ラブライブ!~太陽と月~   作:ドラしん

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こんにちは!ドラしんです。

前回の話からシリアスパートが続いておりますが、これからどんどん重たくなっていきます。

なお、今回はいつもより文字数が少ないです。

…まぁでも本来はこれくらいの文字数が普通なんですけどね。

それでは第25話始まります。





あ、今回終わり方に凄い迷っちゃってその結果こうゆう形で妥協してます。なので、この後変わる可能性があるのでご了承下さい。

その際はきちんとご報告致しますので。







…今月中にいけるか?もう1話。


第25話【雨のち絶望】

「ことりが…留学する事になったんです…」 

 

穂乃果とのすれ違いから真っ直ぐ家に帰った俺は、濡れた体を暖めるためシャワーを浴びる。

 

そしてシャワーから上がった瞬間、海未からの着信があった。

 

電話を取ると、話の内容はことりの留学の件。

 

どうやらことりはもう一人の幼馴染である海未には打ち明けた様だ。

 

「そうか。海未には言ったんだな」 

 

「…え?冬夜ことりが留学する事を…」

 

「知ってるよ。ことり本人から聞き出した」

 

海未の声色は暗く、落ち込んでいる様子だった。

 

「そうなんですね…私も先程ことりから聞いたのですが、私は一体どうすれば良いのでしょうか…」

 

さっき知ったのであれば当然海未の中で整理なんて出来てないだろう。

 

ましてや長年一緒にいた幼馴染の留学の知らせ。冷静でいられるはずもない。

 

「こればっかりは俺はアクションを起こせないしアドバイスも出来ない。ことり自身がどうするか、関わりの深い君達がどうするかが大事だ。関係性の浅い俺がとやかく言う権利は無いんだよ」

 

俺は君達みたいに繋がってないから。

 

「…そうでしょうか…」

 

「そうだよ。ことりをどうするか、μ'sをどうするかは君達で決めろ。君達のグループなんだから」

 

俺はそれだけ言うと電話を切ろうとする。

 

その時、海未はまたもう一つ俺に疑問をぶつけた。

 

「…穂乃果の事…どう思いますか?」

 

…穂乃果?

 

「ステージに立たないただ見てるだけの冬夜君には、私の気持ち分からないよ…」

 

脳裏に過る先程穂乃果に言われた言葉。

 

「…」

 

…何引きずってんだよ俺。

 

別に自分の頑張りを認めて貰いたい訳じゃないだろ…

 

「なんでそんな事聞くんだ?いつも通りだろ」

 

平然を装いながら俺は言った。

 

この感じは海未も穂乃果の違和感に気付いているみたいだな。

 

「最近の穂乃果は変なんです。人一倍練習に熱を持って取り組むしその量も明らかに多すぎます。急な思い付きで突然振り付けを変えたり、フォーメーションに凄いこだわりを持ったり…何だか暴走しすぎている様な気がして…」

 

やっぱり気付いてるか。

 

…まぁ穂乃果やことりの幼馴染で絵里と共に常に周りに気を配っている海未なら当たり前かもしれないな。

 

でも、ここで正直に話した所でμ'sは進まない。

 

俺は海未に嘘をつく事にした。

 

「積極的で良いじゃん」

 

本当はそんな事微塵も思っていない。

 

でも、もうこうするしか無いんだ。

 

「…ことりは気を遣って穂乃果に賛同しますし他のメンバーも穂乃果の圧に押されている現状です。…それでもそう言えますか?」

 

海未の思いと違うのだろう。少し不満を持った口調で再び疑問をぶつける。

 

それに対しても俺ははっきりと言った。

 

「まぁそうゆう人、グループには一人くらい必要でしょ」

 

「…そう…ですか」

 

いまいち納得は出来てないのだろう。返事の歯切れが悪い。

 

大丈夫。俺も自分で言ってて意味分かんないから。

 

「もう何も無いなら切るぞ?」

 

「あ…はい。ありがとうございます。あ…最後に1つだけいいですか?」

 

「何だ?」

 

「明日のライブ…成功しますよね?」

 

海未が抱える数々の不安。

 

心配そうに言う海未の声は少し震えていた。

 

考える間もなく俺は直ぐ様答える。

 

「当たり前だろ。君達なら大丈夫だ」

 

俺はそう言うと、また明日とだけ告げ海未との電話を切った。

 

「…」

 

雨音だけが聞こえる無の時間。

 

「明日のライブ…成功しますよね?」

 

先程の海未の言葉が頭の中を駆け巡る。

 

「当たり前だろ。君達なら大丈夫だ」

 

我ながら良くもまぁあんな自信満々に言えたものだ。

 

分かってるはずなのに。

 

「ごめんな…海未」

 

ーーーーーー明日のライブは、成功しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

その呟きは雨音にかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!凄い雨…」

 

「お客さん…全然いないね…」

 

ついに迎えた学園祭当日。

 

外は昨日に続き生憎の大雨だった。

 

「この雨だもの。しょうがないわ」

 

「私達の歌声でお客さんを集めるしかないわね」

 

「そう言われると燃えてくるわね!にっこにこにー!」

 

しかし、μ'sのメンバーは気後れする事無くやる気に満ち溢れていた。

 

ていうかにこのそのフレーズ久し振りに聞いたわ。

 

「…ことり、本当に良いのですか?」

 

「…うん。本番直前にこんな事話しちゃったら、穂乃果ちゃんや皆に悪いよ…」

 

階段下。他のメンバーに聞こえないように暗い表情で話すのはことりと海未。

 

結局留学の件は俺と海未にしか話せておらず、ことり自身も完全にタイミングを逃していた。

 

「でも…リミットは今日までなのでしょう?」

 

リミット。

 

神のイタズラか学園祭当日が留学するかどうかの決断の日となっていたことり。

 

「…留学。行くでいいんだな?」

 

「…」

 

静かに頷くことり。

 

皆に話せないまま留学を決意してしまった後ろめたさをことりは感じているのだろう。

 

暗い表情が一切取れない。

 

そしてその表情からは留学を決意してもなお、迷っている事が分かる。

 

「…ライブが終わったら私から話すよ。穂乃果ちゃんにも…皆にも…」

 

ことりはそう言うと浮かない顔をしたまま階段を降りていく。

 

そんなことりに掛ける言葉は見当たらなかった。

 

「…大丈夫なのでしょうか…μ'sは」

 

ぽつりと海未が言う。

 

「…さぁな。ことりが抜ける事になる訳だからな。その穴はデカイ」

 

俺から言わせればμ'sは9人で1つ。

 

そこから誰かが欠けてしまえばそれはもうμ'sでは無い。

 

「…」

 

俺の言葉に更に落ち込む海未。

 

俺は直ぐ様声を掛ける。

 

「今それを考えてもしょうがない。とりあえずはライブに集中しろ」

 

「そう…ですね。まずはライブの成功だけを考える事にします」

 

海未はそう言うと階段を降りていく。

 

辛いだろうな…ことりも海未も。大きな不安を抱えたままのライブは。

 

「おい冬夜」

 

海未が階段を降りてから少しして、入れ違いになるように太陽がやってくる。

 

「何かさっき浮かない顔をした海未とすれ違ったんだけど理由知ってる?」

 

「さぁな。まぁライブ当日にこの雨だし海未も不安なんだろう」

 

「…そっか」

 

ことりの件は伝えない。

 

ことり自身が学園祭終わってからという選択をしたのならそれを尊重するまでだ。

 

にしてもわざわざそれを聞きに来たのか?

 

「屋上に来た用事はそれだけか?」

 

「いや、用事はそれじゃない」

 

太陽はそう言うと、真剣な表情を浮かべながら口を開いた。

 

「穂乃果、まだ来てないんだよ。連絡も取れないし」

 

「…」

 

…なるほど。まだ穂乃果は学校に来ていないのか。

 

昨日俺と別れてからどれくらいランニングを続けたのかは分からない。

 

分からないが、きっとすぐに帰ったりはしていないはすだ。

 

となればあの段階で風邪を引いていた穂乃果は、今日更に悪化している可能性が高い。

 

これは穂乃果が来ないまであり得るな。

 

「…まぁ、寝坊だろ」

 

俺は昨日の事は話さずそう答えた。

 

きっと寝坊じゃない。俺にはその確信があった。

 

「…ならいいんだが…」

 

太陽はそう言うと、心配そうな表情をしながら屋上へと向かっていく。

 

絶望へのカウントダウンは、間違いなく始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようー…」

 

それから数時間後。

 

穂乃果が来たのはライブが始まる直前だった。

 

「穂乃果!」

 

「遅いわよ」

 

海未とにこが直ぐ様声を掛ける。

 

「ごめんね…まさか当日に寝坊するなんて」

 

穂乃果はそう言うと、申し訳無さそうに部室の扉を閉めながら言う。

 

そして、そのまま皆の元に歩き出した。

 

…しかし。

 

「すぐに準備するから…お、っととと…」

 

「「「「「「「「「…え?」」」」」」」」」

 

歩き出した瞬間大きくふらつき始める穂乃果。

 

他のメンバーから思わず声が漏れる。

 

そして、そのままことりに寄りかかるような形で倒れ込む。

 

「…穂乃果ちゃん?大丈夫?」

 

直ぐ様受け止めることり。心配そうな表情で穂乃果を見つめる。

 

「あ、あれー?ごめんね皆。まだ寝ぼけてるみたい、えへへ…」

 

弱々しく笑いながらことりから離れる穂乃果。

 

しかし、穂乃果に感じた違和感はそれだけでは無かった。

 

「…穂乃果、声変よ?」

 

絵里が心配そうに言う。

 

そう。以前の穂乃果と比べて明らかに声が出ていなかった。

 

「そ、そう?寝起きだからかな?ごめんね、のど飴舐めとくよ」

 

顔の赤み、ふらつき、そして声の調子。

 

間違いない。明らかに昨日より悪化している。

 

「…全く気を付けなさいよ」

 

ライブ寸前になっている緊張感からかそれ以上穂乃果の異変を気にする者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…全然弱くならないわね」

 

迫るライブへのタイムリミット。

 

窓の外を見つめるμ'sは、一向に止む気配を見せない雨に不安を募らせていた。

 

「むしろ強くなってない?」

 

「これじゃあ…例えお客さんが来てくれたとしても…」

 

次第にネガティブになっていくμ's。

 

そんなμ'sに声を掛けたのは穂乃果だった。

 

「やろう!」

 

「穂乃果…」

 

「ファーストライブの時もそうだった…あの時諦めなかったから私達μ'sはここまで来る事が出来た。ラブライブの出場圏内まで来れた。だから皆、行こう!」

 

力強く皆を励ます穂乃果。

 

穂乃果の言葉に皆の目に火が灯っていく。

 

「そうだよね…その為にここまで頑張ってきたんだもん!」

 

「後悔だけはしたくないにゃ!」

 

花陽と凛が笑顔を見せる。

 

「泣いても笑ってもこのライブの後には結果が出る」

 

「なら思いっきりやるしかないやん!」

 

絵里と希も大きなやる気を見せた。

 

「進化した私達を見せるわよ!」

 

「やってやるわ!」

 

真姫とにこも自信満々に言う。

 

そして、

 

「ことり。冬夜も言っていたんですが、今はライブに集中しましょう?折角ここまで来たんですから」

 

「うん!」

 

海未とことりも表情が明るくなる。

 

一先ずはライブが開始出来る所までは来たみたいだな。

 

「強いな。μ'sは」

 

俺の隣に立つ太陽が言う。

 

「そうだな」

 

でも、その強さはこの後無くなるんだよ。太陽。

 

「よし!じゃあ皆移動するわよ!」

 

次々と部室から出ていくμ's。

 

自信と決意を込めた皆の表情。

 

俺は最後尾にいた穂乃果を呼び止める。

 

「穂乃果」

 

「…!…」

 

俺の声に穂乃果は肩をはね上がらせ立ち止まる。

 

「…?…どうした冬夜」

 

「すまん。すぐ終わるから皆と先に行ってて」

 

「…分かった」

 

俺がそう言うと太陽も部室を出ていく。

 

そして皆が離れた事を確認すると、穂乃果の方へ顔を向ける。

 

「…」

 

昨日の事を引きずっているのか俺と目を合わせようとしない穂乃果。

 

でも、そんな事はどうでも良い。

 

「…熱…いくつだったんだ?」

 

「…え?何の事?」

 

「俺から誤魔化せると思うなよ。風邪引いてるんだろ?」

 

俺がそう言うと、穂乃果は観念した様に言う。

 

「…やっぱり…バレてるよね…」

 

穂乃果は俯くと、正直に俺に話し出した。

 

「…38.8℃」

 

「…そうか」

 

「やっぱり…ダメかな?」

 

不安そうな表情を浮かべながらこちらを見る穂乃果。

 

あの時…穂乃果と衝突した時の俺を見ればライブに出る事を認めてもらえないと思っているのだろう。

 

でも、あの時の俺とは違う。

 

むしろ、穂乃果には…【出てもらわないと困る。】

 

「3年生にとっては最後の学園祭。μ'sとしては最初の学園祭。今更止めようなんて思ってないよ」

 

「…いいの?」

 

「いいよ。声も戻ってるみたいだし。ただ…」

 

「…ただ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出るからには最高のライブにする事。いいな?」

 

 

 

 

 

 

「うん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!遅いぞ冬夜!」

 

「悪い悪い」

 

穂乃果と少し話した後、ライブ会場へと直ぐ様向かった。

 

屋上には沢山のお客さんが集まっており、ありがたい事にヒフミトリオも忙しい時間の合間合間でチラシ配りもしてくれた。

 

このコンディションでここまで集まるとは予想外だ。

 

「あれ、君は…」

 

ここで太陽の隣に2つの人影を発見する。

 

「ああ、紹介するよ。この子は絢瀬亜里沙ちゃんと言って何と絵里のいも…」

「冬夜さん!お久しぶりです!」

 

「って面識あんのかーい!!!」

 

「久し振り。亜里沙ちゃん」

 

自信満々な所悪いな太陽。

 

亜里沙ちゃんが太陽とも知り合ってたのは知らなかったけど。

 

「え?いつ?いつ知り合ったの?」

 

「で君は…」

 

太陽を無視し、今度はもう一人の人物に目を向ける。

 

「は、初めまして!高坂雪穂です!お姉ちゃんがお世話になってます!」

 

高坂雪穂…高坂…ああ、穂乃果の妹さんね。

 

そういえば合宿の時「雪穂お茶ー」とか言ってたわ。

 

「そんな畏まらないで良いよ。よろしく」

 

「いやいや何話進めてんだよ!まずは俺の質問に答えんかい!」

 

うるさいなこいつ。

 

「別に今は良いだろ。始まるぞライブ」

 

本当に女性関連になるとうるさくなるな…

 

「「…」」

 

二人が軽く引いてるじゃねぇか。

 

「お、いけないいけない…後で絶対教えろよ?」

 

「へいへい」

 

太陽はそう言うとステージに目を向ける。

 

ライブスタートまで後僅か。

 

「「「「「「「「「…」」」」」」」」」

 

薄暗いステージには9つのシルエット。

 

μ'sのスタンバイは完了しているみたいだ。

 

「「「…」」」

 

期待のまなざしで見つめる3人。

 

そしてそれは他の観客も同じ。

 

だが皆は知らない。これがμ'sの絶望の始まりになる事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ライブが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「OhYeah!」」」」」」」」」

 

 

流れるイントロ。

 

今までのμ'sに無かったややロック調の曲。

 

 

「「「「「「「「「OhYeah!」」」」」」」」」

 

 

薄暗いステージの中で全員がキレの良いポーズを決めていく。

 

 

「「「「「「「「「OhYeah!」」」」」」」」」

 

 

そして、ライトが灯る。

 

 

「「「「「「「「「一進一跳!」」」」」」」」」

 

 

これが穂乃果が拘った新曲。

 

【No brand girls】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄い…」

 

そう声を漏らしたのは誰か分からない。

 

曲はラストのサビに差し掛かり、ボルテージはMAXになっていた。

 

 

 

「「「「「「「「「うん!負けないから!」」」」」」」」」

 

 

 

大きな失敗も無く、問題無く踊っていく。

 

良く笑えてる。穂乃果が突然変えたと言われた振り付けも完璧。

 

μ'sにとって集大成のライブになる。誰もがそう思う事だろう。

 

そして…

 

 

 

「「「「「「「「「OhYeah!」」」」」」」」」

 

 

 

最後の決めポーズを完璧に決めてみせた。

 

 

 

 

「いいぞμ's!!」

 

鳴り止まない拍手。

 

飛び交う歓声。

 

間違いなく成功と呼べる滑り出し。

 

本来はこれが最高のライブの始まりになるはずだった。

 

しかしそれは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…うっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穂乃果ちゃん!!」

「穂乃果!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叶わない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「ごめんね…私のせいで」

学園祭のライブの失敗。

それは、μ'sにとって大きなダメージとなった。

「もう…ランキングにμ'sの名前は…」





「ないわ」





あの日から止まってしまったμ'sという歯車。

そして更に追い打ちを掛けるように、現実は襲いかかる。

「突然ですが…ことりが、留学する事になりました」

「どうして言ってくれなかったの!?」

広がるメンバー間の溝。

離れていく心の距離。

気付けばそれは、手を伸ばしても届かない距離になっていた。









〜次回ラブライブ〜

【第26話 不協和音】

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