この回でμ'sメンバーも全員登場します。
ただし1人だけ台詞のないキャラがいます申し訳ありません!
今回は自己最高の10000字オーバーです。本当に疲れた・・・
ちなみに次回はオリジナル回の予定です。
それでは第7話【ファーストライブ】始まります。
俺の一方的な拒絶から数日が経った。
あんな別れ方をしたからか、あれ以来高坂さん達からの連絡はない。
突然縁を切った身勝手な俺に愛想が尽きたのだろう。
そう。これでいい。
俺と関わっていても得なんて何一つない。
幸いあいつらとの関係は浅い。時間さえ経てば俺の事なんて忘れるだろう。
今この状況が俺の望んでいたシナリオだ。
「まーた暗い顔してんのか」
「・・・元からだ」
しかしコイツは別だ。
「太陽。本当にお前って変わってるよな」
「いやお前にだけは一番言われたくない」
昔からそうだ。
どれだけ突き放しても、俺が最低な言動をとっても何食わぬ顔で何事も無かったかのように話しかけてくる。
必要以上に俺と関わろうとする。
最初は無視を続けていたがあまりにもしつこく毎日のように話しかけてくるため耐えきれず俺が折れてしまったというわけだ。
今ではもう諦めてる。
「μ's凄い才能だわ。メキメキと成長してる」
μ'sとの関係を絶ってからも太陽は変わらず俺に話しかける。
しかし、その話題は全てμ'sについてだった。
「聞いてない」
「まぁまぁ俺が話したいんだから聞けって」
それからも最近のμ'sの成長ぶりについて熱く語る太陽。
何でも以前のダンスと今のダンスは月とスッポンの差があるとの事だ。
正直それは盛りすぎなような気もするが、特にツッコむ義理もないので無視している。
μ's1人1人の魅力や、太陽なりの今後のビジョン。
次の曲やどうゆうメンバーを勧誘するかまで語り出す始末。
出会ってまだ1週間程のスクールアイドルによくそこまで情熱を注げるものだな。
「そういえば、噂の巫女さんと会ったんだよ!!」
あー、東條さんね。
会えたんだ良かったな。
「噂以上に美人で本当に度肝抜かれたね!しかもあのナイスバディ!俺の見立てだとスリーサイズは・・・」
「聞いてない聞いてない!」
お前そこまでいくともうセクハラだぞ。
見ただけでスリーサイズわかるとか変態の域越えてんだろ・・・
「まぁ何はともあれ、出会えて本当に良かったよ」
「そうか。良かったな」
ていうか東條さん余計な事言ってないだろうな?
俺と東條さんが接触してたなんて知られたらめんどくさいからな。
「まぁ脱線はこのぐらいにして、本題に入るんだけどいい?」
「ダメ」
「いや言わせろよ!」
・・・じゃあ聞くなよ。
「で、何?」
戻ってこいとかでも言うつもりか?
俺は絶対に戻らないけどな。
「あのさ」
「明日、μ'sのライブあるから行こうぜ」
「・・・あ?」
え、ちょっと待って?今何て言った?
明日μ'sのライブあるから行こう・・・だと?
「おーけー。ちょっと整理しようか」
少し混乱してきた。
「まず、明日のライブについては俺も知ってる。部活紹介の奴だろ?」
「そう」
「という事はそのライブは学校でやるって事でいいんだな?」
「うん」
「なるほど。じゃあ高坂さん達が通っている学校は?」
「音乃木坂学院」
「楠木坂が男子校に対し音乃木坂は?」
「女子高」
「・・・」
「・・・」
「え?」
「え?」
「「ゑ?」」
「いやいや疑問に思わないの!?今お前女子高に入ろうって言ってるんだぞ!?」
「それがどうしたのさ」
「どうしたのってマジかお前!?」
ついにコイツ・・・女の子好きすぎておかしくなったか・・・
「μ'sのライブを観に行くんだから女子高に入るに決まってるだろ」
「いやいやいやお前大分おかしいこと言ってるぞ?」
「どこがおかしいんだよ。μ'sのライブが行われる、場所は女子高、観に行きたい、じゃあ行くでしょ」
ダメだコイツ日本語通じねぇ。
「だから、俺ら男なんだから女子高に入れないだろ」
「入れるよ」
「いや入れないって!」
「入れる!」
「マジかお前!?一体今までどう過ごしてきて・・・」
「理事長から許可貰ってるんだから入れるだろう!!」
「・・・」
「・・・」
「「ゑ?」」
「理事長から許可?」
「そう。南さんのお母さんが音乃木坂の理事長やってて、チャラ男から救ったりダンスのコーチを引き受けたお礼で特別に明日だけ入れるようになったんだよ」
「・・・あ、そう・・・」
「だから、男でも入れるしライブも観れるんだよ」
「とりあえず太陽。それを早く言えよぉぉぉ!!!!」
そして俺もなんでその可能性に気づかないんだよ!!
めっちゃ恥かいたわ!
「あーごめん。まぁそれはさておき、明日行くぞライブ」
「反省してる様子0なんですが・・・まぁいいや。ライブは行かないよ」
「なんでだよ!?あいつらもきっと喜ぶぞ!」
「いやあんな別れ方をした時点でもう歓迎はされないだろう」
「あいつらめっちゃ心配してるぞお前の事」
マジかよ・・・
なんで愛想尽きないんだよ・・・
「だから、あいつらを安心させてやる為にもお前が必要なんだ。きっとお前がいればμ'sはさらに輝ける」
「・・・俺が?」
信じられないな。
俺が必要だなんて。
「信じろ。俺を、μ'sを、そして自分を」
「・・・」
「それに、今回は何もμ'sと関わるわけじゃない。あくまでもライブを観に行くだけだ。客として」
・・・まぁ確かに前みたいに深く関わる訳じゃない。
会って話す訳でもない・・・でも・・・
「行けない」
「・・・!・・・なんでだよ!?」
根本的に行けないんだよ。
感情関係なく。
「いやバイトあるから」
これはどうしようもない。
俺も生活かかってるし。
「あーそんなことか」
「なんだよそんなことって」
「明日のバイトなら俺が店長に言って休みにして貰ったから」
ん?今何て?
「え?待って待ってなんで勝手に俺のバイト休みにしてんの?ていうかなんで店長と知り合いなの!?」
「というわけで明日よろしく」
「おい待てこら。質問に答えろよ」
「バイバーイ」
「待てって!おい逃げんな!足速っ!?」
当然運動神経抜群な太陽の全力疾走に追い付けるはずもなくそのまま逃げられた。
「・・・今度あいつ潰す」
という事があり、今俺はライブ当日を迎えている。
「いやー楽しみだなー」
隣では太陽が嬉しそうに鼻歌を歌いながら歩いている。
正直ドタキャンも考えたがそこは腹を括った。
「本当に俺も行って大丈夫なのか?」
「大丈夫だって許可貰ってるから」
「行ったはいいけど許可貰ったのがお前だけだったパターンが本当に面倒くさいんだから」
「そこは南さんに電話して許可貰ってるよ。お前も行くって話をしたら、是非来てください!って言ってたぞ」
「・・・そうかい」
そう言ってもらえるのは嬉しいんだが・・・
なんか複雑だ。
「お、見えてきたよ!あれが音乃木坂学院だ!」
そうこうしている内に目的地に到着。
意外と早かったな。
「じゃあまずは理事長室に行くか」
「・・・どこにあるかわかるのか?」
「あー・・・なんとかなるべ」
太陽はそう言うと平然と音乃木坂の中へ入っていった。
・・・ていうかあいつ何処かわかってないのかよ!?
それによくあんなに平然と女子高歩けるよな・・・
少しは恥じらいとかないわけ?
「・・・ハァー・・・」
俺はため息をつきながら太陽の後を追った。
「ここだな」
校内を彷徨いた結果、意外とあっさり理事長室を発見した。
「本当に地獄だった・・・」
「大袈裟だって」
案の定女子生徒からの視線を浴びながら歩いていた訳だが、こいつが超絶イケメンだという事を忘れていた。
「何あの人、凄い格好良くない?」
「私タイプ・・・」
「あー名前何て言うんだろう?話しかけちゃおうかな・・・」
「好き・・・」
と言われる始末。
「やっぱ女子高だけあって楠木坂より綺麗だな!」
当の本人は全く気づく様子もないが。
憎たらしい。
一方の俺とはいうと・・・
「何あの人気味悪い・・・」
「髪の毛長っ・・・」
「気持ち悪い・・・」
「なんで男がここにいるんだろう・・・」
「嫌い・・・」
酷評である。
うんまぁわかってたよ?
俺の風貌人間受け悪いからさ。
別に今更気にするとかは無いんだけど、一つ言いたい事はどんなにひそひそ話しても俺には筒抜けだって事。
昔から周りを気にするあまり聴力が磨かれ読唇術も出来るようになった。
今となっては相手の表情、口の動き、態度などその他諸々で相手の心が少しわかるようになってしまった。
はいそこ気持ち悪いとか言わない。
「じゃあ入ろうか」
理事長室の扉をノックする太陽。
すると中から女性の綺麗な声で、はいと返ってきた。
「失礼します」
扉を開け、中に入った。
「朝日太陽君と氷月冬夜君ね?娘がいつもお世話になってます」
中に入ると、南さんとそっくりの髪型をした大人な女性が椅子に座っていた。
この人が南さんのお母さんか・・・
若すぎだろ。
「今回はライブ鑑賞の許可をいただきありがとうございます!」
「ありがとうございます」
頭を下げる太陽に習い、俺も頭を下げる。
「娘がよく貴方達の話をするのよ」
「そうなんですか」
「ええ、とっても頼りになるって。改めてお礼を言わせて頂戴。娘を助けていただきありがとうございます」
深々と頭を下げる理事長。
「あ、頭を上げて下さい!俺達は当然の事をしたまでです」
「大した事してませんし」
そう。本当に大した事はしてない。
「いえいえ、そんな謙遜しないで下さい。貴方達が居なかったら娘はどうなっていたことか・・・」
「大事にならずに本当に良かったです」
それは同感だ。
でも出来ればもうあんな真似はしたくない。
「何かお礼をと思ったのですが、すいませんこんな事しかできなくて・・・」
なるほど、許可を貰えたのはそれが理由か。
「いえいえ充分です!ありがとうございます!」
「優しいのですね」
お、これは親に気に入られて後々自分の娘を薦める展開になりそうだな。
コンコン。
突如扉をノックする音が室内に響いた。
俺達はすぐさま扉の方に視線を移した。
「丁度来たみたいね。どうぞ」
「失礼します」
「失礼します」
二人の女性の声と共に扉が開かれた。
入ってきたのは金髪ポニーテールの女性と、以前神社で会った巫女の人だった。
「・・・え?」
東條さんとは面識のある太陽も驚いていた。
「紹介するわね。こちらが貴方達をライブの会場まで案内してくれる生徒会長の絢瀬さんと副会長の東條さんよ」
「絢瀬絵里です。よろしく」
「東條希や。よろしくね」
無表情での挨拶である絢瀬さんに対しニッコリと微笑む東條さん。
ていうか東條さん副会長だったのかよ・・・
「朝日太陽です。よろしくお願いします!」
あぁ面識ある事は言わない感じね。
「・・・氷月冬夜です。よろしくお願いします」
「じゃあ絢瀬さん、東條さん。案内よろしくね」
「わかりました、では行きましょう。失礼します」
「失礼します」
足早に理事長室を出ていく絢瀬さんと東條さん。
「失礼しました!」
「失礼します」
俺達も二人を追いかける形で理事長室を後にした。
「久しぶりやな氷月君」
理事長室を出てライブ会場に向かう途中で早速東條さんが口を開いた。
「お久しぶりです。もう会うことはないかと思いましたが」
「ふふ、うちはわかっとったで?」
東條さんはそう言うと1枚のタロットカードを取り出した。
・・・相変わらずの謎キャラだな。
「え、お前東條さんと面識あったの?」
「あった」
そういえば太陽には言ってないんだった・・・
「なんで教えてくれないんだよ!」
そうやってお前が騒ぐからだよ。
「希、彼らと知りあいなの?」
「ちょっとね。神社で会ったんよ」
「そう。貴方達」
不意に立ち止まる絢瀬さんに俺達の足も止まる。
「はい」
「女子高だからってあまり騒ぎすぎないように」
絢瀬さんはそれだけ言うと、再び歩き出した。
「・・・なんか、結構キツイ人だな絢瀬さんって」
ひそひそと話す太陽。
確かに生徒会長とはいえ少し堅いな。
まぁ初対面だし仕方ないだろう。
女子高に男がいる現状だし。
「もう着くで」
東條さんの言葉と同時に大きな扉が目の前に現れた。
「ここは講堂。ここでライブが行われるわ」
「大きい扉だなー・・・」
「それにしても物好きね。有名でもない結成されたばっかりのスクールアイドルのライブを見に来るなんて」
絢瀬さんの言葉に太陽は少し表情を曇らせた。
しかし表情をすぐ元に戻し、
「知り合いなんで」
と返した。
ふむ、絢瀬さんは何か裏がありそうだな。
「・・・おかしい」
ライブが行われる講堂の前に来たわけだが、一つの違和感に気づいた。
「氷月君も気づいた?」
いつの間にか俺の隣に立っていた東條さんが口を開いた。
東條さんも気づいていた様だな。
「人の気配がない」
「そうなんよ」
ライブ開始が16時。
そして現在の時刻は15時55分。
ライブ開始5分前であれば少しくらいは話し声やガヤガヤした物音などが聞こえてきてもいいはず。
しかし一向に人がいる気配が感じられないということは・・・
「μ'sにとっては大きな試練となるわけだ」
「・・・どうゆうことだ?」
「・・・今にわかる」
どんな結果になっても受け止めなければいけない。
現実を受け入れ、これが今の自分達の実力なんだと。
「じゃあ開けるわよ」
大事なのは、そこから何を学び得るか。
これも、通過点か・・・
ギィィと軋む音を立てながら講堂の扉が開かれた。
視界に映る講堂内の全貌。
そして同時に知ることになった現実。
「嘘・・・だろ・・・」
太陽が小さく呟く。
「当然の結果ね」
一方の絢瀬さんは表情を変える事なく淡々と話す。
「・・・」
東條さんはただ黙っていた。
ライブ開始5分前。
客で賑わっているはずの講堂内は、静寂に包まれていた。
「・・・なんでだよ・・・」
ぽつり。小さく太陽が呟く。
「ここまで頑張ったのに・・・チラシを配ったりダンスや歌の練習・・・日々の体力作りも・・・必死に・・・」
俯く太陽。
誰一人として口を開く者はいなかった。
「・・・間に合わなかったか」
すると後ろから三人の女子がやってきた。
この三人は確か外でチラシ配ってたな。
学校内に向かう途中で一瞬視界に入ったのを覚えてる。
「あ、朝日君・・・」
三人は俯く太陽に気づくと歩み寄った。
「ごめんね、間に合わなかった・・・」
「・・・ヒデコさん・・・」
どうやら三人と太陽は面識があるみたいだな。
「・・・彼女達は?」
「2年A組のヒデコさん、フミコさん、ミカさんや。高坂さんと同じクラスでμ'sの裏方の手伝いをしてるんよ。朝日君と面識がみたいやね」
「なるほど。なぜ彼女達だけ名字ではなく名前なんですか?」
「それは・・・秘密や」
・・・そんなニッコリ微笑みながら言われても。
「氷月君・・・で合ってる?」
「合ってるよ。名前はミカさんだっけ?」
「そう。君の事は朝日君から聞いてるよ」
・・・あいつ余計な事言ってないだろうな?
「ごめんね・・・μ'sの初めてのライブがこんな形になっちゃって・・・」
「別に謝る必要はないよ。客がいないのは仕方ない。俺も予想してなかったわけじゃないし」
「・・・え?」
「むしろ当然だと思った。思い付きで結成されたスクールアイドルのライブに客が集まるとは思えない」
これで客が集まってる方がビックリだけどな俺は。
「大事なのはこの現実を受けてμ'sがどう動くかだ」
俺はそう言うと落ち込んでる太陽の元へ歩いていった。
「おい太陽。いつまで落ち込んでるんだ?」
「・・・冬夜・・・」
「俺達はライブを見に来たんだ。さっさと行くぞ」
「・・・冬夜は何とも思わないのか?この現状を見て」
「何も思わない訳じゃない。でも、あいつらのライブを見届ける事以外に今俺達に出来る事はない」
「・・・」
「お前がそんなんで、誰があいつらを支えるんだよ」
こうゆう時こそコーチであるお前があいつらを支える場面だ。
辛いのは太陽よりもあいつらだから。
「そう・・・だよな!俺がメソメソしてたら何も始まらないもんな!」
「わかりゃいいんだよ」
太陽が立ち直り、俺達は講堂の中へ入っていった。
「本当に・・・誰も来ないんだな・・・」
ライブ開始1分前。
現状は変わらずだった。
太陽の声が悲しく響いた。
「前に行かなくていいん?」
「はい。ここで大丈夫です」
一番前の椅子に座っている太陽に対し、俺は扉横のスペースに立ちボーッとステージを眺めていた。
そしてなぜか隣には東條さんもいた。
「東條さんこそいいんですか?」
「うん、ここの方が見やすいから。いろいろとね」
いろいろ・・・ね。
いちいち含みを持たせる言い方するな。
「もう、始まるね」
「そうですね」
「この現状を知ったら、彼女達はどんな表情をするんやろか?」
「さぁ?やっぱり凄いショックなんじゃないですか?」
「・・・でも、ここで終わってほしくない」
珍しく不安そうな表情を浮かべる東條さん。
そんな表情もするんだな。
「終わらないでしょう。高坂さんは特に」
「・・・え?」
不安そうな表情を浮かべる東條さんに向かい、俺は言った。
そんなに関わった訳でもないし関係性も薄いけど、なんとなくわかる。
μ'sはまだ終わらない。
「幕、上がりますよ」
「・・・うん。楽しみやね」
チラリと横目で東條さんの表情を見る。
不安そうだった表情は無くなっており、雰囲気が少し明るくなった。
そしてついに、幕が上がる。
ゆっくりと幕が上がり、三人の姿が見えてくる。
足、体。
この日の為に仕上げたのだろう。
三人の衣装は一から作ったとは思えない程完成度は高かった。
そして幕は上がっていきついに、三人はガランと空いた客席を目の当たりにした。
「え・・・」
三人の表情が次第に絶望に染まっていく。
たくさん練習した。
イメージトレーニングもした。
チラシも配った。
この日の為にたくさん準備した。
たくさん緊張して、勇気を持ってステージに立ち華々しく飾る予定だった初舞台。
しかしそれは呆気なく崩れていく。
棒立ちの彼女。
静寂に包まれる講堂。
沈黙を破ったのは高坂さんだった。
「・・・当たり前だよね・・・」
「穂乃果・・・」
「穂乃果ちゃん・・・」
「私ね、たくさんお客さんがいると思ってた。チラシも配ったし、いっぱい宣伝もしたし、当たり前にお客さんで埋まってると思ってた」
高坂さん以外に口を開く者はいない。
「でも、よく考えたらスクールアイドルも思い付きで始めたしライブをやる事になったのも急だったし、お客さんが集まらないのも無理はないよね」
高坂さんの言葉が悲しく響く。
「そりゃそうだ。世の中そんなに甘くないっ!」
そう言うと高坂さんはニコリと笑ってみせた。
しかしそれは悲しさと悔しさが入り交じった綻びだらけの笑顔。
涙を必死に堪えているのがわかった。
「・・・うっ・・・」
「・・・」
南さんと園田さんは静かに涙を流していた。
「・・・氷月君、声かけなくていいん?」
「それは俺の仕事じゃないんで」
そう。心が折れたあいつらを突き動かすのは俺の役目じゃない。
こうゆう時こそお前の出番だぞ太陽。
「やろうよ!」
「・・・朝日君・・・」
勢いよく立ちあがった太陽に顔を上げる三人。
「しようよライブ!この日の為に練習したんだろ?」
「でも・・・お客さんがいないんじゃ・・・」
「いるよ!」
「・・・え?」
「俺がいる!それに生徒会長の絢瀬さんだって副会長の東條さん、ヒデコさん、フミコさん、ミカさんだって・・・冬夜だっているぞ!」
「・・・!・・・氷月君が?」
太陽の言葉に反応し三人が俺を見つめる。
バカあの野郎!折角目立たないようにしてたのに!
「客だったらいる!練習の成果をここで見せなきゃいつ見せるんだよ!俺達が見守ってるから、ライブやろうぜ!」
太陽の言葉に三人の目に光が宿り始める。
その時だった。
「・・・あれ、もう終わっちゃいました?」
ギィィと講堂の扉が開き、現れたのは三人の女の子。
一人は眼鏡をかけた大人しそうな女の子。
もう一人はオレンジショートの活発そうな女の子。
そしてもう一人は西木野さんだった。
なーんだ。ちゃんといるじゃん客。
「ごめんなさい!遅れちゃって・・・」
「もう、西木野さんがモタモタしてるからだにゃー!」
「わ、私はそもそも見に行きたいだなんて言ってないわよ!」
いや結果来てるじゃん。
後にゃ?
・・・ツッコんでたらキリないしいいや。
「やろう!」
新たな三人のお客さんの登場に完全に立ち直った高坂さん。
「うん!穂乃果ちゃん!」
「やりましょう!」
それは他の二人も一緒だった。
「じゃあいくよ!」
ついに始まる。
「今日は集まり頂きありがとうございます!」
μ'sの、原点となる。
短い時間ですが、楽しんで頂けたらと思います!それでは聴いてください!」
最初の、始まりのライブが。
「START:DASH!」
μ'sが、輝く。
「ありがとうございました!」
結論から言うと、以前見た時とは全く違った。
ダンスと歌は多少の間違いはあるが前よりは極端に少なく、動きのキレもいい。
コンビネーションもスムーズに行えており、表情も終始笑顔をキープ出来ていた。
まだ拙い所やミスはあれど、前よりは見違えるほどに上達しており何より楽しんで行っているのが伝わった。
ここまで成長するとは恐るべしμ's、恐るべし太陽。
ライブ中は太陽や西木野さんを含む三人の女の子は目を輝かせており夢中であった。
ちなみにいつからいたのかは知らないがツインテールの女の子もいた。
何やら険しい顔つきで観てたけど。
ライブ後は直ぐ様拍手をし、太陽と眼鏡っ子と猫娘から絶賛の声が飛んだ。
「へぇー・・・やるじゃん」
「見直したやろ?彼女達の事」
「少しは」
「なんや素直じゃないなー」
「素直ですけど」
全員がライブの余韻に浸る中、ただ一人ステージに向かい歩いていく人がいた。
「どうするの?」
「・・・生徒会長・・・」
そう、絢瀬さんである。
何やらμ'sの事を良く思っていないっぽいし何か思う事があるんだろう。
「私と希は生徒会として貴方達の活動が健全な物かどうかを確認しに来ただけ。そっちの女の子三人は裏方。最後に現れた女の子三人と他校の生徒である朝日君と氷月君を含めたらお客さんはたったの5人。お世辞にも成功とは言えないライブだったけど、貴方達はこれからも続けるの?」
正確には6人ですけどね。
ツインテールの子も入れたら。
「正直このまま続けても意味はないから辞める事をお勧めするけど」
すると絢瀬さんの言葉に太陽が反応した。
「ちょっとそんな言い方・・・」
「太陽」
すぐさま俺は太陽を止めた。
「・・・冬夜・・・」
俺は太陽の元へと移動すると肩に手を置いた。
「今はその時じゃないやめとけ」
「でも・・・あんな言い方・・・」
「いいから大人しくしてろ。ここは俺達が首を突っ込む場面じゃない」
「・・・わかった」
「お騒がせしました。続きをどうぞ」
全く、こうゆう時よく暴走するから危険だ。
「・・・で、話を戻すけど貴方達の答えは?」
真っ直ぐ高坂さんを見つめる絢瀬さん。
そんな絢瀬さんの問いに高坂さんは直ぐ様答えた。
「続けます!」
「・・・どうして?ライブは失敗したのよ?」
「確かにお世辞にも成功したとは言えません。でも、私は失敗とも思ってません。お客さんが集まらないのは当たり前なんです。思い付きで始めて急にライブの告知をして、こんなんじゃお客さんが集まるわけがありません。氷月君や朝日君や西木野さん達を含めた5人が来てくれただけでも奇跡です!」
さらに高坂さんは続ける。
「最初から上手くいってるグループは成功しないんです。ある程度上手くいっちゃうと途中で落ちた時に立ち直れなくなるから。最初から辛さを経験しているグループが成功する。だから、今回のライブも見方を変えれば成功なんじゃないかなと思うんです」
それ、俺が前言った言葉じゃないか?
「これは氷月君の言葉なんですけどね」
エヘヘと笑いながら言う高坂さん。
「冬夜いい事言うね」
やめろ恥ずかしい。
それ以上喋るな。
「私達はこの経験を無駄にはしません!この経験を糧にこれからも頑張っていきます!そしていつの日か・・・」
「この講堂を満席にしてみせます!」
「・・・大きく出たな」
「よし、それでこそμ'sだ!」
ていうか高坂さん二人の許可なしに発言しただろ。
南さんと園田さんが凄い驚いた顔してるぞ?
「・・・それが貴方達の答えね?」
「はい!」
「・・・好きにしなさい。ただし、学校に泥を塗るような真似だけはしないことね」
絢瀬さんはそう言うと講堂を去っていき、東條さんも後に続いて去っていった。
そういえばツインテールの子も気づいたらいないな。
「・・・くそ!必ずあの会長をギャフンと言わしてやる!」
・・・凄いやる気だな太陽。
「今日は来てくれてありがとう!えっと・・・」
「あ、小泉花陽です!」
「星空凛です!」
「うん!花陽ちゃん、凜ちゃん、真姫ちゃんありがとう!」
眼鏡っ子が小泉さんで猫娘が星空さんね。
よし覚えた。
「朝日君と氷月君もありがとう!」
「コーチとしては当然だよ!」
「俺は別に太陽に連れられただけだし」
ほぼ強制的にな。
「で、高坂さんいいのか?あんな事言って」
「そうです!勝手に講堂を満席にするなんて!」
「私もそれはちょっと不安かな・・・」
高坂さんの講堂満席発言に弱気になる園田さんと南さん。
「大丈夫だよ!」
「その自信はどこから来るんですか・・・」
「頼りになるコーチもいるし!ね、朝日君!」
「おう!任せろ!」
「氷月君も!」
・・・え?なんで俺も入ってんの?
「いや俺は・・・」
「私はまだ氷月君を諦めてないならね!」
いや諦めろよ!
「頑張って下さい!私応援してます!」
「凛も応援してるにゃ!」
「ありがとう!小泉さん、星空さん」
「ほら西木野さんも!」
「え?わ、私も!」
「当たり前だにゃ!」
「わかったわよ!そ、その・・・応援してます」
「ありがとう西木野さん!」
「あ・・・え、えっと・・・別にお礼を言われるような事じゃ・・・」
西木野さんは素直になれない典型的なタイプだな。
「冬夜」
「なんだ?」
「女子高っていいな」
「気持ち悪い」
しばらく黙ってて貰っていいかな?
折角さっきは格好良かったのに・・・
「とりあえずライブも終わったし帰るわ」
「え、もう!?もう少しゆっくりしていけばいいのに・・・」
「いやここ女子高だぞ?いくら許可得てるとはいえ用も無く長居するのは違うだろ」
それに俺の心がもたん。
「そうですよ穂乃果。あまり引き留めては可哀想です」
いやー園田さんは気配りが出来て素晴らしい!
少しは見習ってほしいものだ。
「でも、氷月さん」
「ん?」
「また、練習見に来てくださいね?」
ニコリと微笑む園田さんに少し可愛いと思ったのは内緒だ。
「・・・考えとく」
「私も、もっと氷月君と会いたいな」
南さん、その発言はいろいろ誤解を生むからやめなさい。
「南さん。勿論深い意味はないよな?」
「え?・・・あ・・・」
自分の発言の意味に気付いたのか頬を赤らめる南さん。
ツッコまなければ良かった・・・
「さ、太陽帰るぞ」
少し脱線してしまった。
さっさと隣で萌えている変態を連れて帰らないと。
「え、俺はもう少し・・・」
「これ以上は【迷惑】になるから帰るぞ」
「なんで迷惑だけ強調するの!?ていうか襟引っ張るのやめて!歩けるから!自分で歩けるからぁぁぁ!!」
俺は太陽を引き摺りながら講堂を出ていった。
「なんか、面白い人達だったね」
「うん。面白かったにゃ」
「でもとっても頼りになるんだよ?あの二人」
「そうですね」
「うん。一緒にいて安心するよね」
「でも心を見透かされてるようで少し怖いけど」
「・・・あれ、それってもしかして氷月君の事?西木野さん」
「・・・え?」
「確かに氷月さんは頼りになるけど嘘とか通じなさそうでちょっと怖いですね」
「あれ、なんで西木野さんがそれ知ってるのかな?」
「・・・もしかして西木野さん・・・」
「あの人達と面識あるにゃ?」
「あ・・・えっと・・・」
「これはダウトだよ!さぁ洗いざらい話してもらうからね西木野さん」
「な、何それイミワカンナイ!!」
その後、冬夜と会った時の事を全て話す事になった真姫であった。
「いやー楽しかったなー」
帰り道。
ゆっくり歩きながらライブの事を思い出していた。
「冬夜も楽しかっただろ?」
「え?まぁ楽しかったかな」
とりあえず来て良かったとは思えたかな。
まぁこんな事言うと太陽が調子に乗るから言わないけど。
「お、珍しいな冬夜が楽しかったって言うなんて」
「俺だって楽しいと思う時ぐらいあるわ」
失礼なやつだな。
「じゃあ今後はもう少し関わるのか?μ'sと」
「それはどうかな」
「・・・お前なぁ、いい加減過去に縛られて生きるのはやめろって」
「・・・」
「お前は悪くないんだからさ。いくらお前が・・・」
「太陽」
「・・・ごめん」
「わかってるよ。過去に縛られたままじゃダメだって事くらい。でも、まだ俺は自分の過去に蹴りをつけられない」
「・・・」
「もう少し、時間をくれないか?」
「・・・ああ」
「・・・よし、この話はやめよう。折角だから何か食べて帰ろうぜ。お前の奢りな」
「え!?なんでだよ!」
「何食べようかな・・・」
「勝手に決めんなって!」
自分の過去との向き合い方をまだ見つけられない。
自分の過去に蹴りをつけるまでは・・・
自分の心からこの傷が払拭されるまでは・・・
俺は、あいつらと関われない。
きっとこのままあいつらと関わればμ'sの輝きを邪魔してしまうから。
今回はライブがあり太陽にほぼ強制的に連れてこられた形になったから会ったが、もうあいつらに会う理由もない。
もうしばらくは会う事は無くなるだろう。
そしてあわよくば、このまま俺の事を忘れてくれる事を願う。
「・・・ほう、面白い結果やね」
音乃木坂生徒会室。
タロットカードを眺めながら東條希は怪しく微笑む。
「氷月冬夜君。運命からは逃げられないよ」
近い未来、冬夜の全てを大きく変える事をまだ彼は知らない。
「・・・いよいよ本格的に進める時が来たみたいですね。もう既に廃校になる事は知らせましたし、これ以上の復刻は正直望めません」
場所は変わり理事長室。
真剣な表情で誰かと電話でやり取りをしていた。
「はいありがとうございます!本当にご迷惑をお掛けします。では、正式に進めていきましょう。【音乃木坂、楠木坂統合化計画】を」
まだ物語は始まったばかりである。
抗えない運命。
回り出す歯車。
「いやなんでこうなってんの?」
ファーストライブが終わりμ'sとの関わりが無くなったと思っていた。
しかし、そんな冬夜を待ち受けていたのは衝撃的な現実だった。
~次回ラブライブ~
【第8話 統合化計画】
お楽しみに。