こんにちは!ドラしんです。
相変わらず仕事もリアルも忙しく中々打ち込むモチベーションを保つ事が出来ずまた遅れてしまいました。
今回は冬夜と太陽が楠木坂に戻った後のお話です。
冬夜の心の変化がテーマなので冬夜視点多めでお送りします。
…あ、いつもか。
というわけで第36話始まります。
※なんか全体的に文章が大分ふわふわしちゃってます!ご了承下さい。
この話は後々加筆修正する可能性がありますので合わせてご了承下さい。
「…という訳でテスト生として通ってた朝日太陽と氷月冬夜は今日から楠木坂に戻ったから」
冬夜君から拒絶されてから2日後。
週が明けるとそこにはもう冬夜君と太陽君の姿は無かった。
廃校の阻止により女子校として継続出来る事になった以上テスト生として居る意味が無い。
前もって知っていた私、ことりちゃん、海未ちゃんの3人は驚かなかったけど、突然知らされた他のクラスメイトは大騒ぎだった。
「えー!?太陽君いなくなっちゃったの!?」
「いやー!!もっと話したかったー!!」
「私の太陽様がぁー!!」
叫ぶ人、ショックを受けた人、涙を流す人、それは様々だった。
短い時間ではあるけど、いかに朝日太陽という人物が皆に影響を与えていたのかが分かる。
確かに休み時間中はずっと他の子達と話してるのが殆どでクラスの人気は高いとは思ってたけど、まさかここまでとは予想外だった。
きっと今まで太陽君と近すぎて気付かなかったんだと思う。
「お前ら。ショックな気持ちは分かるが切り替えていけよ。テストだって近いんだからな」
ガヤガヤと静まる気配を見せないクラス。
変わらず話題は太陽君の事で持ち切り。
でも、一向に【彼】の名前が出ない。
まるで、存在していないかの様に。
「…」
「…」
チラリと海未ちゃんと、ことりちゃんの方へ顔を向ける。
二人も私と同じ事を思っているのだろう。表情が少し暗い。
脳裏に過るのはあの時、冬夜君から告げられた拒絶の言葉。
「その言葉、俺大嫌いなんだよ」
あの時の突き刺す様な冬夜君の目は忘れない。
私達に向けられた明確な敵意。
あの瞬間、私達と冬夜君との関係が終わってしまった。
あの時に戻りたいとは思わない。でも、その代わり教えてほしい。
私はあの時、冬夜君に何を言ってあげれば良かったのだろう。
私は何をすれば良かったのだろう。
戻ってきてくれると思ってた。心を開いてくれると思ってた。
でも、それは甘かった。
また私は間違えたんだ。
掛ける言葉も…連れ戻す決意でさえも…
「…今更…遅いよね…」
ぽつりと発した私の呟きはクラスの喧騒の中に消えていく。
寂しくポツンと佇む隣の空席だけが、私の呟きを聞いていた。
「…であるからして、ここの問題をこの公式を当てはめれば…」
「…」
楠木坂の授業ペースは早い。
黒板に羅列された字達はあっという間に消され、重要な単語や事柄は口頭で説明される事が多い為気を抜く事は許されない。
あれだけアイドルの話で盛り上がっていたクラスメイト達も、授業中になれば周りが敵。
成績が物を言うこの楠木坂高校では、全生徒が他者と差をつけようと必死だ。
音乃木坂よりも遥か先を行く授業内容。
皆が必死にペンを走らせる中、俺はボーッと窓の外を見つめていた。
「…」
今頃、俺と太陽が楠木坂に戻った事を告げられてる時だろう。
…まぁ太陽の事ばかりで俺の話題なんて上がってないと思うけど。
「じゃあ次の公式に行くぞ」
止まる事を知らない数学教師。更にペースを上げ早口になっていく。
この時点から既にメモが追い付いていない者がちらほらと出始める。
板書された物を書き写す作業+教師が早口で話している内容に耳を傾ける。
普通なら無理だが楠木坂では当たり前。
理解力の低い人は問答無用で置いていかれる。
そんな世界に俺は戻って来たんだ。
「少しくらい貴方も言ったら?我儘」
「…っ…」
不意に、あの時のツバサの言葉がフラッシュバックする。
まただ。あの日以来事あるごとに俺の脳裏によぎる言葉。
今俺が何を求めているのか分からない。でも本能が告げている。
我儘を言いたい…何もかも忘れて自由に…
もう良いんじゃないのか?
もう充分苦しんだろ?
もう許してくれるよ。
いろんな自分が頭の中を駆け巡る。
並べられたポジティブな言葉達は、俺を慰めるかの様に優しく語りかける。…でも、いつも最終的にはその言葉を選ばない。
【一度犯した過ちは二度と消えない】
そう俺に言い放つのは冷ややかな瞳をした自分の姿。
さっきまで駆け巡っていたポジティブな言葉達が嘘のように消えていく。
…ああそうだ…やっぱり俺は…
我儘を言うのは許されない人間なんだ…
結局選択肢は一つ。
俺が、我儘を言う日は…きっと来ないんだ。
「…今日はここまでだな」
数学教師の声が耳に入る。
どうやら授業は終了らしい。
…しまった。考え込み過ぎて何一つノートに書いてない。
まぁ太陽にノートでも借りれば良いか。
「冬夜」
授業が終わり、次の準備をする者や疲労からか机に伏せる者等様々な人がいる中、太陽は真っ先に俺の所へとやってきた。
「何だ」
「めちゃくちゃ眠たかったな。今の授業」
「…ああそうだな」
欠伸をしながら何事も無かったかのように話す太陽。
あの日以来、太陽はμ'sの名を口にしない。
俺に気を遣っているのかは分からないが、一つだけ言える事はもうμ'sが俺を連れ戻す気が無いという事。
あれからμ'sがどうなったのかは分からない。
太陽もμ'sの話題を一切出さないし、かといって俺から聞くのも違う。
だが、あそこまで俺を連れ戻そうと必死だった穂乃果や太陽から何のアクションも無くなったという事はきっとそうゆう事なのだろう。
…まぁそうしたのは俺なんだけど。
「あ、太陽ノート貸してくれ」
「…またかよ」
「勉強教えるから」
「…まぁ良いけどさ」
不満そうな表情をしながらノートを俺に渡す太陽。
俺は直ぐ様受け取った。
「あ、そうだ。冬夜昨日のテレビ観た?俺の最近イチオシの芸人がさー」
そして始まるいつもの様な世間話。
思えば元々、こういうのが普通の日常だった。
太陽が一方的喋り俺が相槌を打ちながら終始聞き手に回る。
μ'sと出会う前は当たり前だった日常。
この日々に戻る事を望んでいたはずだし、それを目的に俺もここまで頑張ってきた。
でも、いざ戻ってみると思っていたよりも心は満たされなかった。
何だろう…この物足りなさは…
これが俺の望んでいた物な筈だろ?それが何故こんなにも…
「冬夜俺の話聞いてる?」
「…!…」
太陽の声でふと我に返る。
どうやら俺は太陽の声に気づかない程考え込んでいたみたいだ。
当然太陽の話なんて聞いていない。
「ああ聞いてるよ。蜘蛛が何だって?」
「してねぇよ蜘蛛の話なんて!!」
当てずっぽうで答えてみたがどうやら違うらしい。
しまった…これで完全に話を聞いてない事がバレてしまった。
「誤魔化すにしてももっと他に何かあっただろ…何でよりにもよって蜘蛛なんだよ…やめろよ…」
深い意味は無いよ。真っ先に頭に浮かんだのが蜘蛛だっただけ。
別に太陽がトラウマレベルで蜘蛛が嫌いだから話に出したとかそうゆう事は一切無いよ。うん。
「…じゃあ音乃木坂に行ってくるから」
「…ああ」
放課後。帰り支度を済ませ教室から出ようとする太陽がぽつりと俺に言う。
決してその目的は口にしない。
徹底してμ'sという単語を避けるその様子。
俺の前ではμ'sの話題はタブーだと太陽の中で思っているのだろう。
…別にそういう訳では無いんだけどね。
「…帰るか」
俺は教室から出て行く太陽を見届けると、少し時間を置いて教室を出る。
深い意味は多分無い。
ただ、今は太陽と一緒に居たくない。直感的にそう思っただけだ。
「今日この後どうする?」
「何か食べてくか」
クラスメイト達の話し声が耳に入る。
そういえば、前は放課後になると良く太陽が話し掛けてきたっけ…
「おい冬夜。今日のバイト何時から?」
「まだ時間あるじゃん!どっか寄っていこうぜ!」
「今日どこ行く?時間までゲームセンター行っちゃう?」
脳裏に過る太陽から掛けられた言葉の数々。
μ'sと出会ってからは全てμ's関連の言葉に変わった。
「今日μ'sの練習見に行く?」
と毎回の様に俺に聞いてくる。
音乃木坂に通い出した時は目的が同じという理由でμ'sに協力し続けた。
練習だって毎回行ったし試行錯誤して裏で動いたりもした。
今思えばあの日々が、今までで1番時間の流れが早く感じたかもしれない。
μ'sと出会ってから俺は少し変わった。
自然と笑う様になり、楽しいと感じる様になった。
でも、手放してからは全てが元通り。
…いや、むしろより一人になった。
太陽がμ'sのコーチとして残る事を決めた以上、自然と俺と太陽が一緒にいる時間が短くなる。
だから今は一人の時間が増えてしまった。
…おかしいよな。一人が好きなはずなのにこんな事思うなんて。
まさか、一人になれたこの時間が【暇】だなんて…
「…はぁ…そんな事考えても仕方ないよな…」
離れていくμ's、太陽との心の距離。
いくらあの日々が俺に大きな影響を与えていたとしても…
例えあの日々の大切さに気付いたとしても…
どんなに自分がした選択に後悔したとしても…
そして…
あの日々が、【幸せ】だと呼べるものだったとしても…
俺はきっと、毎回同じ道を選ぶだろう。
だって、俺は…
その先を知ってはいけないから。
「お待たせ」
「あ、太陽君来た!」
「遅いわよ」
「…これでも急いで来たんだけど」
場所は変わり音乃木坂学院。
アイドル研究部の部室には、μ'sと太陽が合流していた。
「楠木坂に戻ってみてどうだった?」
「殆ど前と同じだったかな。あ、でもμ'sの事は沢山聞かれたよ」
ことりの問いに対し、太陽は直ぐ様答える。
「へぇーどんな?」
興味津々な様子の穂乃果が期待の眼差しで太陽を見つめる。
褒められてると思っているのだろう。目の前にいる穂乃果が尻尾を振っている犬に見えて仕方無い。
「まぁ間近で見たμ'sの感想とか誰かと付き合ってるのかとか」
「…あー…」
太陽の返答を聞き分かりやすくテンションの下がる穂乃果。
どうやら想像していた答えと大きく違ったようだ。
「…そういえば、男子校だったね。楠木坂って」
苦笑いしながら言う花陽。
花陽の言葉を聞いた他のメンバーも、質問の内容に納得した様子だ。
「…ねぇ、太陽君」
その時だった。
先程までのテンションの下がった様子から一変し、真剣な表情で太陽に声を掛ける穂乃果。
その只ならぬ穂乃果の様子に他のメンバーも息を呑む。
そして、そのまま穂乃果が口を開いた。
「…冬夜君の様子はどうだったの?」
「「「「「「「「…!…」」」」」」」」
穂乃果の質問に部室内の空気が変わる。
脳裏に過るあの時の冬夜の姿。
皆の希望を打ち砕いた真っ直ぐな敵意。
悲しみ、怒り、様々な感情が入り混じった表情で言葉を待つμ'sのメンバー。
それでも彼女達は、あそこまでされても尚気に掛けているのだ。
氷月冬夜という少年の事を。
「…変わらなかったよ。いつも通りの冬夜だった」
「…そっか」
太陽の返答を聞いた穂乃果は少し残念そうに呟く。
続いてことりが口を開いた。
「…私は冬夜君の事だからきっとそうなんじゃないかなって思ったよ。…それはそれでちょっと悲しいけど…」
「…そうやね…うちらの事を全く気にしてないような素振りなのはちょっとショックや」
ことりの言葉に同調する様に希が悲しそうな目をしながら言う。
「何にせよこれで分かったわね、冬夜に戻る気が一切無いって事が」
「にこちゃん…」
「もう無理よ。あいつを連れ戻すのは」
怒りと悲しみを含んだ声色でにこが言う。
最初は反対派だったにこも最終的には冬夜が戻る事を強く望んでいた。
しかし、冬夜のあの様子を見て気付いてしまったのだろう。
冬夜の抱える闇の深さ。そして、冬夜を連れ戻す事が不可能である事を。
「…こんな事ならあいつの事好きになんて…」
「…?…にこちゃん?」
「…!…な、何でも無いわよ。とりあえずこれ以上あいつの事を考えても仕方無いわ。さっさと練習始めるわよ」
「「「「「「「「「…?…」」」」」」」」」
ぽつりと漏らした呟きを誤魔化すように少し慌てた様子でにこが言う。
その姿に太陽を含めた他のμ'sの面々は、ただただ疑問を抱えるのだった。
それから数日が経った。
μ'sを手放した日々にはまだ慣れておらず、相変わらずの暇な時間。
すぐに慣れると思っていたのにまさかこんなに引きずるなんて思っていなかった。
俺もあの日々に毒されてしまったのだろう。
あいつらは今どう思っているのだろうか。
μ'sのグループLINEから抜け、連絡も何一つ来ない現状では知る術が何も無い。
でも、きっとあいつらが俺を許すはずが無い。
もう俺の顔が見たくないレベルまで好感度は落ち、二度とあの日々は戻らない。
「でさぁー、そしたら俺の妹が…」
ーーーーードンッ。
「…っ…」
「…あれ?今なんかぶつかったか?」
「気のせいじゃね?はははは!!」
わざとらしく俺にぶつかる男子生徒。
チラリと俺の方を見ると、何も無かったかの様に笑いながら立ち去る。
一方の俺も何一つ言葉を発する事無くその場を離れる。
これも良くある事。今更気にしてなんていられない。
楠木坂に戻ってきた時だってそうだ。太陽には「おう朝日久し振りだな!音乃木坂どうだった?」といった声はあっても俺には一切無い。
別に求めてないけど。
更には皆太陽がいない時を狙ってこうして幼稚な嫌がらせをしてくる。
前まではこういう事があると太陽が怒って追い払っていたけれど、あの一件からの離れていく太陽との心の距離に加えコーチを続ける事を選んだ事実により、俺が一人の時間が増えてしまった為最近ではこうゆう事が増えてきている。
でも、これも元は自分が蒔いた種。
文句を言う資格なんて俺には無い。
「…早く行こう…」
だがこれ以上接触されるのは面倒くさい。
また絡まれる前にさっさと家に帰ろう。
俺は少し小走りになりながら家路を急いだ。
家に到着すると、俺は直ぐ様カバンを雑に置きバイトに行く支度をする。
やる事がない時はもういっそ早めにバイトに行って厨房のサポートした方が良い。
そう決めてからは最初に感じていた時間の流れの遅さがそこまで気にならなくなった。
理由の半分は慣れ。そしてもう半分は自己暗示。
何度も自分に【この毎日が充実している】と言い聞かせた事が大きいだろう。
「よし、行くか」
俺はリュックを背負うと自転車に跨り最初からトップスピードで走らせていく。
素直に認めよう。ここ数日はμ'sとの日々を失ったダメージが大きかった。
あの日々は間違い無く楽しかったし、あのまま何も考えず差し出された手を取れば良かったんじゃないかと後悔までしている。
失ってから気付くなんて我ながら情けないものだ。
でも、俺の選択が間違っているとは全く思っていない。
どれだけ後悔しようと…傷付こうと…これがあいつらの為になるんだから。
「…ん?…」
自転車をしばらく走らせていると、前方から誰かが走ってくる姿が確認出来た。
「あのシルエット…見覚えあるな…」
その姿は真っ直ぐ俺の方へと近付いてくる。
やがてその正体が露わになると、俺は無意識の内にその人物の名前を呟いていた。
「…太陽…」
もう、あいつらと会う事は無いと思ってた。
μ'sを失った日常に少しずつ慣れ、あんな別れ方をして会わせる顔が無い今もう俺の人生にμ'sの名は刻まれないと思っていた。
「…はぁ…はぁ…」
「お前…どうして…今μ'sの練習中だろ?」
俺もこのままで良いと思ったし、俺もμ'sも互いに会う事を望んでいない。
何よりこれ以上あいつらと一緒に過ごしてしまえば、μ'sとの日々を手放したくないという思いをきっと抱いてしまう。
それは決して俺が抱いてはいけない思いなんだ。
目の前には息を切らした太陽の姿。
こんな切羽詰まって俺の所に来たという事実。俺は何となく分かってしまった。
きっとμ'sの事だ。
μ'sと別れてから今までμ'sの名前すら出さなかった太陽が、この状態で来るという事は只事では無い。
ようやく手に入れた誰にも関与しない日常。
どうやら神様は…
「大変だ…」
「μ'sが…」
「…攫われた…」
ーーーーーー俺の事が嫌いらしい。
「…それ、本気で言ってるのか?」
何者かに攫われたμ's。
突然の出来事に困惑する冬夜。
しかし、二人には立ち止まっている暇など無かった。
「時間が無い。早く行かなきゃ…」
全ては9人の女神を救い出す為。
「俺が指揮する。太陽、失敗は許されんぞ」
「あぁ、分かってるよ」
9人の女神の笑顔を取り戻す為。
「…プランA、開始。」
今、二人が動き出す。
〜次回ラブライブ〜
【第37話 μ's救出大作戦】
お楽しみに。