今回はにこにー回!実は途中ミスで打ってた文章消えちゃって心折れかけたんですけど、無理矢理立て直して打ち込みました!
なのでちょっと無理矢理な所や駆け足な所があるかもしれませんのでご了承下さい!
それでは第23話始まります。
今回、少しだけ攻めてみました。
夏休みが終わり、いよいよ2学期に突入した。
廃校の進捗は変わらずではあるが、μ'sのランキングは順調に上昇中。
俺の予想ではこの2学期で廃校かどうかが決まると思っている。
「ふぅ…久しぶりに来たな」
俺が今いるのはとあるデパート。
家に食べる物が無い事に気付いた俺は、バイトが休みであった日曜日の昼を利用し買い物にやってきた。
明日からしばらく休み無しだから買込まないと…
噂によるとどうやらここでタイムセールが行なわれるらしい。
卵、肉、野菜、惣菜と様々で一人暮らしからすれば絶対に見逃せない。
絶対激安で沢山買い込んでやる。
メラメラとタイムセールに燃える俺は、時間までデパート内を彷徨く事にした。
ゲームコーナー、生活品コーナー、本屋、100円ショップ、特別興味の無い衣類コーナー。
そしておもちゃコーナーに差し掛かったその時、俺の目に一人の男の子が映った。
「…迷子か?」
ピコピコハンマーを片手に周りをキョロキョロ見渡す小さな一人の男の子。
無表情ではあるがどことなく困っている様にも見える。
近くには親らしき人物は見当たらなかった。
「とりあえず話だけでも聞いとくか」
周りの人達は男の子が迷子だと薄々気付いているのかチラチラと男の子を見つめている。
しかしそれ以上何をする訳でもなく素通りしていく。
…男の子が可哀想だろ。
俺はゆっくり男の子に近づいた。
「どうした?誰かさがしてる?」
少しでも警戒心を下げる為、なるべく男の子の目線になって話し掛ける。
つまり今俺はしゃがみ込み、男の子と同じ高さで話している。
「…おねーたん…」
「そうか。お姉ちゃんとはぐれちゃったか」
やはり迷子だったみたいだ。
タイムセールまでは…よし時間はあるな。
迷子センターに一先ず連れていけば大丈夫だろう。
「よし、じゃあお兄ちゃんとお姉ちゃん探しに行こうか。まずは君の名前教えてもらっても良い?」
「…こたろー…」
「虎太郎君か、いい名前だね。ありがとう教えてくれて」
優しく微笑みながら言う俺。これで少しでも心開いてくれればいいんだが…
「…」
虎太郎君は無表情のままじーっとこちらを見つめる。
そんなに見つめられたら照れるじゃないか。
あ、そういえば俺名前言ってないや。
「ごめんごめん。名前言って無かったね。俺の名前は氷月冬夜。よろしくね?」
「…とーや…」
「うん、冬夜。じゃあ行こっか?」
俺はそう言うと虎太郎君に手を差し出した。
相変わらずの無表情ではあるが、虎太郎君はギュッと俺の手を握る。
「よし、行くか」
迷子センターに行くだけ。
そう思い俺は虎太郎君を連れ、歩き出す。
しかしそれは、長い旅路になる事を俺はまだ知らない。
「そういえば虎太郎君。苗字って分かる?」
「…みょーじ?」
迷子センターに向かう途中。俺は虎太郎君に苗字を聞いた。
というのももし同じ名前の子供がデパート内にいたら面倒くさい事になり兼ねない。
でもこの様子だと分からないみたいだな。
「分からないならいいよ。ごめんね」
まぁピコピコハンマーを持ってたり着ている可愛らしい熊の服だったり特徴はあるから名前だけでも大丈夫か。
「ねぇ、虎太郎君今いくつ?」
「…よん…」
4歳か。
という事は幼稚園の年中ぐらいだな。
性格もあるだろうが4歳でここまで大人しいのは中々珍しい。
あまり子供に詳しい訳じゃないけど4歳くらいの子供は好奇心旺盛でもっと元気いっぱいなイメージだっただけに虎太郎君が凄い新鮮に見える。
今の子供ってこんな感じなのかな?
「好きな物は?」
「…かめんらいだー…」
「そうか。カッコいいもんな仮面ライダー。俺も良く憧れてたよ?変身!って」
少しずつコミュニケーションを取りながら歩いていく俺達。
その時だった。
「あーー!!こたろういた!」
「…ん?」
突如、女の子の叫ぶような声が耳に入る。
「…おねーたん…」
虎太郎君が呟く。
…お姉ちゃん?
声のした方に顔を向けるとそこには、
「…むっ、あなただれ!」
何故か怒ったような表情の片方の髪だけ縛った小さな女の子がいた。
…何で怒ってんの?
「ああ、虎太郎君のお姉ちゃん?俺は…」
「怪しい!!」
いや話聞けよ。
怪しいのは元々だ。
「いやだから俺は、」
「わかった!ゆうかいはんだ!」
ビシッと指を差しながら言う女の子。
…OK。どうやら俺を誘拐犯だと思ってるらしい。
100%この風貌のせいだ。これは面倒な事になったぞ…
「待って。まずは話を聞いてほしい。まず俺は誘拐犯じゃない」
一先ず俺は誤解を解く為刺激しないようゆっくり話し掛ける。
ここで騒ぎにでもなったら冗談じゃない。
「じゃあ、なに?」
怪訝しい表情を浮かべながらこちらを見つめる少女。
まぁそう簡単に警戒心は解けないな。
「まずは名前から。俺は氷月冬夜。虎太郎君がお姉ちゃんとはぐれたみたいだから一緒に探してたんだ」
「…ほんとう?」
「本当だよ。な、虎太郎君?」
「とーや…いい人…」
良かった…思わず助け求めちゃったけど虎太郎君は心開いてくれてるみたいで助かった…
相変わらずの無表情だけど。
「…んー…」
女の子は俺と虎太郎君の顔を交互に見ると、少しだけ表情を柔らかくして口を開く。
「…わかった、しんじる。でも、すこしでもへんなことしたらゆるさないから!」
「分かった。変な事は絶対しないよ。で、君の名前は?」
「ここあ!」
「ここあちゃんか。良い名前だね。苗字は?」
「…しんようできないからおしえない!」
…どうやら一筋縄ではいかないみたいだ。
「…お姉ちゃん?」
「うん。きづいたらひとりだった」
それから少し女の子と話をした。
どうやらまだお姉ちゃんがいるらしく、買い物中虎太郎君がいなくなった事に気づきお姉ちゃんと探しに行ったはいいが気付いたらここあちゃんもお姉ちゃんとはぐれてしまったとの事。
つまる所ここあちゃんも迷子という事だ。
「分かった。ここあちゃんも一緒にお姉ちゃんを探しに行こう」
という訳で、迷子が一人増えた俺は二人を連れ改めて迷子センターへと向かった。
「ここあちゃんの好きな食べ物は?」
「おねえちゃんのつくるものならぜんぶ!」
その道中、少しでも警戒心を解く為積極的に話し掛ける。
にしてもめちゃくちゃ姉思いの良い子じゃんか!
好きな食べ物聞いただけなのに予想外の返答きたわ。
「そっか。料理上手なお姉ちゃんなんだね」
「うん!じまんのおねえちゃんだよ!」
くっ!笑顔が眩しすぎる!
「じゃあ早く見つけないとね」
「うん!」
少しずつではあるが、俺への警戒心が薄くなってきているのが分かる。
相変わらず苗字は教えてくれないけど。
そしてそのまま他愛もない会話は続き、やがて俺達は無事迷子センターへとたどり着いた。
「お、ここだな」
「ここは?」
「ここは迷子センターっていって、ここあちゃん達の様に家族とはぐれちゃった子供の為に一緒に探してくれる所なんだ」
「へぇー、すごーい!」
一先ずこれで一段落。
後はスタッフさんがやってくれるだろう。
ホッと一息をついたその時、扉の前に1枚の貼り紙が貼ってある事に気付く。
「…ん?何かあるな」
【本日休業】
「いや、やってないんかいっ!!」
それは聞いてないよ!迷子センターやってないなんてさぁ!
参ったなー…今の時間は…ぐぬぬ。このままいくとタイムセールの時間に間に合わない可能性が高い。
チラリと二人の方を見る。
「「…」」
二人ともなんとなく状況を察したのか不安そうな表情を浮かべながらこちらを見つめている。
…さすがにここで、はいさよなら…とはいかないよな。
「だいじょうぶ?わたしたち、おねえちゃんにあえる?」
「とーや…」
俺は考える間もなく言った。
「任せろ。必ずお姉ちゃんに会わせてやる」
…無理!この状況で突き放すなんて鬼畜の所業俺には出来ん!
こうなりゃタイムセールなんてどうでも良いや。
「そうと決まれば行くぞ!お姉ちゃん探しに」
「おー!!」
「…おー…」
元は俺が虎太郎君に話し掛けてから始まったんだ。最後まで責任取るさ。
俺達は改めて、お姉ちゃんを探しに再び歩き出した。
…のだが…
「あ!お姉ちゃん!」
突如ここあちゃんが指を指しながら叫ぶ。
え?いたの?
まだ一歩目踏み出したばっかだよ?
視線をここあちゃんが指を指している方に向けるとそこには、
「あ…ここあ!虎太郎!」
ここあちゃんを少し大きくした様なここあちゃんと反対の髪を縛った女の子が立っていた。
「おねぇちゃん!」
ここあちゃんはお姉ちゃんの方に一心不乱に走り出すと、そのまま抱きついた。
「もう、どこに行ってたんですか?探したんですよ?」
女の子はここあちゃんを受け止めると、頭を撫でながら優しく丁寧な言葉で話し掛ける。
見た感じはまだ小学校高学年。そのままだとしたら冷静さと丁寧さがとても立派。
さすがは二人のお姉ちゃんといった所か。
「良かったな虎太郎。お姉ちゃん見つかって」
俺は何故かまだ俺のそばにいる虎太郎に話し掛ける。
お姉ちゃん見つかったならもう解決だろ。
「うん。みつかった」
…何だこの感じ?違和感だな。
俺は一先ず感動の再会中の二人に話し掛けた。
「とりあえず、これで一件落着か?」
「「…!…」」
声を掛けると、二人は直ぐ様離れ俺の方に顔を向けた。
別にそのままで良かったのに。
「ご、ごめんなさい!あなたがここあと虎太郎をここまで連れてきてくれた方ですね?ありがとうございます!」
おぉ。さすがは長女礼儀正しいな。
しかも察しが良い。
「いやいや良いんだよ。一先ずこれで全員集まっ…」
「お姉様は一緒じゃないんですね?」
…ん?
お姉様?
「…えっと…ごめん。1つ質問良いかな?」
「はい」
「君の所、何人兄妹?」
「えーっと…虎太郎とここあと私と、お姉様で4人ですけど…」
もう一人いたぁぁぁぁ!!
「虎太郎とここあがいなくなっちゃってお姉様と探してたんですけど気付いたらお姉様とはぐれてしまって…」
うん君も迷子だねじゃあ。
いや何この一人ずつ仲間に加わるみたいな展開!?
何で一人ずつ迷子になってんだよ!
「なるほど…で、どこではぐれたの?」
「えっと…服屋さんにいた時までは一緒だったんですけど…もしかしたら迷子センターにいるかもと思ってここに来た時にはもう…」
ふむ…姉に言わずに来てしまった結果はぐれてしまったと。
そりゃそうなるわな。
「よし分かった。皆でお姉ちゃん探そう」
「え…いいんですか?」
「良いよ。迷子3人をここに置いておく訳にいかないし」
さっきも言った通り最後まで責任を取る。
それに元々お姉ちゃんを探すつもりだったしな
「ありがとうございます!」
「お礼は良いよ。じゃあまず自己紹介しよっか?俺は氷月冬夜。君は?」
「矢澤こころです」
ん?何かその苗字聞き覚えあるな。
俺の知ってる中で矢澤なんて人はあのツインテールか世界のYAZAWAしか知らない。
…え?もしかしてあのツインテールがこの子達の長女?
「矢澤…こころちゃんね。よろしく。で、こころちゃんまた1つ質問したいんだけど良いかな?」
「はい」
「君のお姉ちゃんって…ツインテールとかしてない?」
「はい!ツインテールがトレードマークの宇宙スーパーアイドルです!」
はい決まり。
この3人のお姉ちゃんは間違いなく矢澤にこだ。
こころちゃんとにこ…性格全然似てねぇ…
下手するとこころちゃんの方がしっかりしてるんじゃないの?
とりあえず宇宙スーパーアイドルの件は今は触れないでおく。
「OK…もしかしたら俺、君達のお姉ちゃんと知り合いかもしれない」
「ほんとう!?」
「凄い偶然ですね!まさか冬夜さんとお姉様が知り合いだなんて」
「とーや…」
知り合いかもしれないでは無くほぼ確実だが一応保険を掛けておく。
万が一違った場合恥ずかしいからな。
一先ず俺はスマホを取り出すと、にこに電話を掛ける。
「…」
数回のコール。
出る気配は無い。
そして少しの間コールが続いた後…
「出ねぇし…」
途中で切れてしまった。
…まぁ向こうは向こうで焦ってるんだろう。
妹と弟が神隠しに遭ったかのように一人ずついなくなったんだもんな。
とりあえず俺は【妹と弟は今俺と一緒にいるからこのメッセージに気付いたら電話して】とにこにLINEを送り3人に顔を向けた。
「電話は出なかったけどメッセージは送っといたからその内折返し来るだろう。それまで俺達もお姉ちゃん探しに行こう」
俺が3人にそう言うと、
「はい!」
「うん!」
「…とーや…」
と満面の笑みで頷くのであった。
…一人を除いて。
それから3人の迷子を連れ、お姉ちゃんを探す旅が始まった。
ゲームコーナー、生活品コーナー、本屋、100円ショップ、衣類コーナー。
虱潰しにデパート内を探し回る俺達。
にこからの折返しはまだ来ておらず、もしかしたら俺の勘違いか?とも思ったがそれならそれで何らかのアクションがあるはず。
どちらにせよ俺からのメッセージにはまだ気付いてないみたいだ。
そして俺達が衣類コーナーを出て次の場所へ行こうとしたその時、それは起きた。
「でさー、これがさ」
「え、何それヤバくね?」
奥から歩いてくるいかにも柄の悪そうな大学生ぐらいの二人組。
…あまり関わりたくないな。
「こころちゃん、ここあちゃん、虎太郎君。ちょっと端に寄ろうか」
俺はすかさず3人を移動させる。
これで充分通れるはず…
そう思った次の瞬間…
「いやいやそれはありえないでしょ!」
不意に二人組の片割れが友達を押す。
男子間によく見られるふざけ合うつまらないノリのやつ。
そして押された友達は大袈裟なリアクションを取る。
俺はすぐさまスマホを取り出した。
「おいおい!よろめいちゃうぜ」
「ギャハハ!!そんな強く押してねぇよ!」
そしてそのまま…
「きゃっ…」
こころちゃんに背中から勢い良くぶつかり、バタンっと音を立てて転んでしまった。
「いたっ、気を付けて歩けやクソガキが!」
典型的な逆ギレ。
こころちゃんを睨みつけながら怒鳴ると、謝ろうとせずそのまま立ち去ろうとする。
…さすがにそれは駄目でしょ。
「あ…ご、ごめんなさい!」
こころちゃんはすかさず謝る。
本当に良く出来た子だ。こころちゃんに非なんて一切無いのに。
すると不良二人組はニヤリと笑うと、またも大袈裟なリアクションを取りながら口を開く。
「いってぇ!いってぇよぉ!!こりゃ足の骨折れたかもしれねぇ!」
右足を押さえながら叫ぶ不良。
当然骨なんて折れるはずがない。
「治療費。よこせよ」
不良はそう言うとこころちゃんに向かって手を出す。
つまりはカツアゲだ。
「え、えっと…」
こころちゃんは震えた手で小さな鞄から可愛らしい小銭入れを取り出す。
その様子を見た不良は鼻で笑うと、
「へっ、これだから子供は!治療費っていったら100万に決まってるだろうが!」
と当たり前の様に言った。
「ひどい…おねえちゃんなにもわるくないのに!」
「あぁ!?」
「ひっ…」
ここあちゃんの表情が恐怖に染まる。
虎太郎君も俺の服をギュッと握ってる所を見ると恐怖を感じているのだろう。
…さすがにこれ以上は見逃せない。
俺は考える間もなくここあちゃんに言った。
「ここあちゃん。1つ頼み事がある。このスマホをこう持ってあの二人組の方に向けてほしい」
「え…こ、こう?」
「うん。ありがとう。じゃあここあちゃんそのままジッとしててね」
俺はそう言うと、二人組の方に近付いていく。
「でも、折角っていうなら仕方ないよな?」
「あぁ。そうだな」
不良はこころちゃんの持つ小銭入れに手を伸ばす。
すかさず俺はその手を掴んだ。
「…あ?」
「ちょっと失礼」
「誰だお前」
「君達に名乗る名前は無いよ。そんな事より、今自分が何をしてるか分かりますか?」
私の小銭入れが奪われそうになったその時、冬夜さんが私の前に割り込んでくれました。
良かった…まだ恐怖で足が震えています…
「は?決まってるだろ。骨が折れたから治療費を請求してんだよ。何お前こいつの兄ちゃんか何か?じゃあお前で良いや治療費よこせ」
でも、私のせいで今度は冬夜さんに標的が変わってしまいました…
ごめんなさい冬夜さんっ…折角こうならない様に前もって端に寄るよう言ってくれたのに…
二人から睨まれてる冬夜さん…
普通だったら怖いはずなのに、冬夜さんは表情1つ変えません。
カッコいい…
「女の子にぶつかった時は背中から。それ程の衝撃も無ければ足に対して踏まれた訳でも無いし足へのダメージは0に等しい。逆に聞きますが、このぶつかり方でどうしたら足の骨が折れるんですか?」
凄い…怯む事なくあんなはっきり反論出来るなんて…
「ぐっ…と、とにかく折れたもんは折れたんだよ!!」
「そうですか…分かりました。一旦信じましょう。大丈夫ですか?骨折した【左足】の様子はどうですか?」
「あ!?あぁそりゃあ痛ぇよ!あー痛い痛い」
そう言いながら左足を擦る男性。
それを見た冬夜さんは、少しだけニヤリと笑うと冷たい声で言いました。
「ダウト。右足ですよね?骨折してるのは」
…!…確かに、最初は右足を痛がってました!
でも、さっきは左足の方を痛がってた…つまり骨折は嘘!
冬夜さんはそれを証明してくれたんですね!
「あ、えっと…」
冬夜さんの指摘であからさまに表情が曇る二人。
更に冬夜さんは畳み掛けます。
「仮に骨折したとしても明らかにそちらからぶつかって来ているので自業自得です。それに加えまだ幼い女の子に因縁をつけて骨折したと嘘をつき金を巻きあげようとする。男として…いや、人として恥ずかしくないんですか?」
全てが正論でした。聞いてるこちらも清々しくなるくらいの正論。
冬夜さんがそう言い切った瞬間、二人の目の色が変わりました。
「黙って聞いてりゃ…調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」
振り上げる拳。それは間違いなく冬夜さんを狙っていました。
この人、冬夜さんを殴るつもりだ!
私は気付けば大声で叫んでいました。
「冬夜さん!逃げて!」
「…」
精一杯の叫び。きっと冬夜さんの耳にも入っているはずです。
でも、一向に冬夜さんは避けようとしません。
そしてチラリと一瞬だけこちらを見ると口パクで、
「大丈夫」
とだけ私達に伝えました。
「死ねやぁぁぁ!!!」
振り下ろされる拳。
一歩も動かない冬夜さん。
ぶつかるっ…私は思わず目を瞑ってしまいます。
そして次の瞬間私の耳に入ったのは、
ゴスッと嫌に耳に残る骨がぶつかる鈍い音でした。
「死ねやぁぁぁ!!!」
「ぐっ…」
振り下ろされた全力の拳。
それは真っ直ぐ俺の頬目掛け飛んできた。
頬に感じる嫌な衝撃。頬に感じるジンジンとした痛み。
殴られた俺は思わず尻もちをついてしまった。
「調子に乗りやがって…生意気なんだよ!」
「…っ…」
不良の攻撃はまだ止まらない。
「おら!!」
「くそが!!」
そこからはパンチキックの応酬で俺の体を痛み付けていく。
「や、やめて下さい!と、冬夜さんがっ…冬夜さんが!」
こころちゃんの悲痛な叫びが聞こえる。
しかし不良達はお構いなしに攻撃を続けていく。
俺は抵抗する事無くただただ攻撃を受けているだけ。その様子を見た不良達に次第に余裕が生まれ始める。
「こいつただのヒーロー気取りだぜ」
「ああ、全然弱いじゃん」
ケラケラ笑いながら俺を見下す不良二人組。
どうやらこいつらはまだ状況を理解してないらしい。
俺はゆらりと立ち上がると、余裕を見せる不良二人に向かい静かに口を開いた。
「…パンチ8発…キック5発…」
「…あ?」
「君達から受けた攻撃の数」
「わざわざ数えてるなんてこりゃあ傑作だ!ご苦労なこった」
「ふん、それがどうした?」
「君達がやっているのは悪質な逆ギレだ。そうじゃないなら逆に教えてほしい。さっき俺が言った言葉のどこが間違っていた?」
「…な、何を…」
「間違ってると思ったから攻撃したんだろう?無いのであればやはり君達のは悪質な逆ギレであり許される行為ではない」
「て、てめぇ…いい加減に…」
振り上げる拳。でも、俺は止まらなかった。
「いいから質問に答えろ!!」
「「…!…」」
「どっちなんだ。俺が間違ってるのか、君達が間違っているのか。早く答えろ」
「そ、そんなの…」
「後、さっきも拳振り上げてたけどそうゆう暴力行為もやめた方が身のためだぞ」
「…え?」
「ここあちゃん。ありがとうもう良いよ」
「あ…えっと…うん…」
俺はここあちゃんにそう言うと、スマホを受け取った。
震えた手付き。ごめんな、怖かったろここあちゃん。
「一部始終は動画に残した。今このスマホには女の子からお金を巻き上げようとした様子とさっきの暴力行為の映像が入っている。どうゆう事か分かるな?」
俺がそう言うと、段々と顔が青ざめていく二人。
もう終わりだよ。あんたら。
「それに君達は頭に血が上って忘れている様だが、ここはデパートだ。ましてや日曜日の昼下り。証人は大勢いる」
気付けば今この場所には人集りが出来ており、その軽蔑の視線は全て不良二人に注がれていた。
「…おい…これヤバくねぇか…」
「マジかよ…」
どうやらやっと事の重大さに気付いたらしい。
もう遅いがな。
「君達、何してるんだ」
お、タイミング良く警備員も来たな。
ふぅ…誰が呼んできてくれたかは知らないけどありがたい。
「やばっ!逃げろ!」
警備員を見るないなや一目散に逃げていく不良二人。
それを見た警備員もすぐさま追いかける。
…これで終わったな。
「…ふぅ…」
気が抜けたと同時に俺はその場に座り込んだ。
「冬夜さん!」
「おにいちゃん!」
「とーや」
心配そうな表情で俺に駆け寄る3人。
しかし、3人より早く駆け寄った者がいた。
「冬夜!!」
この声は…
タッタッタと小走りの音が段々大きくなる。
そして目の前で止まったと思ったら不意に両肩を捕まれる。
俺は声の主の名前を無意識に口にしていた。
「…にこ」
「何でこんな無茶したのよ!」
心配そうな表情でどことなく怒りを含んだ口調。
涙目になって俺を見つめているにこがそこにいた。
…ようやく長女のお出ましかい。
「…おい。まずは俺じゃなくて妹達の心配しろよ…」
「あなたが守ってくれたんでしょ?見てたら分かるわ無事だって。だからまずはあんたよ!」
「俺は大丈夫だよ」
本当にはまだ頬がヒリヒリして蹴られた腹も苦しいけどな。
「嘘よ!口から血も出てるじゃない!」
そう言いにこはハンカチを俺に差し出す。
「んあ?あぁ、殴られた時に切ったんだよ。大した事無い」
俺は口元の血を雑に拭うと、そのまま立ち上がる。
「ちょっと急に立ち上がったら…」
「だから大丈夫だって。気にすんな」
「いいからにこは妹達見てろって。またはぐれるぞ?」
「その心配はないわよ」
そう言うとにこはこころちゃん達の方に目を向ける。
「…?…」
俺も吊られて同じ方へ目を向けた。
そこには…
「冬夜さん…」
「お兄ちゃん…」
「…」
心配そうな表情でじーっと俺を見つめる3人がいた。
「ほらね?離れそうにないわよ、うちの子達」
…マジか。
さすがに子供の前であれはやりすぎたかな?
でもあれしか考え付かなかったしな…
「とりあえず冬夜が何でこころ達と一緒なのかはもうどうでも良いわ。こうして無事だった訳だし。本当に良かった…」
「冬夜さん、私達の為にお姉様を探してくれてたんですよ?」
「そう!すごいかっこよかった!」
「ひーろー…」
ヒーローか…傷だらけだけどな。
「そう。うちの子達が本当にお世話になったみたいね。さっきのも含めて本当にありがとう」
にこが頭を下げる。
にこからこんなに真っ直ぐお礼を言われるのは珍しいから何かむず痒いな。
「別に良いよ。俺が勝手にしただけだから。で、さっきのも含めてって事は見てたのか?」
「ええ。冬夜があいつらの腕を掴んだ辺りからね。それに警備員呼んだの私だし」
「マジか。それは助かったありがとう」
さすがはにこだな。
危ない状況なのをいち早く察知して応援を呼ぶのにすぐ行動を移せる判断力。
その判断力をもう少し勉強に回せば良いんだが…
「それこそ全然良いわよ。それより冬夜本当に大丈夫なの?」
「しつこいぞにこ。大丈夫だよ。ジャンプも出来るぞ」
俺はそう言いにこ達の前で軽く体を動かす。
うん。問題は無さそうだ。
「…はぁ…分かったわ。とりあえず信じる事にする」
ふぅ。ようやく折れてくれた…
まだ納得は出来てないみたいだけど。
「じゃあ、俺もう行くから」
「もう行っちゃうんですか?」
「もっとあそぼうよー!」
その場を去ろうとする俺をすぐさま引き止めるこころちゃんとここあちゃん。
うっ…断り辛い…
よく見たら虎太郎君も名残惜しそうな表情してるし…
「ねぇ、この後何か用事あるの?」
そんな妹達の様子を見たにこが俺に質問する。
「買い物。食材買い溜めしないといけなくて」
その瞬間、にこがニヤリと笑う。
「そう。買い物なのね?実は私達もまだなのよ。買い物する前にはぐれちゃったから」
「…」
「折角だから一緒に行きましょ!」
…おっふ。
これ、行かなきゃいけないやつじゃん…
「いや、俺の買い物時間掛かるから…」
「それくらい手伝うわよ!こころ達を助けてもらった恩もあるし」
胸を張ってにこが言う。
こころちゃん達もキラキラした目でこっち見てるし、これは逃げられないな。
「…分かった。じゃあ一緒に行くか?」
「「「やったー!!」」」
「…何でにこまで喜んでんだよ」
「え?あ、え、えっと…それはあれよ…こ、こころ達の気持ちになっただけよ!」
なんだその言い訳。
…絶対ウソだろうけどまぁいいか。
「じゃあ、行くか」
「「うん!」」
「いく!」
「早速行くわよ!」
こうして何故かテンションの高いにこと喜ぶ3人を連れた5人での買い物が始まった。
「こころ、トイレットペーパー取ってきて?いつものよ」
「はいお姉様!」
「ここあはマヨネーズ。これもいつものよ」
「わかった!」
さすがにこころちゃんとここあちゃんは買い物慣れしてるな。何回もにこと買い物に来ているのだろう。
俺も俺で次々と買い物を終わらせていく。
…ん?にこがキャベツを見てるな。
「…よし、これね」
「にこ。それハズレだ」
「…え?」
「それは一見みずみずしく見えるが葉っぱが少し白い。葉っぱが白いのは虫に食われて何枚か剥いだものだ」
「じゃあこれは?」
「それは葉っぱもみずみずしさも良い感じだが惜しいな。芯の切り口が大きすぎる。大きすぎると苦味が出て美味しくなくなる。500円玉ぐらいの大きさがベストだ。例えばこれとかオススメだ」
「なるほど…ありがとう勉強になったわ」
にこはそう言うと勧めたキャベツをすぐさまカゴに入れた。
…そんなに慌てて入れなくても良いのに。
「ねぇ冬夜」
そしてにこは俺を見つめると、キラキラした瞳で言った。
「もっと教えて!!」
…こりゃ時間が掛かりそうだ。
「冬夜が居てくれて良かったわ。いっぱい教えてもらったし」
結局それから買い物は2時間程掛かり、外はすっかり日が暮れていた。
あれからにこから質問攻めに遭い結局殆どの野菜の特徴をにこに教えた。
さすがに疲れたよ…
「お姉様と冬夜さん、凄い仲良さそうでしたね!」
買い物袋を持ったこころちゃんがニコニコしながら言う。
「え…そ、そう?」
にこはこころちゃんの言葉を受け、チラッと俺の様子を伺う様に見つめる。
続けてこころちゃんは言った。
「はい!まるで夫婦の様でした!」
「ふ、夫婦!?ちょっとこころ!!」
こころちゃんの爆弾発言に思わずにこは顔を赤くしながら叫ぶ。
…まぁ3人の子供を連れた男女が買い物してたらそう見えなくはないな。
にこが3児の母に見えるかどうかは別として。
「ははは。それは言い過ぎだよこころちゃん」
「そうでしょうか?」
「なぁにこ?」
「夫婦…夫婦か…」
チラッとにこを見ると、顔を赤くしながらぶつぶつと繰り返し言っていた。
…何その満更でも無い反応。
「でも、これで冬夜さんとお別れですね…」
ニコニコした表情から一変しぽつりと名残惜しそうにこころちゃんが言う。
確かに用事も済ましたしもう少しでお別れだな。
「…」
「…」
こころちゃんに吊られる様にここあちゃんと虎太郎君の表情も暗くなる。
その様子を見たにこは、顔を赤くしながら再び動き出した。
「ねぇ冬夜」
「…ん?」
珍しくもじもじしながらチラチラと俺を見つめるにこ。
…何だ?どうしたんだ?
にこは一度深呼吸すると、上目遣いになりながら俺に言った。
「この後…」
「うちで…ご飯食べていかない?」
顔を赤くしながら上目遣いのにこ。
普段見せないにこの姿に俺は思わず胸が高鳴る。
そして思ってしまった。
【可愛い】と…
「…」
「…」
訪れる静寂。
少しだけ間を開けた俺は、真っ直ぐにこを見つめながら言った。
「行かない」
「いやいやいや!何で断るのよ!?え、今絶対行く流れだったでしょ!?断われる雰囲気だった!?」
「いや、そう言われても…」
「何よ!むしろ良く断われたわね?本当にありえないわ!顔が赤くなっちゃって恥ずかしかったのよ!?にこの勇気を返せ!!」
「知らないよ!勇気なんて返せるか!!俺は乗り気じゃなかったから行かないだけだよ!」
「乗り気じゃないですって!?もう怒ったわ!来なさい。いいや、来てもらうわよ!」
にこはそう言うと俺の腕を掴み無理矢理連れて行こうとする。
「待て待て待て!何でそうなるんだよ!俺の意思は!?」
「んなもんないわよ!」
「理不尽っ!?」
暴走するにこに手を焼く俺。
こころちゃん達もにこ側なのだろう。一向に止める気配が無い。
そして気付けば俺は言ってしまった。
「会おうと思えば会えるんだから今日じゃなくて良いだろ!」
「…え?」
あ、やべ。
「あ…」
「言ったわね?」
「えっと…」
「言ったわよね?」
「…」
ガシッ!
「いっ・た・わ・よ・ね!?」
わーお…何もそんな俺の肩を掴みながら顔を近付けなくてもいいじゃないですか…
めちゃくちゃ近いですにこさん…
「わ、分かったからとりあえず離せ!」
俺がそう言うとにこは嫌々離れる。
言ってしまったものは仕方がない…腹括るか。
「別に俺達は馬鹿みたいに離れてる訳じゃない。予定さえあえばいつでも会える。だから良いだろ?別に今日じゃなくても」
俺がそう言うとこころちゃんが目を輝かせる。
「じゃあ、また私達と会ってくれるんですよね!?」
「う、うん」
「やったー!!」
頷いてしまった…
「それなら仕方ないわね。今日の所は勘弁してあげるわ」
にこが嬉しそうに言う。
「じゃあ、俺こっちだから」
気付けば俺の家とにこの家の分かれ道に来てしまっていた。
俺がそう言うと皆の表情が暗くなる。
「また会えるから大丈夫だよこころちゃん」
俺は落ち込むこころちゃんに話し掛ける。
これはまた会わないといけないな。
「…こころちゃん?」
俯いたままのこころちゃん。
少し間を開けると、静かに口を開いた。
「こころ」
「…え?」
「私の事、こころちゃんじゃなくてこころって呼んでください!」
…正直予想外だった。
まさかこころちゃんからその提案をされるなんて。
「こ、こころ…あんた…」
「わたしも!ここあってよんでー!」
「こたろー」
ここあちゃんと虎太郎君もすぐ様こころちゃんに乗っかる。
…まぁ皆心を開いたって事で喜んで良いのかな?
「分かった分かった。じゃあな、こころ、ここあ、虎太郎」
「はい!ありがとうございました!」
「バイバイ!」
「ばいばい」
俺が名前を呼ぶと、3人は満足したような嬉しそうな表情で手を振った。
「…にこもな」
そして一人不機嫌そうな顔をしていたにこにも声を掛ける。
「…!…う、うん!」
するとにこは嬉しそうに微笑みながら頷いた。
全く。にこにまで懐かれてしまったみたいだな。
「「バイバーイ!!」」
手を振る矢澤家を背に歩き出す俺。
予想外の連続で疲れた1日ではあったが、たまにはいいかなとも思ってしまった。
…何でだろうな。最近この気持ちになる事が多い気がする。
「…幸せ…なのか、俺?」
…俺が?そんな権利ないのに?
「は…まさかな…」
俺はぶんぶんと頭を振ると、そのまま帰路についた。
これ以上考えてはいけない。
こうして、俺の奇妙な休日が幕を閉じるのだった。
「行っちゃったね。冬夜さん」
「そうね」
冬夜が去ってから数分。
私達は今日の出来事を振り返っていた。
「カッコ良かったな…冬夜さん」
うっとりしながら言うこころ。
それに加えこころのさっきの発言。
私は気付いてしまった。
「冬夜の事、好きになったでしょ?」
「え!?」
図星ね。
「そうなのおねえちゃん!?」
「え、えっと…」
今日は驚く事ばかり。
まずこころ達がはぐれた事から始まりようやく見つけたと思ったら冬夜と一緒でその冬夜は不良と揉めてて…
でも、その後の冬夜がカッコ良いと思ってしまった。
物怖じせず年上相手にはっきり言う冬夜が。他人の子供をボロボロになって守り通した冬夜が。面倒くさそうなのに丁寧にいろいろ教えてくれたり、面倒を見てくれる冬夜が…
まさかあんな事を言うなんて私自身もびっくり。
うちでご飯食べない?なんて…
「あー!おねえちゃんかおあかい!」
「…!…」
ここあの指摘で気付く。
嘘…また私顔赤くなって…
「もしかして…お姉様も?」
こころが真っ直ぐな瞳で私を見つめる。
お姉様もって事は、認めるのね?こころ。
「さぁ、どうかしらね」
「あー!ズルいですお姉様!」
後にも先にもきっとこれが始めてね。
実の妹を…【ライバル】と思うなんて…
認めるわ。好きよ、冬夜。
「ねぇ、いつなら空いてるの?」
「だからまだ分かんないって」
それから数日。
にこから毎回の様に誘いが来る様になった。
「こころ達も次いつ会えるの?ってうるさいのよ。だから近々会ってくれない?あ、勿論私も一緒よ」
「と言われてもバイトだしな…てか最後の情報いる?」
矢澤一家から気に入られてしまった俺。
…これはまた忙しくなりそうだ。
「そうだ、ねぇ冬夜…」
「何?」
「また…買い物に付き合ってくれない?」
「嫌だ」
「だから何で断るのよ!」
こうして俺はまた増えていく好意に頭を悩ませるのだった。
「凄いよ!?ランキング19位だよ!?」
順調に軌道に乗るμ's。
ついにラブライブ出場圏内までランキングを上げることに成功した。
しかし…
「練習あるのみだよ!」
「穂乃果ちゃん…」
「どうしたことり?」
「それはあまりにも無茶じゃない?」
少しずつ生まれる溝。
それは、崩壊への予兆だった。
〜次回ラブライブ〜
【第24話 すれ違う心】
お楽しみに。