ついに20話突破致しました!まさかここまで続けられるとは感慨深いです…
絶対途中で失踪すると思ってたから(笑)
とは言っても全体で言えばまだ序盤なんですけどね。
ですが、なるべく失踪せずに完結まで頑張りますのでよろしくお願いします!
さて、今回は絵里回です。
μ'sの中で一番冬夜との絡みが少ないのが絵里だったので今回この話に致しました!
えりちファンの皆様に満足してもらえるか少し不安ですが、見て頂ければ幸いです。
では第20話始まります。
これを期に他のメンバーの個人回もやりたいけど、後8人…
いつになるやら…
合宿が終わってから数日。
μ'sは合宿の一件から結束が高まり夏休みでも怠ける事無く毎日練習に明け暮れていた。
一方の俺は夏休みで学校が無い事により、μ'sとの関わりが減ってきていた。
夏休みのような長い休みはお金を稼げる大チャンス。
朝は新聞配達、昼はメイド喫茶で厨房、夜はレストランで厨房等バイトに明け暮れる日々が続いていた。
そして今日もいつもの様にレストランでのバイトを終え、帰路に着いたその時、予想外の人物と偶然出会す事になる。
「あー…疲れた…今日も忙しかったな」
いくらバイト慣れしてるとはいえ、朝昼晩毎日休まずバイトをしているとどうしても疲れは溜まってしまう。
俺は大きく伸びをしながら家へと歩き出した。
「はぁー…何で今日に限って自転車が無いんだか…」
相棒である自転車は日々の使い回しが災いし、パンクするという事態に陥った。
残念ながら自力で直せる技術は無く、仕方なく修理に出した所どこもお盆という事もあり定休日であった。
徒歩生活を余儀なくされた俺は、今日は夜から大雨の予報と聞いていた為外れろと念じつつも嫌いな傘を泣く泣く持ってバイトへと向かっていた。
傘が嫌いな理由?そんなもん片手が塞がるからに決まってるだろう。
「うわ…降り出した…」
少し歩くと、雨粒が少しずつ俺に降り注ぐ。
天気予報はどうやら当たりらしい。
ご丁寧な仕事いつもどうもね!
「はぁ…憂鬱だ…」
雨はあまり好きじゃない。かといって晴れもあまり好きではないが。
しかしこの程度ならわざわざ傘をささなくても大丈夫そうだ。
よし。このまま走ってとっとと帰ろう。
俺は脇芽も振らず全速力で走り出した。
「…マジかよ」
結論、そんなに甘くはなかった。
勢い良く走り出したは良いが僅か3分後、先程とは比べ物にならないくらいの雨が襲いかかる。
ザーザーと大きな音を立てながら降り注ぎ、雨宿りに選んだお店の屋根からは雨が滝のように流れている。
雨宿りしなくても傘をさせば良いじゃないかと思うかもしれないが、生憎そうはいかない。
機動性を重視し、スニーカーを履いてきてしまった為水溜りに入らなくても靴が濡れてしまう。
靴や靴下が濡れる何とも言えないあの気持ち悪さが嫌いで仕方ない。
という訳で雨が少し弱くなるまで俺は雨宿りを選んだという訳だ。
「…止まないかな…」
一向に止む気配の無い雨。
それどころか先程より強くなっている様な気がする。
…これは腹括るしかないか?
俺が意を決して外に飛び出そうとした時、遠くから一人こちらに向かって走る人影を発見した。
「あれ、誰か来るな」
見た感じ傘は持って無さそうだ。
恐らくあの人もここで雨宿りするつもりだろう。
少しずつ露わになる人物。
近づいていくにつれ、その人物は知り合いに似ている事に気付く。
「…見覚えある風貌だな」
下を向いていて表情は分からない。
だが、注目すべきは金髪のポニーテール。
ここら辺で金髪でポニーテールなんて珍しい特徴を持っている人は一人しか知らない。
「…絵里?」
「はぁ…はぁ…」
そう。息を切らしながらこちらに走って来たのはμ'sのお姉さん。絢瀬絵里であった。
「もう…何でこんな時に…」
どうやら絵里はこちらに気付いていないみたいだ。
「…」
ん?良く見たら体震えてるな。
どことなく服も濡れてるし寒いのか?
「…何で私ここまで来ちゃったんだろう」
絵里がぽつりと呟く。
「何でこんなに暗いのよ…」
そう言うと不安そうな表情を見せる。
今いる場所は昔商店街だった所ですっかり寂れており人通りも殆ど無い。
街灯も少ないため、夜になるとほぼ真っ暗になる。
まぁ確かに女の子一人で歩くには怖い場所だよな。
「うう…怖いよ…」
少しすると絵里は自分を抱きしめながらしゃがみこんでしまった。
恐怖心が強いのだろう。そこから動き出す様子は見られず微動だにしない。
…というか新聞配達で絵里の家に行ってるから分かるんだけど絵里の家ってこっちの方じゃ無いよな。
何でこんな所にいるんだ?
一先ずそろそろ絵里が可哀想になってきたので俺は近寄り声を掛ける事にした。
「…絵里?」
「…!…」
俺が声を掛けると、ビックリしたのか絵里はビクッと肩を跳ねらせる。
そして恐る恐る顔を上げると、俺とバッチリ目が合う。
「冬夜君…」
絵里は小さく呟くと、次第に表情が明るく、安心感からか目尻に涙を浮かべ始める。
そして次の瞬間。それは起こった。
「冬夜くぅぅぅん!!」
ギュッ!
突如体が包み込まれる柔らかい感触。
そして暖かく、力強く締め付けられる感じ。
…え?まさか…俺、抱きしめられてる?
「ちょっ、ちょっと待って!」
「お願いっ!もう少しこのままで居させて…」
「いやいやいや!そうゆう訳には…」
ガッチリとホールドされており全く身動きが取れない俺。
絵里も離すつもりは無さそうだ。
「くっ…こうなれば力づくで!」
「だ、ダメっ!」
ギュッ!!
ぐあっ…より一層キツく抱きしめてきたっ…!
だが俺も男…これぐらいどうって事ない!
普通この場面は「好きなだけ俺の胸を使っていいよ」みたいなクサイセリフを吐く所だが生憎そうはいかない。
もし誰かに見られたら面倒くさい事になり兼ねない…
ここは人通りが少ないだけで全く通らない訳じゃ無いんだぞ!
すまない絵里っ!
…え?…絵里力強くね!?何でビクともしないの!?
俺が弱いだけ?嘘だろ!?こっちは16年男やってるんだよっ!
「あ、あの…む、胸も当たって…」
「…」
聞く耳持たず。
どうやらこのまま絵里が落ち着くのを待つしかないらしい。
…初めて女性に抱きしめられたからどうすれば良いのか分からない。
こんなにドキドキするもんなんだな…
とりあえず太陽にこのイベントが来なかったのが救いだ。
何もしでかさないとは言い切れないからな。
「ごめんなさい…少し取り乱したわ」
それから数分後。
絵里は落ち着いたのか恥ずかしそうに俺から離れた。
あの取り乱し方は決して少しでは無い。
「…で、いろいろ事情を聞かせて貰おうか」
いくらなんでも情報量が多すぎる。
一つずつ整理する必要がありそうだ。
「まず、何で絵里がこんな時間にこんな場所にいるんだ?」
「…えっと…まずは時間が遅くなった事の説明をするわね?μ'sの練習は昼過ぎに終わってそこから私と希で勉強しようという事になって希の家に行ったの。そこから希の家で晩御飯もご馳走になって話し込んで気付いたらこんな時間になっちゃったって訳なのよ」
なるほど。まぁ絵里と希は3年生で今年受験生だ。それに合わせて夏休みの宿題もあるだろうしその為の勉強会なのだろう。
さすがは大人びた二人。夏休み中もだらけず真面目に生活しているみたいだ。
その場にあのツインテールが居ない事にはツッコまない。
「で、ここには?」
「外に出たら当然真っ暗で…雨も降ってから余計心細くなっちゃって早く帰ろうと思って慣れない路地裏とか通ってるうちに…その…」
急に声が尻すぼみになり俯く絵里。
まぁその先は言わなくても予想はつく。
「迷子になったと」
俺がそう言うと絵里は、
「…うん」
と小さく頷いた。
「で、俺に急に抱き着いてきたのは?」
「…」
俺が聞くと絵里は顔を赤らめる。
先程の出来事を思い出したのだろう。
こっちだって恥ずかしいんだからな。
「ごめんなさい…昔から暗い所が苦手で…その上知らない所に来たから怖くて不安で…で雨も強くなってとりあえず雨宿りしようと思って無我夢中で走った先に、知り合いがいたから、つい…」
なるほど暗闇が苦手なのか。
ここに走って来た時からその不安は充分伝わっている。
だが、暗闇が苦手なのに路地裏に入る勇気はあるんだな…
…まぁそれだけ早く帰りたかったという訳か。
「とりあえず諸々の事情は分かった。動けるか?」
「…え?」
「え?じゃないよ。さすがにこのまま絵里を置いて帰る程腐っちゃいない。それに迷子なんだろ?どうやって帰るつもりだ」
「いいの!?」
目を輝かせながら顔を近づける絵里。
ち、近い…
「あ、あぁ…絵里の家は分かるから送るよ」
「ありがとう!!」
…何か急に幼くなったな。
てっきり何で分かるの?ってツッコミが飛んでくると思ったけどその事に触れもしなかったな。
よっぽど追い詰められていたらしい。
「…いやさすがに見つめすぎでは?」
絵里は満面の笑みで俺を見つめている。
距離も近い。
…何かいつもの絵里と全く違うから調子が狂う。
「気にしないで」
…いや気にするんだが。
「…」
「ごめんなさいね…本当に…」
という訳で絵里を家まで送る事になった俺。
まさかの相合傘という形になり、正直とても気まずい。
相合傘をする日が来るなんて思ってもいなかった。
「いいよ。全然気にしてないから」
送る事自体は別に良い。
でも、状況からして仕方ないがいつも以上に絵里との距離が近くて困る。
肩と肩がくっつきそうだ。
「にしても傘持ってきてないんだな」
そうゆう所はキッチリしてるイメージがあるから少し意外だ。
「今日に限って天気予報を見るのを忘れちゃって…」
少し恥ずかしそうに絵里が言う。
という事は雨が降る日に偶然天気予報を見忘れて偶然帰りが遅くなってそのタイミングで雨が降って偶然俺が自転車が無い時に偶然あそこで出会った訳だ。
…偶然重なりすぎじゃないですかね?
「冬夜君は?」
「俺はバイトの帰り」
「そう。ここら辺なの?」
「ああ」
バイトしてる場所は明かさない。
来られたら困るからな。
「そういえば今日は自転車じゃないのね?」
「今パンクしてて使えないんだ」
「あら…それは災難ね」
その後も他愛もない会話をしながら進んでいく俺達。
相合傘というイレギュラーはあるも、絵里は少しずついつも通りな状態を取り戻していった。
俺も少し慣れてきた頃、絵里が不安そうな表情を浮かべながら口を開く。
「冬夜君…肩…」
そう言い絵里は俺の左肩を見つめる。
「…ん?あぁ、気にしないで」
現在俺の左肩は絶賛びしょ濡れ中である。
というのも俺の傘はあまり大きく無く、二人入るには厳しいサイズ。
当然絵里を濡らす訳にもいかないので、絵里のスペースを多めにとっている。
その結果俺は半身しか傘に入っていない。
まぁリュックが濡れなければそれで良い。
「気にするわよ…ほら、まだ少しスペースあるからもっとこっち来なさい」
絵里はそう言うと、スペースが空いてる事をアピールする。
…それは密着しろと言っているのか?
「…いや、大丈夫」
勘弁してくれ。さっき散々密着されてようやく落ち着いてきた所なのに…
「私が大丈夫じゃないのよ」
絵里はそう言うと、俺の服を引っ張り体を密着させた。
「…へ?」
思わず変な声が出てしまった…
本当にどうしたんだ今日の絵里。
恐怖と安心の高低差でおかしくなったのだろうか。
「えっと…あの、絵里さんこれは…」
「わ、私だって恥ずかしいのよ!あ、あなたに風邪でも引かれたら嫌だから…」
じゃあやらなくて良いよ!
俺は別に風邪引いても良いから!
「それとも…冬夜君は嫌…かしら?」
そう言うと絵里はうるうると目を潤わせながら俺を見つめる。
頬を少し赤らめながら至近距離で繰り出される甘える様な表情。
そんな顔で見られたら嫌なんてとても…
「嫌です」
言えちゃうんですね。
結局その後絵里は「随分はっきり言ってくれるじゃない。分かったわ、絶対に離してあげない」とムキになってしまった。
どちらにせよ離れる気無かったんじゃねえかと思ったが口に出す寸前で飲み込んだ。
一先ず密着された状態で送り届ける事を余儀なくされた俺は、少しでも早く解放されるため近道をしようと人気の無い道を通っていく。
「…よくこんな道知ってるわね。私ここに来て長いけど知らないわよこんな道」
「…まぁここら辺詳しいからな」
普段の新聞配達のバイトで模索し続けたそれぞれの家までの最短距離。
まさかこんな所でも役立つとは思わなかった。
「後二本路地越えたら着くぞ」
「本当に!?こんなに早く着くなんて…冬夜君凄いわ」
…まぁ素直に受け取っておくか。
俺もこのルート見つけるまで苦労したし。
雨脚は強くなる一方ではあるが、ゴールは見えてきた。
路地裏から出て次の路地裏まで向かうその時、【アレ】はやってきた。
「…ねぇ?何か空変な音しない?」
絵里が不安そうな表情を浮かべながら空を見上げる。
確かにゴロゴロ音が鳴ってるな。
これはもしかしたら雷が落ちるかもな…
「まさか…雷?」
そう言う絵里の様子はどうやら少し怯えている様だった。
そして俺は察する。
「絵里…もしかして」
ピシャーン!!
「いやぁぁぁぁぁ!!!」
…やっぱり。
雷も苦手なのか…
しかしこのままだと危険だな。絵里のこの状態じゃ先に進めそうに無いし、とりあえず避難出来る場所は…
俺が場所を探そうと周りを見渡し一歩踏み出したその時だった。
グイッ
「うおっ」
突如服が引っ張られる。
振り向くと…
「ちょ…ちょっと離れないでっ!」
「近い!近いって!」
泣きそうになっている…ていうか半分泣いてる絵里の顔がすぐそこまで来ていた。
「私の側から離れちゃダメっ!」
「分かった!分かったから少しだけ顔だけでも離して!」
俺の言葉が伝わったのか少しだけ顔を離す絵里。ただそれでも近い。
本当に少しだけだな。
まぁ良い。絵里の気持ちの問題もあるからこれくらいは譲歩しよう。
さっきのはさすがに唇が触れそうな勢いだっただけに焦った。
「とりあえずこのままでは危険だ。絵里、あそこのビルまで走れるか?」
「え…」
「屋根や木の下は危険だ。傘を差してる状態も落雷の危険性がある。だから一番安全なのは建物内に速やかに避難する事だ。行けるか?」
あまり時間は掛けたくない。
こんな所で黒焦げはごめんだからな。
「わ、分かったわ」
「よし、行くぞ。傘も閉じるから全力でダッシュだ。3、2…1!」
俺の言葉を皮切りに二人走り出す。
絵里はきっちり俺の手を握っており少々走り辛かったが、ビルまで辿り着く事が出来た。
「ここも真っ暗じゃない…」
無事ビルの中に入ることが出来た俺達だが、使われていない廃ビルなのかその中はとても暗く人気も全く感じられなかった。
その不気味さに絵里はより一層表情が暗くなる。
「仕方ない。雷が落ち着くまでここで待機だ」
「…うん」
俺の言葉に小さく頷く絵里。
…大分精神的にきてるみたいだな。
「ねぇ、冬夜君」
俯きながら口を開く絵里。
「ん?どうした?」
「もう少し…近くに寄っても良いかしら…?…」
そう言う絵里の言葉は震えていた。
度重なる恐怖や不安に押し潰されそうになっているのだろう。
今の彼女にとって心の拠り所は俺しかいない。
さすがに断る場面ではないな。
「いいよ」
「…!…ありがとう…」
俺がそう言うと絵里が一瞬顔を上げる。
その表情は少しだけ明るくなっていた様な気がする。
絵里は少しずつ俺に近付くと、俺の腕をがっしり掴みながら俺と同じ様に使われていない椅子に座る。
「本当にごめんなさい…」
突然の絵里からの謝罪。
その声は変わらず震えており、酷く落ち込んでいた。
「…急にどうしたんだ?」
「冬夜君に迷惑ばっかり掛けちゃって…その、抱き着いちゃった事とか…今も…」
「気にするな」
「…でも」
「確かにビックリはしたけど今はもう気にしてないし慣れた。だから絵里が落ち着くまで俺は付き合うつもり」
半分嘘で半分本当。
決して慣れた訳では無いが、後者は本当の気持ち。
何より今の絵里は壊れそうで放っておけない。
「優しいのね」
「今だけだよ」
「ふふ…何よそれ」
俺の言葉に少しだけ絵里に笑顔が戻る。
しかし、少ししてまたも表情が暗くなりポツリと呟く。
「…こんな弱い自分が嫌になるわ…」
相当追い詰められているのか、その声は小さく弱々しいものだった。
俺は優しく話しかける。
「弱さは必要だよ」
「…え?」
「人間は誰しも弱い部分がある。それは俺や太陽もそうだし他のμ'sのメンバーもそう。これはあくまでも俺の持論なんだけど、人間の魅力ってその弱さなんじゃないかなって思うんだ」
「弱さが…魅力?」
「そう。ふと見せる弱さで人は親近感や愛着が湧く。逆に弱点が何も無い人に対しては尊敬はしても親近感や愛着は湧き辛いだから弱さは必要なんだ」
「…そうゆうものなのかしら」
「素直に飲み込むかは絵里の自由。でも俺はそう思っている。絵里の弱さも勿論必要だ」
多分一緒にいて頼りになるのは後者だろうが一緒にいて楽しいのは前者。
まぁ何も弱点が無い人なんてアニメの世界でもあまりいないと思うけど。
「…でも、私はどうすれば良いの?このままでは納得出来ないわ」
弱い自分を嫌っている絵里にとっては今の話は納得し辛かったみたいだ。
ならば、その前提を覆せば良い。
「俺から言える事は一つ」
「弱い自分を愛せ」
「弱い自分を…愛せ…」
俺の言葉に驚く表情を見せた絵里は、俺の言葉を何度も復習する。
噛み締めるように何度も何度も。
「ふふ…中々無茶な事言うのね」
うん。我ながら中々ハードルの高い注文をしたと思っている。
でも、絵里なら大丈夫だと信じている。
「でも、ありがとう」
絵里はそう言うと、明るく笑い返してくれた。
ようやく見せてくれたな。その笑顔。
「ねぇ、一つ聞いても良い?」
突如頬を赤らめる絵里。
何だ?何を聞く気だ?
「あなたは弱い私を愛せと言った。じゃあ…」
「こんな弱い私を、あなたは愛してくれる?」
月明かりに照らされた妖艶に微笑む絵里の姿は、思わず見惚れてしまう程美しかった。
「当然」
絵里の言葉に対し自信満々に返す。
そして俺の言葉を聞いた絵里は、
「ふふ、期待してるわよ」
と今度はイタズラっぽく微笑むのだった。
「今日は本当にありがとう」
それから数分。
気付けば雨は止んでおり、雷も治まっていた。
そしてそのまま無事、絵里の家に到着した。
「全然大丈夫」
「…でも」
不安そうな表情で俺を見つめる絵里。
確かに時間も遅くこれから家に帰るとなるとまだ相当時間が掛かる。
まぁ自分で選んだ事だし後悔はしてない。
「時間の事なら心配いらない。だから気にせず家に入れ」
「…そう、なら良いけど…」
そう言うと絵里は玄関の扉を開けた。
すると、すぐさま少し幼い金髪の少女が飛び出してきた。
「お姉ちゃん!!!」
「亜里沙っ!」
勢い良く飛び出した亜里沙と呼ばれた少女は涙目のまま絵里に抱き着いた。
恐らく絵里の妹だろう。
「良かった…良かったよぉぉ…心配したんだからぁ!」
涙を流しながら絵里にしがみつく少女。
「ごめんなさい!本当にごめんなさいっ…」
絵里も涙を流しながら何度も謝っていた。
感動の再会。
二人にとってはそれくらいの出来事なんだろうが、二人の世界に圧倒されて凄い居辛い。
一先ず俺は二人の成り行きを見守る事にした。
数分後。
「あ…ごめんなさい!冬夜君放ったらかしにしちゃって…」
お、ようやく気付いた。
「お姉ちゃんを送って頂き本当にありがとうございます!」
丁寧に頭を下げる少女。
礼儀正しいな。
「あ、自己紹介まだでしたね。私、絢瀬亜里沙と言います!中学3年生です!よろしくお願いします!あ、あと亜里沙って呼んでください」
いきなり名前呼びかよ。
「ああ、丁寧にどうも。俺は…」
「氷月冬夜さんですよね!?」
…ん?何で名前知ってるんだ?
前に会ってるとか?いやいやそんな記憶は無いしだったら今の自己紹介はおかしいだろ。
…となれば絵里経由か?
「まだ名乗ってないんだけど…」
「ああ!ごめんなさいっ!実はお姉ちゃんから冬夜さんの話をいっぱい聞いてて…」
「ちょ、ちょっと亜里沙!」
なるほど。やはり絵里経由か。
…ん?俺の話をいっぱい?
「その話、詳しく聞いても良いか?」
「はい!まずお姉ちゃんが話していたのは…」
「ちょ、ちょっと待って!それ今じゃないと駄目かしら!?」
亜里沙を止める様に食い気味に割り込む絵里。
この焦り様、本当に何話したんだ?悪口とかか?
「そうですね…時間も遅いですし」
亜里沙が時計を見ながら言う。
…まぁこれ以上問い詰めても俺に得は無いとみた。
確かに内容は気になるが知らぬが仏という言葉があるくらいだしもう聞かないでおくか。
「…じゃあ帰るから」
「本当にありがとうございました!」
「冬夜君、いろいろとありがとう」
俺は二人に見送られる形でその場を後にした。
イレギュラーはあったが絵里の新しい一面が見れた事でプラスに考える事にする。
「あーあ…日付変わっちゃうな」
まだ家でやる事あるのに…
今日はこのまま寝ちゃうか。
ボケーッと歩いていると、不意に後ろから声を掛けられた。
「冬夜君」
「…絵里?」
振り返るとそこには見慣れた金髪のポニーテール。
さっき別れたばかりの絵里がいた。
「どうした?」
「…どうしても私の気が収まらなくて」
…?…何の事だ?
まさか送ってもらったお礼を気にしてるのか?
そんなの全然良いのに。
「お礼ならいらない」
「そうゆう訳にもいかないわ」
絵里はそう言うと、そのまま俺の耳元に近付く。
「えっと…絵里、今から何を…」
「こんな事しか出来ないけど、ほんのお礼よ。冬夜君、本当にありがとう」
…チュッ。
「…え?」
「ふふ。じゃあまたね。たまには練習にも顔出しなさいよ」
絵里はそう言うと顔を赤く染めながら足早に去っていく。
今…絵里は俺に何した?
耳元に近づいてちょっと囁いたと思ったら…
「はぁぁぁぁぁ!!!!?」
一人残された俺の叫び声が住宅街に響くのだった。
次の日。
「あ、冬夜君だ!」
「おはようございます。ようやく来てくれましたね」
「おはよー冬夜君!」
新聞配達のバイトの最中、神田明神に立ち寄る俺。
そこには朝練に励むμ'sの姿があった。
当然絵里もいる。
「バイトの途中で立ち寄っただけだ。すぐ戻るよ」
「なーんだ」
残念そうに声を上げる穂乃果。
ここで不意に絵里の姿が視界に入る。
「…」
「…」
うっ…昨日の今日だから気まずい…
「…!…」
絵里と目が合う俺。
【昨日の事は二人の秘密ね】
絵里がウインクしながら俺に口パクで伝えてきた。
…言うわけないだろ。
絵里からキスされたなんて…
「ん?どしたんえりちと冬夜君見つめあって。何かあったん?」
うげっ!こうゆう時の希は本当に厄介だ…
ちゃんと見てやがった。
「別に何も無い。じゃあ俺はバイトに戻るから」
「…本当に?」
「本当に」
これだけはマジでバレる訳にはいかない。
特に太陽になんて知られたら…
凜と二人で遊んでた事を知っただけであの反応だったんだ。
今度バレたら俺殺されるんじゃないか?
「じゃあまたな」
俺は逃げる様に神田明神を後にした。
昨日、頬に感じた暖かくて柔らかい感触を思い出しながら。
…はぁ…今日のバイト、集中出来そうにないや…
「えりち。本当に何も無かったん?」
「冬夜君と?ええ何も無いわよ。ただ…」
「…ただ?」
「本当に頼りになるのね。冬夜君って」
「絶対その反応何かあったやん!教えて!何があったの!?」
「ふふ。教えませーん」
「ちょっとえりち!」
「さ、練習するわよ練習!」
昨日の出来事を思い出す。
やり過ぎたかなとも思ったけど後悔はしてない。
だってあれしか思いつかなかったから。
驚いたような冬夜君の表情を見て思わず口元が緩んでしまう。
あんな表情もするのね。
とっても格好良かったわよ。
本当にいろいろありがとう。冬夜君。
μ'sから距離を置きたがる冬夜とは裏腹に、着実にμ'sからの好感度が上がっている事を冬夜はまだ知らない。
「こっちです」
「あなたは…」
「いいから走って」
加速していく物語。
ついに冬夜は出会ってしまう。
「そうだ!助けてくれたお礼に私達の練習見せてあげる」
「…え?」
この出会いが今後冬夜にどう変化をもたらすのか…
「あの…」
「どうかしら?」
「毛ほども興味無いんですが」
「「「!?」」」
プラスかマイナスか、それは神のみぞ知る。
〜次回ラブライブ〜
【第21話 冬夜、王者を知る】
お楽しみに。