…」ソ−

 

ふいに伸びるツインテールのと思わしき手。

 

「さぁて」

 

振り返る高坂さん。

 

その時、ツインテールのと思わしき手は高坂さんのハンバーガーを掴んでいた。

 

ツインテールよ。それは攻めすぎだ。

 

「…」ソ−

 

静かにハンバーガーを戻すツインテール。

 

その後、謎の渦巻き型の帽子を被ったツインテールは立ち上がるとゆっくりと歩き出した。

 

いや、そんなんで誤魔化せるか。

 

ていうかウンチって呼ばれてたのはそれか。

 

「ちょっと!」

 

当然高坂さんは見逃すはずもなく、走り出しツインテールの腕を掴んだ。

 

「か、解散しろって言ったでしょ!」

 

「そんな事より食べたポテト返して!ポテト泥棒!」

 

「そっち!?」

 

思わず小泉さんがツッコむ。

 

「あーん」

 

「買って返してよ!」

 

「あなた達ダンスも歌も全然なってない!プロ意識が足りないわ」

 

「え?」

 

「いい?あなた達がやってるのはアイドルへの冒涜、恥よ!さっさとやめる事ね!」

 

ツインテールはそう言い残すと、勢い良く走り出した。

 

「…何だったんでしょうか」

 

その疑問には同意するぞ。小泉さん。

 

 

 

 

 

 

「アイドル研究部?」

 

次の日。俺達は部活の申請をする為に生徒会室へやってきた。

 

しかし、生徒会長から突き付けられたのはアイドル研究部の存在だった。

 

「そう。既にこの学校ではアイドル研究部というアイドルに関する部活があります」

 

「まぁ部員は一人やけど」

 

「え、でも、この前は部活には6人以上って…」

 

「設立する時は6人必要やけど、その後は何人になっても良い決まりやから」

 

「生徒の数が限られている中、イタズラに部を増やす事はしたくないんです。アイドル研究部がある以上、あなた達の申請を受ける訳にはいきません」

 

「そんな…」

 

まぁ絢瀬さんの言い分は正しいな。

 

こればかりはどうしようも出来ない。

 

「これで話は終わり…」

「になりたくなければ、アイドル研究部とちゃんと話をつけてくる事やな」

 

絢瀬さんの言葉にやや被せる形で東條さんが話す。

 

なるほど。それは認められてるのか。

 

「ちょっと希…」

 

「二つの部が1つになるなら、問題はないやろ?」

 

東條さんがそう言うと、絢瀬さんは喋らなくなった。

 

東條さんが高坂さんに顔を向けると、

 

「部室に行ってみれば?」

 

と微笑みながら言った。

 

 

 

 

 

「氷月君、ちょっとええ?」

 

「はい?」

 

生徒会室を出てアイドル研究部へ向かおうとした時、俺は東條さんに呼び止められた。

 

「先行って話してきて」

 

「分かった」

 

俺は太陽にそう言うと東條さんの方を向いた。

 

「何用ですか?」

 

「単刀直入に言うね?実は…にこっちを助けて欲しいんよ」

 

「にこっち?」

 

「あ、ごめんね。にこっちっていうのはアイドル研究部の部長。矢澤にこの事や」

 

なるほど。にこだからにこっちね。

 

にしても、かよちんといいえりちといい今のにこっちといいこの学校ではあだ名が流行ってんのか?

 

「それをどうして俺に?また占いですか?」

 

「いや、…まぁそれもあるんやけど」

 

あるんかい。

 

どんだけ占いを信用してんだよこの人。

 

「花陽ちゃんに始まり、凛ちゃんや真姫ちゃん今μ'sに加入している1年生は全員君が関わっている」

 

…まぁそうだな。

 

「君のおかげで今μ'sが6人いるって言っても過言ではないんよ。更には、朝日君をコーチに頼んだのも君だと聞いたよ」

 

…話したのかあいつら。

 

多分高坂さんだと思うが。それか太陽が自分で言ったか。

 

「それは買い被りすぎです。確かに関わりはしましたが最終的な答えを出したのは全員自分自身ですよ」

 

「その答えを出す手助けをしたのは君やろ?これは紛れもない事実や」

 

「…分かりました。埒が明かないので話を進めましょう。俺は何をすれば?」

 

「これからにこっちの過去を話すね。そして、ほぼ丸投げになる形で本当に申し訳ないんやけどにこっちにμ'sに入る様に説得して欲しいんや」

 

その矢澤にこがどんな人かも知らないのにそれは無茶じゃないか?

 

それに初対面の不気味な風貌な奴に説得されても逆効果な気がするが…

 

「にこっちがμ'sに加入すれば、確実に廃校阻止に近づくと思うんよ。そうすれば君の楠木坂に戻る目標も達成出来るんやない?」

 

なぜそれを知ってる?

 

「誰から聞きました?」

 

「朝日君や」

 

あいつ…余計な事を。

 

「はぁ…分かりました。やってみましょう」

 

「ありがとう!期待しとるで」

 

そんな期待されても困るんだが…

 

「一先ず、その矢澤さんの過去って何ですか?」

 

「それは…」

 

 

 

 

 

「という事なんよ」

 

「なるほど」

 

一通り東條さんから矢澤さんの過去を聞いた。

 

ざっと纏めると、

 

矢澤さんは過去にスクールアイドルをしていたが他のメンバーが付いてこれず次々とやめて矢澤さんは孤立した。そしてそれが今も続いている。

 

それからはスクールアイドルに対して厳しくなり、過去音乃木坂でスクールアイドルをやろうとしていた生徒に敵意を剥き出しにしてスクールアイドルを諦めさせた事もあるらしい。

 

話を聞いて思ったんだが、もしかしてその矢澤にこってあのツインテールじゃないか?

 

「無茶なお願いなのは百も承知。でも、君にしか頼めないんや…にこっちをお願い…」

 

にしても東條さんは何故そこまでμ'sに肩入れをするんだ?

 

講堂の件やファーストライブでの様子。西木野さん事や部室の事も助け舟が早かった。

 

まるで用意していたかのように。

 

更にはこの矢澤さんの事。

 

単純に矢澤さんを助けたい気持ちもあるだろうが、別の思惑がある様な気がしてならない。

 

何故そんなにメンバーを増やしたがっている?

 

「矢澤さんの事は分かりました。やれるだけやってみますが、1つ質問いいですか?」

 

「うん?」

 

「東條さんにとってμ'sは?」

 

更にμ'sの事に関しては徹底して絢瀬会長と対立している様に見える。

 

μ'sを成長させる事で絢瀬会長に認めさせようとしているのか。

 

だとすればその先は…

 

「そうやね…一言で言うなら、【希望】かな」

 

絢瀬会長が悩んでいるのはある程度分かっている。

 

勧誘のポスターを貼っていた時に話した時に感じた違和感。

 

本当の絢瀬会長…絢瀬絵里の意思が見えない事。

 

少ししか関わっていない俺が分かるんだ。絢瀬会長の近くにいる察しの良い東條さんなら気付いてるはず。

 

今回の矢澤さんの件と同様に、絢瀬さんを救いたいと考えているなら…

 

じゃあそのゴールは…

 

「分かりました。ありがとうございます」

 

「…氷月君は何が知りたかったん?」

 

「そうですね。知りたかったのはあなたの狙いです」

 

「うちの狙い?」

 

「何故あなたがμ'sの活動にここまで協力的なのか、何故絢瀬会長と対立しているのか、μ'sを認めさせようとしているなら何故技術面からでは無くメンバーを集める事に重きを置いてるのか」

 

「…」

 

「そしてあなたにとってのμ'sは【希望】。それは廃校阻止のため?もしくは矢澤さんのように友人を救う為?」

 

東條さんが驚いたような表情に変わる。

 

その表情をするって事は…間違ってないようだな。

 

「東條さん。あなたの望み、叶えてあげますよ」

 

面白い。どうやら東條さんの狙いは俺と似ているらしい。

 

俺は東條さんに背を向けると、少し微笑みながら言う。

 

「あなたが9人目になる為にね」

 

矢澤さん、絢瀬さん、東條さん。

 

見つけたよ。残りのパーツを。

 

 

 

 

 

 

「氷月君に全部バレちゃったみたいやね」

 

冬夜が去った後、東條希は小さく呟いた。

 

「うちの負けや。氷月君には勝てない」

 

そして少しだけ頬を赤らめると、

 

「もっと君の事知りたい」

 

と言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「…」ムスッ

 

俺がアイドル研究部に着くと、部長と思わしき人物が不機嫌そうな表情で椅子に座っており、μ'sのメンバーは部室内を見渡していた。

 

ていうかやっぱりあのツインテールじゃねぇか。

 

なんか鼻に絆創膏してるけど何があったんだ?

 

「A−RISEのポスター…」

 

「あっちは福岡のスクールアイドルね」

 

西木野さん詳しいな。

 

「まさか校内にこんな所があるとはな」

 

太陽も興味津々な様子。

 

「こ、こ、これはっ…!!」

 

その時、小泉さんは1つの箱を手に取ると体を震わせ始めた。

 

「伝説のアイドル伝説DVD全巻ボックスっ!持ってる人に初めて会いました!」

 

「そ、そう?」

 

興奮した様子で矢澤さんに詰め寄る小泉さん。

 

あの矢澤さんがたじろいでるぞ。

 

「凄いです!」

 

「ま、まぁね」

 

「へぇー…そんなに凄いんだ」

 

のほほんと高坂さんが言うと、

 

「知らないんですか!?」

 

今度は高坂さんに小泉さんが詰め寄った。

 

何かスイッチ入ったっぽいな。

 

「伝説のアイドル伝説とは、各プロダクションや事務所、学校等が限定生産を条件に歩み寄り、古今東西の素晴らしいと思われるアイドルを集めたDVDボックスで、その希少性から伝説の伝説の伝説…略して伝伝伝と呼ばれるアイドル好きなら誰もが知ってるDVDボックスです!」

 

「は、花陽ちゃんキャラ変わってない?」

 

「通販、店頭で売り切れが続出する程希少な品物なのにそれを持っているなんてっ!…尊、敬…」

 

「家にもう1セットあるけどね」

 

「本当ですか!?」

 

「じゃあ皆で観ようよ」

 

「ダメよ。それは保存用」

 

「くわぁぁぁ!…うう…伝伝伝…ううう…」

 

「かよちんがいつになく落ち込んでいる…」

 

アイドル好きとは凛から聞いてはいたがここまでとは…

 

こんな一面もあるんだな。

 

ん?南さんはサイン色紙見てるな。

 

「ああ、気づいた?それはアキバのカリスマメイド、ミナリンスキーさんのサインよ。ネットで手に入れた物だから本人会った事はないけど」

 

「ことり、知ってるのですか?」

 

「え、あ、ええと…うん。一応」

 

…なんだ今の反応。

 

凄い怪しいんだが。

 

「…南さん?」

 

「はいっ!」

 

凄い驚きようだな。

 

「もしかして、ミナリンスキーって南さん?」

 

俺は耳元で呟いた。

 

「あっ…い、言わないで…皆には…」

 

「…何やら訳ありみたいだな。安心しろ。俺は口が硬い」

 

「で、あなた達は何しに来たのよ」

 

「あ、そうだ忘れてた!」

 

目的を忘れるなよ高坂さん。

 

 

 

 

「アイドル研究部さん」

 

「にこよ」

 

全員椅子に座ると、ようやく本題に入り始めた。

 

俺は椅子の数が足りない為自主的に隅に行った。

 

「にこ先輩。実は私達、スクールアイドルをやっておりまして…」

 

「知ってるわ。どうせ希に部したいなら話つけてこいって言われたんでしょ」

 

「話が早い!」

 

「ま、いずれこうなるんじゃないかって思ってたけど」

 

「じゃ、じゃあ」

 

「お断りよ」

 

「…え?」

 

「お断りって言ってるの」

 

「え、あの…」

 

「別に俺達は、μ'sとして活動出来る場所が欲しいだけです。ここを廃部にして欲しいとかは全然思ってないです」

 

高坂さんに変わり、今度は太陽が口を開く。

 

多分納得はしないだろうな。

 

「お断りって言ってるでしょ!?いい、前にも言ったけどあなた達はアイドルを汚してるの」

 

すかさず高坂さんが反論する。

 

「でも、ずっと練習してきたから歌もダンスも…」

「そういう事じゃない」

 

これは予想外だ。

 

てっきり歌とダンスがまだまだとか言われるのかと思ったが…

 

となればパフォーマンス面か?

 

「あなた達、キャラ作り出来てるの?」

 

矢澤さんの言葉に全員キョトンとした表情になる。

 

俺は何となく言いたい事分かる気がするな。

 

「そう!お客さんがアイドルに求める物は、楽しい夢のような時間よ。だったらそれに相応しいキャラという物があるのよ。全く仕方ないわね…」

 

そう言うと矢澤さんは背を向け始めた。

 

…何だ?何しようとしてるんだ?

 

「いい?例えば…」

 

 

 

 

「にっこにっこにー!!あなたのハートににこにこにー!笑顔届ける矢澤にこにこ〜。にこにーって覚えてラブにこっ!」

 

 

 

 

空気が凍りついた。

 

うん。俺もまさかパフォーマンスをしてくるとは予想外だった。

 

しかしこれは紛れもなくμ'sに足りない要素…

 

これは参考になるな。

 

だが、μ'sの面々の反応は厳しいものだった。

 

「うっ…」

 

「これは…」

 

「キャラと言うか…」

 

「私無理」

 

「ちょっと寒くないかにゃ?」

 

「ふむふむ…」

 

困惑する2年生組に拒否の反応を見せる西木野さんと凛。

 

小泉さんのみしっかり参考にしてるみたいだな。

 

そして太陽に至っては…

 

「ぷっ…あははははは!!!」

 

「お前黙れ」ガスッ

 

「いっ…!」

 

あまりの空気の読めなさに腹が立った俺は思いっきり首元を殴った。

 

もう帰れお前。

 

「…痛そー…」

 

「よ、容赦ないわね…」

 

高坂さんと矢澤さんは分かりやすく引いていた。

 

「すまん続けて」

 

俺が返すと、μ'sのメンバーは…

 

「凄い可愛かったです!」

 

「あ、でもこうゆうのもいいかも!」

 

「そうですね!お客様を楽しませる努力は大事です」

 

「素晴らしいです!さすがにこ先輩!」 

 

さっきの反応を取り消すかの様に取り繕い出した。

 

もう遅いと思うけど…

 

「よーしこれなら私も…」

 

高坂さんがそう言った瞬間…

 

バンッ!!

 

「…」

 

矢澤さんがテーブルを叩いた。

 

「…出てって」

 

「…え?」

 

「いいから出てって!」

 

矢澤さんはそう言うと全員を押し出す様な形で部室の外に出した。

 

…俺を残して。

 

 

 

 

 

 

「にこ先輩!」

 

こんにちは!高坂穂乃果です!

 

部活として認めてもらう為に話をしに来たんだけど、にこ先輩を怒らせちゃったみたい…

 

うう…どうしたら…

 

「やっぱり追い出されたみたいやね」

 

「東條先輩…」

 

あ、東條先輩だ!

 

やっぱりってどうゆう事なんだろう?

 

「実はにこっち、スクールアイドルやってたんよ」

 

「スクールアイドル?」

 

「あ、にこっちの過去の話は後でもええ?君らのマネージャーが今頑張ってるから」

 

マネージャー…あ、そういえば氷月君がいない!

 

「氷月先輩は?」

 

花陽ちゃんも気づいたみたい!

 

「まだ中に?」

 

氷月君がにこ先輩を勧誘してくれてるのかな?

 

「穂乃果!盗み聞きなんて…」

 

「海未ちゃんは気にならないの?」

 

「えっと…」

 

「あ、話声聞こえるよ」

 

ことりちゃんの言葉が引き金となった私達は、全員で扉に耳を当てる。

 

氷月君…頑張って!

 

 

 

 

 

 

「俺は良かったんですか?」

 

「…いや、なんかさっきの見たら乱暴に出来なくて。自分から出てもらえると助かるわ」

 

ああ、太陽にやった奴か。

 

基本暴力嫌いだしああゆう事は太陽にしかやらん。

 

「だが俺だけが残ったのは好都合。矢澤さん少し話しませんか?」

 

「…何よ。μ'sに入れって件は嫌よ」

 

「矢澤さん…まさにその件なんですけど」

 

「だと思ったわ。後、私の事はにこで良いわ。名字で呼ばれるのあまり好きじゃないの」

 

「分かりました。ではにこさん、μ'sに入りたくない理由を聞いてもいいですか?」

 

「…理由?そんなの決まってるでしょう。あの人達全員キャラがなってないからよ」

 

「キャラがなってない。確かにそうですね。にこさんのパフォーマンスを見て、μ'sに足りない要素だと思いました」

 

「あら。あんた分かってるわね」

 

「あなたがμ'sに入ってくれたら、またμ'sは更なる進化を遂げると思うんです」

 

矢澤にこ。彼女は間違いなくμ'sに必要な要素だ。

 

μ'sには無い小悪魔さとプロ意識。

 

必ずファンが増えるに違いない。

 

「にこさん。μ'sにキャラ作りを教えてあげて下さい」

 

あそこまで注目してたんだ。

 

少なからず興味は抱いているはずだ。

 

後少しのキッカケがあればいける。

 

「無理よ」

 

「…何故ですか?もしかして過去の事が原因ですか?」

 

「…!…何であんたが知ってるの!?」

 

やはりな。

 

凛と同じで過去がトラウマになっているパターンだ。

 

そうなればそのトラウマを取り除けば大丈夫なはずだ。

 

「東條さんから聞きました。スクールアイドルやられてたんですね」

 

「希…ええそうよ。だったら分かるでしょ?私が断る理由」

 

「…また一人になるのが怖いんですね?」

 

「…そうよ。私は自分なりに頑張ってるつもりだった。立派なスクールアイドルになる為に努力もしたし、勉強もしたし、何より本気だった!…なのに…それは私だけで…」

 

「…」

 

「私はあの子達がどこまで本気か分からない。仮に私がμ'sに入って、また前みたいに皆にやめられたら…今度こそ立ち直れない!あんたは言い切れるの!?あの子達が…本当に、スクールアイドルを辞めないって言い切れるの!?」

 

「言い切れますよ」

 

「…!…」

 

「あの子達は何も無い所から始まった。スクールアイドルすら知らない所から。勿論元々歌やダンスが上手かった訳じゃないし、体力や表現力だって無かった。それが今年の4月。にこ先輩に見せてあげますよ。最初の頃の彼女達」

 

そう言うと俺は、スマホの画面を見せた。

 

そこには、高坂さんが最初の頃意見が欲しいと俺に送った動画が流れていた。

 

ジーっと見つめるにこさん。

 

そして暫くして、

 

「…酷い」

 

と呟いた。

 

「そう。最初の彼女達は、動きはバラバラ歌詞は間違えるし笑顔だってぎこちない。スクールアイドルと呼ぶには程遠いレベルだった。でもそれが、あそこまで進化した。なぜか分かりますか?」

 

「…どうして?」

 

「本気だからですよ」

 

「…!…」

 

「ここ数日の練習を見ていたあなたなら分かるはずです。進化を遂げた事。そして、太陽の練習に皆ついて行ってる事。太陽は小中とダンス教室に通っていて、そのダンス教室はその辛さから辞める人が続出する程練習がキツかったんです。それこそ残ったのは本気でプロを目指している人くらい。そんな中で太陽は耐え抜き、先生からも一目置かれる存在になった。そんな太陽が提示した練習メニューについていってるんです」

 

「…」

 

「各々自主トレーニングだって欠かしてない。高坂さんは授業中、教科書を衝立にして影でダンスの本や歌唱力が上がる本を読むくらい真剣です」

 

 

 

「ちょっと穂乃果どうゆう事ですか?」

 

「い、今は説教は無しだよ海未ちゃん!」

 

 

 

「園田さんは、恥ずかしがり屋です。なので人前での笑顔やポーズが苦手。休み時間には良く鏡の前で笑顔の練習や決めポーズの練習をしています」

 

 

 

「ふーん…海未ちゃん最近姿見えないと思ったらそうゆう事」

 

「な、何でそれを知ってるんですか!」

 

 

 

「南さんは他のメンバーと比べたら体力がありません。朝練では誰よりも早く神田明神に来て走り込みをしています」

 

 

 

「ことりちゃん凄ーい!」

 

「えへへ…皆に追いつきたくて」

 

 

 

「小泉さんは先程も見た通りアイドルに関しての情熱が凄いです。普段からいろんなアイドルの動画を見て勉強し、練習場所である屋上には一番早く来てステップの練習をしています」

 

 

 

「かよちん凄いにゃ!」

 

「は、恥ずかしいです…」

 

 

 

「星空さんは運動神経は抜群だが歌があまり得意ではありません。頻繁にカラオケに行ったり、発声練習は人一倍行っています。昼休みに中庭でしているのを目撃しています」

 

 

 

「何で知ってるのにゃ!」

 

「凛ちゃん可愛い!」

 

 

 

「西木野さんはμ'sの作曲家です。音楽室でピアノを弾くことが日課。練習では休憩の合間合間によくスマホで他のアイドルの動画を観て研究してます。また、歌唱力が高く他のメンバーに声の出し方を教える事もあります」

 

 

 

「ゔぇぇ!!見てたの!?」

 

「とても勉強になるんだよね、真姫ちゃんの授業」

 

 

 

「にこさん。分かって頂けましたか?μ'sのメンバー皆本気です」

 

「…一先ず本気なのは分かった。最後にあんたはどうなの?」

 

「勿論本気です。じゃないとここまでメンバーを観察しません。それに、俺と太陽も廃校を阻止したいんです。皆本気で廃校を阻止したいと思ってるから本気でスクールアイドルをやってるんです」

 

ここまで来れば大丈夫かな。

 

大分トラウマも払拭されたと思う。

 

「…信じていいの?」

 

「先輩、信じて下さい。俺を、μ'sを」

 

真っ直ぐにこさんの事を見つめる俺。

 

にこさんも真っ直ぐ見つめてくれている。

 

なんだこの時間。

 

暫く沈黙が続くと、ついににこさんが口を開いた。

 

「1日、考えさせて」

 

今すぐに答えは出せない、か。

 

まぁそりゃそうか。

 

「分かりました。明日の放課後答えを聞きに来ます」

 

「分かった。それまでに答え出すわ」

 

「では失礼します」

 

俺はアイドル研究部を後にした。

 

 

 

 

 

「どうだった!?」

 

出るやいなや皆に詰め寄られる俺。

 

さては聞いてやがったな。

 

「さすがは氷月君やね」

 

東條さんも一緒かい。

 

「ほぼμ'sに加入してくれそうな雰囲気ではあるがまだ分からん」

 

「そうですか…中々いい感じだと思ったのですが…」

 

「だから明日、強行突破に出る」

 

「きょ、強行突破ですか!?」

 

「て、手荒な事じゃないよね?」

 

「まさか。とりあえず後で話すにこさんに聞かれても嫌だしな」

 

きっとこれで大丈夫なはずだ。

 

少し強引だが、これしかない。

 

 

 

 

 

次の日。

 

私、矢澤にこは部室に向かっている。

 

昨日、あの男に言われた言葉が頭から離れない。

 

「先輩、信じて下さい。俺を、μ'sを」

 

氷月冬夜という男は不思議な人だった。

 

全てを見透かしたようなあの口振り。

 

だけど、何故か安心出来た。全てを知られてるのならもういいやと素直に言葉が飲み込める。

 

嘘をついてる感じはしなかった。全て真実なのだろうとすんなり落ちた。

 

そして何より、あいつがいれば大丈夫だって思ってしまった。

 

何だろうこの心強さ…初めての感覚。

 

私…もしかして騙されやすい?

 

「今日どうする?」

 

「部員の皆誘ってどっか行こうよ!」

 

「いいね!そうと決まれば…」

 

後ろから別の部活の子が話している声が聞こえる。

 

結局私は答えを出せなかった。

 

彼女達が本気なのは伝わった。

 

でも、私が入っていいのだろうか?

 

きっとμ'sに入って皆で活動出来れば楽しいと思う。

 

やりたかったスクールアイドルも、満足に出来ると思う。

 

でも、唯一の懸念はμ'sの皆が私を認めてくれるか…

 

あの男はああ言ってくれたけど、他のメンバーの意見を聞けてない。

 

結局無理矢理な形で部室から追い出してから、会えてない。

 

一体どんな顔をすれば…

 

氷月に言えば、また助け舟を出してくれるかな…

 

「はぁ…」

 

私はため息をつきながらドアノブを回した。

 

 

 

 

「「「「「「「お疲れ様です!部長!」」」」」」」

 

「…え?」

 

中に入ると、μ'sのメンバー全員が私を迎え入れてくれた。

 

「お茶です部長!」

 

「え…」

 

「部長、次の曲なんですがもう少しアイドルを意識した曲がいいと思いまして…」

 

「ちょ、ちょっと」

 

「部長、やっぱり衣装はもう少し可愛さを意識した方がいいですか?」

 

「それは…」

 

「テーブルの上にあった物邪魔だったので片付けておきました!」

 

「こら勝手に」

 

「部長、参考にしたいからオススメのDVD何か貸して欲しいんだけど」

 

「何言って…」

 

「じゃあやっぱりこれじゃないですか!?」

 

「だからそれは保存用だって」

 

「部長。昨日のポーズなんですけどやはり腕の角度はもう少し上の方がいいですか?」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!あんた達、これで押しきったつもり?」

 

理解が出来なかった。

 

昨日あんなに酷い態度をとった私にどうして…。

 

まるで私がもうμ'sのメンバーみたいな態度を取るなんて。

 

チラッと氷月を見る。

 

「…」ニコッ

 

「…!…」

 

目が合うと、優しく微笑む氷月。

 

なるほど…全てお見通しって訳ね。

 

「押し切るつもりなんてないですよ。ただ私達は相談したいだけです」

 

 

 

 

 

「音乃木坂研究部所属μ's7人で歌う次の曲を!」

 

 

 

 

高坂さんがそう言った瞬間、分かりやすくにこさんの表情が明るくなった。

 

どうやら作戦は成功らしい。

 

「厳しいわよ」

 

「分かってます!アイドルの道が厳しい事くらい!」

 

にこさんの言葉に高坂さんが力強く返す。

 

雨、止んだな。

 

まるでにこさんの加入を祝ってるみたいだ。

 

「分かってない!皆甘々よ。いい?アイドルは笑顔を見せる仕事じゃない…笑顔にさせる仕事なの!それを自覚しなさい!」

 

…全く素直じゃないな。

 

「だからにこさん。俺達に教えて下さい!」

 

太陽の言葉ににこさんが微笑む。

 

隠しきれてないぞ。喜の感情が。

 

「よし、そうと決まれば早速練習に行くわよ!」

 

「おー!」

 

にこさんを筆頭に勢い良く部室を飛び出す。

 

あんなに楽しそうにしちゃって。

 

良かったな。トラウマを払拭出来て。

 

「ちょっと」

 

一人寛いでいると、にこさんが戻ってきた。

 

「あれ、練習に行ったんじゃ?」

 

「お礼を言いに戻ってきたわ。昨日はありがとうね私を励ましてくれて。おかげさまで大分気持ちが楽になったわ」

 

「それは良かったです」

 

「後さっきのやつ。あんたでしょ?仕組んだの」

 

皆がやたら部長に意見求めてたやつかな?

 

良くお気付きで。

 

「そう。題してにこさんはもうμ'sのメンバーだよ作戦」

 

「作戦名ダサっ」

 

「ほっとけ」

 

自分で言って自分で思ったわ!

 

「でも、その作戦のおかげで私はμ'sのメンバーになれた。本当にありがとう」

 

なんかにこさんに真っ直ぐお礼を言われると照れるな。

 

そうゆうキャラじゃないからかな。

 

「とりあえずあんたも早く来なさい。皆待ってるから」

 

「少ししたら…」

「後!」

 

 

 

 

「頼りにしてるわよ。マネージャー」

 

 

 

 

それだけ言い残すと、屋上に向かい走り出したにこさん。

 

「…あんな表情もするんだな」

 

言葉の後に見せたにこさんの笑顔。

 

垢抜けてとても輝いて見えた。

 

「さすがにあれは…キャラ作りじゃないよな」

 

笑顔の力を身を持って感じた俺は、屋上へと向かった。

 

 

 

 

 

「にっこにっこにー!はい」

 

「「「「「「にっこにっこにー!」」」」」」

 

「もう1回!にっこにっこにー!」

 

「「「「「「にっこにっこにー!」」」」」」

 

「吊り目のあんた!もっと気合を入れて!」

 

「真姫よ!」

 

「ほら、あんたもやる!」

 

「俺も!?」

 

「当然でしょ!?あんたコーチなんだから!こうゆうのも覚えないと駄目よ。ほら最後、にっこにっこにー!」

 

「「「「「「「にっこにっこにー!」」」」」」」

 

「全然駄目ね。後30回!」

 

「えー…まだやるの?」

 

「何言ってるの。まだまだこれからだよ!よろしくお願いします!」

 

いつもと違う練習風景。

 

これはこれで新鮮でいいな。

 

にこさんも楽しそうだし。

 

「あ、あんたたち…」グスッ

 

皆のやる気に思わず涙するにこさん。

 

よっぽど嬉しかったんだろう。

 

ずっと一人だったもんな。

 

「「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」」

 

「よーし…」

 

にこさんは涙を拭うと、

 

「まだまだ、いっくよー!!」

 

幸せそうに満面の笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

これで7つのピースが揃った。

 

残るは絢瀬さんと東條さん。

 

絢瀬さんがμ'sに加入すれば恐らく東條さんも加入するだろう。

 

「やれやれ…最後が一番骨が折れるな」

 

当然簡単にはいかない。

 

恐らく1年生組やにこさんよりも手強いだろう。

 

だからチャンスを待つしかない。

 

まだ動く時では無い。

 

「さて、バイトの時間だな」

 

μ'sの楽しそうな声を背にし、俺は屋上を後にする。

 

女神の集結はもうすぐ。

 

残りのピースは残り2つ。




物語は進む。

着実に揃っていくパーツ。

しかし、新たな問題が浮上する。

「私が入った段階で考え直すべきだったのよ…リーダーは誰かを!!」

穂乃果から剥奪されるリーダーの座。

「はぁ…太陽頼んだ」

「は、え?俺!?」

この言葉の意味とは…

センターの座を賭けたμ'sの仁義無き戦いが今、始まる!



〜次回ラブライブ〜

【第14話 リーダーとは】

お楽しみに。
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