よし、着実に進んできてるぞー!
今回で曲が完成します!
「なかなか手強い・・・か」
それから数日。
いつものようにバイトをこなす日々を送っていた俺だがそこに一つの変化が訪れた。
とはいうのも、前回あの三人と会った後LINEを交換した。
内心これ以上あまり関わる気がなかった為断ろうと思ったが、三人の熱意(特に高坂さん)に負けた俺は仕方なく交換した。
高坂さんと南さんはまだしも園田さんも乗り気だとは意外だった。
「そうだ、連絡先を交換しようよ!」
「あ、それいいね!」
「え、なんで?」
「だって、そうしたらいつでも氷月君なら意見聞けるし、逆に私達の現状報告もできるじゃん」
「・・・それだけのために?」
「後は純粋にもっと氷月君とお話ししたい!」
「私もしたいかな」
「いや俺と話しても得はないぞ?やめとけやめとけ」
「そんなことないよ!海未ちゃんもそう思うよね?」
「・・・正直出会ってまだ日も浅いですし、ましてや男性の方と連絡先を交換なんて・・・と本来だったら思うのですが、お話しはともかく穂乃果の言ったようにいろいろ話を聞いてもらうのに役立ちますし、助けていただいた氷月さんなら信用も出来ますし連絡先を交換したいです」
「おおー・・・海未ちゃんがこんなストレートに男の人と連絡先を交換したがるなんて・・・」
「・・・いけませんか?」
「ううん全然!」
「いやいやいや園田さんは男性の免疫なさそうだからこうゆう時は真っ先に否定するポジションでしょ!?」
「なんですかそのポジションは!確かに男性の方とはあまり関わった事はありませんが、男性と連絡先を交換したいと思う時ぐらい私にもあります!・・・あ、いや別に深い意味はないですからね!?本当ですよ!?」
「・・・」
「とりあえずこれ以上海未ちゃんが自滅する前に連絡先を交換しようよ!氷月君は嫌?」
「嫌ではないけど・・・」
「よし、ことりちゃん!」
「わかった任せて!前回のリベンジを果たす時がきたね。・・・ゴホン!・・・氷月君・・・おねがぁい?」
「リアクションに困る」
「ことりちゃんの必殺技が効かない!?」
「ま、また負けた・・・」
「ことりのおねがいを二度も・・・氷月さん恐ろしいですね・・・」
とまぁこんな感じで最終的には俺が折れた。
何度思い出しても謎のやり取りだな。
そして交換してから数日後の今。
高坂さんからLINEが来た。
内容は作曲の依頼についてで、なかなか手強いと送られてきた。
やはり俺の予想通り難航してるみたいだな。
一応どうゆう娘に頼んでるかは聞いてるが、でも作曲の依頼に関しては俺は関与出来ない。
だからアドバイスのしようがない。
する気もないが。
「無視だな」
俺はそっとLINEを閉じた。
・・・いやしつこいな!?
しばらく無視し続けていたが予想以上に高坂さんからLINEが来る。
どうしたらいいかな?
氷月君が依頼してほしいくらいだよ!
今度遊ぼう!
など様々である。
アドバイスする気も俺がわざわざ依頼しにいく気もないし最後に関してはスクールアイドル関係ないだろ。
はぁ・・・返信しなきゃいけないか・・・
俺は仕方なく【俺に出来る事はない】と高坂さんに送った。
そこまで面倒を見る義理もない。
それからまた数日が経過した。
高坂さんからのLINEの数も減り、比較的平和な日常を過ごしていた。
とはいっても全く無かったわけではないが。
度々現状報告的なものはあるが、全てに【そうか】とだけ返している。
どうやら作曲してくれそうな人に歌詞カードを渡したらしい。
それで心が変わらなければ諦めるそうだ。
というわけで俺は今神田明神の前に来ている。
目的は高坂さん達に会うのではなく曲が出来たかどうかの確認だ。
神社から聴こえる音楽でオリジナルが出来たか判断しに来たというわけだ。
しかし聴いた所曲は以前に踊っていたものと同じ。
どうやらまだ曲は出来てないらしいな。
「ふむ・・・こりゃ時間の問題だな」
やめるか続けるか。
その答えを出す日は近いかもしれないな。
俺はそのまま階段を登らずに自転車を走らせた。
が、俺の足は止まった。
「あれは・・・」
階段上の木に、赤い髪をした女の子が隠れながら何かを見つめていた。
「もしかしてあの人が高坂さんの言ってた作曲してくれそうな人か?」
高坂さんから風貌は聞いている。
あの娘が着てるのは音乃木坂の制服だし何より珍しい特徴的な赤い髪。
間違いないだろう。
「ふむ・・・どうしたものか・・・」
別にここで俺が何かアクションを起こす必要はないが・・・
まぁ折角だし曲を作る意思があるかどうかだけでも確認してみるか。
俺は自転車を降りると、赤い髪の娘に向かい階段を登り始めた。
自分から誰かに話しかけるなんていつ振りだろうな。
しかも初対面の人に。
度々自分がわからなくなる。
赤い髪の娘の元までやってきた。
しかし俺に気付く様子もなく、高坂さん達が踊っている様子を見つめていた。
ま、そんなに長居するわけにもいかないしさっさと用事を済ませるか。
「μ'sに何か用?」
「っ!!!だ、誰!?」
はい警戒心MAXありがとうございます。
まぁこんな風貌な奴が話しかけてきたらそりゃそうなるよな。
「あ、ごめん急に話しかけて。俺はあのスクールアイドルの知り合いで、氷月冬夜っていうんだ。楠木坂2年」
「楠木坂ってあの偏差値の高い・・・あ、私は西木野真姫です。音乃木坂学院の一年生です」
「・・・不気味でしょ俺」
「・・・え?」
自己紹介はしたけどまだ警戒を解くそぶりは見せない。
まぁ当然の反応なんだけどさ。
「わかるよ。俺髪長いし見た通り暗そうだし。君もあまり一緒にいたくないだろうから簡潔に用事を済ませるよ」
「えっと・・・ごめんなさい私・・・」
「いやいいんだ、慣れてるから。ていうかこれが当たり前だし。だから謝らなくていいよ」
「・・・」
さて、まぁ一緒にいたくないのは俺も同じなんだけどね。
変な誤解が生まれても困るし。
太陽になんて見られたら「ついに冬夜にも春が・・・来たァァァァ!!!」と言うに決まってる。
「で、本題なんだけど君だね?作曲の依頼されてるの」
名前も高坂さんからあらかじめ聞いている。
「・・・そうです。まさか貴方も依頼に?」
おっと少し目線が強くなった気がするな。
「いや違う。君の今の意思を確かめに来た。曲を作るか作らないか。だから君がどんな答えを出しても尊重する」
「・・・そう・・・わかりました。でははっきり言います」
この感じは・・・
「曲は・・・作りません」
そう来るだろうな。
「歌詞カードを渡されました。これを見て答えが変わらなかったら諦めると言われました。歌詞を見てみましたが、答えは変わりません」
淡々とした表情で話す西木野さん。
しかしその瞳はまだ、迷いの感情があった。
嘘ついてるな。自分に。
そして西木野さんの言葉を受けた俺は、
「そっか」
とだけ返した。
「・・・それだけ?」
「ん?」
「貴方は満足なんですか?この答えで」
ここでその質問が来るか。
やっぱりまだ迷ってるんだな。
「満足も何も、それが君の出した答えだろ?さっきも言った通り君の答えを尊重するよ」
「で、でも!貴方あのスクールアイドルの知り合いでしょ!?何とも思わないわけ!?・・・あ、ごめんなさい」
「いいよ敬語じゃなくて。喋り辛いでしょ?で、君の質問に対しての答えだけど、関係ないんだ」
「・・・関係ない?」
「そう俺には関係ない。冷たいと思うかもしれないけど、俺はこのままあの三人が曲が出来ずにスクールアイドルをやめたとしても、何とも思わない」
「・・・そう」
きっと西木野さんは待ってるんだ。
後押しの言葉を。
でも俺はその手助けはしない。
きっと俺が答えを出させるの簡単。
でも、答えを出すのはいつでも自分自身だ。
他人に促された答えは答えじゃない。
迷ってる時こそ、自分で答えを出すべきだ。
「でもこれだけは言っとく」
でも難しいだろうからヒントくらいは出してやるか。
「迷ってる状態の答え程、脆いものはない」
きっと君は後悔する。
この答えを出したことに。
それはまだ君が迷っているからだ。
「・・・私・・・」
「いずれにせよ選択肢は2択。やるかやらないか。より、後悔しない方を選べよ。西木野さん」
俺はそれだけ言うと、階段を降りる。
「待って!」
西木野さんが呼び止める。
俺は足を止めた。
「私、家が病院なの。将来は病院を継がなきゃいけない。病院を継ぐには勉強をしなきゃいけない。今以上に」
俺は静かに西木野さんの話を聞く。
「だから、音楽をやってる暇はないの。アイドルの曲も軽いしあまり好きじゃないって高坂先輩には言ったけど、歌詞を読んでみて違う事に気づいた。それで他のアイドルの曲を聴いてみた。確かに音楽は明るいものが多いけど、どれも歌詞が深かった。これがアイドルの曲なんだって思えたの。でも、私はこれ以上音楽を続ける事が出来ない!きっと今後音楽が私の邪魔になるから」
これが西木野さんの抱えてた迷い。
全てを吐き出した西木野さんの表情は、少し不安そうではあるがどことなくスッキリしてるように見えた。
・・・仕方ない。
素直に迷いを吐き出せたみたいだし、少し手を差し伸べるか。
「いくつか質問いい?」
「・・・ええ」
「じゃあ3つ程質問するから、絶対はいかいいえで答えて。正直に」
「・・・わかったわ」
「一つ目、音楽は好き?」
「・・・はい」
「二つ目、病院は親から継げって言われてるの?」
「・・・いいえ」
「じゃあ最後三つ目、出来るなら音楽を続けたいって思う?」
「・・・はい」
「ふーんじゃあもう答えは出てるじゃん」
「・・・え?」
「病院を継ぐ事を強制されてるわけじゃないし君が病院を継ぐとは言っても今すぐ継ぐ訳ではない。まだ高校一年生でまだ時間も充分にあるよね?だったらなんで、好きで続けたいと思える物をわざわざ捨てるんだよ」
「・・・!・・・」
「俺が言える事はただ一つ。やりたいならやれ」
「・・・やりたいなら・・・やればいい・・・」
さて、これ以上は必要なさそうだな。
もう大丈夫だろう。
「・・・私!」
「答えはいい」
「え?」
「答えを待ってるのは俺じゃない。あいつらだ」
俺は必死に踊っている高坂さん達を指差した。
「・・・よし!・・・」
踊っている三人を見た西木野さんは、決意した表情を浮かべながら階段を降りていった。
どうやら迷いは無くなったみたいだな。
「・・・あ」
「・・・?・・・」
不意に立ち止まる西木野さん。
俺の方に振り向くと、
「ありがとう」
少し照れながらお礼を言った。
その言葉に対し俺は、
「今日俺と会った事は誰にも言うなよ」
と返した。
「あいつらにでも知られたら面倒くさいからな」
俺の言葉を受けた西木野さんは、
「ふふ、わかったわ。変な人ね貴方」
少し微笑んだのだった。
「ふーん。これが答えね」
数日後、バイトの休憩時間にLINEを開くと高坂さんからLINEが来ていた。
【ついに曲が出来たよ!!】
どうやら西木野さんは曲を作る事にしたみたいだな。
高坂さんは嬉しさのあまりご丁寧に曲も貼り付けてきてるな。
なんだかんだ言って俺が背中を押した形になっちゃったけど、まぁいいか。
【良かったな】とだけ返し、LINEを閉じた。
一先ずこれでようやくμ'sの初めての曲が出来たわけだ。
まだ曲は聴いてないが、μ'sのスタートにはピッタリじゃないかな。
「冬夜ー!ごめん厨房頼む!」
「はいよー」
俺は今後のμ'sに少し期待しつつ、厨房へ向かった。
「さて、これからどうなることやら」
少し口角を上げながら静かに呟いた。
μ'sの始まりの曲。
タイトルは・・・
【START:DASH!!】
曲も出来上がり、着実にライブの準備が整っていくμ's。
そんなμ'sに残された最後の課題。
それは、歌と踊りの技術だった。
ライブまで残りわずか。
さらなる向上を図るべく、冬夜が依頼した助っ人とは?
~次回ラブライブ~
【第6話 コーチ】
お楽しみに。