異世界ウェスタン ~Man With Gray Eyes~ 作:せるじお
『私』や『キッド』、『ヘンリー』そして『バーナード』の得物について、簡単にまとめてみた。
・コルト1851ネービー
名前もそのまま、コルト社が1851年にリリースした回転式拳銃。もっとも成功した黎明期リボルバーの一つで、あのドク・ホリディやワイルド・ビル・ヒコックも愛用した名銃。まだ金属薬莢のなかった時代、弾丸と火薬は直接蓮根状の弾倉に装填し、雷管を弾倉後部に後から被せる。この構造故に、同様の旧式リボルバーと合わせて『キャップ・アンド・ボール(キャップ=雷管、ボール=球状の鉛玉)』式とも呼ばれる。弾倉をまるごと交換することで、ある程度の素早い再装填が可能になる。
口径自体は36口径と小さめだが、故に反動も小さいために当てやすいと評判でもあった。速度より命中率を重要視する『私』向きの拳銃である。
・グリスウォルト&ガンニソン
南北戦争中、南部で造られたコルト・ネービーの海賊版。鉄不足から一部フレームに真鍮を用いていて、非常に見目麗しい。
正直、純正品のコルトが手に入る今、この銃を使うメリットはない。しかし『私』はこの銃を左に吊るし続けている。
・ハウダーピストル
見た目は切り詰めた水平二連式散弾銃、それも銃身を切り詰めたコーチガンに似ているが、一応拳銃の分類。先込め式で発火機構には雷管を用いる。
元々は大英帝国支配下のインドあるいはアフリカで、密林での猛獣撃退用に造られた代物。出会い頭に一撃を加えるというコンセプト故に、完全に至近距離での使用に限定されている。散弾、あるいは大口径弾を装填するが、『私』は散弾を使っていた。
リトヴァのロンジヌスとの戦闘で完全に破損し、使用不能になった。
・レミントン=ローリングブロック
散弾銃で著名なレミントン社の作った、軍用あるいは狩猟用の大口径単発式小銃。『私』が用いるのは50口径のもの。
ローリング・ブロックというユニークな閉鎖機構を持ち、単発ながら強力な銃弾を使えるために、狙撃戦においては大きな力を発揮する。バッファローハンティングなどには、シャープス銃と共に良く用いられた。
・ホイットワース=ライフル
南北戦争中、南軍の狙撃兵のなかでも、エリート射手が用いたというイギリス製の狙撃用ライフル。
名前の由来はその設計者で、六角形の銃弾という、他に例のない奇妙な弾を用いる高級ライフルである。狙撃銃としての性能は、南北戦争中に限って言えば最高度のものであった。
今や旧式であるが、『私』は郷愁と果たせなかった憧れゆえにこの銃を敢えて使っている。
・コルト=ピースメーカー
キッドが愛用する、西部と言えばコレという傑作拳銃。正式名称はコルト1873年モデルだが、ピースメーカの通称のほうが有名すぎてまず使われることはない。銃身の長さで大きく三種類に分けられるが、キッドが使うのは銃身7.5 インチのキャバルリィ・モデルである。
排莢と再装填を一発ずつ行わなければならないその機構は、スイングアウト式に馴れた現代人には不便に感じるが、その不便なれど堅牢な構造故に、当時としては最も強力な銃弾を用いることが可能であった。
キッドはトリガーガードとバックストラップを真鍮製のものに換えているが、これはイタリア製のリバイバル版特有のもので、コルトの純正品にはない仕様である。キッドが自分で勝手に改造したのだ。
・レマットリボルバー
極めて奇妙で独創的な構造を有する、フランス人が作った南部のリボルバー。南軍では少数ながら正式採用されていた。
9連発であるというのも変わっているが、一番の特色は銃身下部に設けられたもう一本の銃身から散弾を撃てる点である。撃針を動かすことで拳銃弾・散弾を使い分けることができる。北部男(ヤンキー)のキッドが何故この銃を吊るしているのか……謎が多い。
・ヘンリーライフル
南北戦争中、南軍を大いに苦しめたレバーアクション連発銃のパイオニア。後のウィンチェスターの前身。ライフルと名乗ってはいるが、使用する弾丸は小型で、ほぼ拳銃弾と変わらない。後に、この銃用に開発された.44ヘンリーを用いる拳銃も製造された。
銃身下部に備わったチューブ式弾倉には最大16発が装填でき、当時としては破格の連発性能を誇った。北軍では正式採用にはならず、現場の兵士たちが自費購入したものが使われていた。南軍側からは『日曜日に弾を込めれば一週間ずっと撃てる』と恐れられた。
・シャープスライフル
南北戦争中、北軍の狙撃銃として用いられた大口径単発式小銃。レミントン・ローリングブロック同様に50口径。
フォーリング・ブロックという、やはり独創的な閉鎖機構を持ち、強力な銃弾を使用できるのが特色である。レミントン・ローリングブロック同様、戦後はバッファロー・ハンティングに用いられた。