評価に一言コメントついてる事をつい最近知りましてそれのおかげで少しモチベーションが上がりました!
皆さんの感想、コメントをお待ちしております!また、評価を下さった方遅くなってすいませんが本当にありがとうございます!
ちなみ合宿編は前編と合わせたらまさかの3万字近く…これなら前編中編後編の3つに分ければ良かったと反省してます。
だが、後悔はしてないっ!
という訳で第19話始まります。
あ、この回から少しずつ冬夜君の秘密が明かされていきますよ!是非ご注目をっ!
夕暮れになり、遊び疲れた俺達は一斉に別荘へと戻る。
楽しかったねー、またやろうねーという声が飛び交う中、にこの力はこんなもんじゃないんだからね!とラブにこアタックとやらを盛大に空振ったツインテールの声もあった。
真姫も次は必ずとラブまきアタックとやらが上手く決まらなかった悔しさを露わにしていた。
そして全員水着から服に着替えると、晩御飯の話になった。
「買い出し?」
「そう。さすがに11人分の食料は無かったから買い出しに行かなくちゃならない」
「じゃあ穂乃果行ってくるよ!」
「いいわ。私が行ってくる。スーパーの場所私しか知らないし」
立候補する穂乃果を真姫が止める。
俺もさすがにここらへんの地理は詳しく無いからおとなしく真姫を頼った方が良さそうだ。
「一人だといろいろ心配やからうちも行くわ」
ここで希が付き添いに名乗り出る。
「いろいろ心配って何よ」
「いろいろはいろいろや」
「理由になってないわよ!」
「まぁまぁ。一人より二人の方が安心するでしょ。不審者とか出た時とか」
すかさず絵里がフォローに入る。
「せや。たまにはこうゆう組み合わせも悪くないやろ?」
「…」
希の提案を渋る真姫ではあったが、最終的には
「分かったわ」
と上級生二人の説得に折れるのだった。
「じゃあ、俺も行くわ」
ここで俺も付き添いに立候補した。
希の事だ。他のメンバーと壁を作っている事を気にしての付き添いの提案だろう。
これも取り除けるきっかけの1つになるかもしれない。
ならば俺もその提案に乗らさせて貰う。
「冬夜君も?」
「ああ。男手が必要かなと思って」
勿論これは表向きの理由だ。
男手なら俺より太陽の方が断然良いし。
「そうやね。その方が安心するし来てもらおう」
希は俺の思惑を察知したのか俺の同行を推す。
こうゆう時の希は頼りになる。
「…じゃあ私と希と冬夜の3人でいい?」
「いいよ!」
「ああ」
真姫は最終確認をすると、玄関の方へと歩を進める。
俺と希も後に続く。
「じゃあ留守番頼んだで」
「ええ。そっちも真姫をお願いね」
希と絵里の会話が耳に入る。
なるほど。どうやら絵里も気づいてるみたいだな。
「じゃ、行ってきます」
こうして俺と希と真姫の3人は食料の買い出しに出掛けた。
「お…重っ…」
「男なんだからしっかり持ちなさい」
それから数十分。
無事買い出しを終えた俺達は帰路についていた。
「い、いやいくら男でも…っ…全部はキツイって…」
指が千切れそうだ…
「しゃあないな。ちょっと貸して」
「ご、ごめんありがとう…」
そんな俺を見兼ねた希が買い物袋を1つ持つ。
ああ…大分楽になった…
「男の子の割に力は無いんやね」
「め…面目ない…」
男手が必要になるからという理由で来たはいいものの俺は力が全く無い。もしかしたら女性の方があるんじゃないかって言う程だ。
握力も両方20弱しか無く、他の男性には遠く及ばない。
「…はぁ…持つわ」
そんな俺を憐れみの目で見るのが真姫だ。
真姫も見兼ねて希と同じ様に買い物袋を1つ持った。
…おかしいな?ビーチバレーといいこれといい別に醜態晒に合宿に来たわけじゃないんだけど…
「でも、冬夜にも弱点あったのね。何か安心したわ」
「安心?何で」
「だってあなた全然隙が無いから。弱み全然見せないじゃない」
見せる必要が無いからね。
でも真姫からはそうゆうイメージで見られていたらしい。
となれば皆も思ってるんだろうか?
「そうやね。いつものうちらの一手先まで考えてて抜かりが無い。だからかもね。後太陽君もやな」
「そうね。女好きって事を除けば顔立ち良くて頭脳明晰で運動神経も抜群…太陽こそ弱点ないんじゃない?」
「ないなぁ…」
ぷっ、あいつ女好きって事バレてやがる。
まぁ確かに太陽は女好きを除けばラブコメハーレム物に出てくる典型的な主人公タイプだ。
ただあいつの弱点を上げるとすれば料理と蜘蛛が大の苦手くらいか。
料理は昔から苦手で目玉焼き作ろうとして火事を起こしかけるくらい下手で蜘蛛は昔知らない間に服の中に大きな蜘蛛が入っていた事があってそれがトラウマらしい。
「そういえば何で二人はついてきたの?」
先頭を歩いていた真姫は足を止めるとこちらに振り向く。
それに合わせて俺達も足を止めた。
「なんでって…ほっとけないからかなー」
希が直ぐ様答える。
「何それ意味わかんない」
「本当は皆と仲良くしたいのに素直になれない…そうゆう所」
「…別に私は普通にしてるだけよ」
「そうそう。そんな感じで素直になれないんやね」
「…!…」
「真姫ちゃんに似てるタイプ。うち良く知ってるから」
そう言うと希は少し微笑んだ。
希の言う良く似てるタイプは絵里の事だろうな。
真姫は希から逃げる様に話題を俺に振る。
「…冬夜は?その力の無さで男手がどうのっていう理由は違うわよね?」
うっ…何かここぞとばかりに弄ってくるじゃんか。
「俺も同じ感じかな。まだ他のメンバーに対して壁を作ってる節があるから、なるべく一人にしたくないっていうのが本音」
「何よそれ」
「今回ぐらい無茶してもいいんじゃないか?折角の合宿だし」
「…別に、私は…」
真姫はそう言うと前を向き再び歩き出した。
「…素直じゃないな」
俺の呟きに真姫は反応しない。
ふむ…これは難しそうだ。
それからは誰一人口を開く事無く別荘へと向かった。
「にこ。そっち頼む」
「分かったわ」
別荘へと戻り晩御飯の準備。
本来はことりが料理当番であったがさすがに11人分は時間が掛かる為、俺とにこにバトンタッチした。
まさかにこがここまで料理が出来るとは思わなかったから正直驚いている。
ただ昼についた料理人がいるっていう嘘がこれでバレちゃうけど大丈夫か?
「凄いわね…2人共手際良すぎ」
「ごめんね2人共…私がモタモタしてたから」
「いや普通こんな手際良く11人分の食事作れんて。だからことりちゃん大丈夫や」
「凄いだろ冬夜は。だがにこにも驚きだな。まさかここまで出来るとは」
俺達の様子を見ているのは絵里、ことり、希、太陽の4人。
何故太陽が偉そうなのかは知らない。
「こっちは出来た。そっちは?」
「こっちももうちょっとよ」
「了解」
「にしても意外だわ。あんたが料理得意だったなんて」
「それこっちの台詞でもあるんだけど。まぁ一人暮らししてたら自然とね」
「え、あんた一人暮らしなの?」
「そうだよ」
「ふーん…」
そう言うとにこは少し考える素振りを見せる。
…何だその反応。
「住所どこ?」
うわ、絶対俺の家に来る気だ!
一人に教えたら全員に伝わる奴だな…
絶対教えない!
「教えない」
「ちょっ、何でよ!」
「面倒くさい事になりそうだから」
家は唯一の憩いの場なんだ!邪魔されてたまるか。
「教えなさいよ!」
「嫌だ」
「いいから!」
「い、や、だ!」
「…あの二人、ああ言いながらも手はちゃんと動かしてるね」
「凄いわね…」
「…太陽君。後でうちに冬夜君の住所教えて」
「あ、私も知りたい」
「私にも教えて貰えるかしら?」
「喜んで」
必死に家の場所を隠す裏で、太陽が情報を流しまくっている事実を冬夜はまだ知らない。
この後μ's全員が冬夜の家に押し掛けるのだが、それはまた別のお話。
「出来たよ」
「うわーい!!」
「良い匂いだにゃー!」
無事、11人分の食事を作り終えた俺とにこは次々とテーブルに運んでいく。
ちなみにメニューはカレーとにこ特製サラダの2品である。
「本当に2人だけで作り終えちゃった…」
「料理スキルの高さに脱帽するわ」
ことりと絵里がそう話しながら料理を運ぶ。
そんなに褒めるな。照れるじゃないか。
「で、花陽はどうしてお茶碗にご飯なの?」
「気にしないで下さい」
絵里が不思議そうに花陽の前に置かれた山盛りのご飯を見つめる。
まぁ普通はそう思うだろうな。俺もそうだし。
これは花陽からの強い希望だ。
「絶対にご飯とルーは別でお願いします!!」
あんな圧で言われたら断れるはずも無く承諾した。
断る理由も無いけど。
「にしてもにこって本当に料理上手いよな。意外」
「ふふん。当たり前でしょ」
太陽がにこを絶賛する。
それに対しにこは誇らしげに胸を張った。
「あれ、そういえば昼間は料理した事無いって…」
ここで昼間の発言を思い出したことりが痛い指摘をする。
バレるなこりゃ。
「言ってたわよ。料理人が作ってくれるって」
真姫がそれに追随する。
「え…えっとそれは…あ、にこぉ〜こんな重い物持てなぁ〜い」
ぶりっ子声を出しながら重そうにスプーンを持つにこ。
いやさすがに手遅れだろ。
「それはさすがに無理があるかも…」
ほら、あの穂乃果が苦笑いしてるぞ。
にこよ呆れられてる事に気付け。
「…」
穂乃果の言葉に少しにこが間を空けると、
「これからのアイドルは料理の1つや2つ作れないと生き残れないのよ!」
と開き直り始めた。
「開き直った!」
穂乃果からのツッコミが飛ぶ。
「ほら。冷めるといけないから早く食べましょう」
場をまとめるのは絵里。
こうゆう人がいると本当にありがたい。
「じゃあ、いただきまーす!」
「「「「「「「「「「いただきまーす!!」」」」」」」」」」
穂乃果の号令に続き全員が手を合わせる。
「あむっ」
一番最初にカレーを食べたのは穂乃果。
辛さは控えめにしており味見も問題無かったから大丈夫だと思うけど、少し不安だ。
「…」
あれ、動き止まったぞ?
まさか失敗しちゃった奴か…?
待て待て待て!これでもバイト先のレストランでは厨房のリーダーを任せられてるんだぞ!
今まで料理で失敗した事無かったのにここでかよ!
「…穂乃果ちゃん?大丈夫?」
そんな穂乃果を心配してかことりが話かける。
「全く穂乃果どうしたのよ」
「…しい…」
「え?」
「…おいしい…」
「…おいしい?」
「このカレー、凄く美味しいーー!!!!!!」
良かったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
良かった…失敗したかと思ったら成功の方かよ。
紛らわしいリアクションすんなよ…焦ったじゃんか。
「何このカレー!こんな美味しいカレー初めて食べたよ!」
「ほ、本当?」
カレーをべた褒めする穂乃果。
その言葉を聞き次々とカレーを口にするμ's。
「「「「「「「「…!…」」」」」」」」
するとμ's全員の表情が変わった。
「「「「「「「「美味しいー!!!」」」」」」」」
うおっ!8人がハモると凄いな…
何はともあれ喜んでくれて良かった。
「え、これ美味しすぎるわよ!どうやって作ったの!?」
「感動や…」
絵里は興奮し希に至っては涙を流していた。
え、そんなに?
「美味しいー…とろけそう…」
「これは、ズルいです。食べ過ぎちゃいます」
ことりはトロンとした表情でカレーを食べ海未ももの凄いスピードで食べていた。
「…これは家の料理人以上かも…」
真姫がボソッと言ったがしっかりと俺の耳に入った。
料理人以上…この言葉が一番嬉しいかもしれない。
「美味しいにゃ!何杯でもいけるよ!」
「ま、負けたわ…でも、美味しい…」
凛もガツガツ食べており、にこも落胆したと思ったら幸せそうな表情でカレーを食べる。
ここまでの反応をされると逆に不安になってくるな。
大丈夫?めちゃくちゃ美味そうに食べてる演技じゃないよね?
「ていうか何でにこちゃんが驚いてるにゃ?」
「このカレー全部冬夜が作ったのよ。下ごしらえは手伝ったけどそれ以外は全部。味見もしてないから私も分からなかったのよ」
にこに味見して貰おうと思ったけど俺が声を掛けたら、
「にこ」
「何?家教える気になった?」
と返されたからやめたよね。
「ピャァァァ!!!」
「「「「「「「「「「…!…」」」」」」」」」」
な、何今の声?
小さな怪獣踏んだみたいな声聞こえたけど…
「こ、このお米はどなたが…」
ふと見るとそこには涙を流しながら白米を食べる花陽がいた。
「…え、俺が炊いたけど」
俺がそう言うと花陽は目を輝かせながら俺に顔を近付けた。
「素晴らしいです!この艶、食感、匂い、弾力、味、全てがパーフェクト!こんなお米と出会ったのは初めてです!でも、使ったお米は普段私のお家で使ってるお米と同じ…でも、私が炊いてもこんな味は出せません!何杯でも食べれちゃいます!全然飽きません!どうやって炊いたんですか!?」
「待て待て待て待てちょっとストップ!」
何この花陽!?
スクールアイドルを話してる時と同じ熱量だけどまさか白米でもスイッチ入るのか!?
ていうか顔近いって!
「教えてくれるまで離れません!!」
「分かった分かった!教えるから離れて!凄い近いからっ!」
「凛はこっちのかよちんも好きだよ!」
いやそうゆうのいいから助けろ。
それから全員あっという間に平らげた。
にこ特製サラダもとても美味しく、太陽含め他のメンバーからも好評であった。
作り方を聞いてみるとにこにー特製ドレッシングが決め手らしい。
何それ教えて欲しいんだけど。
そしてご馳走さまを全員でした後、この後の予定について話し合う。
「皆で花火やるにゃー!」
勢い良く花火の提案をするのは凛。
花火まで持ってきてるのか…どんだけ遊ぶつもりだったんだよ。
「ダメだよ。まずはちゃんと後片付けしなきゃ」
花陽が言う。
しかし、花陽の言葉にすかさずことりが手を上げる。
「後片付けなら私がやるからいいよ」
んー…それはさすがに優しすぎる気がするな。
負担が偏るのは良くない。
「駄目よ。そうゆうのは良くないわ。皆、自分の食器は自分で片付けて」
絵里が皆に告げる。
「それにこの後は練習です。昼間あれだけ遊んでしまったのですから花火は却下です」
「えぇー!」
当然と言わんばかりに海未が言う。
さすがに今から練習は厳しいだろ…
この時間だと効率も悪いだろうし。
「…本気?」
「当たり前です」
にこの言葉にも表情を変えない。
これは意思が硬そうだ。
「…でも到底そんなテンションじゃない人が約1名いるけど」
そう言い太陽がソファーに目を移す。
そこには…
「雪穂〜お茶〜」
寝転がり寛いでる穂乃果がいた。
…自分の家かよ。
「ねぇかよちんは!かよちんはどうしたい?」
ここで凛が花陽に振る。
自分側に付いてほしいとでも考えているのだろう。
「私は…お風呂に入りたいかな」
「第3の意見出してどうするのよ!」
凛の思惑は外れた。
まぁ海で散々遊んだ後だし汗やら潮やらでお風呂に入りたい気持ちは分かる。
それは優先した方が良いだろう。
「じゃ、私は食器片付けたら寝るわね」
そう言うと食器を持ち立ち上がる真姫。
「え、真姫ちゃんやろうよ花火」
「練習です」
なおも衝突する花火と練習。
それ今日じゃなきゃいけないかな。
「じゃあ、今日はもう寝よっか」
ここで今まで口を閉ざしていた希が言う。
「練習は明日の早朝。花火はその夜にやればいいんやない?」
希の発言に海未と凛が考える素振りを見せる。
確かにそれの方が良さそうだ。
「そうですね…その方が練習も捗りますか」
「凛もそれで良いにゃ」
どうやら話は纏まったみたいだ。
さすがは希。
「じゃあ、食器片付けてお風呂入って今日は寝るわよ」
「穂乃果ちゃん、片付けだよ?」
「お茶〜!」
絵里の言葉を受け、各々キッチンに自分の食器を下げ始める。
穂乃果は相変わらずのグータラっぷりだけど。
ことりが困ってるじゃないか。
「うちに任せて」
その様子を見た希が穂乃果に近付く。
「穂乃果ちゃん、食器片付けないと…わしわしするよ?」
「ひっ!!や、やります!今すぐやります!」
穂乃果は直ぐ様立ち上がり足早に食器をキッチンに運んだ。
…テスト勉強でサボった時に食らったって聞いたけどトラウマになってるみたいだな。
どれだけ恐ろしいんだ、わしわしって。
「おい冬夜。これはやるしかないぞ」
食器を片付け終わり、μ'sの面々は入浴へと向かった。
全員がいなくなった事を確認すると、神妙な面持ちで太陽が俺に話しかける。
嫌な予感しかしない。
「やんない」
「ちょっ、ちょっと!何でだよまだ何も言ってないじゃん!」
「どうせろくでもない事企んでんだろ」
このタイミングでのその話の入り方は怪しい。
もしかしてこいつお風呂覗こうとか考えているんじゃ…
「何言ってんだよ。これからどうやってお風呂を覗くかの大事な会議だぞ」
やっぱりだったー!!!
何考えてんのこいつ…そこまでいくともはや犯罪だぞ?
「お前…コーチクビになるぞ?」
「まさか風呂が男と女で別れてるなんて思わなくてさ、めっちゃビックリしたんだよね!ここ旅館かと思ったよ。で、その後風呂場を探索してたらさ、女湯を覗けるいい感じの岩を発見した訳よ!」
あ、ダメだこいつ全然話聞いてねぇや。
別荘着いてから姿見えないなと思ったらこれが理由か。
海未がメニューを発表するまでずっと風呂場で女湯を覗く方法を模索してたって事だ。
何て無駄な努力。
「冬夜も行くだろ?」
「行く訳ねぇだろ」
何こいつ当たり前みたいな感じで誘ってんだよ。
女湯覗くなんて冗談じゃない。
「え、マジ?」
こいつ本気かみたいな顔をすんな。
本来その顔するの俺だから。
「こっちの台詞だ。マジでやめといた方が良いぞ?」
俺がそう言うと太陽は少し考える素振りを見せる。
そして俺を真っ直ぐ見つめ真剣な顔で言った。
「行ってくる」
こいつは一度痛い目に遭った方が良い。
俺は止めたからな。
「いやーさっぱりした」
それから数十分。
お風呂上がりのμ'sが次々と戻ってくる。
皆やや顔を赤らめながら気持ち良かったねと各々口にする。
「良かったな…」
「うん!あれ、太陽君は入ってないの?」
「あ、いや、入ったんだけどすぐに出た」
「そうなんだ。気付かなかったよ」
「…太陽。まさかとは思いますがお風呂を覗こうとなんてしてないですよね?」
「ま、まさか!俺がそんな事するはずないだろ。あはは…」
無邪気な穂乃果に対し海未のもしや見てたんじゃないかと思うくらいの鋭い指摘に太陽は腰を擦りながら力無い笑みを浮かべる。
結論太陽の女湯覗き見作戦は失敗に終わった。
というのも太陽がお風呂に行ってから20分弱して痛そうな表情を浮かべながら太陽が帰ってきた。
話を聞くといい感じの岩を登る途中で足を滑らせて地面に落ちたとの事だ。
どうやらその際に腰を打ち付けたらしい。
だから俺は「自業自得」と鼻で笑ってやった。
その後太陽はよっぽど痛かったのか「おぉ…神よ…こんな愚かな事は二度としません!」と反省していた。
言葉はアレだが顔は本気だった。
「冬夜君は入ってないの?」
穂乃果が俺の方を向く。
「今から入るよ」
元々一人で入るつもりだったからな。
【こんな状態】を誰にも見られたくない。
事情を知っている太陽でさえも。
「太陽君と一緒やないんやね」
「昔からそうなんだよ」
「…昔から?」
…こいつ余計な事を。
「…あ、いや、昔から良く家に泊まりに来ててさ。その時からなんだよ」
「そうなんだー」
良かった…誰も疑問に思ってる人はいなさそうだ。
…いや、いるな約1名。
怪訝しい表情をしながらこっちを見つめる人が一人。
「冬夜君」
「…」
「抱え込み過ぎはあかんよ?」
「…何の事やら」
俺はそう言うと足早に風呂場へと向かった。
一体何処まで察した?希。
「…来てないか」
俺は風呂場に到着すると辺りを警戒しながら服を脱いでいく。
何かの拍子に裸を見られたら嫌だからだ。
希は間違い無く俺が何かを隠している事…闇を抱えてる事を察知している。
ここ最近やたらと希が俺に構うのもそれが原因かもしれない。
絶対に知られる訳にはいかない。
これを知られたら俺の全てがバレかねない。
もし皆がこれを知るとしても、その時に俺はきっといないだろう。
廃校阻止まで後一歩。
存続さえ決まれば関わらずに済む。
あいつらに押されて思わず合宿にまで来たけど、前までの俺なら何をされても絶対に行かなかった。
じゃあこれは少しずつあいつらに心を開いてる証拠なのか?
…馬鹿馬鹿しい。俺にはそんな資格無いと言うのに。
人間として、最大の汚点を抱える俺が…
「…あーダメだダメだ。何を心配してんだ俺。大丈夫、すぐに関係を絶つ日は絶対来る。そうなれば俺への興味も無くなるに決まってる」
俺はぶんぶんと振り払う様に頭を振りながら、服を脱いでいく。
大丈夫。この関係も今だけ。
シャツを脱ぎ、上半身が露わになる。
そしてその姿が鏡に映る。
「…」
そこには切り傷、火傷…様々な痛々しい傷跡が付けられた醜い体をした俺。
「お前さえ、居なければ!!!」
「…っ…」
不意にあの頃の光景がフラッシュバックする。
この傷跡を見る度にいつもそうだ…
俺にとって一番必要で一番苦痛な瞬間。
それは、俺の人生を狂わせた汚点の始まり。
「えー!冬夜君一緒に寝ないの!?」
お風呂から上がりリビングに戻ると布団が敷かれていた。
どうやら全員同じ場所で寝るみたいだ。
そしてこのサイドテールは何を血迷ったか俺も一緒にリビングで寝る様に誘い始めた。
「当たり前だろ。第一女性9人と1つ屋根の下で寝泊まりしてるだけで一杯一杯なのに一緒に寝るなんて冗談じゃない」
そもそも合宿に行く事に乗り気じゃ無かったし半強制的に連れてこられたと思ってる。
そこまでする義理は無い。
「えー…一緒に寝たいよー」
「その発言誤解招くから二度と言うな」
ほら他のメンバーがホノカチャン…って言いながら顔赤らめたじゃねぇか。
「という訳で俺は絶対一人で寝る」
俺はそう言いリビングから出ていった。
二階に寝室がある事はリサーチ済だ。
ちなみに太陽はμ'sと一緒にリビングで寝るらしい。
「俺達は何処で寝るんだ?」と太陽が聞いた所穂乃果が皆一緒で寝ようよと言ったらしい。
良く海未や真姫が納得したなと思ったけど穂乃果や絵里から交流の1つだと押し切られたみたいだ。
もっと頑張れ。もっと危機感を持て。
一先ずこれで太陽は女性9人に対し男一人の男なら誰もが羨むハーレム状態って訳だ。
何事も無ければ良いが…
一抹の不安を抱えながら俺は2階の寝室へと入った。
「…何か冬夜君私達の事避けてない?」
「そう?前からあんな感じでしょ」
リビング。
冬夜が出て行った後俺達は扉を見つめながら合宿中の冬夜の様子について話していた。
一方の俺はお風呂を覗こうとした罪悪感からあまり皆の顔を見れない。
ごめんよ…皆。
「冬夜いつも一歩引いて私達と関わりますからね」
「にしても合宿来てからはより一層そうじゃない?」
「うちもそう思う。最初会った時から感じてたけど仲良くなりすぎない様にうちらと壁を作ってる感じがするんよ」
冬夜に対し芽生えた違和感。
穂乃果と希は感じているみたいだが他のメンバーは気づいていない。
普段から冬夜に対し積極的に関わろうとしているのもこの二人だ。
だからこそ感じたのだろう。
「女性の比率が多い中ですし、緊張しているのでしょう」
「そうかなー」
しかしいくら考えても違和感に答えは出なかった。
結局そのまま海未の言った緊張という結論で落ち着いた。
「明日は朝から練習よ。さっさと寝ましょう」
「はーい」
絵里の言葉により各々寝床につき始める。
俺も習う様に布団に入った。
全員が布団に入ったが、友達同士での合宿。
当然そんなあっさり眠れるはずも無かった。
「…ねぇことりちゃん寝た?お話しよ」
「どうしたの穂乃果ちゃん?」
「いやー、全然眠れそうに無くて」
「結構寝付き良い方だよね?穂乃果ちゃん」
「うん。でも興奮しちゃって」
今回の合宿はいわば交流を深める為の大掛かりなお泊り会みたいなものだ。
俺も全く寝れる気がしない。
「真姫ちゃんもう寝ちゃった?」
続いて希が真姫に話しかける。
こっちは別の思惑がありそうだな。
「…何よ」
「ふふ…本当にそっくりやな」
「さっきから何よそれ」
希と真姫のやり取りはよく分からなかった。
真姫が壁を作ってる事は薄々感じてるからきっとそれに関連する話なのだろう。
ここは希や冬夜に任せれば大丈夫そうだ。
「ほら。皆朝早いのよ?海未を見習いなさい」
絵里の言葉に視線が海未に集まる。
「…すー…すー…」
うわ早っ。
もう寝息立ててぐっすり寝てんじゃん。
「さ、寝るわよ」
絵里はそう言うと電気を消す。
辺りを包む暗闇。
このまま起きてても暇だからとりあえず目は瞑ってるか。
そしたら気付いたら寝てるだろ。
ーーーーーパリッ
うん?
ーーーーーパリッ ガサガサ
何だこの音?
「え、何この音?」
「凛じゃないよ」
「俺でも無い」
「ちょっと電気点けて電気」
謎の物音に目が覚めた俺達。
そしてリビングに明かりが戻る。
「一体何の音だ?」
「何かパリパリいってたけど…」
辺りを見渡していると、ことりが声を上げた。
「あっ!!」
「ん?む、むーっ!!ゴホッゴホッ!」
ことりが指差した先に視線が集まる。
そこには煎餅を片手に胸を叩く穂乃果の姿があった。
「な、何してるのよ」
絵里が不思議そうに尋ねる。
「いやー、何か食べてたら眠たくなるかなって」
じゃあせめて音ならない奴にしろよ!
何でよりによって煎餅をチョイスしたんだ。
「な、なんで煎餅?」
思わず花陽が突っ込む。
「もー、うるさいわね」
「あ、ごめんにこ」
むくりと起き上がるにこ。さすがに寝る時はツインテールとはいかず髪を下ろしている。
こうして見ると雰囲気ちょっと違うな。
「もう少し静かにしなさいよ」
そう言い振り返るにこ。そこには…
「ひっ…」
「な、何それ…」
「え?美容法だけど?」
「…他にもっと無かったのかよ」
顔面パックにきゅうりを貼り付けた禍々しい姿のにこがいた。
「こ、怖いにゃー…」
「う、うん…」
「ハラショー…」
凜と花陽は怖がっており絵里に至っては引いている。
皆の反応は決してプラスでは無かった。
「誰が怖いのよ!いいから寝るわよ」
にこが電気を消そうとしたその時、
シュッ!
「わっぷ!」
突如にこの顔面に飛ぶ枕。
モロに食らったにこはきゅうりを撒き散らしながら後ろに倒れる。
これはもしやお泊りの名物…枕投げという奴ではっ!
「わー、真姫ちゃん何するのー」
そう言うのは悪そうな笑みを浮かべている希。
絶対犯人この人だ。
「な、何言ってるの?」
「あんたねー…」
希の言葉で真姫の仕業だと思ったのか真姫を睨みながら起き上がるにこ。
「いくらうるさいからってそんな事しちゃ…だめよっ!」
続いて希が凛に向かって枕を放る。
「にゃっ!んもう…何する…にゃっ!」
枕を受けた凛はそのまま投げ返す。
…と思いきや
「ふむっ!」
穂乃果の顔に直撃した。
これは完全に火が着く奴だな。
「よーし…」
穂乃果は枕を構えると…
「おりゃ!」
「ゔぇっ!」
真姫目掛けて思いっきり投げた。
咄嗟に腕でガードするも驚いたのか変わったうめき声を上げる。
「投げ返さないの〜?」
「あなたね…」
希がそんな真姫を煽り、枕を投げさせようとする。
真姫が希を睨んだ瞬間、またも真姫に枕が飛んでいった。
「うわっ」
「ふふ」
そこには悪そうな笑みを浮かべる絵里。
正直絵里は止めるかなと思ってたから予想外だ。
まさか絵里もやる気になるとは…
そして真姫は今の攻撃がトリガーとなったのか…
「いいわ…やってやろうじゃない!」
枕を構え、思いっ切りにこ目掛け枕を投げた。
「ぐっ!」
またもまともに食らうにこ。
そして他のメンバーも各々枕を投げ始めた。
「おりゃっ!」
「おっと凛ちゃん甘い…」
「パス!」
「ぶわっ!」
何!凛の枕を交わしたと思ったらことりがそのまま穂乃果に枕を跳ね返した!
何だその技すげぇ!
「「えいっ!」」
「えっ…」
一方真姫と希と絵里は、希と絵里が同時に真姫に枕を投げていた。
「当たらないわよ!」
真姫はしゃがみ枕を躱した。
これは負けてられないな。
ここは一番枕を食らわなさそうな希に一発…
「食らえ!スーパー太陽ハリケーンあたっ!!?」
「技名長いにゃ」
ちょっと凛!今超良いところだったんだけど!?
「えい!」
「おりゃ!」
「何の!」
その後も白熱する枕投げ。
初めてやったけどこんなに面白いもんなんだな枕投げって。
「待て待て!一人狙いはズルいって!」
「だってまだ太陽君凛の不意打ちの一回しか食らってないにゃ!」
「花陽だってまだ無傷だろ!」
「かよちんは良いにゃ!」
「理不尽っ!?」
全員が俺に狙いを定める。
こんなもん避けようがないだろ!
ならば…やられる前にやる!
「おらっ!」
俺は勢い良く枕を放る。
他のメンバーもそれを受け一斉に枕を投げた。
そしてそのまま枕は一直線に飛んでいき、枕同士がぶつかりそのまま下に落ちる。
俺達は失念していた。
俺達の中心に…
「「「「「「「「「あ」」」」」」」」」
「…」
一人寝ている海未がいる事に。
「これは…ヤバいんじゃ…」
全ての枕が海未の顔に落ちる。
そしてゆっくりと動く海未の手。
一つずつ枕を取り払う。
全ての枕を取り、ゆらりと立ち上がる海未。
前髪に隠れ表情は良く分からないが、口元を見て戦慄した、
こいつ…笑ってやがる…
「…一体どうゆう事ですか…」
「ま、待って…別に狙って当てた訳じゃ…」
すぐさま弁解しようとする真姫。
しかし…
「明日…早朝から練習だと言いましたよね…」
海未は聞く耳を持たなかった。
それはつまり詰みを意味していた。
「それを…こんな夜中に…ふふっ…ふふふっ…」
「う、海未?落ち着きなさい?」
「ふふふふふ…」
絵里が宥めようとするも効果は無し。
マズイ…これは完全にヤバいスイッチが入ってるぞ…
「面白そうな事になったやん」
何で希は余裕そうなんだよ!
「…」
海未はゆっくりと枕を持つ。
俺達はあまりの威圧感に一歩も動けずにいた。
そして、大きく振りかぶると…
それを放った。
ブォン!!
「ぐわっ!!」
待て待て待て待て待て待て待て待て!何だ今の!?本当に枕を投げた音か今の!?めちゃくちゃ風来たぞ!?
「に、にこちゃん!」
凛がにこを抱きかかえる。
海未の枕はどうやらにこに当たったらしい。
凄い音したけど大丈夫か?
「だ、駄目にゃ!意識が無いにゃ!」
何だよそれ!枕投げのレベル超えてるって!
「…超音速枕…」
「は、ハラショー…」
マズイぞ…このままじゃ全員やられる…
どうすれば…
「ど、どうしたら…」
「こうなったらやるしかないよ!」
穂乃果はそう言うと枕を構える。
しかし、海未は見逃さなかった。
「ふんっ!」
「ぐはっ!!」
すかさず穂乃果の顔面に枕を投げつける。
なんて速さだ…お、恐ろしい…
「ごめん海未っ…うぐっ!!」
続いて枕を投げようとした絵里が海未の枕を食らう。
くそっ!これで3人がやられた!
もう俺がやるしかない!
「すまん!」
俺は一瞬の隙をつき、海未目掛けて枕を放った。
「…遅い…」
「何っ!?」
か、躱された!?結構なスピードで投げたつもりがあんなあっさり!?
こいつ化け物かよ!
「ふふ…覚悟は良いですか?」
「くっ…」
もう俺の手元には枕が無い。
少し移動出来れば枕は確保出来るが少しでも隙を見せればやられる事は明白。
となれば海未の枕を取るか躱したタイミングでそのまま枕をゲットするしかない。
…しかしあの速さの枕を取るのは不可能に近いし取りに行っても連続で投げられればアウト。
万事休すか?
「お、お願い!もう太陽君しかいないにゃ!」
「お願いします!何とかして海未ちゃんを止めて!」
凜と花陽からの声援を受ける。
これはやるしかない!
「来い!海未!」
こうなりゃ海未の攻撃を全て躱すしかない!
俺は海未の動きに全集中する。
1つ1つの動きを見逃さない。
そして、海未は振りかぶった。
ーーーーーー来る。
ガチャ。
「おい。何の騒ぎ…」
「…!…」
ブォン!
「…」バシン!
「…え?」
訪れる静寂。
一体何が起きたのか。
海未がまさに俺に枕を投げようとした瞬間、リビングの扉が突如開かれる。
それに反応した海未が思わずそこへ枕を放る。
そして扉を開けた人物に枕が直撃する。
思わず声を上げる俺。
海未もそれで目が覚めたのか驚いた様な表情を浮かべる。
その人物は、
「…」
「だ、大丈夫か?冬夜」
氷月冬夜だった。
「す、すいません!!わざとじゃないんです!敵だと思ってつい…」
さっきまでの様子は何処へやら、血相を変えて謝る海未。
俯いてる冬夜の表情は分からない。怒っているのかすら。
一言も喋ろうとしない冬夜に俺達に不安が募る。
そして、俺が駆寄ろうとした瞬間静かに冬夜が口を開いた。
「…おい」
顔を上げる冬夜。
長い前髪から片目だけが覗く。
そして、言った。
「二度目は無い。寝ろ」
「「「「「「「…!…」」」」」」」
その瞬間、海未の攻撃を食らい気を失ってる3人を除いた俺達は背筋が凍る程の恐怖に襲われた。
あれはヤバい…
目が次は殺すと言っていた。
誰一人として動けない。
皆恐怖で体が震えていた。あの希でさえも。
きっと皆思った事だろう。
【冬夜を怒らせてはいけない】
「…」
そして冬夜は殺意剥き出しの目をしたままリビングを去っていった。
次やったらマジで殺されるかもしれない…それ程の殺意だった。
「…と、冬夜君って…怒ったらあんな怖いんやね…」
そう震える声で言ったのは希だった。
その言葉に皆は何度も頷くのだった。
「元はと言えば真姫ちゃんが始めた事だにゃ」
それから少し時間が経ち、落ち着いた俺達はいつもの様に談笑し始めた。
「ち、違う!あれは希が…」
「いやー、まさか真姫ちゃんがやるとはなー」
「あなたねー!」
真姫に押し付けようとする希はまたもや悪そうに笑っていた。
そして希は枕を手に持つと、
「えい」
と真姫の顔に枕を押し付けた。
さすがにさっきの事があるから投げる事は出来ない。
「わっぷ…って何するの希!」
すぐさま枕をどけ希に詰め寄る真姫。
その様子を見た希は優しく微笑む。
「自然に呼べる様になったやん。名前」
「…あ…」
希の言葉に真姫は気付いた様に声を上げる。
なるほど。これも真姫の壁を取り外す為の希の狙いだったようだ。
真姫は枕を手に持つと、
「別にそんな事、頼んでないわよっ」
顔を赤くしながら照れ隠しの様に希に枕を投げるのだった。
「…風気持ち良いな…」
早朝。
日頃のバイト生活もあり早めに目が覚めてしまった俺は、海岸を散歩していた。
…にしても昨日の海未の枕投げは良く効いた。
まだ顔がヒリヒリしやがる。
時々海未が男なんじゃないかと錯覚するんだが…まさかな。
「…ん?」
別荘に戻ろうとしたその時、波打ち際に誰かが立っている事に気付く。
こんな時間に誰だ?まだ早いだろうに。
俺は気付かれない様にそっと近付く。
そして波打ち際に立った人物の正体を知った時、もう一人別荘からこちらに向かって歩いてくる人物に気付く。
「お、早起きは三文の得。お日様からたっぷりパワー貰おうか」
そう微笑みながら言うのは希。
海をバックに優雅に佇む姿はとても絵になっていた。
「…どうゆうつもり?」
そう返すのは真姫。
不思議そうな表情を浮かべながら真っすぐ希を見つめる。
「別に真姫ちゃんの為やないよ」
希はそう言うと海に視線を移す。
「海はいいよね。見てると大きいと思ってた悩み事も小さく見えてきたりする。…ねぇ真姫ちゃん」
「…?…」
「うちな。μ'sのメンバー事が大好きなん。うちはμ'sの誰にも欠けて欲しくないの。確かにμ'sを作ったのは穂乃果ちゃん達やけど、うちもずっと見てきた。何かある度にアドバイスしたつもり…それだけ思い入れがある」
希が真姫に伝えた事は、希自身のμ'sへの愛情。
それは勿論真姫の事も意味していた。
μ'sの名前を考えたのは希だし、こうして9人揃う事をずっと夢見ていた。
結成当時から穂乃果達の姿を見てきて素直になれない1年生組みをはじめ一度スクールアイドルを挫折したにこや自分の使命に頭を悩ませた絵里を引き入れようやく揃った女神へのパーツ。
希の小さくて大きな夢が叶った今、μ'sに一番依存しているのは希かもしれないな。
「…あ、ちょっと話しすぎちゃったかも。今のは内緒ね?」
希は振り返ると、少し恥じらいを込めた笑みを浮かべながら真姫に言った。
対する真姫も優しく微笑みながら、
「面倒くさい人ね。希」
と返すのだった。
「真姫ちゃーん!希ちゃーん!」
その時、別荘から無数の人影がこちらに走ってくるのに気付く。
どうやら皆起きてきたらしい。
「うわー」
太陽を含むμ's全員が揃うと、皆で朝日に照らされた海を眺める。
それはとても神秘的で、皆が見入っているのが分かる。
そして暫く全員で海を眺めた後、徐に真姫が口を開く。
「ねぇ、絵里」
「うん?」
絵里の方を向く真姫。絵里もそれに応える様に向き返す。
そして真姫は少し顔を赤らめながら微笑むと
「…ありがとう」
と絵里に言った。
それに対し絵里は、
「ハラショー!」
と満面の笑みで返した。
昨日と比べ表情が穏やかになった真姫。
どうやら昨日の枕投げが功を奏したみたいだ。
この合宿を通して一番変わったのは間違い無く真姫。
今の真姫から他のメンバーに対する壁は感じなかった。
「よーし!皆手を繋ごうよ!」
突然穂乃果が言う。
どうやら何か思いついたらしい。
「どうして?」
「折角だから皆の意識を高めたいと思って。いいからいいから」
と穂乃果に言われるがまま皆が手を繋いでいく。
そして太陽を含む全員が手を繋ぐと、穂乃果は海に向かって高らかに叫んだ。
「よーし!ラブライブに向けてμ's、頑張るぞー!!」
なるほどやりたかったのはこれか。穂乃果らしいな。
穂乃果の言葉を聞いた他のメンバーは顔を見合わせると、微笑みながら
「「「「「「「「「おー!!!」」」」」」」」」
と同じ様に叫ぶのだった。
互いの絆がより一層深まったμ's。
真っすぐ海を見つめる10人から迷いは感じられない。
全員がラブライブという1つのゴールを確かに見据えていた。
「大きくなったな…」
何も無い所から始まったスクールアイドル。
それが今、ここまで立派な物になった。
特に今回の合宿は俺が行動に移さなくても彼女達の力で真姫の壁を取り除いた。
俺離れ…って言ったら大袈裟かもしれないが今までメンバー内の内面的な問題は俺が取り除いてきた。
だけどそれはもう、必要無い。
手を繋ぎ互いに笑い合うμ's。
しかしそこに俺はいない。
「後は頼んだ。太陽」
俺はそう呟くと、別荘に向けて一人歩き出した。
もう俺が出来る事は何も無い。
俺の居場所はもう…ここには無い。
いや、俺は勘違いしてるな…居場所なんて…
【最初から無かったじゃないか】
「ちょ…ちょっと離れないでっ!」
「近い!近いって!」
ひょんな事から絵里と二人きりに?
そして絵里に抱きつかれてるって何この状況!?
「…こんな弱い自分が嫌になるわ…」
「弱さは必要だよ」
冬夜が絵里に伝える言葉。
「こんな弱い私を、あなたは愛してくれる?」
まさかの冬夜と絵里が急接近!?
一体どうなる!?
〜次回ラブライブ〜
【第20話 とある生徒会長の秘密】
お楽しみに。