今回からμ's復活パートに移ります。
最初はアニメと変えようかなと思っていたんですがどれもしっくり来なかったので結局アニメに沿う事にしました。
今回は冬夜君に絶望に落とされたμ's達(特に穂乃果)の心の動きがテーマです。
なので主人公である冬夜君は殆ど登場しませんので予めご了承下さい。
それでは第28話、始まります。
「全部…君のせいなんだから」
「…っ…」
あの時、冬夜君に言われたあの言葉が頭を離れない。
分かっていた。全てが自分のせいだって事を。でも、頭では分かっていたけど私は甘えていた。皆の優しさに甘えていた。
そして、それを冬夜君にあっさりと見破られた。
辛かった。でも、何一つ言い返す事が出来なかった。
全部冬夜君の言う通りで、それが現実。悪いのは全て私。
投げかけられた冬夜君からの様々な言葉。
そしてあの時…
「…穂乃果。それが君の答えなんだな」
「…うん…」
「ま、良い判断だと思う」
「…」
「きっとこの後太陽や皆が君を追いかける。でも、俺がそれをさせない」
「…」
「俺がここであいつらと話をする。君の事。そしてμ'sの将来を」
「…分かった…」
「だから穂乃果。君が盗み聞きしようがこのまま立ち去ろうが俺はどっちでも良い。だが、1つだけヒントをやる」
「…ヒント?」
「そう。君は今絶望している。俺もいろいろ言ったし、様々な現実が君を許してくれない。でも、これだけは頭に入れておいてほしい」
【君が失った物に、取り戻せない物は何一つ無い】
スクールアイドルをやめる事を皆に言ったその後。
冬夜君に言われた言葉。
そして、冬夜君と皆の衝突。
私はただただ聞いていた。きっと涙も流していたと思う。
でも、それすら気にならない程皆のやり取りをずっと見ていた。
μ'sを続ける事の意味…
取り戻せない物は無い…
今の私に価値は無い…
冷たく放たれたその言葉は私に重たくのしかかる。
でも、これは冬夜君が残してくれたヒント。
きっとこの先私が、μ'sが変われる答えがあるんだと思う。
だけど…私にはまだその答えを出せない。
また冬夜君に怒られちゃうかな?冷たく突き放されちゃうかな?
それでも私はまだ前に進めない。
「…弱いな…私…」
だから冬夜君は私に価値が無いって言ったんだ。
私も、こんな自分嫌い。
「…分からないよ…」
頭を抱える私の脳裏に過る冬夜君が最後に言った言葉。
「気付くの遅いよ」
それはまるで、私に言っている様だった。
「…本当に…これで良かったのかな…」
場所は変わり生徒会室。
そこには悲しそうな表情で業務に取り組む絵里と、同じような表情で窓の外を眺める希の姿があった。
「…μ'sはこの9人じゃないとダメ。そう言ったのは希でしょ?」
絵里は手を止めると、希の方を向きながら答える。
「…そうやけど…」
「ことりの留学、穂乃果の脱退、冬夜君との衝突。今のμ'sには問題が山積みでとてもスクールアイドルを行える状態じゃない。それに冬夜君も言ってたでしょ?スクールアイドルを続ける意味を考える時間が必要だって」
「…うん」
「確かに冬夜君のした事は間違い無くやり過ぎだし、海未や太陽君が怒るのも分かるわ。でも、私はあの時冬夜君が言った言葉に何一つ反論する事が出来なかった」
「…」
「それは皆も同じ。その時点で無意識に思ったのよ。冬夜君の言葉が正しいって」
お世辞にも優しいとは呼べないけどねと絵里は付け足すと、再び作業に戻った。
「…μ'sは、穂乃果ちゃんとことりちゃんの異変を先延ばしにした時点で壊れてたのかもね…」
希は寂しそうに空を眺めると、そう言いながら生徒会室を去るのだった。
「…」
再び場所は変わり弓道場。
真剣な表情をした海未が、一心不乱に矢を撃っていた。
「最近熱心だね」
そう言うのは弓道部の先輩。
問いに対し、海未は力無く微笑みながら口を開く。
「…はい。大会も近いですから」
親友の留学。親友の脱退。そして信頼していたマネージャーからの言葉。
到底傷が簡単に癒えるはずもない深刻なダメージ。
海未が浮かべた笑顔はとても痛々しいものだった。
「…スクールアイドルは、本当にもう良いの?」
心配そうな表情で尋ねる先輩。海未の笑顔が作られた物だと気付いたのだろう。
「…」
先輩の問いに対し海未は、口を開く事無く再び弓を引く。
今の海未にとって一番触れたくないワード。スクールアイドル。
真剣な表情に見える大きな迷いは、海未の中でμ'sという存在がとても大きい物なのが伺える。
「音乃木坂スクールアイドル。μ'sを…やめます」
「精神論に頼りきって自ら崩壊する様な生温いグループ…俺がぶっ壊してやる」
「…っ…」
脳裏に過る穂乃果と冬夜の言葉。
少しだけ表情が険しくなった海未が放った矢は、的から少しだけ外れる。
「…」
的に刺さる距離の空いた3本の矢。
それはまるで、穂乃果とことりとの心の距離を表している様だった。
「…」
時を同じくして音楽室。
そこには暗い表情でピアノを見つめる真姫の姿があった。
「…来たはいいけど…弾く気起きないわね…」
ぽつりと呟く真姫。
その呟きは誰の耳にも入る事無く音楽室の静寂に消える。
「…」
ふと扉に目を向ける真姫。
「凄ーい!!!」
「…」
脳裏に過るのは扉越しに目を輝かせながら拍手する穂乃果の姿。
穂乃果との最初の出会いはここだった。
ピアノを弾いて歌っていた時、気付けば穂乃果が扉の外で聴いていた。
あの日あの時、ここでピアノを弾いていなければμ'sと関わる事はきっと無かっただろう。
自分の青春の始まりの場所。
「…1曲だけ…」
またあの時みたいに弾いて歌えば来てくれるだろうか…
あの時みたいに優しい言葉を掛けてくれるだろうか…
そんな淡い望みを抱きながら真姫はピアノに触れる。
「…愛してるばんざーい」
誰もいない扉を見つめながら真姫は、ただただ歌う。
あの時弾いた、出会いの曲を。
「あんた達はどうするの?」
そしてまたも場所は変わりとあるファーストフード店。
そこには、にこ、花陽、凛、太陽の4人が真剣な表情で話し合っていた。
「…どうするって…」
「アイドルよ。決まってるでしょ」
「…アイドル?」
「そう。にこと話し合ったんだ。せめて俺達だけでもアイドルを続けようって」
「皆が皆、アイドルから離れちゃったら居場所が無くなっちゃう気がしてね…冬夜の言ってる事は分かるわ。まだ冬夜を許した訳じゃないけど間違いなくあいつの言っている事は正しい。でも、別にアイドルをやりながら見つければ良いんじゃないかって思ったの」
真剣な眼差しで花陽と凛を見つめるにこ。
更に太陽が続ける。
「俺はμ'sを諦めない。皆がいつでもμ'sに戻れる様にまずは俺達で居場所を守るんだ。冬夜に言われて凄いショックだったよ?力不足って言われてさ。でも、確かに俺は何も出来なかった。何も言葉を掛けてあげられなかった。だから俺は皆に相応しいコーチになる為に沢山勉強するし、にこにも全力で協力する。これが今、俺に出来る事だと思ったんだ」
熱い思いと前を向く二人。
二人の言葉に次第に表情が明るくなる花陽と凛。
「だから私達と、アイドル続けない?」
「まだ、終わらせたくないよな?」
にこと太陽はそう言うと二人に手を差し伸べる。
そして二人は…
「「うん!!」」
と笑顔を浮かべながら二人の手を取るのだった。
「…まだ落ち込んでるんだ」
それから数日。
その後μ'sは冬夜の言った通り活動休止となり、一度スクールアイドルを見つめ直す事になった。
「スクールアイドルをやめたくらいだからね…よっぽどことりちゃんの留学が堪えたんだね」
校門前。心配そうな表情で話すのはヒデコ、フミコ、ミカの3人だった。
「海未ちゃん達とも話してないみたいだしね…」
「うん…ことりちゃんも留学の準備で学校休んでるし…」
教室での穂乃果の様子は周りから見ても深い傷を負っているのが分かるほどの落ち込み様。
ムードメーカー的な存在でもあった穂乃果の変化は、少なからずクラスにも影響をもたらしていた。
「穂乃果が暗いとクラスの雰囲気も重たいし…」
「だから穂乃果には早く元気になってもらわなくちゃね」
「あ、噂してたら来たよ」
フミコの言葉に3人がチラリと学校に目を移すと、俯いた様子の穂乃果が丁度学校から出てくる所だった。
浮かない表情は変わらずで、3人には気付いていない様だ。
「じゃあ、早速行動に移しますか!」
3人は顔を見合わせ笑い合うと、穂乃果の元へ走り出しそのまま明るい口調で話し掛けた。
「穂乃果!もう放課後空いてるんでしょ?この後遊びに行かない?」
「…え?」
不意に掛けられた言葉に私は思わず驚いた様な声を上げてしまった。
目の前にいるのは笑顔を浮かべたヒデコ、フミコ、ミカの3人。
…そういえばスクールアイドル始めてからヒデコ達と遊ぶ事無くなっちゃったな。
でも、何で私にそんな優しい言葉を掛けてくれるのかな?
「…怒らないの?」
「怒る?何で?」
「だってヒデコ達は私がスクールアイドルを始めた時からずっと応援してくれてて、チラシ配りとか音響とかいつも手伝ってくれた。なのに私はスクールアイドル、μ'sを自分勝手な理由でやめちゃったんだよ?言い出しっぺの私が、誰にも相談せずに勝手にやめちゃったんだよ?なのに…なのに何でそんなに優しいの?」
ただただ疑問だった。
自分勝手で間違いだらけの私に、何でこんなに優しくしてくれるのか。
そんな事される資格…私には無いのに…
「ぷ…あははは!!」
ネガティブな言葉を並べて落ち込む私を見てヒデコが笑い出す。
…え?何かおかしな事言ったかな?
「…何で笑ってるの?」
「あ、ごめんごめん。いつもの穂乃果と違いすぎてつい。それとさっきの質問の答えだけど、別に怒る要素なんて何処にもないよ。だって元々μ'sって廃校阻止をする為に結成したグループでしょ?もう廃校も無くなったんだし、目標を達成してやめる事の何がおかしいのさ」
「…ヒデコ…」
「穂乃果は充分頑張ったよ。学校の為に0からここまで来れたんだから凄い立派だよ!だから少しぐらい羽を伸ばしてもバチ当たらないよ」
ヒデコの言葉は予想外なものだった。
こんな私を許してくれた。そして明るく話し掛けてくれた。
それが今の私には嬉しくて仕方なかった。
「目標を達成してやめる事の何がおかしいのさ」
脳裏にさっきヒデコが言った言葉が過る。
何だろう…このモヤモヤした感じ…
確かにそう。ヒデコの言うとおり。…言うとおりなんだけど…何か違う様な気がする…
私は…本当に廃校阻止の為だけにスクールアイドルをやっていたの?
「とりあえずさ、遊びに行こうよ!」
そう言いヒデコは私の腕を掴む。
「あ…」
でも、全く嫌では無かった。
最近考え込む事が増えて落ち込んでばかりだったし…たまには良いかな。
もしかしたらこれもヒントになるかもしれない。私は僅かな希望を膨らませながら少しだけ笑みを浮かべた。
「うん!」
ヒデコ達なりの気遣い。でも今は、今だけはその優しさに甘えても…いいかな?
「美味しーい!」
「幸せー…」
まず私達が向かったのはクレープ屋さん。
スクールアイドルを始めてからクレープ屋さんには殆ど来てないな…
…まぁ太らないように極力買い食いしないように避けてたんだけど。
「クレープなんて久し振りに食べたよ」
「そうなの?あ、やっぱりアイドルやってたからカロリーとか気にしてたんだ?」
「穂乃果よく食べるからすぐ太りそうだもんねー」
「うぐっ…何もそんなはっきり言わなくても…」
何も言い返せないのが辛い…
「次どこに行こうか?」
「どうする?折角穂乃果もいるし…」
もう別の話題になってる…相変わらず切り替え早いな。
「ねぇ、穂乃果はどっか行きたい所ある?」
「…ふぇ?」
…まずい…振られると思って無かったから驚いて自分でも変な声出ちゃった。
「ぷっ…穂乃果、何?今の声」
「あはは!可愛いっ」
「し、仕方ないじゃん!聞かれると思わなかったんだから!」
「あはは、分かった分かった。そんなに怒らないでよ。で、行きたい所は?あるの?」
行きたい所か…いざ聞かれると中々思いつかない。
きっとそうゆう事を考えてる余裕が無いからかな…
私は少し考える素振りを見せると、ヒデコ達に申し訳無さそうに言った。
「ごめん、何も思いつかないや。ヒデコ達にお任せするよ」
「そっか。分かった。じゃあ、久し振りにゲームセンターに行かない?」
「あ、いいねいいね!そうしよう!」
「うん!穂乃果もいるし絶対楽しいよ!」
「そ、そうかな…」
そこまで言われたらさすがに照れちゃうけど、でも3人が変わらず私と接してくれるのは凄い嬉しい。
多少の気は遣わせちゃってるかもしれないけど、一緒に楽しもうという気持ちが凄い伝わってくる。
私は思わず笑顔を浮かべると、考える間もなく言っていた。
「いいね!行こうっ!」
「このぬいぐるみ可愛い!」
「本当だ!よし、私やってみる!」
という訳で近所のゲームセンターにやってきた私達。
ゲームセンター特有の騒がしい機械音が耳に入る。
「大丈夫?ミカUFOキャッチャー苦手じゃなかった?」
「今ならイケそうな気がするの!」
ミカはそう言うと直ぐ様100円を投入する。
一先ず私の記憶上ミカが自信に満ち溢れてる時って大体空回りしてるんだけど大丈夫かな?
「あー!!」
「…ちょっとミカ、掴んですらいないよ?」
…うん。予想通りだった。
本当にミカってUFOキャッチャーのセンスないな…
「これはほんの小手調べ!ここから本番だから!」
「…ミカ、悪い事は言わないからやめといた方がいいよ?」
フミコが500円玉を入れようとしているミカをすぐさま止める。
…にしてもゲームセンターか…いつぶりだろう。
確か最後に行ったのはμ'sのリーダーを決める時だったっけ…
「大丈夫だよミカ。うちにはUFOキャッチャーの先生がいるから」
ヒデコはそう言うとニヤニヤしながら私の方を見た。
…何?UFOキャッチャーの先生って。その通り名初耳なんだけど。
でも、確かあの時もそうだった。
凛ちゃんが凄いUFOキャッチャーに苦戦してて、私が代わりにやったんだっけ…
「よし、私に任せて!!」
私は笑みを浮かべながら自信満々に言った。
「いやー、やっぱり穂乃果UFOキャッチャー上手だね!」
「うん!ありがとう穂乃果!」
「えへへ、それほどでも…あるけどね!」
「全く…すぐ調子に乗るんだから」
その後、見事300円でぬいぐるみをゲットできた私は大きな優越感に浸っていた。
調子に乗ってる?別に今ぐらい良いじゃん!
「あ、ねえ今度これやろうよ!」
ふとヒデコに目を向けると、とある機械をハイテンションで指差していた。
「これは…」
「ダンスダンスレボリューション!穂乃果も知ってるでしょ?」
「…うん」
知ってる…知ってるよ…忘れるはずがない。
あの時、リーダーを決める為にμ'sの皆でやった事…
「よし!じゃあまず私とミカからいくよ!」
ヒデコはそう言うと慣れた手付きで曲を選択していく。
あの時は楽しかったな…
リーダーとか関係無しにただただμ'sの皆と遊んでいた時間が…
脳裏に過るのはあの時、真剣に笑顔でゲームに取り組むメンバーの姿。
自分から手放しておいて本当に無責任だけど…どうしても思ってしまう。
また、皆と過ごしたい…
でもそれは叶わないのかな…
【君が失った物に、取り戻せない物は何一つ無い】
あの何気ない日常も失った物の一つ…
本当にあの日常を取り戻せるのかな?
「…のか…」
スクールアイドルをやる事の意味…きっとそれを見つければあの日常を取り戻せるヒントになるんだと思う。
でも…意味なんてもう…
「穂乃果!!」
「わっ!!」
急に耳元で叫ばれたヒデコの声に思わず飛び跳ねる私。
突然何!?ビックリするじゃん!
「やっと気付いた」
「…?…やっと気付いたって?」
「さっきから名前呼んでも全然反応しないんだもん。また考え事してたんでしょ?」
…また私、周りが見えなくなってた?
あんな事があったのにまだ直ってないなんて…
「ごめんごめん。つい…」
「本当に最近多いよね。今ぐらい忘れなさいよ」
「あはは…そうだよね。うん、もうやめるよ」
「…本当かな…まぁいいや、次穂乃果の番だよ」
ヒデコに言われふと画面に目を移すと、ヒデコの画面に映るYOUWINの文字。
どうやら勝負はヒデコの勝利で終わったらしい。
「うん」
私はヒデコに促されるがまま、画面の前に立つ。
ふと隣を見ると、フミコが「絶対に負けないよ!」と闘争心に火をつけながら自信満々に言っていた。
…フミコってそんなにこのゲーム得意だったっけ?
「よーし、じゃあこの曲!」
フミコもまた、慣れた手付きで機械を操作していく。そしてフミコは迷う事無く一つの曲を選択した。
「あれ…この曲…」
その曲には聞き覚えがあった。
あの時…リーダーを決める為に皆で来た時に、皆で踊った曲。
「このゲームのアポカリプスモードエクストラをやって貰うわよ!」
「出来ちゃったにゃ!」
「嘘っ!?」
あの時の光景が蘇る。
凛ちゃん凄い上手だったな…
「さ、始まるよ!」
流れるイントロ。
耳に入るメロディ。
時間はそんなに経っていないはずなのにその全てが懐かしくて、胸が高鳴る。
気付けば私の体は自然と動いていた。
「スクールアイドルやろうよ!」
「μ'sです!!」
「1、2、3、4…1、2、3、4」
「俺がいる!それに生徒会長の絢瀬さんだって副会長の東條さん、ヒデコさん、フミコさん、ミカさんだって…冬夜だっているぞ!」
「私を…μ'sのメンバーにして下さい!!」
「…辛くないの?」
「絵里先輩。μ'sに入って欲しいです!一緒にやりましょうスクールアイドル!」
「凄い!ランキング19位だよ!?」
「「「「「「「「「聴いてください!」」」」」」」」」
フラッシュバックする思い出。
辛い事、悲しい事、沢山あった。でもそこには確かな笑顔があって大きな夢があった。
「わぁぁぁぁ!!!!!」
「感動した!!」
「凄い!」
「可愛い!!」
「大好きだー!!!」
いろいろな壁もあってそれを乗り越えてきたのは皆がいたから。そして、私達のライブを観てくれるお客さんがいたから。
皆の笑顔が大好きで…些細な事でも楽しいと思えて…
思い出すな…あの日々を。
「…楽しい…」
私はそう呟くと、ペースを上げていく。
曲も終盤。私は夢中で踊っていた。
寸分の狂いも無く完璧にステップをこなしていく。これも日々の練習の成果だ。
体力も問題無い。まだ息切れも起こしていない。
自由に自分の体を動かしているこの瞬間がとても気持ちよくて…とても【楽しくて】…
ーーーーーーそして、最後のステップ。
「…っ…はっ!!」
決まった…踊り切った…
治まらない胸の高鳴り。言葉にならない爽快感。
気付けば私は笑顔だった。
「凄ーい!!」
「凄い上手いじゃん穂乃果!さすがスクールアイドルやってただけはあるね」
「くっ…やっぱり穂乃果には敵わないか…」
「ありがとう。でも体が覚えてたから自然に出来ただけだよ」
画面にはYOUWINの文字。
どうやら私が勝ったみたいだ。
「にしても穂乃果、凄く楽しそうだったね」
ヒデコがニヤニヤしながら言う。
無意識だった。
今は学園祭やラブライブの事やことりちゃんや冬夜君の事を忘れるだなんて口では言ってたけど当然すぐに忘れる事なんて出来ない。
でも、それでも私は無意識の内に楽しんでいた。
笑顔で踊っていた。
「あー、でもこれでも1位にはなれないんだ。よっぽど凄いんだね1位の人」
ミカが画面を見ながら呟く。
釣られて私も画面に目を移すと、そこにはさっき出した私の成績が2位にランクインされている様子が映っていた。
そして私の成績の一つ上にある名前。【SUN】
その名前を見て私はすぐに気付いた。
「この人の成績、暫く抜かれてないのよ。本当に何者?」
きっとその名前はあの人だ。
そりゃ凄いはずだよ。だって私達のコーチだもん。
「…楽しい…か…」
今、自分の中に残っている確かな感覚。
ほんの数分。ほんの数分踊っただけで感じた興奮と心地よい疲労感。
最初は、それすらも楽しかった。
「…もう少しなんだけどな…」
冬夜君の残してくれたヒント。少しだけ掴めたような気がする。
でも、まだ後一歩足りない。
だけど、それでも今回手にしたものは私の中で大きな成果だった。
「どう穂乃果、来て良かった?」
いつの間にか私の隣に立っていたヒデコが優しく微笑みながら言う。
本当は分かってるくせに…
私はヒデコの目を見つめながら、笑顔を浮かべながら言った。
「うん!皆、ありがとう!」
堕ちた女神は笑う。
その先にまた、あの輝きがある事を信じて。
ーーーーーいつから、失っていたんだろう。
少しずつ答えに近付く女神。
ようやく掴めた糸口を頼りに、絶望から立ち上がる。
失った物を取り戻す為に、女神達は空いた心の距離を徐々に縮めていく。
「………よし!!」
目の前に見えた光。
迷いを捨て今、その輝きへと手を伸ばす。
〜次回ラブライブ〜
【第29話 悩んだ女神は走り出す】