いっその事諦めるか。短くするのはもう。
とりあえずようやく名前が決まります。
「どこかで見た事あるんだけどなー・・・どこだったっけ?」
「・・・穂乃果の勘違いでは?」
「いや、絶対に勘違いじゃないよ!凄い見覚えあるんだ」
冬夜と神社で接触した翌日。
音乃木坂高校では三人の少女が昨日の事について話し合っていた。
「目立つ風貌だよね、氷月君って。町でたまたま見掛けたとかじゃないかな?」
「うーん・・・その時もっと感動したような・・・」
「感動?」
「そんな出会いをしておいてなぜ忘れるんですか・・・」
冬夜の風貌に見覚えがある穂乃果。
しかし何処で会ったかは思い出せずにいた。
「一先ず、思い出せないのであればこれ以上考えても仕方ありません。重要なのは、今後の私達についてです」
思い出せない様子の穂乃果に海未は痺れを切らし話題をスクールアイドルに変えた。
「そうだね。昨日冬夜君が問題点を挙げてくれたし」
ことりの言葉に反応した二人は昨日冬夜に言われた事を思い出していた。
「どうやらまだ名前は決まってないみたいだな。じゃあこの際今後必ず解決しなければならない問題点を挙げていく。まずは曲だ。聴いた所今の曲は君達のオリジナルではないだろ?とりあえず自分たちの曲を持たないと話にならない。他のアイドルをカバーするっていう路線もあるがそれだと人気が出るのに時間は掛かるしカバーしているアイドルなんて他にごまんといるだろう。しかしオリジナルの曲を持つと言っても作詞と作曲を行わなければいけない。そしてその上で振り付けも考えなければいけない。これが一つ目の問題点。そして次は衣装だ。当然制服や私服のままで踊るわけにはいかない。となると何処で衣装を調達するかだ。作るのか、買うのか。そして後どこでライブを行うか。曲は出来ても披露する機会があれば意味がない。場所の確保も必ず行う必要がある。そして場所が決まってもただライブを行うだけじゃ足りない。音響や照明、そして集客だ。これらを行うのは君達だけではほぼ不可能に近い。リハーサルや本番前の息を整える時間も欲しいだろう。となればこれは他に手伝いを頼む必要がある。とまぁこんな所か、解決しなければならない問題点は」
「思ったより山積みでびっくりしたよ」
「当たり前です!見切り発車で始めたわけですから当然の結果でしょう」
のほほんとした表情の穂乃果に海未が激を飛ばす。
「でも、氷月君の言葉はありがたかったよね。何したらいいかわかるから」
一方のことりは冬夜の言葉の有り難みを感じていた。
「作詞は海未ちゃん。衣装はことりちゃん。ライブは講堂で行う。ここまでは決めたけど、まだまだ山積みだよね」
「せめて後は作曲が出来る方がいれば曲は完成するのですが・・・」
海未の言葉に穂乃果が自信満々な表情で反応した。
「作曲してくれる人なら心当たりあるよ!」
「・・・え!?それは本当なんですか穂乃果!?」
「本当なの穂乃果ちゃん!?」
一気に詰め寄る二人に少し穂乃果は後ずさった。
「とは言っても断られちゃったけどね」
えへへと頭の後ろに手を置きながら申し訳なさそうに言う穂乃果。
「なんですかそれ。結局ダメだったんですね」
「でも!私は諦めないよ!必ずあの娘に作曲してもらう!」
「・・・あまりしつこく迫ると相手も迷惑ですよ」
「でも、あの娘しかいないんだよ!作曲出来そうな人!」
「その娘ってどんな娘なの?穂乃果ちゃん」
「うんと、一年生なんだけどいつも音楽室でピアノを弾いてるの。私もたまたま聴いたんだけど、とっても上手でこの人なら作曲出来るかもって思ったんだ。歌声も綺麗だったんだよ?歌っていた曲もオリジナルぽかったし。赤毛の可愛い娘で、名前は西木野さんって言うんだって」
「へぇー・・・それで頼んだら断られちゃったの?」
「うん。アイドルの曲があまり好きじゃないみたい」
眉を下げて残念そうな表情を浮かべる穂乃果。
「そうなんですか。確かにその人なら作曲は出来そうですね。でも断られてしまった以上他をあたるしか・・・」
「だから、穂乃果は諦めないって言ってるじゃん!放課後にでももう一度頼みに行くつもり!」
「ですから無理に頼んでも逆効果だと・・・」
「あ・・・えっと穂乃果ちゃん!海未ちゃん!」
このままでは収拾がつかなくなると感じたことりは話を止めに入った。
「どうしたんですか、ことり」
「このまま作曲について話しても解決しないと思うから、まずは解決出来そうな問題点から解決しない?私達の名前とか」
「あ・・・」
「あ・・・」
「・・・忘れてたんだね」
ことりは苦笑いをするしかなかった。
「私とした事が・・・また名前の事を忘れてしまうなんて・・・」
作曲についての言い合いも収まり、グループ名を考える三人。
海未は名前決めの事を忘れていた事に落ち込んでいた。
「大丈夫だよ海未ちゃん!私も忘れてたし」
「だから落ち込んでるんです」
「え、それどうゆう意味!?」
「とりあえず!名前決めよ?ね?」
脱線の雰囲気を感じ取ったことりは再び止めに入る。
「そうですね。とはいってもどうゆう名前にしたらいいか・・・」
「じゃあ、ほのことうみとか」
「んー少し安直すぎる気が・・・」
「じゃあ、音乃木坂48とか!」
「いやそれはいろいろ問題になるかと」
「じゃあ・・・あ!海未ちゃんは海、ことりちゃんは空、私は陸で、陸海空とかは!?」
「軍隊ですか」
見事に全ての案を切り捨てた。
「んもぅ!じゃあ海未ちゃんが決めてよ!」
「そうですね・・・ほうこトリオ・・・とか?」
「それじゃ海未ちゃん芸人さんみたいだよ・・・」
苦笑いでことりがツッコむ。
「名前を決めるのは難しいですね・・・」
「これからたくさんの人に知ってもらうわけだからね・・・」
「うん、ちゃんと納得いく名前にしないと・・・」
それから暫く沈黙が続いた。
名前決めが難航し、時間だけが過ぎていく。
その時、穂乃果が沈黙を破った。
「氷月君の案を採用する時じゃないかな?」
「氷月さんの案・・・ですか」
「確か、名前を決めてもらう・・・だったよね?」
三人は昨日の冬夜とのやり取りを思い出す。
「出来る限りグループ名は自分たちで考えた方がいいが、もしどうしてもいい名前が浮かばなかった時はいっその事他の人に決めてもらえ。例えば、意見箱みたいなのを作って名前を募集するとか」
「・・・丸投げですか」
「そう丸投げだ。だからあくまでも最終手段だ。でも丸投げもちゃんとメリットはある。名前を決める時間を他の事に使えるし、呼掛けを行うことで君達がスクールアイドルをしているという事をより多くの人に知ってもらえる」
「なるほど・・・」
「これはライブを行った時の集客にも繋がる。だからやる意味は充分にある」
「まぁ丸投げもいいかもしれませんね」
「よし!じゃあそうと決まれば今日の放課後私の家で意味箱作りしよう!」
「そうだね!」
「そうしましょうか」
方向性が決まった所で休み時間は終わりを告げた。
こうして、また一日が過ぎていく。
「音乃木坂でスクールアイドルが結成されたらしいぞ!」
「その情報はどこから仕入れてるんだよ」
三人のスクールアイドルと出会ってから1週間。
俺が学校に到着すると太陽がいきなり話始めた。
「それは、秘密だ!」
おいおいなんで俺にウインクするんだよ。
ただただ気持ち悪いぞ。
そうゆうのは女子かホモにだけやっとけ。
「まだ名前は決まってないらしいけどな。お前知ってた?」
「知ってる」
「そうだよなー。だってこれは俺が手に入れた最新の情報・・・って知ってるのかよ!?」
「たまたま会ったからな。ちなみに三人いてその内の二人は前にチャラ男から助けた南さんと園田さんだぞ」
「そんな事まで!?ついに俺の情報の先を行かれた・・・」
なんか勝手に落ち込んでるが無視だ無視。
俺は机に顔を伏せ、眠るいつもの体勢をつくる。
「園田さんと南さんか・・・確かにあの二人可愛いもんな!あー、早く歌って踊ってる所見てみたい!ライブとかやんのかな?やるよなー。いつやるんだろう!?やるなら絶対見に行かないと・・・なんか知らない冬夜!?って寝てるぅぅぅぅ!!!」
うるせぇ。
「ふむ・・・あれから1週間・・・少しだけ様子を見に行くか」
放課後。
いつもより早めにバイトに行く支度をした俺は、神田明神を目指し自転車を走らせていた。
1週間前、いろいろ問題点を挙げたわけだがいくつ解決したかが少し気になる。
自分が関わった手前、せめてそれぐらいは確認しないとな。
快調に自転車を走らせ、段々と神田明神が見えてきた。
すると、少しずつ前回と違うポップな音楽が流れてきた。
「やってるな」
俺は自転車を停めると、階段を上り始めた。
曲は丁度サビに差し掛かったところ。
背中を向けているため表情は確認出来ないが、ダンスの出来は以前よりも良くなっている。
とはいっても前回がレベル1だとすれば今回はレベル2になっている程度。
ライブで披露するにはまだ遠い。
「一旦休憩にしましょうか」
「うへー疲れたー」
「でも前より体力持つようになったんじゃないかな?」
曲が終了し、休憩に入る三人。
高坂さんは地面に座り込み、園田さんと南さんは水分補給を行っている。
休憩に入ったなら丁度いい。
さっさと用事を済ませよう。
俺は気付く様子のない三人の元へ歩み寄った。
「お疲れ様」
「え?あ!氷月君!」
俺が声を掛けると、高坂さんは嬉しそうに反応した。
「1週間ぶりですね」
「来てくれたんですね!」
園田さんと南さんも微笑みながら近づく。
「あれから1週間経ったわけだけど、何か変化は?」
「なるほど。氷月さんが来た理由はそれですか」
「まぁ俺がアドバイスした形になったから気になってね」
「そうゆう事ですか」
「じゃあ、私が報告するね!」
さっきまで座り込んでいた高坂さんが勢い良く立ち上がった。
「まずは、ライブする場所は講堂に決まったんだ!ライブする日にちは3週間後の新入生の部活説明会の時にする予定なんだ。曲は、作詞は海未ちゃんが担当してくれてて、衣装はことりちゃんが作ってくれる事になったんだ。作曲は私に心当たりがあって今その人に交渉中だよ!後、裏方についてはクラスメイトが手伝ってくれる事になったしチラシ配りも手伝ってくれる事になったから大丈夫!」
なるほど、思った以上に解決していってるみたいだな。
一番の不安要素だった曲も出来つつあるようだ。
作曲については交渉中だとは言ってたけど難航してそうだな。
まぁそこは任せるか。
「わかった。想像以上に進んでるようだね良かった良かった」
「でしょ?この1週間頑張ったんだよ!」
「まだ問題点はあるけどな。そういえば名前はどうなった?」
報告に名前については無かったよな・・・
でも高坂さんの自信満々な表情を見ると決まってそうだな。
「よくぞ聞いてくれました!」
「決まってるんだな?だったら大丈夫だ」
「・・・え?ちょっとちょっとちょっと!名前!どんな名前になったか気にならないの!?」
背を向ける俺の服を引っ張る高坂さん。
・・・いや意外と力強いな!?
「わかったわかった!服が伸びるだろ」
仕方なく正面を向くと頬を膨らましながら掴んでいた手を離した。
「うんとね、じゃあ言うよ?私達のグループ名は・・・」
「μ'sです!!!」
「へぇ・・・」
「反応薄い!?」
「気に入りませんでしたか?」
「いや、そうゆうわけじゃない」
μ's・・・確かギリシャ神話に出てくる9人の女神だったはず。
「この名前は誰が考えた?」
「実はわからないんですよ・・・」
わからない?
となると考えたのは第三者という事か。
続いて南さんが口を開く。
「氷月君が提案してくれた、意見箱を実施したんだ」
あ、採用されたんですね。
あの案。
「そうしたら、1枚だけ紙が入ってたんだよ!ほら!」
俺に見せつけるように紙を広げる高坂さん。
そこにはまっ白な紙に大きく綺麗な文字で、μ'sとだけ書かれていた。
・・・なるほどそうゆう事か。
読めたぞ・・・
「どうやらこの名前、ギリシャ神話に出てくる9人の女神の名前みたいです。どなたが書いてくれたのかはわかりませんが、私達はとても気に入ったのでこの名前に決めたんです」
「意見箱を作った次の日に入っててびっくりしたんだよ?でも、氷月君は微妙だった?」
園田さんと南さんが不安そうな表情で見てくる。
いや別に俺の許可がいるわけでもないし三人がいいなら全然構わないんだけど・・・
まぁいいや。
何はともあれ、このμ'sという名前。
きっとこの名前にはとあるメッセージが隠されてるに違いない。
なぜ三人しかいないのに9人の女神の名前なのか。
そして意見箱を作った次の日にはもう入ってたという南さんの発言。
まるで見計らったようなタイミングだな。
待ってましたと言わんばかりの早さだ。
「名前の感想を言う前に一つ質問いい?」
「何?氷月君」
「メンバー、増やす気ある?」
「メンバー・・・ですか・・・」
「考えた事もなかったな・・・」
俺の質問に悩みだす園田さんと南さん。
しかし、高坂さんは迷いなくハッキリと答えた。
「うん!増やすよ!」
「・・・そっか」
高坂さんの発言に他の二人は驚いているがまぁ無視でいいか。
何はともあれ、メンバーを増やす気はあるようだな。
名付け親が知ってつけたか知らずにつけたかはわからないが、恐らく今後メンバーが増えると予想してのグループ名だろう。
この名前が輝く時は、名前と同じく9人になった時。
残るピースは6つといった所か。
なかなか粋な事するね。この名付け親も。
「で、名前の感想は?」
もしも俺の仮説が現実になった時。
「正直な言葉でお願いします」
歌やダンスのさらなる向上を成し遂げた時。
「どんな言葉でもショックは受けないよ!」
そして全員が迷いなく、笑えていた時。
「「「さぁ、感想を!」」」
その未来が、本当に訪れるのならば。
俺は口角を少し上げ、正直な感想を述べた。
「あぁ、ピッタリだ。君達に」
【μ's】その名を、自分達の物に出来ると信じてるぞ。
この瞬間、μ'sが本当の女神になる物語が動き出した。
名前も決まり、順調に進んでいくスクールアイドル生活。
後残す所は作曲のみ。
交差していく作曲者と依頼者の思い。
しかしそれは離れていくようで実は近かった。
彼女達がスタート地点に立つ為、氷月冬夜は動き出す。
~次回ラブライブ~
【第5話 始まりの曲】
お楽しみに。