ラブライブ!~太陽と月~   作:ドラしん

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どうも!ドラしんです。

思いの外更新が遅くなってしまいましたね。申し訳ございません。

中々打ち込みが進まなかったです。

実はモチベーションが少しずつ下がってきて、よし!打ち込もう!と思う事が減ってしまいました。

自分の作品を待ってくれている方がいるにも関わらずこうなってしまうのは本当に自分の悪い所です。

失踪は勿論しませんし、時間は掛かってもきちんと完結まで持っていきます。

モチベーションも保てる様に頑張りますが、もしまた更新の間が空いてしまったらその時は本当に申し訳ございません。






さて、前回から始まっている1期最終章【氷月冬夜編】の2話目になります。

これ最終的に何話になるのだろうか…

という訳で第32話始まります。


第32話【μ'sから陰が消える時】

 

 

 

 

「おはよう太陽君!」

 

「おはよう穂乃果」

 

冬夜との方向性が決まった次の日。

 

昨日の事を思い出しながらゆっくりと登校していると、不意に後ろから声を掛けられる。

 

μ's復活からより一層磨きが掛かった眩しい笑顔を浮かべながら挨拶する穂乃果に、俺も精一杯の笑顔を浮かべながら返す。

 

「おはよう太陽君」

「おはようございます」

 

「おはよう、二人とも」

 

穂乃果と一緒に登校していたことりと海未とも続けて挨拶を交わす。

 

μ's解散の騒動で、一番結束が高まったのは間違い無くこの幼馴染3人。

ここ最近の3人を見ると、前よりも楽しそうに話し良く笑う様になった。

 

そんな3人と合流した俺達は、一緒に登校する事になった。

 

「朝練無くても目覚めちゃうね」

 

「そうですね、私も自然と目が覚めました。体が慣れたんでしょう」

 

「習慣付いたって事だね!」

 

「…穂乃果は私達が来るまで寝てたでしょう」

 

「あ、あれ?そうだっけ…あはは」

 

他愛もない会話をしながら歩を進める俺達。

 

その時、俺達の前に同じように登校している見知った3人の姿が視界に入る。

 

「あ、絵里ちゃん達だ!おーい!」

 

3人に気付くやいなや大きな声で手を振りながら声を掛ける穂乃果。

 

元気なのは良いんだけど…もう少し場所と音量を考えて欲しいものだ。

通行人からの視線がかなり集まってるぞ。海未が少し恥ずかしそうだ。

 

まぁμ'sだからというのもあると思うが。

 

「…そんなに叫ばなくても聞こえるわよ」

 

呆れたようににこが声を掛ける。

 

それでもそれ以上嫌な顔せずに何も言わないのは穂乃果だからと割り切っているからだろう。

 

絵里と希も苦笑いではあるが、嫌そうな素振りは全く見せなかった。

 

「おはよう。今日も元気やね」

 

「いつも通りなのはこっちとしても嬉しいけどね」

 

「えへへ!今日も穂乃果は元気100倍だよ!」

 

いつも通りテンションの高い穂乃果を見て3年生の3人から笑みが溢れる。

 

あの一件から穂乃果は本当に吹っ切れたというか何というか…全くどこのアンパンのヒーローだよ。

 

「元気過ぎるのも困りますが」

 

海未が少し困った様な表情を浮かべながら言う。

 

しかしどことなく嬉しそうなのは、こうゆう穂乃果も好きだという証拠だ。

結局いつも通りの元気な穂乃果が一番良いんだ。皆にとっても。

 

「ことり、凄い嬉しそうだな」

 

俺は後ろでニコニコしながら様子を見ていることりに声を掛ける。

 

この状況をとても楽しんでいる様なことりは、笑みを崩さずに口を開く。

 

「こうゆう何気ない日常を過ごしてて、心の底から思うんだ」

 

「…何を?」

 

「ここに残って本当に良かったって」

 

そう言うことりの笑顔は、より一層輝いて見えた。

 

一度は留学を決意して皆との接触を絶ったことりにとっては、こうゆう時間も楽しくて仕方ないんだろうな。

 

 

 

「あー!皆いるにゃ!」

 

 

 

その時、不意に耳に入る明るく元気な声。

何より語尾ににゃを付ける知り合いなんて一人しかいない。

 

あの3人までお出ましか。

 

俺達は声のした方へ振り向く。すると…

 

「皆、おっはよー!!」

 

「はぁ…はぁ…は、速いよ凛ちゃん…」

 

「きゅ、急に走りださないでくれる?」

 

元気良く笑顔を浮かべる凛と今にも倒れそうなくらいヘトヘトな花陽と真姫の二人がいた。

 

…まぁ凛の全力疾走はめちゃくちゃ速いから運動があまり得意じゃない二人がこうなるのは仕方ない。

 

にしても1年生の3人も合流か。これで冬夜以外のμ'sが揃ったな。

 

「凄ーい!揃っちゃったよ!」

 

「ええ、特別約束してた訳でもないのに集まっちゃったわね」

 

こうして10人が示し合わせた訳でもなく揃うというのは確かに珍しいな。

これも強い絆で結ばれた影響かな。

 

「折角だから皆で行こうよ!」

 

元気良く穂乃果が手を上げながら提案する。

 

知名度のあるμ'sが揃っててこんな大人数で歩いていれば注目の的にはなるけど、たまにはいいな。そうゆうのも。

 

「賛成!」

「そうするにゃ!」

「ええやん!」

「そうしましょう」

「うん!楽しそう!」

「いいわよ」

「折角ですからね」

「いいんじゃない?」

 

どうやら反対意見は無さそうだな。

 

「よし、皆で登校しようか!」

 

人数は多い方が楽しいし、絶対この方が良いよな!

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえば穂乃果。数学の宿題きちんとやってきましたか?」

 

10人での登校が始まって少し経った時、思い出した様に海未が口を開く。

 

…あー、そういえばそんな宿題あったな。

 

宿題貰ったその後の休み時間で終わらせてそのまま机に入れっぱなしだから忘れてた。

 

まぁ今回の宿題は評価に関わる重要な物だからさすがに忘れてなんか…

 

「…」

 

ふと穂乃果に目を向けるとそこにはさっきまでの元気さが嘘のように消えた絶望した穂乃果の姿がそこにはあった。

 

「…嘘…」

 

…絶対やってないじゃん。この反応…

 

「…えーっと…」

 

海未からの突然の質問に分かりやすく動揺しだす穂乃果。

 

その様子を見た海未の表情が段々と険しくなっていく。

 

「…やってないんですね?」

 

海未の声が冷たく響く。

 

あーあ…これ雷が落ちるパターンだよ…

 

俺知ーらね。

 

「…はい…」

 

「穂乃果!!」

 

「ひぃぃ!!」

 

まぁ自業自得だな。昨日あれだけ先生が忠告してたのに忘れるとは。

海未からの雷を食らうがいいさ。

 

俺が穂乃果達から目を逸し1年生の方へ目を向けたその時、問題はここでも起こっていた。

 

「そういえば凛。あなた英語の宿題は?」

 

「…へ?あ、えーと…も、勿論やってきたにゃ!…」

 

真姫からの質問に対しあからさまに怪しい挙動で答える凛。

 

真姫の目が次第に冷たくなっていく。

 

「…本当でしょうね?」

 

「…」

 

おいおい…凛のやつ汗ダラダラじゃねぇか。

 

目も泳ぎまくってるしもはやオリンピックのクロールレベル。

 

当然花陽や真姫が気付かない訳がない。

 

「…やってないんだね…凛ちゃん」

 

「そ、そそそそんな事にゃいわよ」

 

いやいや動揺しすぎだろ。

 

隠すならもっと上手く隠せよ。下手くそすぎだろ。

 

「…なら見せて」

 

「…え?」

 

「宿題。やってきたんでしょ?今見せてよ」

 

真姫からの問い掛けに対し段々と顔が青くなっていく凛。

 

そりゃやってもいない宿題を見せろって言われたらそうなるわな。

自業自得だけど。

 

真姫も宿題やってない事に気付いた上で聞いてるだろうし。

 

「…ま、まぁ宿題なんてここで見せるものじゃ…」

 

「いいから見せなさい」

 

鋭い目付きのまま厳しめに言う真姫。

 

その目はまるで「逃さない」と言っている様だった。

 

「見・せ・な・さ・い!!」

 

「ご、ごめんなさいにゃー!!!」

 

目力と強い気迫。近付いてくる威圧感MAXの真姫を間近にした凛は涙目で頭を下げた。

 

…最初から正直に言えば良かったのに。

 

「はぁ…」

 

一先ず穂乃果と凛の宿題忘れがこれで発覚してしまった以上もう一人気になる人が出来てしまった。

 

この流れでいけば多分この人もアウトだろう。

 

俺はやや不安な表情を浮かべたまま3年生のおバカ枠である矢澤にこに目を向けた。

 

「…何よ」

 

「…あ、いや、にこは大丈夫かなーって思って」

 

「…大丈夫よ。余裕よ余裕」

 

にこは表情を見せずにそう言うと、スタスタと歩き出す。

 

そこはさすがに最上級性としてきちんと終わらせてるか。

まぁ受験だし内申点はかなり重要なはずだからな。宿題ぐらいはちゃんと…

 

「にこっち。何で急に早歩きになったん?」

「…!…」

 

希の声に足が止まり肩がビクッと跳ね上がるにこ。

 

…あれ?何か雲行き怪しくなったな。

 

「な、何でもないわよ!ほら、早くしないと遅刻するから少しだけペースを上げただけ」

 

「…ならいいんやけど…」

 

 

 

 

 

「学校そっちじゃないよ?」

 

「…あれ?」

 

…あぁ…にこもか…

 

 

 

 

 

「あ、あれー?間違えちゃったー。にこったら天然なんだからー」

 

さっきの反応で明らかに黒になったにこは分かりやすく動揺し始める。

 

最初は上手く隠せてたのにちょっと指摘されたらすぐにボロが出たな。

後天然な人は自分の事天然って言わないし。

 

「…にこ…もしかして…」

 

怪訝しい表情でにこの事を見つめる絵里。

 

1年生や2年生組と違って花陽やことりみたいな天使枠がいないから宿題を忘れたと知られればどうなるか分かったもんじゃない。

 

にこはわざとらしく一回咳払いをすると、笑顔を浮かべながら口を開いた。

 

「にっこにっこにー!!心配はいらないわ!まさかこのにこにーが宿題を…」

「忘れたんやな?」

「にこっ!?」

 

見事に秒殺である。

 

にこの奴、これで本気で誤魔化せると思ったのだろうか…

 

「はぁ…」

 

溜め息をつきながら頭を抱える絵里。

 

呆れて物も言えないといった所か。

 

「どうするつもりなん?にこっち」

 

希も半分呆れた様な表情で声を掛ける。

 

「…にこにーパワーでどうにか…」

「なる訳ねぇだろ」

 

あ、やべ。思わず口に出ちゃった。

 

「…またそれなん?それ以上その方法使ったら最悪留年するよ?」

 

「…うっ…」

 

まさかの使用済みかい!

 

しかも希の口振りから察するに見逃して貰った事あるんじゃねぇか。

 

その先生も何故許したし…

 

「…うー…穂乃果!何て事を思い出させてくれたのよ!」

 

「私のせい!?」

 

「にこちゃんが留年かー。でも、そうしたらもう1年一緒に居られるからそれも有りだにゃ」

 

「有りな訳無いでしょ!?…っ…こうしちゃいられない…さっさと行って宿題終わらせるわよ!」

 

留年というフレーズでスイッチが入ったのか一人学校へ走り出すにこ。

 

よっぽど嫌なんだな留年が。当たり前だけど。

 

少しずつ背中が小さくなっていくにこを見て、続いて海未が口を開く。

 

「穂乃果も行きますよ」

 

「…!…えー…私も?」

 

「当たり前です!留年したいんですか?」

 

「…それは嫌だ…」

 

見習う様にと穂乃果にも走る様促す海未。

 

同じ様に真姫も反応する。

 

「ほら凛も」

 

「凛は別に…」

「は?」

「何でも無いです」

 

ギロッという効果音が付きそうなほどの鋭い目付きに思わず敬語になる凛。

 

やめとけやめとけ、無駄な強がりは。

今ならきっと真姫達が手伝ってくれるさ。

 

「今なら時間もまだあるし、さっさと行ってちゃちゃっと終わらせちゃおう」

 

「ほら、行きますよ」

 

「凛も早く」

 

「「はーい」」

 

海未と真姫に促される様な形でにこを追うように走り出す俺達。

 

宿題を忘れたから早く行って終わらせる。ただそれだけのはずなのに楽しくて仕方なかった。

 

走っている最中も皆に笑顔がある様に、皆で過ごすこうゆう何気ない日常もかけがえのない大切な物。

 

 

 

 

 

 

 

でも、この時の俺はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

この些細な日常さえも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

心が離れる要因になる事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー宿題が終わって良かった良かった」

 

それからあっという間に放課後となり、バイトの冬夜と日直で遅れている花陽を除いたμ'sのメンバーは部室に集まっていた。

 

「…うにゃー…真姫ちゃん厳しすぎるよ…」

 

テーブルにぐったりと伏せながら凛が言う。

 

真姫に大分扱かれたみたいだな。

 

「当たり前でしょ!…全く…宿題提出が午後からだったから良かったけど…」

 

疲れた様な表情で真姫が言う。

 

その口振りからして提出はギリギリだったみたいだな。

 

「これに懲りたら次からはきちんと宿題をやる事ね」

 

「次は無いわよ?」と付け足しながら鋭い眼光で見つめながら凛に言う。

 

凛もさすがに今回の一件が堪えたのか「次からちゃんとやるにゃ…」とぐったりしたまま答えた。

 

「穂乃果も次からはきちんとやって下さいね」

 

「はーい」

 

一方凛と比べたら比較的ダメージが少なそうな穂乃果は、海未に扱かれたダメージより宿題を提出出来た喜びの方が勝っていた。

 

「…本当に分かっているのですか?」

 

「分かってる分かってる」

 

聞いての通り海未への返答もやや気の抜けた物であり不安が残る。

 

海未扱かれたとはいっても普段からそんな感じだから慣れてるのかもしれないな。

だから凛と比べてダメージが格段に少ない。

 

「いやー、今日もパンが美味い!」

 

のほほんとした表情で呑気にパンを食べる穂乃果を見て俺は思う。

 

 

 

こいつ…またやるな。

 

 

 

「さて…後は…」

 

俺は凛と穂乃果から目を離すと、視界に一人の人物が映る。

 

「…」

 

そこにいたのはどんよりと重たく暗い雰囲気を出している俯いたツインテールの姿。

 

凛以上にダメージを負っている様子の我らが部長。矢澤にこだった。

 

「…なぁ、何があったんだ?」

 

俺は憐れみの目でにこを見つめる絵里と希に尋ねた。

 

「…宿題提出には間に合ったんやけど、闇雲に埋めたせいで間違いだらけになっちゃって先生から新たに宿題を出されたんよ」

 

「しかもにこだけにね。量も倍くらいあって明日提出なのよ」

 

…あー…なるほどね。折角宿題終わらせたのに適当に埋めたせいで膨れ上がって返ってきた訳だ。

 

まぁショックを受ける気持ちは分からんでもないな。自業自得だけど。

 

元は宿題をギリギリまでやってなかったにこに責任があるから掛ける言葉も無い。

 

「…とりあえず…そっとしておくか」

 

にこなら直に復活するだろう。

メンタルおばけだし。

 

「…にしても、とても練習出来る流れでは無いな」

 

宿題によりすっかりグッタリムードになってしまった部室。

 

ダメージの深いにこを始め疲労困憊の凛や真姫といいコンディションがよろしくないメンバーもいる。

 

このままもうしばらく様子を見るしかないか…

 

そう思った次の瞬間、勢い良く開かれた扉によってその状況が覆る事になる。

 

 

 

 

 

 

「大変です!!!」

 

 

 

 

 

 

「は、花陽ちゃん?」

 

勢い良く部室に飛び込んで来たのは日直で遅れていた花陽。

 

息切れを起こしながら入ってくるこの慌て様はラブライブ開催の時を思い出す。

 

「どうしたのよ。そんなに慌てて」

 

直ぐ様花陽に声を掛ける真姫。

 

花陽は不安そうな表情で部室内をキョロキョロと見渡すと、俺を見つけるやいなや小走りで花陽が駆け寄る。

 

「太陽君!」

 

切羽詰まった様子の花陽はそのままグイッと俺に顔を近付ける。

 

…この動揺っぷりを見たら近いとは言えないか。

 

「…何?」

 

にしても花陽は一体何を知ったんだ?この慌て様は普通じゃない。

 

…もしかして俺達が楠木坂に戻る事がバレたか?

 

いや、でも公表されるのは俺達がいなくなった後のはず。

 

だったらまだバレて…

 

 

 

 

 

「楠木坂に戻るって本当ですか!?」

 

るんですね…

 

 

 

 

「それ…どうゆう事?」

 

花陽の言葉に他のメンバーの顔付きが変わる。

 

さっきまでぐったりしていた凛や落ち込んでいたにこでさえも真剣な表情でこちらを見つめている。

 

それはまるで全て話さなきゃ逃さないと目で訴えている様だった。

 

「…花陽、それどこで聞いた?」

 

まずは情報の出どころだ。場合によっては誤魔化せるかもしれない。

 

冬夜が楠木坂に戻った後に公になる事を希望している以上あまり俺も公にしたくない。

 

これが生徒からの単純な噂程度のレベルであれば何とかなる。

 

さすがに先生から聞いたなんて事は…

 

「職員室で先生が話しているのを聞きました」

 

あるんかい!

 

職員室で生徒に聞こえるくらいのボリュームで話すなんて無防備すぎだろ!

 

「先生からか…」

 

先生からであれば言い逃れは出来ない。

 

すまん冬夜…言うしか無さそうだ。

 

「その反応は…花陽の言う通りなのね?」

 

「太陽。教えて下さい」

 

ジリジリと全員が俺に詰め寄ってくる。

 

よく考えたら9人の美少女が近い距離で全員俺を見ているという凄い俺にとってご褒美な展開ではあるけど、皆の表情とこの雰囲気を見ていると手放しでは喜べないな。

 

間近で見たμ'sの顔に改めてルックスのレベルの高さを実感しながら俺は正直に話す事にした。

 

「…元々俺と冬夜は、音乃木坂と楠木坂が合併になり来年から共学になる可能性が高かったから少しでも男子のいる学校生活に慣れてもらう為にテスト生として来たんだ。音乃木坂の廃校が無くなり女子高として継続出来る以上、俺達テスト生がいる意味が無くなるんだ」

 

「そんな…」

 

ことりが暗い表情のまま呟く。

 

「…じゃあ、二人共いなくなっちゃうの?」

 

続いて飛んできたのは不安そうな表情をした穂乃果からの問い。

 

俺はその問いに対し小さく頷いた。

 

「…いつからですか?」

 

「…もう来週からは楠木坂になる」

 

「…そうですか…」

 

どんよりと流れる暗い空気。

 

折角ここ最近の雰囲気が凄い良かったのにこれじゃ後戻りだ。

 

皆が俺達と学校生活を共に出来ない事を悲しんでくれるのは嬉しいけど、でも皆の暗い表情はこれ以上見たくない。

 

「大丈夫だよ。別に会えなくなる訳じゃ無いし会おうと思えばいつでも会えるんだから」

 

俺はなるべく明るい口調で言った。

 

皆と一緒に学校生活を送れないのは俺だって寂しい。

 

でも、音乃木坂と楠木坂の距離なんて大した事無いしいつでも会いに行ける。

 

だから全然大丈夫なんだ。

 

「…それもそうですが…」

 

「私達…練習もあるし…」

 

…練習?

 

あ、そっか。そういえばコーチ続ける事まだ言ってないね。

 

きっとこのままコーチも辞めてしまうんだと皆思っているからこんなに落ち込んでいるのだろう。

 

だったら早く伝えないと!

 

 

 

「それも大丈夫。コーチは続けるから」

 

「「「「「「「「「本当!?」」」」」」」」」

 

 

「お…おう…」

 

俺がコーチを続ける事を話した瞬間皆の顔がすぐそこまで迫る。

 

突然で驚いた俺は思わず後退る。

 

「あ、ごめんなさい」

 

近い事に気付いた絵里の声を皮切りに、皆少しずつ離れていく。

 

皆の表情は暗い物から少しずつ明るさを取り戻していき、ホッと一安心している様子だ。

 

一先ずは重たい空気が無くなって良かった良かった。

 

「それにしても良かった…太陽君がコーチ続けてくれて」

 

「うん!このままやめちゃうと思ったにゃ」

 

花陽と凛が安堵の笑みを浮かべながら言う。

 

少しずつ他の皆にも笑顔が戻り、俺もホッと一息をつく。

 

しかし、そんな中一人まだ浮かない表情をしていた希が口を開いた。

 

「…冬夜君は?」

 

「…え?」

 

「冬夜君はどうするの?」

 

不安そうな表情をしていた希の口から出た問いに俺は思わず顔が強ばる。

 

ーーーーー冬夜君はどうするの?

 

この質問の意味は言わずもがな、マネージャーを続けるかどうかだろう。

 

「…そっか…太陽君はコーチを続けてくれるけど冬夜君はマネージャーを続けるか分からないんだ…」

 

「…うん…出来る事なら続けて欲しいけど…」

 

穂乃果とことりが心配そうに言う。

 

他の皆の表情も次第に浮かないものに変わっていく。

 

「…太陽君は、知ってるんじゃないの?」

 

俺は希からの問いに対し、すぐに答える事が出来なかった。

 

冬夜がどうするか…そんな事は勿論知っている。

 

マネージャーをやめる事。

楠木坂に戻りμ'sとの関係を絶とうとしている事。

 

正直に話した方が良いのは頭では分かってる。

 

ことりの一件で学んだはずだ。後に回せば回すほど辛いだけだと。

 

一歩間違えば、μ'sに亀裂が入ってしまう可能性があると。

 

…でも…それでも俺の口から伝える事は出来なかった。

 

今、この場で俺の口から言ってしまえば…

 

 

 

 

 

 

 

二度と冬夜が戻って来れない気がしたから…

 

 

 

 

 

 

だから俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、聞いてないな」

 

つい…誤魔化してしまったんだ…

 

それが間違いだと分かっていながら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日中庭で食べない?」

 

「いいね!」

 

次の日の昼休み。3年生の教室。

 

結局あの後は太陽が続けるなら冬夜も続けるだろうという話に落ち着き、一先ず不安は取り除けた状態で明日を迎えていた。

 

「にこっち。ご飯食べよー…ってにこっちは?」

 

「教室内には見当たらないわね」

 

いつも通り昼食を共にするべくにこを呼びに来た希と絵里。

 

しかしそこには既ににこの姿はどこにも無かった。

 

「珍しいわね。にこが教室にいないなんて」

 

「本当。どこ行ったんやろ」

 

教室内をキョロキョロと見渡すもやはりにこの姿は無い。

 

二人がにこの動向を心配していると、そこに一人のクラスメイトが近付く。

 

「矢澤さんなら昼休みになるやいなや真剣な表情をしながら教室を出て行ったよ?」

 

「…それ本当?」

 

「うん。あんな真剣な表情してる矢澤さん初めて見たよ」

 

「…分かったわ。ありがとう」

 

クラスメイトが二人に告げたにこの情報。

 

それを聞いた二人の表情も次第に真剣な顔付きになっていく。

 

真剣な表情で教室を飛び出したにこ。それも希や絵里に相談も無く。

 

この分だと他のメンバーの耳にも入っていないのだろう。

 

何も無い事を願う一方で募っていく不安。

 

「…とりあえず、にこっちが戻ってきたら聞いてみよっか」

 

「そうね」

 

個人的ににこと話したい人である可能性がある以上、にこを探し出すのは気が引ける。

 

二人に出来る事はただひたすら、矢澤にこが帰ってくるのを待つだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…来たわよ」

 

時を同じくしてアイドル研究部部室。

 

扉の前に立つのは真剣な表情を浮かべたにこの姿があった。

 

「悪いな。突然」

 

その視線の先には椅子に窓際で壁にもたれながら立つ冬夜の姿。

 

相変わらずの長い前髪で表情が見えず、二人の間には只ならぬ緊張感が走る。

 

にこは徐にスマホを取り出すと、画面を冬夜に見せながら口を開く。

 

「話って何?この文面って事は重要な話なんでしょう?」

 

にこが冬夜に見せたスマホの画面。そこには、冬夜からにこ個人に宛てられたメッセージが記されていた。

 

 

 

 

【にこ。話がある。今日の昼休みに部室まで一人で来てほしい】

 

 

 

 

文面からも普通の話し合いで無い事が充分伝わってくる。

 

昼休みに一人で部室に来てほしい。

 

異性からのメッセージであれば、告白されるかもと思う筈ではあるが今回は相手が最近目に見えて関わりが減った冬夜である事。

 

そんな甘酸っぱい物じゃないと気付いたにこの表情に笑顔が浮かぶ事は無かった。

 

「時間は取らせない。何故他のメンバーでも無く太陽でも無くにこを呼び出したのか。それは君がこの部活の部長だからだ」

 

冬夜はそう言うとゆっくりとにこの方へと歩み寄る。

 

「…部長だから?」

 

対するにこは冬夜の言葉が理解出来ない様子。

 

しかし、次の冬夜の言葉によりにこは呼び出された意味を知る事になる。

 

 

 

 

 

 

「君なら薄々分かっているんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

【高校1年生の時に、君が渡された物だよ】

 

 

 

 

 

 

 

「…!…」

 

青ざめるにこの顔。

 

しかし冬夜は止まらない。

 

呼び出された意味に気付いたにこは震えた声で口を開く。

 

「…あんたまさか………本気なの?…」

 

「…」

 

にこの問いに対し冬夜は表情を一切変えないまま口を閉ざす。

 

にこの目の前で立ち止まった冬夜は自分の制服の胸ポケットに手を伸ばすと、1枚の紙を取り出した。

 

そしてそれを…

 

 

 

 

 

 

 

 

「今までありがとう」

 

何の躊躇いも無く、にこに差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

「…っ…」

 

震える手で冬夜から紙を受け取るにこ。

 

冬夜はにこに紙を渡し終わると、そのまま俯くにこの横を素通りし足早に部室を去っていく。

 

「…あ…あぁ…」

 

崩れ落ちるにこ。

 

小さく聞こえる生徒達の喧騒の中に残った物は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静かに涙を流すにこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冬夜から手渡された退部届だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






冬夜から退部届を渡されたにこ。

悩んだ末、メンバー全員にこの事を打ち明ける事に。

新たに失った物はμ'sにとって大きいのか少ないのか。

そしてμ'sの意思。

陰を失った日々の中で、彼女達は探していく。








ーーーーー彼がいる意味を。








〜次回ラブライブ〜

【第33話 11−1】
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