まずは更新が遅れちゃってごめんなさい!
仕事が忙しかったのと、話の展開を考えるのに苦戦しましてめちゃくちゃ苦労しました…
週1更新を心掛けていたのですが間に合いませんでした…本当にすいません!
しかし、自分がもたもたしている間に嬉しいニュースが2つ出来ました!
一つは何とお気に入りの数が100件を超えた事ですっ!
正直最初はお気に入り50いけば良い方かな…と思っていたのですが何と気付けば倍の100件にっ…本当に感無量です!皆さんありがとうございます!
そしてもう一つはついに評価バーに色が付きましたー!!!
しかも高評価の赤色っ!これは嬉しすぎます!
実は評価バーに色が付く事に憧れていたんですが、夢のまた夢だろうなと思っていた中ついに評価してくれた方が5人になり憧れていた事が実現致しました!
本当に嬉しいです…初めて色が付いた事を知った時思わず叫びましたもん(笑)
…まぁ欲を言えばもっと評価して欲しいなー…なんて…
何はともあれ皆さんのおかげでまたモチベーションが上がりそうです!
拙い文章ではありますが、今後共この作品をよろしくお願い致します!
皆さん本当にありがとうございました!
という訳で第33話始まります。
今回は冬夜が退部した事を知ったμ'sの心の動きがテーマです。なのであまりストーリーは進んでいませんのでご了承下さい。
それではどうぞ!
「今までありがとう」
そう言われて彼から手渡された物は、かつて私が見慣れる程貰った1枚の紙だった。
渡された時の虚しい喪失感。
私が1年生の頃に感じていた退部届を受け取った時のその感情は、一人になってからはもう感じる事は無いと思っていた。
でも、またその時は来てしまった。
あの時の様な虚しい喪失感。寂しさ。だけど、その一方であの時と少し違う感情を私は抱いた。
彼から…氷月冬夜から退部届を渡された時に私は確かに思ったんだ。
【やっぱりそうなんだ】って。
冬夜が明らかに私達との接触を避けていたのは気付いていた。
絵里や希や皆もそう。でも、バイトが忙しいとか疲れてるんじゃない?とかで納得させていた。
それ以上踏み込む事を避けるかの様に。
だけど、薄々感じていたんだ。
…もしかしたら辞めちゃうんじゃないかって。
「…」
それでも私は冬夜に声を掛ける事が出来なかった。
何て言えば良いのか分からなかったから。
だから私は、冬夜から退部届を渡された時も何も出来なかった。
横を素通りしていく冬夜に、声を掛ける事も出来なかった。
私が出来るのはただただ涙を流すだけ。
そんな自分自身を見て私は思う。
【私は、何がしたいんだろう…】
昼休みが始まってから20分。
昼食を食べ終わったクラスメイトがちらほらと現れる中、ウチらの箸は一向に進まない。
「…にこっち…大丈夫やろか…」
「…もう20分よね…」
帰りの遅いにこっちを心配するあまり、満足にご飯も喉を通らずチラチラと扉を見つめる事を繰り返していた。
「…やっぱり何かあったんじゃ…」
少し青ざめた顔をしながらえりちが言う。
「何かって?」
「…ほら、イジメとか…」
「…イジメか…」
確かににこっちの性格はやや攻撃的でμ'sに入るまでは孤立している事が多かった。
でも、μ'sに入ってからは同じクラスの子と話す様になったみたいやし、何より自分でも言うのもなんやけど他の子達からすればμ'sは廃校を救った救世主みたいな存在。
そんなにこっちをイジめる人なんていないと思うけど…
「…イジメは無いんやない?」
「…だと良いけど…」
一向に開く気配の無い扉から目を離しゆっくりと昼食を食べるウチとえりち。
イジメを100%否定は出来ない以上、尚更にこっちの動向が気になる。
昼食を食べ終わったら探しに行こう…そう決意した次の瞬間、教室の扉が開かれた。
ーーーーーーガラッ!
「…!…」
「…!…」
開かれた扉の方へ視線を移すウチとえりち。
そこに立っていたのは…
俯いたまま暗い表情をしているにこっちの姿だった。
「…」
にこっちは教室に入ると、ウチらに見向きもせず真っ直ぐ自分の席に戻っていく。
ウチとえりちは直ぐ様にこっちの席まで行くと、呼びだされた内容を聞き出した。
「にこっち…何があったん?」
にこっちの様子から只事では無い事が容易に想像出来る。
まさか…本当にイジメられて…
「…放課後…」
「…え?」
「…放課後…皆集まったら話すわ…だから…」
「にこ…」
ーーーー今は話し掛けないで。
口には出していないけど、きっとにこっちはそう言おうとしたんだと思う。
えりちもにこっちの気持ちに気付いたみたいで、それ以上は何も聞こうとしなかった。
…放課後…皆が集まってから話す…
にこっちの口振りから、にこっちだけでは無くμ's全体に関係してくる話に違いない。
…だとしたら、覚悟しないと…
「…えりち」
「…何?」
「…今日の放課後…心の準備した方がいいよ」
「…ええ…」
μ'sにとって、マイナスになる出来事が確実に起きた。
それが一体どんな出来事かは想像出来ないけど、今一つだけ分かる事はにこっちが酷く傷付いてるって事。
今、にこっちに何て声を掛けてあげれば良いのか分からない。何もしてあげられない自分に腹が立つ。
でも、にこっちが今そっとしておいて欲しいと言うのなら、尊重してあげる他ない。
だから、ただただウチは見ている事しか出来なかった。
俯き暗い表情を浮かべたままのにこっちの姿をひたすらに。
事態は深刻である事を…
にこっちの顔に、薄っすらと残っていた涙の痕が告げていた。
「…」
「にこちゃん…一体何があったの?」
放課後。冬夜を除くμ'sのメンバーがいつもの様に部室に集まっていた。
しかし、一つだけ大きく普段と変わっている事がある。
それは…
誰一人として笑っていない事。
部室に入るやいなや立ち込める重々しい空気。
真剣さと心配と不安が入り混じった視線で皆が見つめるのは、暗い表情で俯くにこの姿。
普段はテンションの高い穂乃果や凛でさえも、にこの様子に暗い表情を浮かべていた。
…一体何があったんだ?
普通ならそう思う所ではあるが、俺は勘付いてしまった。
もしかして冬夜が退部届をにこに渡したんじゃないか。
昼休みに早々に冬夜が教室を出て行ったのも、にこに会う為ではないか。
全ては推測でしかないが、俺の予想はきっと当たってしまうだろう。
穂乃果に問われたにこは、重々しい空気の中その口を開く。
「…全員集まったわね。皆に報告があるわ」
にこはそう言うと立ち上がり胸ポケットに手を入れる。
そして1枚の紙を取り出すと、テーブルの上に置いた。
「…嘘…」
「…そんな…」
テーブルの上に置かれた1枚の紙…冬夜の退部届を目に通した皆の表情が次第に青ざめていく。
…やはり、俺の予想は当たってしまった。
「にこちゃん…これ本気で?」
穂乃果が震える声でにこに尋ねる。
一方のにこも暗い表情のままゆっくりと頷く。
「…続けてくれるって…思ってたのに…」
花陽も落胆した様に声を上げる。
「…にこっち…冬夜君は何て言ってたの?やめる理由とかは?」
「…何も言って無かった…」
「…そっか」
やっぱり何も言って無いんだ…
そりゃそうか…あいつの口から話す訳無いもんな。
きっと無言でにこに退部届を渡したんだろう。
「ただ…」
…ただ?
「今までありがとうって言ってたわ」
にこの言葉に俺は目を丸くした。
…今までありがとう…まさか冬夜がそう言うとは思わなかった。
廃校阻止をしてくれたμ'sに対してのせめてものお礼の言葉なのか、それとも…
「今までありがとう…か…少なからずマネージャーが嫌でやめた訳では無さそうやね」
「だといいんだけど…」
μ'sのマネージャーをやっている中で冬夜の変化は間違い無くあった。
前よりも口数は増えて、前向きな言葉を言う様になった。
そして何より冬夜が一番変わったのは、笑う様になった事だ。
とはいっても微笑む程度で頻度もまだ少ないけど、以前までの冬夜は一切笑わなかった。
そう考えると僅かでも大きな進歩であり、μ'sと出会わなければきっとこうはならなかった。
だからこそ俺は、μ'sに賭けたい。
「…俺は…辞めてほしくない」
「…え?」
「冬夜にマネージャーを辞めてほしくない。このままμ'sのマネージャーを続けて欲しい!…皆はどう?」
俺は全員に尋ねた。
彼女達なら…少しでも冬夜を変えてくれた彼女達ならきっと救ってくれる。
…大丈夫。そう信じて俺は皆の言葉を待つ。
「私も辞めてほしくない!」
「穂乃果…」
真っ先にそう言ったのは穂乃果だった。
良かった…穂乃果ならそう言ってくれると思ってた。
「私も、冬夜君には居てほしいかな」
続けてことりが言う。そして…
「うちも冬夜君には続けて欲しい」
「うん!居てくれたら心強いもん!」
希と花陽も自分の意思を示した。
「皆…」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
もしもこれで冬夜にマネージャーを続けて欲しい意見が出なかったらどうしようかと思ったよ…正直不安だった。
でも、これで証明されたんだ。
冬夜はちゃんと必要とされてるって事が。
「良かった…やっぱりμ'sに冬夜は…」
ーーーーー必要なんだ。
そう言おうとした瞬間、俺の視界に一人の人物が入った。
「…海未?」
「…」
俺の視界に入ったのは険しい表情を浮かべている海未の姿。
何か言いたげな海未の様子に、俺は声を掛けずにはいられなかった。
「…海未ちゃん?」
「どうしたの?」
心配そうに尋ねる穂乃果とことり。
「…もしかして、冬夜君を連れ戻す事に反対なん?」
希も真剣な表情を浮かべながら声を掛ける。
「…」
しかし、海未は何も答えない。
俯いたまま俺達から目を逸らすその様子は、まるでこの場で話す事を躊躇っている様に見えた。
集まる視線。希以降誰も口を開こうとしない。
きっと皆海未の言葉を待っているのだろう。
やがて海未は少しだけ顔を上げると、険しい表情は崩さ無いまま静かに呟いた。
「…反対では…ありません…」
反対では無い。海未の口から放たれた言葉は、肯定でも否定でも無い言葉だった。
「反対では無い…って事は賛成でも無いんだね?」
俺が優しく問うと、海未は小さく頷いた。
何となく予想は出来ていた。μ's全員が冬夜を連れ戻すことに賛成してくれるとは限らないと。
誰か一人は異を唱えてくると。
それでも俺は、期待をしてしまったんだ…
皆なら…
皆なら賛成してくれるって…
「…理由、聞いても良い?」
でも、世の中はそんなに甘くはない。
俺は直ぐ様海未に理由を聞いた。
「…分からないんです」
「…分からない?」
「…はい…氷月冬夜という人物が、どうゆう人なのか分からないんです」
海未の言葉に皆キョトンとした表情を浮かべる。
そりゃそうだ。μ'sの中ではことりと並んで一番最初に出会っている海未から冬夜がどうゆう人か分からないなんて言われたら普通なら疑問が浮かぶ。
でも、俺は海未が何を言いたいか何となく分かる。
「…もしかして海未ちゃん記憶喪失?」
穂乃果が心配そうに尋ねる。
そんな訳ねぇだろとツッコミたい所ではあるがそう勘違いしてしまうのも穂乃果ならまぁ無理は無い。
きっと穂乃果も本気で心配して言っているだろうし、ここでもツッコミは少々場違いである為飲み込んでおく。
「違います。…私の言い方も悪かったですね。私が言いたいのは、本当の冬夜がどれか分からないという事です。これまで冬夜は廃校阻止する為に沢山協力してくれました。沢山の優しさをくれました。でも、あの時…冬夜はまるで別人の様に冷たかったんです」
「…あの時…穂乃果ちゃんがスクールアイドルを辞めるって言った時やね」
「そうです。確かに冬夜の言う事は間違ってません。でも、あそこまでする必要がありましたか?」
やはりネックなのはあの時の冬夜の態度か…
確かにあの時の冬夜は明らかに本気でμ'sを潰しに来ていた。
俺も冬夜があんな事言うなんて思わなかったから怒ってしまったけど、でもさすがにあれはやりすぎだと思う。
だけど、今なら何となく分かるんだ。あの時の冬夜の行動の意図が。
「…私も海未と同意見だわ」
続いてにこが口を開く。
「穂乃果を追い込んだのは間違い無く冬夜だし、冬夜の言葉があったから穂乃果がスクールアイドルを辞めるって言った。あの瞬間からμ'sは壊れて一歩間違えば修復不可能だったかもしれないのよ?こうして再結成出来たのは良かったけど、いくら冬夜が言っていた事が正しかったとしても私はあの時の冬夜を許す事が出来ないわ。だから…」
「…にこちゃんは反対なの?」
「…っ…いや…海未と同じで反対では無いけど、賛同も出来ないわ…」
人一倍アイドルに対しての情熱が高く一度挫折を経験しているにこにとっては、冬夜はにこからようやく見つけた居場所を奪おうとしていた様に見えているのかもしれない。
にこが賛同出来ないのも無理は無い。
「…でも、にこっち泣いてたよね?」
「…!…」
「ごめんにこっち。うち、見たんよ。昼休み教室に戻ってきた時に、顔に涙の痕があった所。…もし冬夜君に何か言われた訳じゃないのなら、本当はにこっちも冬夜君に辞めてほしくなかったんやない?」
「本当なの?にこ」
全員の視線がにこに集まる。
にこは困った様な表情を浮かべると、俯きながら口を開いた。
「…私にも…分からない」
「…え?」
「冬夜に何か言われた訳では無いわ…でも、涙を流したのは事実よ…だけどその涙が何で流れたか私にも分からないの!止まらなかった…止めたいのに、涙が溢れてくるの…私も冬夜と離れたくないって思ってたかもしれないけど…もう遅いのよ…退部届を受け取った時点で、私は冬夜の退部を認めた事になるんだから…」
「…」
にこの言葉に返す事が出来なかった。
顧問のいないアイドル研究部では、部長に話を通せば入部と退部は容易に出来る。
部長であるにこが退部届を受け取ったという事はにこの言う通り冬夜の退部を認めたという事になってしまう。
「私は怖いんです…このまま冬夜の事を知らずに関わっていくのが…」
「海未…」
「もしも…もしもあの時の冷たい冬夜が本性だとしたら…」
「…それは…怖いにゃ…」
海未の言葉に凛が反応する。
海未が危惧する本当の冬夜。それは実の所俺も分かっていない。
今まで冬夜と接してきて、普段の冬夜は仮面を被っているんじゃないかと思った事は何度もある。
でも、俺は信じている。冬夜は…本当の冬夜は心優しい人である事を。
「…だから私は…賛同出来ません」
今にも消え入りそうな海未の声。しかしその声は俺達の耳にしっかりと入っていた。
「…」
海未の言葉に誰一人返す事が出来ず沈黙だけが流れる。
一度μ'sを壊した事実がある以上、またμ'sや心が傷がつかない保証はどこにも無い。
そのリスクを背負ってまで冬夜を連れ戻す必要があるのかという海未の気持ちも分かる。
だからこそ、何も言えないんだ。
俺も、穂乃果も、希も、花陽も皆…海未の悩みを払拭させる材料がまだ見つかっていないから…
「…結論は出そうにないわね」
「…真姫」
ここでこれまで口を閉ざしていた真姫が口を開く。
「真姫ちゃんは?冬夜君を連れ戻す事に賛成?反対?」
そういえば真姫の意思をまだ聞いてなかったな。
後絵里もだけど。
穂乃果、ことり、花陽、希は言わずもがな賛成派で海未とにこは反対派。凛も海未の言葉の反応を見る限り反応寄りっぽい。
穂乃果が真姫に尋ねると、真姫は真剣な表情を崩さずすぐに答えた。
「私は、どちらでも無いわ」
「…どちらでも無い?」
「どうゆう意味だ?」
「冬夜が辞めるって言っている以上、私にはどうする事も出来ない。冬夜が居ても良いかなとは思うけど、冬夜の意思はきっと固い。だから…私は…」
「…諦めるって事だね?真姫ちゃんは」
「…」
穂乃果の言葉に小さく頷く真姫。
一見賛成ともとれる真姫の言葉。だが、諦めるという選択肢は新しい物で真姫の考えも分かる。
冬夜の意思は固くそう簡単にμ'sに戻ってきてはくれないだろう。
…となれば打つ手は何だ?全部話す事か…?
いや、そんな事をしたら…
「…えりちはどうなん?」
俺が頭を抱える中、話は進んでいく。
続いて口を開いたのは希。ここまで唯一自分の意思を話していない絵里に話を振る。
「私は…」
絵里はここで一度言葉を止めると、考える素振りを見せる。
μ'sの中でも穂乃果や海未と並んで皆を引っ張っていく力を持っている絵里の意見は重要。
皆の視線が絵里に集まる。
少し間を開けると、絵里は静かに口を開いた。
「…私は、皆に委ねるわ」
その答えは予想外なものだった。
「皆に委ねる…ってえりちの意思は無いん?」
「…私は、一番最後にμ'sに加入したし希みたいに冬夜と裏で繋がってた訳でも無ければ知り合ってまともに話せる様になったのは皆よりも遅い…きっと私が一番冬夜との関わりが薄いと思う。穂乃果達の意見も、海未達の意見も私は分かる。納得出来る。だからこそ、私よりも冬夜との付き合いの深い皆に任せるの。冬夜が戻って来ないのなら寂しいけど真姫と同じで諦める。でももし、冬夜が戻ってきてくれるなら、私はきちんと冬夜の事を知って理解する。これが私の答えよ」
冬夜と過ごしている時間は絵里が一番少ないのは事実。だからこそ、一歩引いて皆の判断についていく。それが、どんな答えであっても…
それが、絵里の答えなんだな。
「…もう冬夜君と太陽君は楠木坂に戻ってしまう…でももし仮に、また冬夜君がμ'sのマネージャーをやってくれる事になったら再入部出来るのかな?」
「…ううん…学校が違うから多分無理だと思う…でも、お手伝いとしてなら大丈夫だと思うよ。お母さんも冬夜君の事信用してるみたいだし」
「…そっか」
俺も学校は別々になるが、アイドル研究部に席を置く事は許可されている。
だが、一度辞めてしまえば再入部は出来ない…
残された時間は僅か…でも今結論を出す事はきっと…
「…今日はもう帰りましょう」
「…にこちゃん」
椅子から立ち上がると、暗い表情のまま皆に声を掛けるにこ。
「…そうね。とても練習が出来る空気じゃないもの」
にこに続くように絵里も立ち上がる。
どんよりとした重苦しい空気。さすがにこの後に練習をしても身が入らない。
「…このまま話しても結論は出なさそうだしね…」
希を筆頭に皆立ち上がり始める。にこの意見に異を唱える者はいなかった。
…俺も含めて。
「今日は解散だな」
俺の言葉を皮切りに皆重たい足取りで部室を出ていく。
そんな中、一人だけ椅子に座ったままの人物がいた。
「…穂乃果ちゃん、帰らないの?」
一番最初に気付いたことりが声を掛ける。
ことりの声に反応した皆も、穂乃果に視線を集める。
そこには、真剣な表情を浮かべながら一点を見つめる穂乃果がいた。
「…穂乃果?」
「ごめん。もう少しだけ、考えたい」
表情を一切変えずに言う穂乃果。
…冬夜を連れ戻す策を考えようとしているのか?それとも…
「…ダメ、かな?」
「…」
不安そうに言う穂乃果の言葉を聞いたにこが、ゆっくりと穂乃果に近付く。
そして、穂乃果の前に立つと目の前に一つの鍵を差し出した。
「…これは…」
「部室の鍵よ。帰る時、きちんと鍵を閉める事。いいわね?」
「にこちゃん…うん!ありがとう」
穂乃果は少しだけ微笑むと、差し出された鍵を受け取る。
「…」
何も言わずに去るにこ。
きっとにこは穂乃果が何をするか薄々分かっているのだろう。
…いや、にこだけでなくきっと皆も。
「じゃあな。穂乃果、また明日」
「うん。また明日」
穂乃果と別れの挨拶を交わすと、そのまま部室を離れる。
冬夜を連れ戻す策を考えるのであれば一緒に残るべきだったのかもしれない。
でも、今の穂乃果は一人にした方が良い。
俺は何となくそう感じた。
「…」
帰り道。
別れの挨拶を交わして以来誰一人口を開こうとしない。
俄然重苦しい空気は漂ったまま。
足取りもゆっくりで周りの景色も一向に変わらない。いつもの街並みが続くだけ。
皆周りに見向きをせず、少し下を向いたまま黙って歩を進める。
ーーーーーこれで良いのか?
ーーーーーどうすれば良いのか?
ーーーーーこの先どうなるんだろう?
様々な考えが頭を過り、出口の無い迷路に迷い込んだ気分だ。
一向に答えが見つかる気配が無い。
「…私、こっちだから…」
交差点に差し掛かった時、ポツリと真姫が言う。
またね、また明日、等簡単な別れの挨拶を交わすもそれ以上は無い。
それ以上言う事が無いんだ。
「…じゃあ、私こっちだから」
「…ああ、また明日」
その後も次々に別の道に消えていくメンバー達。
交わす挨拶はやはり簡単な物ばかり。
「…またね、太陽君」
「…ああ」
そして、最後にことりと別れた俺。
結局最後まで俺も皆も会話らしい会話はしなかった。
暗い表情が消えないまま終わる1日。
【憂鬱】まさしく今その言葉が当てはまっている。
思えば部員が一人いなくなっただけ。
そんなの、良くある事だ。
だけど…それだけの事なのに心が苦しい。
それだけ、氷月冬夜という人物を失った穴は大きいという事だろう。
「…俺は…間違ってるのか?」
客観的に見ればただ11から1を引いただけの事。
だけど、俺達にとってその答えは…
10よりも遥かに少なく感じた。
「私はもっと冬夜君の事を知りたい」
冬夜の退部で心に大きなダメージを負ったμ's。
しかし、女神達は諦めない。
「戻ってきてから知っていこうよ!冬夜君の事を」
少しずつ一つになりつつあるμ'sの意思。
そして、女神達は自分達の言葉で伝える。
「お願い、冬夜君。μ'sに帰ってきて」
「冬夜君が何かを抱えてるのは分かってる。だから、話してほしい。冬夜君の全てを…そして一緒に頑張って乗り越えよう?」
沢山の希望と期待を含んだ言葉。
「…俺は…」
冬夜の答えは…
〜次回ラブライブ〜
【第34話 陰の少年は笑わない】
お楽しみに。