異世界ウェスタン ~Man With Gray Eyes~   作:せるじお

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第14話 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト

 

 

 狙うべき標的は定まっている。

 ヘンギースと、白のヴィンドゥールの二人だ。

 他の連中はいかに図体がでかくとも、凶暴な顔をしていようとも、見るも恐ろしい蛮刀を構えていようとも、所詮は「雑魚」に過ぎない。恐ろしい頭目と、恐ろしい魔法使い。この二人を斃されてなお、私に挑むようなガッツは無い。連中は賊なのであって軍人でも戦士でもない。死を賭して私と戦い、誇りを全うする義理も義務も無いのだ。

 つまり、一番怖い二人さえ斃してしまえば良い。

 だが話通り行けば早いのだが、そうは問屋が卸さない。

 

『囲め囲め!』

『馬から引きずり落とせ!』

『もう構うこたぁねぇ!戦利品を気にしてる場合じゃねぇんだ!馬ごと殺しちまうんだ!』

 

 ヘンギースは手下どもを上手く盾にしながら駆けまわり、私を包囲すべく的確な指示を出している。

 白のヴィンドゥールも私から一定の距離を取って、それを保ちながら私を観察し続けている。お仲間の魔法使いをすでに二人も斃されているのだ、慎重にもなろう。私がオーク共と戦って消耗するのを待っているのだ。

 ――ならば私の採る手はひとつ。

 ヘンギース目掛け、立ち塞がる敵を蹴散らしながら突っ込み、仕留める。その後に動揺するであろう雑魚は捨て置いて、白のヴィンドゥールとの一騎打ちだ。

 

『くたばりやがれ!』

 

 まずは手近な相手から片付ける。前方の三騎。右から小槍、蛮刀、そして弓だ。

 誰から狙う?言うまでもない。

 

『げが!?……畜生、この程度――』

 

 弓持ちに右手のコルトで一発。だが照準がぶれた。当たったのはヤツの肩だ。

 そこで、相手が撃たれて体勢が崩れたところを、左のコルトでもう一発。

 

『――でぼわぁ!?』

 

 今度は胸板に見事的中する。これで最初に飛び道具持ちを仕留められたが、二発撃つ間に槍と蛮刀の二騎が私に迫っていた。

 

『クソが!』

『死ねや!』

 

 咄嗟に屈んだ。ついさっきまで頭があった空間を、横殴りの蛮刀が通り抜けていく。

 しかし迫る刃を避けてもまだ穂先が残っている!

 私は屈むと同時に、左のコルトの銃口を槍のオークへと向けていた。尖った先が私に突き刺さる――よりも髪の毛一本分ほどの時間だけ、私がコルトの引き金を弾くほうが速かった。

 

『ぎゃ!』

 

 弾丸は槍持ちオークの土手っ腹に突き刺さった。その衝撃でヤツの穂先の照準が私より外れ、あらぬ所を空振りする。だが一発の36口径ではヤツを殺すには足りない。

 だから右手のコルトが火を噴いた。土手っ腹に二発。ヤツも堪え切れずにボルグから落ちる。

 

『今度こそ死ね!』

 

 私が槍持ちが地面に落ちるのを見届ける間もなく、蛮刀持ちが次の一撃を切っ先を天へと向けて振りかぶる。

 二丁のコルト、そのどちらも構え、狙い、撃つには間に合わない。ならばどうする?

 

「ふんぬ!」

『がべっ!?』

 

 近づきすぎたの運の尽きだ。その馬鹿でかい豚鼻に、私はグリップ(銃把)の一撃を叩き込んでやった。

 盛大に鼻血をまき散らし、顔を仰け反らせる。痛みに耐えてヤツが私に向き直った時、その鼻先にはコルトの銃口があった。引き金を弾く。今度は鼻血では済まない血をまき散らし、ヤツは絶命する。

 右のコルトの残弾が3発、左のコルトが4発。5発も費やして斃した敵は雑魚が3匹。

 立て続けの戦闘に、私は体力をじりじりと消耗しつつあった。右手は震え、射撃の精度は落ちている。

 それでもお構いなしに、新手が私を殺すべく迫ってくる。

 私は二丁のコルトの撃鉄を同時に起こし、殆ど同時に撃った。

 

『うわぁ!?』

『ひぇっ!?』

 

 銃口の向く方にいたオークたちが、思わず身を縮こまらせる。だが、弾丸は当たっていない。

 当然だ。私は当てようと思って撃ったのではないのだ。

 

「ハイヤァァァァァァッ!」

 

 私はヘンギースに至るまでの途上にいる、全ての雑魚オーク共達目掛けてコルト・ネービーを乱れ撃ちにした。

 一か八か、私はもう一度賭けに打って出ていた。もはや、雑魚をいちいち相手にしている余裕は私には無かったのだ。目指すは、ヘンギースただ一人。青のヴィンドゥールの時は賭けに負けたようなものだが、今度こそ勝ってみせる。いや、勝たねばならないのだ。勝たねば私とエゼルは、死ぬ。

 これまで散々にコルトの威力を見せつけられたせいか、その銃声と硝煙のみで敵のオーク共は身を竦ませていた。無論、弾は当たっていないので、モタモタしていれば一時的な混乱と恐れを抜け出し、私の背中へと迫ってくるだろう。

 その前に、ヘンギースを仕留める!

 

「ヘンギィィィィィス!覚悟しろ!」

 

 二丁のコルトの全弾を撃ち尽くす頃には、ヘンギースへと至る一直線の路が出来上がっていた。

 遮るモノは、何一つ無い。私とサンダラーはヤツを目指し、疾走した。

 

『……』

 

 ヘンギースは地面へと唾を吐き捨てると、巨大な蛮刀を構え、私の方へとボルグを駆けさせた。

 ヤツも、覚悟を決めたのだ。

 

『うぉぉぉぉぉ!殺してやらァァァァ!』

「上等だ!来い!」

 

 私は右を3発、左を3発撃ち切った所でコルトを収め、代わりにペッパーボックスを抜いた。

 まさかこの大一番で、こんな骨董品に頼る破目になるとは思わなかった。

 ――それでも、今はコイツだけが頼りだ。

 左手でペッパーボックスを構え、ヘンギースへと向ける。こいつはコルトに比べて命中精度で著しく劣る。間合いを詰めねばならない。

 お互いがお互いへと向けて疾駆しているのだ。すぐに、間合いの距離にヤツが入った。

 撃つ。

 

『シャァァッ!』

「!?」 

 

 ここで信じられないことが起きる。

 ヘンギースの手にある巨大な蛮刀。そのぶ厚い刀身で、ヤツが銃弾を防いだのだ。

 古臭い丸弾とは言え、47口径だ。いかに刃が厚くとも、いかにヘンギースが巨体の持ち主でも、その衝撃を受け止めるとは尋常ではない。

 だが、そんな幸運は二度も続くまい。

 私はペッパーボックスの引き金を弾いた。ペッパーボックス・ピストルは基本的にダブルアクションだ。つまり、撃鉄をいちいち起こす必要は無く、引き金を弾き続ける限り弾が尽きるまで連発できるのだ。

 照準を動かし、2発目を撃てば――防がれる!

 我が目を疑いながら、もう一発撃つ。3発目も防がれる!

 ――これはもう偶然でも幸運でもない!

 

「糞ったれ!」

 

 罵りながら4発目を撃つ。当然、狙いう場所はずらしている。それでも防がれた!

 ヤツは会心の笑みを浮かべながら、私に迫り来る。

 どれだけヤツが人間を超えた体の持ち主でも、弾丸の速さを見切ることは不可能だろう。推測だが、私の目の動きや手首の動き、そして銃口の向きからおおよその弾道を予測し、そこに蛮刀の盾を滑りこませているのだ。

 ――化け物め!化け物め!化け物め!もうそれ以外に言うべき言葉が見つからない。

 手綱を握った右手を腰の辺りに持って行き、左手は真っ直ぐに伸ばす。

 そして狙う。どんどん近づいてくるヘンギース目掛け、狙い、撃つ。

 5発目、そして6発目。だがそのどちらもが防がれる。

 弾は切れた。引き金を弾いても、もう弾は出ない。

 ヘンギースはもう目の前だった。

 ヤツは笑っていた。悪魔のような満面の笑みを浮かべていた。

 

『死ね!』

 

 馬鹿でかい蛮刀を振り下ろすべく掲げる。

 あれの一撃を喰らえば私どころか、サンダラーまで真っ二つにされてしまうだろう。

 それを免れる術は私には有るのか?無論――……。

 

『――ねが!?』

 

 ――有る。

 

 腰元にやっていた右手は、ペッパーボックスを撃ち切る頃には既に、コートの下に滑りこんでいた。

 震えを力づくで抑えこみ、「そいつ」を握る。それは腰ベルトに挿しておいたナイフの柄であった。

 コートの端がパッと、鳥の翼のように広がり、はためいた。

 振りぬかれた右手からはナイフが一直線にヘンギースの喉元へと飛び、深々と突き刺さったのだ。

 ヤツの意識は一瞬とはいえ、防御ではなく攻撃に移り切っていた。その隙を、私は突いた。

 

『がぼぼぼ!?』

 

 ヤツは蛮刀を取り落とした。喉を掻きむしり、刺さったナイフを抜こうとして藻掻き、ボルグの上でバランスを崩す。

 ヘンギースの巨体は落下した。砂埃が舞い上がり、その内からはくぐもった悲鳴が飛び出す。ヤツはしばらくの間のたうち回っていたが、遂に地面を朱に染めて動かなくなった。ヤツのボルグが、死せる主の傍らで立ち止まる。そしてクゥウンと短く哭いた。

 

「――」

 

 私は死んだヘンギースから視線を外し、ぐるっと首を回した。

 信じられないモノを見る目で、生き残りのオークたちが私を見つめていた。

 改めて、地に斃れた巨体に目を遣る。……なる程、確かに死んだのが信じられないのも無理は無い。

 だがヘンギースは死んだ。私が斃したのだ。

 

「……」

 

 私は連中へとペッパーボックを構えてみせた。無論、弾倉は空っぽだがこの場合はそれで充分だった。

 

『うわぁぁぁぁぁ!お頭が死んだぁぁぁ!?』

『も、もうだめだ!?』

『ずらかれ!ずらかれ!』

 

 雑魚共は怯え、尻尾巻いて逃げ出したのだ。

 弾道を見切って防いでみせるような、あの恐ろしく強い頭目が殺されたのである。もう私に立ち向かおうなんて気概は、連中には無い。

 一目散に逃げる連中の姿は、すぐに遠くなり、じきに見えなくなった。

 この場に残ったのは私とエゼル、ごろごろと転がった死体と――ただ一人逃げ出さなかった魔法使いだ。

 白のヴィンドゥール。ヤツは私の姿を遠くからジッと眺めていた。

 

『……』

 

 ヴィンドゥールが自身のボルグから降りた。その右手にだらりと自身の杖を垂らしながら、私の方へ歩んでくる。

 浴びせてくる殺気に満ちた視線から、ヤツが何を意図しているのかを私は理解した。私もサンダラーから降りる。そして鞍にねじ込んでおいたエンフィールドを引っこ抜いた。私もまた右手にライフルを垂らしながら、ヴィンドゥールの方へと歩み出す。

 乾いた風が通り抜ける曠野。

 私達は向い合って歩く。陽炎に揺らぐ空気を通りぬけ、歩き続ける。

 歩きながらエンフィールドに弾薬を装填する。薬包を噛み切り、火薬を流し込み、弾丸を銃口に嵌め込んで、槊杖で突き固める。雷管を取り付け、撃鉄を起こす。

 その間も、私もヴィンドゥールも歩みを止めない。エンフィールドの発射準備が終わる頃には、私達は50ヤードほどの距離を隔てて向かい合っていた。

 ここに居るのは私とヤツのみ。そしてヤツは私を殺したがっているし、私はヤツに殺されてやる義理はない。

 ――つまり決闘だ。

 

「……」

『……』

 

 白のヴィンドゥールが途中で私の左側に回りこむような、弧を描いて歩き出した。

 私はそれに応じて、ヤツの右側へと回りこむように、弧を描いて歩き出す。

 互いに円を歩みで描きながら、徐々に徐々に間合いを詰めていく。

 視線ははずさない。私がヤツを見る。ヤツが私を見る。距離は縮まり続ける。

 ――10ヤード。

 示しを合わせていた訳でも無く、互いにそこで歩みを止めた。

 真っ向から、向き合った。

 

「……」

『……』

 

 ヤツの手には軽い杖。私の手には重たいライフル。加えてヤツには得体のしれぬ魔法の技の数々がある。

 不利はあからさまに私だった。だが私には、敵に向ける背が無いのだ。

 それに――。

 

『オッサン!』

 

 私の思考はここで途切れた。エゼルの声だ。エゼルが私を呼ぶ声が聞こえた。

 それが合図だった。

 私も、白のヴィンドゥールも殆ど同時に動いていた。

 ヤツの杖の先が跳ね上がり、私を狙わんとする。

 

 ――銃声。

 

 ヤツの、白のヴィンドゥールの体が揺れる。

 火を噴いたのは、右手のエンフィールドではない。

 左手に握られたコルト、その弾倉だけに1発だけ残されていた銃弾が、ヤツの胸板に突き立つ。

 左手から、コルトがこぼれ落ちる。真鍮のフレームに陽光が当たり、四方に散って輝いた。

 右手に、残った全ての力を込める。跳ね上がったライフルの銃口はヤツを擬した。

 白のヴィンドゥールは撃たれながらも杖を構え続けていた。その先端で、風のうねりが起きたように見えた。

 それが放たれるよりも、私のエンフィールドのほうが一瞬速かった。

 ヤツの、黒衣に包まれたその胸元が爆ぜた。血が、肉が散る。致命傷だった。仮面の下のヤツの瞳から輝きが消えていく。ヤツの体が地面へと傾いていく。

 ――それでも、白のヴィンドゥールは杖を手放さなかった。

 杖の先から「嵐」が飛んできた。私の体は、木の葉の様に吹き飛んだ。手からはライフルがもぎ取られ、体は拗じられながら地面へと叩きつけられた。

 そんな私の姿を見て、死の淵に落ちるヤツが最後にほくそ笑んだかどうか、私は知らない。

 何故なら地面に叩きつけられた時点で、私の意識は遠退き始めていたからだ。

 意識が闇に嵌っていく。

 

『オッサン!?』

 

 エゼルの悲痛な調子の叫びが聞こえ、そこで私の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほんとに行っちまうのかよ?』

「ああ」

 

 地の向こう側にようやく朝焼けの光が登り始めた、そんな朝早くの時分。

 村外れで私とエゼルは居た。私は荷物を満載したサンダラーに跨がり、エゼルは馬上の私を見上げている。その顔は些か寂しそうな表情を浮かべていた。

 ――「別れの時」が来ていたのだ。

 

『まだ体だって、全部が全部ちゃんと治った訳じゃないんだろ?』

「まぁね。だがもうこれ以上、占い婆さんの苦くて臭い薬草粥を食わされるのはゴメンでな」

 

 白のヴィンドゥールの最後の一撃を貰った私が目を覚ましたのは、あの戦いから三日後の事だった。

 目覚めた時に私は例の宿のベッドに寝ていたが、つきっきりで私を看病していたエゼルの喜びようたるや凄まじく、すぐにその声に集まってきた村人たちの喝采に、私はまだ病み上がりなのにベッドの上でてんてこ舞いにさせられた。

 私は生きていた。全身があちこち痛むし、特に右手の痛みは深刻そのものだったが、それでも生きていた。

 賊は殆どが死に絶え、生き残りも何処かへ逃げ出し、村は救われた。

 村人達はここ数日は毎日がお祭といったはしゃぎ具合だったが、私はそれに参加できなかった。ベッドの上から動けなかったからだ。村人連中が酒に酔っている間に、私は占い婆さん謹製の、体に良いという苦くてひどい臭いのする粥ばかり食っていたのである。

 昨日の夕頃になってようやくある程度元気になったので、これ以上粥ばかり食わされるのは辛抱たまらんと、こうして朝早くから逃げ出してきたのである。

 私の仕事は終わったのだ。ならば異邦人が長居する理由もない。

 

『……オッサンがいなくなると寂しくなるよ』

「だがそれが平和の証だエゼル。俺みたいなのが常にいる村なんざ、そりゃきっと碌でも無い所だ」

 

 私はしょせん、無頼の渡り鳥だ。羽を休める時もあるだろう。だがそこは終わり無い旅の途中に過ぎない。

 私にはもう、故郷はない。だが、向かうべき場所はある。

 ――西部の荒野へ。血と硝煙に満ちたアウトロー共の巣窟へ。

 

「それにな。役割が終わった今、何と言うか……帰れるんじゃないか、ってそんな予感がするのさ」

「だからお別れだ。短い間だったけど、お前は良い相棒だった」

 

 私はエゼルに微笑みかけた。エゼルも私に笑い返した。

 私達はもう、二度と巡り逢うことは無いだろう。

 

「……エゼル」

 

 私は鞍に結びつけていたエンフィールドのケースを外し、エゼルに手渡した。

 

「餞別だ。受け取れよ」

『でもオッサン!』

「良いんだ」

 

 エゼルの言葉を、私は笑顔で遮った。

 思えばこの銃を手にとった時、私や師匠や南部の男たちはふるさとを、魂の祖国を護るために戦ったのだ。

 ならばこの銃を真に手にするに相応しいのは、愛すべき故郷の為に戦ったエゼルであるはずだ。

 根無し草の、我が身以外護るモノが何一つ無い、私などでなく。

 

「弾はともかく、雷管や火薬には限りがあるんだ。考えて使えよ」

『オッサン!』

「じゃあな!」

『オッサン!』

 

 私はエゼルにエンフィールドを押し付けて、サンダラーに拍車を掛けた。

 ふと視界の先に、陽炎のように宙が揺らぐ部分が見えてくる。直感的に悟る。あれが「帰り路」だ。あれを潜り抜ければ、ここには二度と戻れない。

 だから私は振り返り、私を走って追うエゼルに言った。

 最後の最後に、大きな声でエゼルへと、彼だけに言ったのだ。

 

「俺の名前は――」

 

 エゼルに私は名前を告げて、幻影の門を超えて去った。

 

 

 

 

 

 

 

 ――今度の話はここで終わりだ。

 私は西部へと帰り、そこでいつもの私に戻る。

 夢のような出来事だったが、あれは確かに現実の出来事だった。

 その証拠に、私の手元には今度の仕事の報酬として得た一本の「香る木」がある。

 帰った後の私は一路サンフランシスコを目指したが、そこで中国人商人に件の「香る木」を見せた所、恐ろしい額の値段で買い取ると捲し立てて来た。占い婆さんの言うことは正しかった訳だ。

 私はなんだか勿体無くなって、結局ソイツには「香る木」を売らなかった。

 結局あれは記念品として、サンフランシスコの銀行の金庫に密封されて保管されている。

 

 私はこの後もガンマンとして生き続けた。

 その途中で、またも妙な所に迷い込んで、空を駆けるドラゴンと戦ったり、悪魔の親玉に拐われた姫様を助け出したりしたが――それはまた別の話だ。

 

 ――いつか気が向いたら、その時に話すとしよう。

 

 

 

 

 

 

 ―― THE END ――

 

 

 


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