ノーマン・シュワルツコフ陸軍大将
どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者でぇす。
ようやく、ようやくβルートの最新話が投稿できそうです。
ここまで更新が遅れてしまった理由としては、βルートのデータが消えてしまったからなのです('・ω・`)
そこでコツコツと新たに書き記していって、元の状態に戻しました!
その改心の出来を、どうぞ。
[夏合宿]
2012年、7月15日、12;15;36
高校2年生 SOS団雑用
キョン
日本国 茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 中央通り
人の本能的象徴とも言える空腹を、適当なメシで済ませた俺は、バカに広い通りに出ていた。
特段前もってこの町の名物を調べてなかったので、特に食べたいものがなかったため、適当に済ませてしまったのだ。
えーっと、茨城の名産は確か………アンコウだっけか?
詳しくは知らんが俺は近くにあるアンコウ専門の料理店を通過していた。
粋の良い数匹のアンコウが、巨大な水槽の中で泳いでいる。
それを寿司屋でよく見るおっちゃんが、上から網でそっと掬い上げているところだった。
俺は別に大して興味もなかったから、その場を後にすることにした。
後ろからアンコウをさばく音がして、客が歓声を上げている。
そんなにすごいもんかねぇ?
だったら俺も見に行けば良かったと思ったが、後の祭りだった。
こんな暑い炎天下の中で引き返す気にもなれなかったので、そのまま前をただ歩いて行く。
――――こんな大きな町の中を歩いて、思ったことがある。
町の雰囲気というのか、人の様子とかが僅かに差があるように感じられる。
楽しそうに話す女子高生らや家族連れ、外国から来たサラリーマンらがそうだ。
だけど、その中でその様子を伺っている連中が居ることに気付けたのは、まさしく偶然である。
彼らはその集団とは逆に、日陰に隠れて目立たないようにしている。
例で言うと、写真撮影の時に自ら幽霊役を望んでやるみたいな。
だけどそれならイタズラ心が感じられるが、彼らにはイタズラ半分で俺達を見つめているのではなさそうだ。
まるで外から来た俺達を、悪さをしないように監視しているような………。
と、ここで更に気になる光景を目の当たりにした。
まぁ別にそこまで気になりはしないが、俺の他にも通行人の何人かが俺と同じようにして視線をその人物に向けている。
俺が見たのは、バス停の近くでウロウロしているシスター服を着た女性だった。
真っ黒なシスター服に身を包んでいて、顔付きが明らかに日本人ではない。
しかし時折、どうしましょう、と言った日本語が聞こえてきたので、日本語は喋れるようだ。
明らかに困っている様子だったので、放っておくのも忍びないので、声を掛けることにした。
全く、普段の俺なら考えられない行為だぜ。
キョン
「すみません、なにかお困りのようですが、どうしましたか?」
古泉仕込みのエセ紳士スマイルを浮かべる。
うむ、我ながら会心の出来だ。
などとくだらない考えをしていると、彼女はこちらに振り向く。
??????
「実は、教会へ戻らなくてはいけないのですが、どのバスに乗れば目的地へ到着するのか分からなくて」
なるほど。
それでバスの時刻表を何度も見ては唸っていたんだな。
うーん、しまった。
俺はこの町へ来たばかりだから、交通事情なんてまるで把握してないからどう答えるべきか全く分からない。
キョン
「因みになんて名前のバス停から来たんですか?」
??????
「はい、実は――――」
その時。
目的地の名前を聞いた途端、俺らの目の前にバスが止まり、扉がプシューッと開いた。
中から心地よい温度の冷気が出てきて、一瞬だけ快適になった。
??????
「バスが参られましたので、もう大丈夫でございますよ」
キョン
「いや、あの、そのバスが本当に目的地に着くかどうか分かりませんよ?ちょっと待ってて下さい」
俺は素早くバスへ乗ると、運転手に目的地の名前を言って、どのバスに乗れば良いかを聞いた。
2本後にやって来るバスに乗れば到着すると言う。
俺はお礼を言って、さっさとバスを降りると、バスは扉を閉じてこの場を離れて行った。
キョン
「あなたが行きたがってた教会には、次の次のバスに乗れば目的地に着くようですよ。だからそれに乗って下さい」
??????
「まぁ、わざわざありがとうございます」
キョン
「その服装だと動きずらそうだったので」
おっと、つい本音を言っちまった。
でもまぁ、上から下まで真っ黒の修道服を着てるなら、動きずらそうと感じるのは仕方ののないことで。
転びそうになるから、見ていて心配になるのだ。
だけどシスターさんは特に気にした様子も泣く、特有の笑みを浮かべた。
やべぇ、かなりドキッとしちまった。
いかんいかん、俺には朝比奈さんと言う方が居るのに………。
??????
「ふふ、大丈夫でございますよ。こう見えても暑さに強いのでございます。あなた様は、随分と汗を掻かれているようですが」
キョン
「あ、ああ。夏だからどうしても暑くなっちゃって………?これは?」
??????
「よろしければこちらをお使い下さいませ。選択したばかりなので、使えるはずです」
キョン
「いやいや、さすがにそれは悪いですよ」
こんな男臭い野郎の汗なんて吸ったら、せっかくのハンカチが台無しになっちゃいますよ。
それに洗濯しなくちゃいけなじゃないですか。
………別に後半のが本音じゃないからな。
??????
「そうでございますか………ところで、あなた様のお名前を教えてくれないでしょうか?」
キョン
「えっ?なんで?」
??????
「恩人の名前をお聞きしたいだけでございます。それと、私の教会へ招待しようかと」
キョン
「いやいや、そこまでして貰うのは。まぁ、皆からはキョンって呼ばれてますよ。不本意ですけど」
??????
「………キョン様?」
キョン
「いえ、キョンで良いです」
キョン様って………そんな趣味はねぇよ。
頼むから普通に呼んでくれい。
こんなのSOS団の面子に聞かれたら、目玉焼き顔負けの白さで見られるだろうぜ!!
??????
「あ、申し遅れました。私はオルソラ・アクィナスと申します。イギリス清教に所属しているシスターでございます」
ふむふむ。
職業はシスターさん。
………イギリス正教ってのは何なのかは知らないが、どこかの国のシスターなのだろう。
ゾロアスターか?
マホネットか?
キョン
「ほう、ではイギリスの方でしたか。にしても日本語お上手ですね。習ったんですか?」
オルソラ・アクィナス
「一応、五カ国語は喋れます。英語に日本語に………ああ、バスが来ました」
キョン
「え?」
言葉を切って、彼女の視線を追い掛ける。
すると一台のバスが止まった。
先程出て行ったバスと同じ会社のようだ。
彼女は立ち上がって、俺に一言。
オルソラ・アクィナス
「先程はありがとうございました。これで教会に戻れそうでございます。それでは――――」
そのままバスに乗り込もうとする彼女の手を、俺はガッシリと掴んでしまった。
だ・か・ら
キョン
「そのバスじゃないんだって!この次のバスが目的地に着くの!分かった?」
オルソラ・アクィナス
「まぁ、そうでございましたか………失礼しました」
キョン
「すみません、乗りませんので行って下さい」
バスの運転手にそう告げると、バスはさっさと行ってしまった。
怪訝な目で見られたが、まぁ仕方ない。
俺は彼女に向き直る。
キョン
「次のバスを乗れば着けるから、もう少し待っててくれ」
オルソラ・アクィナス
「………」
キョン
「………?」
彼女の視線は、俺の方を向いている。
てっきり出て行ったバスを見ていたのかと思っていたが、そうではないらしい。
突き刺さるような視線に、俺はついサッと逸らしてしまった。
な、何なんだ?
さっきのポケーッとしてる彼女とは打って変わって、真剣な眼差しで俺を見ている。
おーい、もしもーし。
オルソラ・アクィナス
「あっ、失礼しました。いえ、あのお方と同じ事を仰られたので、驚いてしまいまして」
キョン
「?あのお方?」
俺から視線を外して、どこか遠い目をしていた。
彼女は今、どんな気持ちになっているのかは分からない。
でも言えるのは、何となくだが悲しそうな目をしていることだけだ。
もしかして、と思う。
俺のように、何かしらの事件に巻き込まれてしまったのか?
去年の偽物のハルヒに遭遇したり、冬頃になったら朝比奈さんは誘拐されるわ、SOS団と同じ宇宙人や未来人や超能力者が結託してハルヒの力を俺の中学の時の友人に移し替えるとかバカな計画の阻止をやってきた。
他にも様々なイベントが発生し俺も、長門も朝比奈さんも、古泉もその度に、狩り出しては問題を解決してきた。
この人も、同じような経験談でも持っているのかな?
オルソラ・アクィナス
「本当に、去年は様々な事件が起こって、その度にあの方は何度でもわたくし達を救って頂いたのでございますよ」
シスターさんの口からまた、『あの方』と言う単語が出てきた。
名前で呼ぶのは、単に名前を知らないのか、照れくさいからか、彼女の表情など見えないから知る由もないが。
キョン
「なぁ、さっきから『あの方』って言葉が出てくるが、そいつはどんな奴なんだ?事件って言うと、穏やかな雰囲気じゃないってことは分かるんだが」
ちょっとした興味本位で尋ねてみた。
天然ボケで、誰にでも優しそうなこのシスターさんにこれ程までの信頼を寄せている人物がどんな人物なのか、一度この人の口から聞いてみたかった。
オルソラ・アクィナス
「あの方と出会ったのは、去年の9月を少し過ぎてからのことでした」
ほうほう、こいつは馴れ初めってやつか?
俺は黙って彼女の話の続きを見守る。
オルソラ・アクィナス
「それほど大層な御関係ではありませんが、出来ればいつかそのような御関係になりたいのでございますね」
俺は失念していた。昔から偉人たちのこういう言葉を残しているではないか。
人は見かけによらず、と言う言葉が。
オルソラ・アクィナス
「ある事件が起きて、私は命を狙われる身になったのでございます。私は捕まり、処刑される寸前のところで、あの方に命を救って頂いたのです。あの頃の私は、ただ神の教えを異国の地に広めていくあまりに、本当に人と言う本質が私は理解できずに、あの方たちには迷惑ばかりかけてしまったのでございます」
出会ってまだ30分くらいしか経っていないが、珍しく無視して語り始めた。
オルソラ・アクィナス
「私のために武器を持って戦ってくれる方々がいたのでございます。しかし、私はその方たちを信じきれず、自ら救いの手を差し伸べてくださった方々の手を払い、目を背けてしまったのでございます」
シスターは深いため息をついた。
俺は黙って聞いているしかできなかった。
この人は自分の犯してしまった過ちを、後悔している。
オルソラ・アクィナス
「ですが、そんな私を救ってくださったのが、あの方と言うのでございますよ」
だが次の瞬間、シスターさんは嬉しそうに俺に顔を向けた。
キョン
「しかし、処刑って言うのは穏やかじゃないな」
オルソラ・アクィナス
「それは今となっては、むしろいい思い出だったのかもしれないでございますね。こうやって自分の弱い部分を見つけられ、互いに命を預けられる仲間にも出会えたのでございますよ」
キョン
「そうなのか。だったら、俺もそいつに感謝しなくちゃいけないな」
オルソラ・アクィナス
「え、なぜでございましょう?」
オルソラ・アクィナス
「だってそいつがいなきゃ、こういう事はあまり言いたくはないが、あんたは処刑されてたって事だろ?でなきゃ今頃、俺たちはこうして会話することもなかったんだぜ?だとしたら、俺もそいつに礼を言うのは自然だろう」
そうさ。
こうやってこの天然ボケなシスターさんと会話していられるのは、そいつがいたからだ。
そしてこの町にやって来た間の、どこかギスギスした緊張感は、ゲリラ豪雨が降りやんだあとの綺麗な空模様が一面に広がるような感じに霧散していってくれたのだ。
それで余裕もできた。
オルソラ・アクィナス
「まぁ、それはつまり私と」
シスターさんは顔を真っ赤になり始めた。
おいおい、そんなつもりで言った訳じゃないぞ。
オルソラ・アクィナス
「私と一緒にバス停の道のりを案内してほしかったのでござい」
キョン
「何で会話が戻ってんだよ!?俺があんたと会話出来て良かったって言ってるだけだぞ!?」
オルソラ・アクィナス
「ところで、あなた様のお名前を聞いていなかったのでございますよ」
キョン
「話聞いてない上に会話が進んでるし!えっと、俺は学校のみんなからはキョン、なんて呼ばれてるって!さっきも言ったよな!?忘れるのは早くね!?」
オルソラ・アクィナス
「ところでバスはあとどれくらいで到着するのでございましょう?」
キョン
「おーい、頼むから戻って来てくれ。俺が平謝りするからこっちの世界に戻って来てくれー」
オルソラ・アクィナス
「はい。私の名はオルソラ・アクィナスと申します。普段はロンドンの女子寮で暮らしているのでございますが、今は出張中でこちらに来ているのでございますよ」
キョン
「………」
俺は黙る。
ひたすら黙る。
自己紹介をして貰っては何だが、今はちょいと黙らせて頂く。
オルソラ・アクィナス
「あら、どうしたのでございますか?どこかお体の具合が悪いのでございますか?」
キョン
「……いや、誰かが話を戻したり進めたりしているせいでイライラしているだけですよ?」
オルソラ・アクィナス
「まぁ、イライラするのは良くないのでございますっ。それにあなた様は汗を掻いているようなのでございますよ」
キョン
「分かったからそんなに顔を近づけるな!それに冷房が効いているから汗なんて掻いてねぇ」
など、このあともこんないざこざがあったが、今は省略させて頂く。
それにしても、この町に来て最初の思い出がなぞの美女シスターの見送りと、順序もへったくりもない会話になろうとはね。
2012年、7月15日、12;15;36
中学2年生 超能力者
磯崎 蘭 (いそさきらん)
日本国 茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 ホテル『508号室』
磯崎 凛
「よし。一休みしたところで、今後どうするかを話そうと思う。何か意見はあるか?」
お兄ちゃんがベッドに腰掛けて、椅子に座ってる私達を見据えた。
クーラーが効いたこの部屋で、私達は今回の事件の全容を把握するために、集まっていた。
到着したばかりであったためか、疲労を回復するために一旦休んでから意見を出そうと、決めていた。
綾瀬 留衣
「まずは話を整理してみましょう。発端は、蘭の自宅に掛かってきた電話から、だったよね?」
磯崎 蘭
「うん。受話器を取ったらね、急に頭の中に映像が流れてきたの。頭が痛くなっちゃったよっ」
綾瀬 留衣
「頭痛は治まったかい?」
磯崎 蘭
「うん!もう大丈夫だよ!!」
名波 翠
「はいはい、ええカップルだこと。それで?どんな記憶を見たの?」
磯崎 蘭
「それが………たくさんありすぎて、逆にほとんど覚えてないんだ。ただ、覚えてる映像もあって」
磯崎 凛
「どんな記憶なんだ!?」
磯崎 蘭
「えとね、あれは確か、夜だったな。そして、火が灯ってたんだ。もしかして火事かな?」
綾瀬 留衣
「火事………穏やかじゃないね」
磯崎 蘭
「他にはね………うっ」
他の映像を思い出そうとしたら、急に吐き気が込み上げてきた。
だって、あんなの見たら、誰だって気持ちが悪くなっちゃうよ。
綾瀬 留衣
「蘭っ、大丈夫かい!?あまり無理しない方がっ」
磯崎 蘭
「だ、大丈夫だよ。他はね………誰かが血まみれになって、倒れてたんだ。女子高生、かな?知らない人が何人か倒れてたんだよ。ビックリしちゃったよ」
磯崎 凛
「ごめん、蘭。嫌な記憶を思い出させちゃって」
磯崎 蘭
「私が覚えてる記憶はこれだけかな」
磯崎 凛
「うーん、電話の主は男だったんだよな?変声機も使わないなんて、よほど自分の正体を暴かれない自信があったのかな?」
綾瀬 留衣
「それは断定しきれませんから、何とも言えませんね。でも、今回のこの旅行は、蘭の部活の先輩から貰ったチケットが発端とも言えます」
磯崎 蘭
「えっ?どうして?やすみ先輩がこの事件に関係してるって言いたいの?」
綾瀬 留衣
「分からない。けど男が言ってた、”明日の朝10時に――――行きの列車に乗れ。そしてその町からしばらくは一歩も外へ出るな”のこの言葉が気になってた」
名波 翠
「――――行きの列車、それは今回のこの旅行の行き先で使う列車。これが偶然だと思う?」
磯崎 蘭
「あっ………」
ここまで言われて、ようやく気付けた。
そうだ、――――行きの列車………この、尾阿嵯町に向かうための列車。
やすみ先輩からくれたこの旅行券。
偶然で片付けるには、些か無理がある気がする。
磯崎 凛
「なるほど、確かに妙だな。蘭が貰ったチケットの行き先に、男が指定してきた列車。ん?じゃあ、男が言ってたしばらくは一歩も外へ出るなって言う言葉は、従った方が良いのか?」
磯崎 蘭
「でも、しばらくって一体いつまで出なければ良いの?1日?1週間?」
綾瀬 留衣
「細かく指定しないって事は、こっちの解釈で自由に外に出て良いって事じゃないかな?重要な点だったら、予め指定してるだろうし」
名波 翠
「それに、男が待ってろって言っても、蘭はどうせ危険を顧みずに外に出るんやろ?」
磯崎 蘭
「えへへ、もちろん!だって、もしかしてこの事件で苦しんでる人が居るかも知れないのに、ここでじっとなんてしてられないよ!!」
私は立ち上がって、扉へ向かおうとする。
磯崎 凛
「待て蘭。行くってどこに行くんだ?まだ手掛かりなんて何もないのに」
ドアノブを掴んだところで、ピタッと引く手が止まった。
………そうだ、よくよく考えれば、どこに向かえば良いのかが全く分からなかった。
迂闊だっ。
私は悔しくて、服をパタパタさせてしまった。
そこに、ポケットから一枚の封筒が落ちてきたのだった。
名波 翠
「蘭、何か落してで?………この封筒は?」
翠が拾った封筒を見て、私はようやく思い出すことが出来た。
そうだ。
私にはまだ、この宛先不明者の封筒と、中身の4枚の紙があるじゃないか。
磯崎 蘭
「みんな聞いて。実は黙ってたんだけど、旅行前に学校の下駄箱の前でこんな封筒を拾ったの。中身はこの4枚の白紙だった」
磯崎 凛
「何も書かれてないのか?」
磯崎 蘭
「うん。超能力を使っても、何も感じられなかった。でも」
名波 翠
「うちがいるから、力を合わせてれば何か読み取れるかも知れないってことやな?よっしゃ、任せて!」
翠が勢いよく立ち上がって、私の手を取った。
私が握ると、翠も握り返してくる。
そして目を閉じると、意識を頭に集中させる。
机の上に置いた封筒に手をかざす。
すると――――
磯崎 凛
「おお!何か文字が浮かんできたぞ!!」
お兄ちゃんに言われて、両目をそっと開くと、確かに白紙の内の1枚に文字が浮き始めていた。
ただ一言、”郷土資料館”、と。
留衣は早速、町の地図を取り出して、その郷土資料館の場所を探し出した。
これは、建物の名前だろうか?
この言葉だけでは、何が起こるかまでは分からない。
だけどこの情報が嘘だとは思えなかった。
なぜなら今までだって、能力を使うことで発見された手掛かりは、どれも無駄ではなかったからだ。
ふと、私はある事が気になって、他の用紙を確認するために、1枚目の下に隠れてる他の3枚の用紙を確認した。
しかし、私は肩すかしを喰らうことになる。
他の3枚は未だに真っ白のままだったからだ。
本当ならもっと情報が欲しいところなのだが、1枚に反応して手掛かりが得られたのだ、結果オーライとしようじゃないか。
もっとも、単語が一つしか明記されていないので、具体的にはどうすればいいかなんて、限られてくるが。
綾瀬 留衣
「これは………郷土資料館?」
磯崎 凛
「この町に郷土資料館があるから、そこへ迎えってことか?他にも何も書かれてないから、判断が難しいな」
磯崎 蘭
「よし!なら早速そこへ向かおう!もしかしたら、何かあるかも!!」
名波 翠
「待った、見込みだけで動くのは危険や!もっと慎重に動くべき――――」
磯崎 蘭
「でも他に何も手掛かりがないんじゃ、どの道、何も進展しないよ!それなら当たって砕けようよ!」
綾瀬 留衣
「砕けちゃダメだよ、蘭。でも他に何もないなら、動いてみるのも良いかもね」
名波 翠
「ちょ、留衣君!?」
磯崎 凛
「うーん、なら早速行こうか。決まったら早めに行動するのが一番だ。翠ちゃんが心配するのも分かるけど、ここはスピード勝負と行こう」
名波 翠
「凜さんまで………ふぅ、分かりました。私も行きます。こうなったら手掛かりでも何でも見つけに、どこまでも行きましょう」
磯崎 蘭
「よーし!!そうと決まったら、出発!」
こうして、私達は再び、炎天下の中を突き進むことになった。
………後に繰り広げられる、事件の手掛かりを得るために。
―――――歩き出してどれくらいかは、分からない。
炎天下の中へ再び舞い戻るのは、かなり抵抗があった。
いや、現在進行形で抵抗がある。
しかし、出発しようと啖呵を切ったのは他でもない、私自身なのだ。
今から折り曲げるなんて出来ない。
名波 翠
「留衣く~ん、いつになったら目的地につくん~?」
磯崎 蘭
「留衣、資料館までってこの道で合ってるの?」
綾瀬 留衣
「うん、この道を真っ直ぐ進むと、5階建ての建物が見えるから、そこが郷土資料館ってなってるから大丈夫だと思う………ほら、見えてきた」
留衣が指を指す方向を見てみると、デカデカと”郷土資料館”と書かれた看板が見えた。
だけどその看板はかなり年期が入っているのか、錆が入っていて、文字も取れ掛かっている。
直す費用がないのだろうか?
磯崎 凛
「おお!あそこがそうか。ふぅ、ようやく一息付けそうだな。この暑い中を歩き回るのはもう勘弁だからな」
名波 翠
「ですわよね、凜さん!さぁ、さっさと調べてホテルへ戻りましょう!」
お兄ちゃんと同じ意見で嬉しくなったのか、翠は大股でズンズンと進んでいった。
うわぁ、よっぽどこの暑さと熱気が嫌だったんだね。
私も嫌だけどさ………。
そんなこんなで、私達は無事に資料館へ到着することが出来た。
近くで見ると、この建物がボロボロなのがより一層に鮮明になっていく。
名前は忘れたけど、土から植物が上へと伸びている。
壁の一部もコンクリートが剥げてしまっていて、鉄骨とかが剥き出しになっていた。
ガラスも割れていて、申し訳程度にガムテープで補強されているだけだった。
うわぁ、これじゃあお客さんなんて来ないよ。
名波 翠
「なら早速入りましょう。これ以上、外へ待ってられませんわ」
翠が先導するように先に中へ入ってしまった。
私達も後へ続くと、途端に空気が変わった。
………ここで文明の利器に感謝しなければならない。
クーラーが効いている部屋に入ったからだ。
全身に冷房が行き届いて、みるみるうちに汗は退いていった。
途中で汗だくになってしまったが、タオルを持ってきて良かった。
ふぅ、拭いている間にふわふわと気持ちよかった。
磯崎 凛
「ほ、ようやく一息付けそうだ。ところで、誰も居ないな」
綾瀬 留衣
「受付にも誰も居ませんね。傍にある固定電話も繋がらない」
名波 翠
「すみませーん、誰かいませんかー!見学に来たんですけどー!」
翠が珍しく大声で人を呼んだ。
だけど返ってくるのは、反響した翠の声だけだった。
どうやら本当に誰も居ないようだ。
そもそも、ここは営業しているのだろうか?
確かめてからここへ来るべきだったな、などと今更ながらに後悔していた。
磯崎 凛
「なら好都合だ。よしみんな!誰も居ない今がチャンスだ!この資料館がどんな場所なのかを、徹底的に調べようぜ!あと事件に繋がりそうな証拠も一緒にな!」
名波 翠
「はい!!」
綾瀬 留衣
「蘭、行こう」
磯崎 蘭
「でもさ、いいの?勝手に中へ入っちゃって?」
磯崎 凛
「おいおい、手掛かりを見つけようって最初に言いだしたの、蘭だろ?なら多少強引な行動に出ても、大丈夫さ」
綾瀬 留衣
「もし見つかって怒られそうになったら、一緒に謝ればいいよ」
磯崎 蘭
「そ、そうだけど………」
名波 翠
「ああもう焦れったい!最初の威勢はどこにいったんや!私は探すで!!」
そう言い放って、翠は奥へ進んでいった。
私はみんながいつもよりも強引な方法で乗り始めたことに不思議を感じた。
まだ事件が起きてもいないのに………。
でも事件を未然に防ごうとしているなら、私もこんなところでぐずぐずしているヒマはないと考え、気に留めもせずに奥へ進んでいった――――