なお、度々原作と違うシーンや表現が登場します。
ご了承下さい。
「今はスクールアイドルが熱い!!」
チャラ男襲撃事件から数日が経過し、傷もなんとか癒えた今日この頃。
学校に到着するやいなや太陽がこのような事を口にした。
「スクールアイドルねー・・・」
スクールアイドルの事は一応知っている。
名の通りスクールアイドルは学校で活動するアイドル。
今ではスクールアイドルを結成している学校が増えてきており、その経験を経てプロのアイドルを目指す者も多くない。
「全く興味なさそうだな」
「うん。ぶっちゃけどうでもいい」
「マジか凄いなお前」
バイト先でも良くあのグループがいい!あの娘が可愛いなどと言った会話を耳にする。
話してるのは全く構わないが、お前はどのグループが好き?などと急に話を振るのは勘弁してもらいたい。
「お前はこのダンスを見ても何も思わないのか!」
そういいスマホの画面を俺に見せる太陽。
そこに映っていたのは、3人の女の子がステージでライブを行っているシーン。
歌声、ダンス共にレベルが高く、スクールアイドルのレベルを超えてると言っても過言ではないほどの出来だ。
このグループは知っている。
まだスクールアイドルという名前が浸透していない状態でスタートし、、その名前を世に広めたまさにスクールアイドルのパイオニアのような存在。
確か名前はA-RISEとか言ったな。
「うん特に何も思わない」
「なんでやねん!?」
いやだって興味ないもん。
ないものはしょうがない。
「お前本当に珍しいな・・・皆こんだけ熱中してるのに」
「別に俺が興味を持とうが持たまいが変わらないだろ。逆にこの風貌でアイドルなんて言い出したら本格的に気味悪がられる・・・あ、それありだな」
「いや待て待て!勝手に話を進めるな!ってかその意見俺は絶対に許さないからな!」
「なんだよ折角いい作戦だと思ったのに」
より一層俺と関わりを持つやつがいなくなるに違いない。
素晴らしいアイデアなんだけどなー。
「とりあえず俺は認めないぞ!そうだ、放課後一緒にスクールアイドルショップに行こう!そうすれば少しはスクールアイドルの魅力も・・・」
「はいはいバイトバイト」
「お前いつもバイトだな!?いつ休みだよ!?」
「休みはありませーん」
まぁこれはブラックでも何でもなく俺が店長に頼んで休み無しにしてもらってるんだけどな。
こうでもしなきゃ生活出来ないし。
「あのな?いくらお前でもいつか倒れるぞ?」
「その時は俺がそれまでだったという事だ。じゃあおやすみ」
「っておい寝ようとすんな!おい冬夜!もう寝てる!?」
その後もしつこく絡んでくる太陽だったが、適当にあしらっていく。
そうこうしている内に放課後となった。
「・・・ん?微かに音楽が聴こえるな」
バイトに向かう道中、ふと耳にポップな音楽が入る。
自転車を停め、音楽の聴こえる方へ顔を向ける。
しかしそこは・・・
「・・・神社?」
長ったらしい階段が続く神社。
神田明神がそこにあった。
「・・・気になるな」
神社に似合わぬポップな音楽。
少し興味を惹かれた冬夜は、階段を登り始めた。
「おいしょ。本当に無駄に長いな」
一定のペースで階段を登る冬夜。
しかし冬夜は全く疲れる素振りを見せず、息一つ切らしていなかった。
これも日々のバイトの賜物か。
「ここら辺から聴こえたけど・・・あ、あれか」
階段を登り終えると、視界に3人の少女が映る。
その内二人は見覚えのある人物だった。
「あれって園田さんと南さんか」
少し離れてはいるが顔は認識できた。
それに二人とも目立つ髪型と髪色のため容易に気付く事ができた。
それともう一人はオレンジ色の髪をしたサイドテールをした娘だ。
また目立つ髪してんなーあの娘も。
「音楽の正体はあれか」
何やら音楽に合わせて踊ってる様子。
タイミングもバラバラでぎこちなく、お世辞にも上手いとは思えなかった。
「今スクールアイドルが熱い!」
ふと朝太陽が言っていた言葉を思い出す。
「あの娘達もそうゆう類いか」
聴いた所音楽もアイドル系っぽいため、スクールアイドルになるための練習だろうと結論付けた。
そうこうしている内に音楽が終わり、休憩に入る3人の女の子。
「これ以上はいいか。正体も知れたし」
俺はこれ以上長居する必要もないのでバイトを向かうべく階段を降りようとした。
その時だった。
「もしかして氷月さんですか?」
バ レ た !!
「氷月さんですよね?」
なんか後ろから声がするけど華麗に無視。
よし、このまま降りれば・・・
「氷月さん!無視しないで下さい!」
「うわっ!」
肩を掴まれた。
いや、速くない?結構離れてたよ?
これ以上は無駄だと判断した俺は園田さんの方を向いた。
「なんで無視するんですか!?」
「いや・・・なんとなく?」
「なんで疑問系なんですか」
適当に誤魔化していると、遅れて南さんとオレンジのサイドテールの娘がやってきた。
「あ!氷月君だ!」
「海未ちゃんが男の子と話してる!」
南さんは嬉しそうに駆け寄り、サイドテールの娘は園田さんが俺と話している事に驚きながら駆け寄ってきた。
「もう怪我は大丈夫?」
「うんもう大丈夫」
「良かった・・・」
怪我の事を聞いてくる南さんに大丈夫な事を伝えると安堵した表情を浮かべた。
園田さんも何事もなくて良かったですと口にしていた。
「えっと・・・」
そんな中、サイドテールの娘は困惑した表情を浮かべていた。
「あ、そう言えば紹介がまだでしたね。こちらは私とことりが絡まれていた所を助けてくれた氷月冬夜さんです」
助けたのは太陽だけどな。
「私達と同い年だよ」
「そうなんだ!ことりちゃんと海未ちゃんを助けてくれてありがとう!私は高坂穂乃果、よろしくね!」
「よ、よろしく」
マジか。手とか握ってくるしめっちゃガンガン来るじゃん・・・
ブンブン振られて腕取れそうなんだけど。
「ちょ、ちょっと穂乃果!振りすぎです!」
「あ、ごめんね」
申し訳なさそうに手を離す高坂さん。
まぁ別にいいんだけどさ。
「気にしてないからいいよ。それより一つ訂正したいんだけどいいかな?」
「訂正?」
「そう。さっき俺が南さんと園田さんを助けたって話してたけど正確には助けたのはもう一人の朝日太陽という人物で俺はあくまでも時間を稼いでたに過ぎないんだ。だからお礼を言うなら太陽って奴にしてくれ」
「え?」
「いや氷月君も助けてくれて・・・」
俺の発言に困惑の表情を浮かべる南さんと園田さん。
間違った事は言ってない。
「ちょっと待って」
すると高坂さんが何やら真剣そうな表情で口を開く。
「確かに最終的に撃退したのは、朝日君って人なのかもしれないけどでも氷月君の時間稼ぎが無かったらきっとことりちゃんと海未ちゃんは無事じゃなかったんだよね?それを食い止めただけでも充分にお礼を言うに値するよ!」
「そうですよ!なぜそんなに自分を過小評価するんですか!」
「氷月君のした事は普通出来ない事なんだよ?でも恐れる事なく初対面の私達のためにあそこまでしてくれたんだから本当に感謝しているんだよ?」
あれ、なんでこうなった?
なんか俺凄い怒られてるな。
でもこれ以上反論しても状況が悪化するだけだろしここはおとなしく受け取っておくか。
「そ、そうか。じゃあありがたくその言葉頂くよ」
「うん!よろしい!」
俺がそう言うと、サイドテールの女の子・・・もとい、高坂さんは真剣そうな表情から一辺満面の笑みを浮かべた。
「ところで、こんなとこで何やってんだ?スクールアイドルの練習か?」
ここで俺は気になる事を質問してみた。
「そうだよよくわかったね!氷月君ってエスパー!?」
いや、なんとなくわかるだろ。
あんなポップな音楽に合わせて踊っていれば。
「俺がエスパーかはさておいて、なんで練習場所がここなんだ?他にもいいとこあるだろ」
「さておかれた!?」
「あ、穂乃果は無視して良いので」
「元からそのつもり」
「ひどいっ!?」
今度は笑顔から落ち込んだ表情になる高坂さん。
本当に表情がコロコロ変わる娘だな。
「最初は学校で練習しようと思ったんですが、どこも場所は空いてなくて・・・なのでここならトレーニングも出来るしスペースも充分にあるので練習場所にしてます」
「なるほどね。でも正直園田さんとかアイドルをやるようなタイプには見えないけど、君達はなんでスクールアイドルをやってるんだ?」
この質問には南さんが答えた。
「私達の学校が廃校する事になっちゃって・・・それでその廃校をなんとか阻止できないかなーと思って始めたんだ」
「私だって最初は否定しました。でも、穂乃果の熱意に負けました」
園田さんはハァーとため息をつく。
「後悔はしてる?」
「少し」
「え!?そうなの海未ちゃん!?」
「冗談ですよ」
ふふっといたずらっぽく微笑む園田さん。
そんな表情もするんだな。
「なるほど。とりあえず君達が本気で取り組んでるっていうのは伝わったよ。廃校阻止出来るといいな」
「うん!」
「じゃあ俺バイトあるから」
「あ、待って!」
階段を降りようとする俺に声をかける高坂さん。
まだ何かあるのか?
「さっき遠くからだけど私達のダンス見てたよね?良かったら感想とか貰えたら嬉しいんだけど・・・時間ある?」
「ちょっと穂乃果失礼ですよ!すいません氷月さんバイトがあるのに」
ふむ。第三者の意見が欲しい・・・か。
俺はスマホを取り出し時間を確認した。
バイトまではまだ時間はあるな。
しょうがない。付き合ってやるか。
「いいぞ。折角だから君達のダンスを1から見たい」
「え?」
「さっき踊ってた曲でいい。最初から見せてくれないか?」
「なるほど。わかった!」
「ただし、俺は本当の事しか言わない。デリカシーも、モラルも、何も関係なく。それでもいいか?」
こうゆう場合は本当の事を言わなければ意味がない。
例え残酷な現実を突きつけられても。
「・・・うん!大丈夫!なんでも言って!」
「だ、大丈夫でしょうか・・・」
「ちょっと怖いな・・・」
「でも、第三者の意見は大事だよ。どれだけ厳しく言われてもそれが現実。それを受け止めなきゃ私達はいつまで経ってもこのままだし、廃校阻止なんてもっての他だよ!」
高坂さんの言葉に圧倒される南さんと園田さん。
そして・・・
「そう・・・ですね!」
「うん!ここで逃げてちゃなにも始まらないもんね!」
さっきまでの弱気な様子から一辺。
自信と希望に満ち溢れた表情に変わった。
「・・・へぇ・・・」
一言であそこまで変えるとは・・・
園田さんが高坂さんの熱意に負けたって言ってたけど、今なら少しその気持ちがわかった気がする。
「じゃあ、行くよ!」
そしてついに始まる。
彼女達の、初めて人前で見せる最初のダンスが。
「はぁはぁはぁ・・・どうだった!?」
終わった。
1曲を踊りきった三人は完全に疲れていた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
「大丈夫です。何でも言って下さい」
高坂さんと南さんが軽い息切れをしているのに対し、園田さんは息を乱さず落ち着いてこちらを見ている。
園田さんだけ体力はあるみたいだな。
「・・・」
とりあえず感想だったな。
じゃあ遠慮なく言わせてもらうか。
「タイミングバラバラ、表情に余裕がない、所々ダンスの間違いが目立つ、笑顔が出来ていない、迷いがある、声も小さい、と言ったところか。つまりスクールアイドルと呼ぶには程遠いレベルだ」
さすがに言いすぎたかな。
俺の辛辣な感想を受けた南さんと園田さんは放心状態だった。
しかし、ただ1人まだ光が灯っている人物がいた。
「なるほど・・・うん。わかった!ありがとう氷月君!」
辛い筈なのに、苦しい筈なのに、今にも怒鳴りたい筈なのに。
だがそんな様子は微塵も感じさせず、高坂さんは真っ直ぐな瞳で微笑みながらこちらを見ていた。
あの目は・・・どうやら嘘偽りはなさそうだな。
「よくそんな表情できるね。俺は君達の頑張りを否定したんだよ?」
「うん。でも、私達が望んだ事だから」
でも約2名まだ放心状態なんですが。
「そうか。変わってるね」
俺が高坂さんに微笑み返した所でようやく他の二人が復活した。
「・・・はっ!私は何を・・・」
「俺にダンスを披露して感想を言われた所」
「うぐっ・・・いとも簡単に思い出させてくれますね・・・」
現実逃避許さない。
「ショックだっただろう。あんな事言われて」
「予想してなかったわけではないんです。ダンスも歌も、その他もまだまだだって思ってましたし、どんな事を言われても大丈夫だって思ってました。でも、やっぱり心のどこかで思ってたんです。それでも少しくらいは褒められるんじゃないかって」
続いて南さんが口を開く。
「まだ始めて日は浅いし、こんな短期間で向上するはずもないって事もわかってた。こうゆう事に関しては本当の素人な私達だからって。そうやってなるべく傷がつかないように自分を守っても、面と向かってあんなに酷評されたら・・・やっぱりショックかな・・・」
二人とも悲しそうな表情で俯く。
「ことりちゃん・・・海未ちゃん・・・」
続いて高坂さんも悲しそうな表情で二人を見つめる。
態度に出さないだけで、実際は高坂さんも傷ついただろう。
そんな三人の姿を見た俺は、静かに口を開いた。
「それでいい」
「・・・え?」
俺の言葉に顔をあげる三人。
「最初からぬるま湯に浸かっているやつは成功しない。だから今の現状も、君達の反応も、正解なんだ」
「これが、正解?」
「今の内にたくさん傷ついとけ。そして絶望しろ。どうやったらいい?何からやればいい?このまま続けてもいい?そうやってひたすら試行錯誤しろ。そして君達が一つの答えを出した時、心から良かったと思えた時、その時はきっと、君達が目指した現実に必ず近づいてる」
「・・・!」
「・・・!」
「・・・!」
これは半分俺の経験でもある。
今の現状に至るまでたくさん傷ついたし死にたいと思った時もあった。
でもそれら全てを乗り越えた結果、今の現状に満足している。
「おっとそろそろバイトに行かないとな。じゃあ俺はここで」
本格的に時間がキツくなってきたので階段を降りようとする俺。
「あ、氷月君!」
まだ何かあるのかよ。
あ、ていうかスクールアイドルの名前聞いてなかったな。
出会ったのも何かの縁だし最後に聞いとくか。
「そう言えば名前聞いてなかったな」
「・・・え?」
「ん?名前だよ名前。スクールアイドルの名前」
仕方ないから名前を聞いた後に唯一良いと思った点を挙げて去るか。
あんなボロカス言われただけじゃさすがに可哀想だしな。
「あ、えっと・・・」
「そう言えば・・・」
「あ・・・」
急に表情が曇り出す三人。
え・・・まさか・・・
「私達まだ名前決めてなかったーー!!!!!」
高坂さんの叫びが木霊する。
「ハァー・・・」
深いため息をつく俺。
どうやら想像以上に問題は山積みらしい。
【君達のダンスと歌を見聴きして、ちゃんと楽しいって思えたよ】
この言葉はまだ早いか。
俺はそっと言おうと思っていた言葉を飲み込んだ。
廃校を阻止したいと思い結成されたスクールアイドル。
しかし問題は山積み。
思いがけぬ形で関わってしまった冬夜。
そして関わってしまった事がきっかけで、物語はさらに加速する。
~次回ラブライブ~
【第4話 その名はμ's】
お楽しみに。