涼宮ハルヒの憂鬱vsテレパシー少女蘭   作:Dr.JD

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――――戦争の最初の犠牲者は、真実である――――アイスキュロス

どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者であります。

最近は暑くなって参りましたね。
皆さんは、この連休中はどのようにお過ごしになりましたか?
私は自宅で小説を書いておりました。

その続きの内容を、どうぞ。



第5話 調査開始!

[調査開始!]

2012年、7月15日、13;10;27

中学2年生 超能力者

磯崎 蘭 (いそさきらん)

日本国 茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 郷土資料館1階

 

この資料館は先程も留衣が言ってた通り、5階構造で私達はその1階にある展示物コーナーにいる。

1階は主に、江戸時代に使われていた書物や道具などが置かれていて、2階はこの町の発展前の町の様子が描かれた資料が置かれており、3階はどのように発展していったかをシアターで見ることが出来るらしい。

資料を1つ1つ丁寧に見ている留衣は、感心するように見つめていた。

 

綾瀬 留衣

「へぇ。この町は昔、江戸からの干渉はあまり受けなかったみたいです。土地鑑から見て、周りは山で囲まれていたから、商人や運び屋以外の人はあまりこの地には来なかったようですね」

 

書物がガラス張りに保管されて、その横にある解説欄を見てそう呟く。

江戸時代初期からの歴史は記されていないため詳細は不明だが、当時は幕府の目を逃れて違法で外国との交流を密かに交わしていた記録が残っている。

どういう訳か、悪事を働いていた時の資料しかなく、どのような生活を送っていたのか、詳細な資料が展示されていなかった。

 

磯崎 凛

「どういう事だ?これじゃ、この町の悪口を言っているようなもんだぞ?」

 

対して、別の展示コーナーで資料を見ていたお兄ちゃんは呆れた表情で、それを眺めていた。

でもお兄ちゃんは手に持っているカメラで、次々と展示している様子を撮影していく。

本来なら写真撮影は禁止されているのだが、この資料館だけは例外で、撮影はOKだそうだ。

ここの館長が気前が良いのか、ただ単にいい加減なのかは分からない。

 

磯崎 蘭

「それに、今はどこかの鉄道が開通してそのセレモニーが催されるのに、むしろこんな資料を展示するのはさすがにまずいんじゃ……」

 

私も同じ心境になってきた。

観光客が大勢来ているこのタイミングで、地元のマイナスになるような言動をするだろうか?

もしかしたら、この展示物を見たお客さんはお兄ちゃんと同じ心境になって、来なくったのかもしれない。

だから夏休み中だと言うのに、こんなにも人が少ないのか。

もっとも、客は私達以外にいないみたいだけど。

 

名波 翠

「お客さんがほとんど来なかったから、手を抜いて大した展示物を飾ってないんだってことかしら。現にお客さんは今、ここに居る訳だけど」

 

不法侵入してる滞在人だけどね、と付け加えて翠が呟く。

別のところで展示物を見ていた翠が、入口の方を眺めて外にいる門の外にいる観光客の姿を見てため息を付く。

今でも外は炎天下などお構いなしにワイワイ、ガヤガヤと賑わっている。

蜃気楼が映っているせいか、やけにぼやけて見える。

 

磯崎 凛

「もしかして、このお客さんが来ないって言う状況を逆手に、まさか何か事件でも起こそうってことじゃ」

磯崎 蘭

「お兄ちゃん、小説の読み過ぎ!」

 

と叫んで再び資料の方へ目を向ける。

本当はそんな展開は実際に間近で見たことがないのだけれど、そんな事が起きるなんてことには………。

そんなこんなでエレベーターで2階へ来た私達は、この町の発展前がどんな町だったのか資料などを読んでいる。

………この町の発展前は、10年前を境に急激に成長した町であり、当時は市内のあっちこっちで大規模な工事が行われた。

 

磯崎 蘭

「10年前って言ったら、私がまだ4つの時からすでに発展してたってこと?」

綾瀬 留衣

「そうみたいだね。蘭や俺がまだ小学校にすら入学してなかった時期だね」

 

資料を眺めていて隣から留衣が頷く。

 

磯崎 凛

「でもさ、急激に成長したって書いてあるが、何でこの町がこんなに急成長したかなんて書かれてないぞ?」

名波 翠

「ほんとですね。当時の工事をした作業風景ならあるけど、なぜこんなに成長した過程がありませんね」

 

お兄ちゃんは当時使われていた廃屋の一部をそのまま持ってきたような感じの巨大な展示物を見上げたり、ちょっとだけ触れたりしていた。

翠はパンフレット片手に、その廃屋の隣に置いてあった道具一式を眺めている。

 

磯崎 蘭

「ちょっとお兄ちゃん、展示物に勝手に触れたりしたら、怒られるよ!」

磯崎 凛

「大丈夫だって、蘭。お客さんが俺達しかいないんだから、どうせ誰も見てないって。それに、ここって本当は誰も居ない寂しい資料館だったりして」

 

それでも気にせず、少しでも何らかの手掛かりを得ようとお兄ちゃんが躍起になっている時にそれはやって来た。

 

??????

「………すみませんね。寂しい資料館で」

磯崎 蘭

「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

と、背後から細い声のする女性が話しかけてきた。

あまりのタイミングの良さに、思わず悲鳴を上げてしまった。

背後を振り返り、その人の特徴を観察する。

その女性は薄紫の髪をしていて、細い体形をしている割には、良く鍛えられた身体つきをしている女性だった。

陸上部に所属しているから、何となくそれは分かった。

小さな眼鏡を掛けており、女性もののネクタイにスーツという組み合わせの、しかし表情はあまり明るくない感じを持ち合わせていた人だった。

 

磯崎 蘭

「あ、えっと、ごめんなさいっ。悪口を言うつもりなんてなかったんですっ。本当にごめんなさい!」

 

深々と頭を下げる。

対して女性の方はあまり気にした様子はなく、軽くため息を付いたところで切り出してきた。

 

??????

「いいのよ。確かにここ最近じゃ、訪れる人なんてほとんどいないし、今月になってからここへ来たお客さんは、あなた達が最初だから」

磯崎 蘭

「え、ええ!?今月で私達が最初って」

??????

「それも仕方ない話よ。だって、あなた達も見たでしょ?資料館なんて言われてる割りには、大したもの、展示されてなかったでしょ?」

 

またしても女性はふう、とため息を付いて私たちに近づいていく。

 

??????

「自己紹介でもしましょうか。私はこの郷土資料館の館長をしている久住乃里香(くすみのりか)。今年で25になるわ………っ!?」

 

言っている途中で、久住さんは急に顔が真っ青になった。

そしていきなり走って来たと思いきや、お兄ちゃんや留衣の肩を掴んで揺すり始めた。

2人は驚愕と困惑が混じった表情であったが、激しく揺すられているのでその表情を見るのはかなりぶれて見えるのでそう判断できるのは奇跡的なのだが。

それを見ていた私と翠は何か、癪に障った。

 

久住 乃里香

「ねぇあなた達っ、名前を教えてくれない!?何て名前なの!?」

名波 翠

「ちょっと!?凜さんになにするんですか!?」

磯崎 凛

「え、あ、ろの」

綾瀬 留衣

「ちょ、ぐふ……」

 

肩を激しく揺すられていて、答えずらそうだ。

 

磯崎 蘭

「………あの、言いづらそうですよ?」

 

プクーと、頬を膨らませて焼きもちをやく。

おい、いい加減に離れろよ。

 

久住 乃里香

「あ、ご、ごめんなさい………ちょっと、その、友人に顔が似ていて」

 

そこまで言ってようやく肩を離した。

ばつが悪そうに顔を背けている。

にしたって、友人に顔が似てるからって、いきなり掴み掛かったりするだろうか?

 

磯崎 凛

「えっと、俺の名前は磯崎凛です……」

綾瀬 留衣

「げほっ、げほっ、僕は、綾瀬留衣です」

 

2人はむせながらも何とか自己紹介をすることが出来た。

 

磯崎 蘭

「………私は磯崎蘭で」

名波 翠

「名波翠です。どうも」

 

翠も同じことを思ったのかご機嫌斜めな態度を取る。

 

久住 乃里香

「名波、翠………さんに、磯崎蘭さん………」

 

久住さんは私達の名前を何度か口の中で復唱し、じっと顔を見つめてくる。

何か思いつめた感じの表情をしているが、翠がそれを打ち破った。

 

名波 翠

「あの、私達の名前が何か?」

久住 乃里香

「あ、いえ、私のよく知る知り合いにとても似ていたから」

 

言いづらそうにまたも顔を背けて窓に向ける。

 

磯崎 凛

「えっと、久住さん。実は2,3お聞きしたいことがあるんですが、お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

今度はお兄ちゃんが話を切り出した。

………あ、もしかして、紙に浮かび上がった郷土資料館について、何か情報を探るつもりだろうか?

ならば、私も加勢せねば。

 

磯崎 蘭

「私達、この町に旅行に来たばかりですから、何も知らないんです!よろしければ、お話を少ししていっても良いでしょうか?」

久住 乃里香

「いいわよ。ここで話すのも何だし、私のオフィスで話しましょうか。っと言ってもお客さんなんて来ないから問題ないけどね」

 

肩を竦めて、鼻で息を吐き出した。

もしかして、この人が今回の事件に関係する人物なのだろうか?

結局は推測の域から脱しきれなかった私は、この人から話を聞くしか方法がなかった。

 

 

2012年、7月15日、13;10;27

高校2年生 SOS団雑用

キョン

日本国 茨城県 尾阿嵯(おあさ)町 オルソラ教会前

 

バスに揺られて、ようやく目的地へ辿り着いた。

ようやくと言っても、冷房が充分に効いたバスで移動したから、苦労は左程感じていない。

バスから降りると、今まで見てきた和風の景色から一変した光景を目の当たりする。

巨大なアーチ状の入り口が俺達を出迎えており、横の門には”オルソラ教会”と印字されていた。

端から端の壁を見るために、首をグルンと回す羽目になった。

どんだけ広いんだよ、ここの教会はよ。

 

そこへ俺達の横から私服の数人の大人が、教会の中へ入っていくのが見える。

みんな大きな荷物を抱えており、忙しそうに走って行った。

そして今気付いたのだが、俺はいつの間にか教会の敷地内へ入ってしまったようだ。

ここでオルソラが立ち止まり、俺と正面を向き合った。

 

オルソラ・アクィナス

「それでは改めまして。ようこそオルソラ教会へ。私ども一同は、あなた様を歓迎するのでございますよ。これからあなた様をこの教会へ案内します」

 

深くお辞儀をするオルソラに、俺は言葉を返せなかった。

………地域住民の方がさっきから忙しそうに動いている中で、その中に俺も都合よく入った終いには俺は発狂してこの教会から飛び出しちまいそうだ。

俺は僅かな期待を胸に、オルソラに震える声で質問した。

 

キョン

「なぁ、もう一度だけ聞くぞ?俺は本当にここに居て良いんだよな?」

オルソラ・アクィナス

「はい、モチロンでございますよ。しかし、なぜそのような事を?」

 

しかし俺の予想に反して、コンマ1秒たりとも間を置かずに笑顔で答えた。

いやぁ、だってさぁ………。

 

キョン

「だってさ、俺の周りシスターさんばっかだぜ?それに俺と同じ私服来ているとは言え、地域住民の方が一生懸命作業をしてらっしゃる時に、部外者である俺がのこのこ中に入ってきて、『どうもー、見学に来ましたー』何て言ったら、白い目で見られそうで怖いんでな」

オルソラ・アクィナス

「あら。そのような心配なさらずとも、私たちはいつでも大歓迎だって、先程も申したはずでございますよ?」

 

そうは言うが、俺としては本当はこのまま教会の前でずっと駄弁ったままでも良かったんだけどな~。

そう思っている時、俺達の横から声が掛ったきた。

 

??????

「あ、シスター・オルソラ。お帰りなさい」

オルソラ・アクィナス

「ただいま戻ったのでございますよ」

 

2人のシスターさんがこちらに近づいてきた。

 

??????

「シスター・オルソラ。教会の手続きの方は完了したのでしょうか?」

オルソラ・アクィナス

「はい。先程、役所の方で完了させましたので、もう問題はないのでございますよ」

 

俺は近づいてきたシスターさんを観察していた。

最初に話しかけてきた背の低いシスターは髪を2つに分け、フードを被っており、腰辺りになにか歩くたびにじゃりじゃりと音を鳴らしている。

もう一人の背の高いシスターは、目つきが猫みたいにきつく、厳しい印象がある。

だが服装は最初のシスターと比べて、スカート状に短く、黒いハイソックスを履いている。

オルソラ嬢とは違う意味での色気のあるシスターさんだった。

 

??????

「ところでシスター・オルソラ。そちらの方は?」

 

背の高いシスターさんが俺に気付いたのか、眉を寄せて疑問を浮かべる。

 

オルソラ・アクィナス

「あ、そうでした。こちらは、本日私が道に迷っていたところを道案内してくれただけでなく一緒に付き添いをして頂いた方なのでございますよ」

 

それを聞いた途端、大小シスターコンビが関心の眼差しでこちらを見てきた。

何だか気まずいが、ここで名乗っておくのが礼儀だろう。

 

キョン

「と言っても、こっちも暇を持て余してたからこっちも暇つぶしに付き合って貰ったって感じだけどな」

 

と、砕けた口調で一言を言ったうえで、自己紹介を始める。

 

キョン

「初めまして、みんなからはキョンって呼ばれています。今日は、観光目的でこの地にやって来たばかりですが、どうぞよろしくお願いします」

 

一気に言い終えると俺は新川さんに負けないくらい、慇懃な礼を繰り出した。

それを見たシスターさんらは「これはご丁寧にどうも」と頭を下げる。

 

??????

「申し遅れました。私はイギリス清教所属のシスター、ルチアと申します」

??????

「同じく、イギリス清教所属のアンジェレネと言います」

 

2人のシスター、ルチアとアンジェレネも深く頭を下げる。

まぁ、その、服装を除けばまともなシスターであるのは何となく分かった。

しかし服装に関してはどうにか出来なかったんですかね?

俺はそのことについて考えていたが、それを見ていたオルソラ嬢が満面の笑みを浮かる。

 

オルソラ・アクィナス

「まあまあ。お堅い挨拶はこれくらいにして、これからこの方を施設に案内したいと思うのでございますが」

 

にっこりほほ笑むオルソラ嬢に背の高いシスター、ルチアは顔を向ける。

 

ルチア

「しかし、まだ関係者以外の立ち入りは」

キョン

「え、でもあそこで地域住民の人が手伝いをしてるじゃないですか」

アンジェレネ

「あそこで手伝いをしている人たちは、みんな私たちと同じイギリス清教の仲間ですよ」

 

今度は小さい方のシスター、アンジェレネが俺に顔を向ける。

 

キョン

「え、ええ!?でも、服装が全然違うじゃん!」

オルソラ・アクィナス

「服装は違えど、共に歩める仲間には違いないのでございますよ」

キョン

「オルソラ嬢がごもっともな回答をー!」

 

俺はギャーギャー騒ぐが、オルソラ嬢がルチアとアンジェレネを呼び出した。

 

オルソラ・アクィナス

「2人とも、耳を貸してほしいのでございますよ」

 

そっと耳打ちをして何か話し始めた。

2人は何かと思い、俺の元から離れていった。

こちらからは全く聞こえないが、これからのことについて考えているのだろう。

俺は大して気にせず、という訳ではないが辺りを適当に見渡した。

辺りは相変わらず明日のセレモニーの準備に取り掛かっているシスターさんや地域住民の方、もとい、同じイギリス清教と言う宗教団体の方がテーブルを運んだり、重たそうな段ボール箱からロウソクやらテーブルクロスを取り出してセッティングを始める。

やはり、俺も何か手伝った方が良いのかもしれない。

そう閃いた俺は早速、オルソラ嬢ら3人に声を掛けようとした時だった。

 

ガッチャン

 

と、いくつかの金属がぶつかり合う音がした次の瞬間、それは上から落ちてきた。

音源のしたところを見つけると、俺の近くにいる眼鏡を掛けたシスターさん目がけて何本かのパイプが落ちてくるまさにその時だった。

しかも不幸なことに、そのシスターさんは重たい荷物を運ぶのに気が行っていて、落ちてくるパイプには気づいていない!

その時にはすでに俺は走っていた。

後さき考えずに駆けだしてしまっていることに何の違和感も感じなかった。

時間が止まったように、辺りはスローモーション状態だった。

驚いて箱を落としているシスター、俺と同じように走っている私服の少年、アンジェレネが腰にぶら下げていた重そうな袋を取り出して、口は何かぶつぶつと言っているような気がしたがどれも、俺が気にする余裕なんてなかったね。

そしてようやくと思えるほどの錯覚の中で、俺は眼鏡のシスターの肩を突き飛ばした。

 

キョン

「あぶねぇ!」

 

眼鏡を掛けたシスターさんは驚愕の眼差しをこちらに向けてきたが、俺が叫んだと同時に――――

 

ガチンッ

 

と、またも金属がぶつかるような響いた音がした。

俺は両目を閉じてパイプが落ちてきた時の衝撃に備えようとした。

タイミング的には避けれなくもないのだが、シスターさんを突き飛ばした時にバランスを崩してしまい、走る勢いがなくなったため、よろけるような間抜けな絵になってしまった。

だがいつまで経っても、パイプが俺を襲うことはなかった。

恐る恐る目を開けて見上げると、そこには7色に光る4つの、袋に羽が付いた物体がパイプの下に潜り込んで、落下を防いでくれたらしい。

俺は頭の中が真っ白になったが、大して驚くようなことはなかった。

去年になって、不思議な体験や光景を目の当たりにしたからだろう、綺麗に光っている袋を見てもいつも通り、平常心を保っていられた。

 

オルソラ・アクィナス

「大丈夫でございますか!?」

 

ここでオルソラ嬢らが俺のところに駆け寄って来てくれた。

さっきの袋のような物体はアンジェレネの元に戻っていき、それをまた腰にぶら下げて、遅れてやって来た。

 

キョン

「ああ。俺は大丈夫だ。それより、さっきのシスターさんは?」

ルチア

「彼女なら無事です。驚いていますが、怪我とかは全くありません」

 

ルチアの返答にホッとすると、オルソラ嬢が右手を差し出してきた。

俺はその手を取り立ち上がると、アンジェレネに向かい合った。

 

キョン

「ありがとう、アンジェレネ。お前さんの、なんだ、光る袋がなけれりゃ俺は今頃、人肉の串刺しが出来上がっているところだったぜ」

アンジェレネ

「良いんですよ別に。キョンさんがシスター・アガターを助けたんですから」

 

ん、アガター?

ああ、さっきの眼鏡を掛けた人、そんな名前だったのか。

そこでルチアが俺を見て、睨んでいることに気付いた。

もしかして、さっき彼女を突き飛ばしたことを怒っているのかもしれない。

 

キョン

「えっと、さっきそのアガターって人を突き飛ばしたのは謝るよ」

 

ルチアに向かって、頭を深く下げた。

ところがルチアの反応は、俺が思ってたのとは大分異なっていた。

 

ルチア

「い、いえ。そうではありません。むしろ彼女を助けて頂いたのに、頭を下げないで下さい」

 

などと言われてしまった。

他にも何か言いたげな顔つきをしているが、どうしても言葉に出来ないようだ。

周りのシスターさんや私服子たちが何か戸惑ってるように、俺の目線となかなか合わせられない様子だった。

やばい、この空気が何とも重たい。

今はこんなに暑いのに、俺の行動のせいで気まずい雰囲気を作ってしまったかもしれん。

だけど俺何も悪いこと、いや、仮にあのメガネシスターさんを助け損ねて逆に俺が助けられた感じだったもんな。うわ、俺ってば超カッコわりぃ。

この責任をどうにか背負ってこの場の目に見えない状況を打破しなくては。

そこで俺が冗談を言ってこの場を乗り切ろう作戦を瞬時に編み出してすぐさま決行!

 

キョン

「いやー、助けるはずが逆に助けられるなんて、情けないっすね俺。それにしても、この町に来てすぐに見られるものが景色じゃなくて魔法だったなんて、あはははは~。もしかしたら、それを巡って何か良からぬことが起きようとしたりして~」

 

ハッキリ言っておく。

俺はこれを冗談半分に放った言葉の羅列だ。

他に意味があるのだとしたら、それは彼女らの表情が困惑から驚愕への転換に使用されることだ。

 

ルチア

「………!?魔術の存在をご存じなのですか!?くっ、ただの民間人だと思って油断してしまいました!」

キョン

「冗談で言ったつもりがまさかの大当たり!?そんでもってルチアは何を馬車の車輪を降ろそうとしてるんだ!それで爆散させるか押しつぶして、殺す気か!?」

 

これも適当に言ったつもりだ。

 

ルチア

「うっ、攻撃方法まで一目見て把握するなど!もはや魔術師である可能性があります!」

キョン

「だー!何言っても死刑宣告される裁判所にいる気分だ!あっ、それを宗教裁判って言うんだっけ?」

ルチア

「話を逸らさないで下さい!あとそれと宗教裁判は異端の者を裁く場であって、必ずしも死刑宣告を受けることにはなってません!」

 

ルチアの物言いに、いつの間にか周りに集まった他のシスターや私服の少年少女らもうんうんと頷くばかりだ。

と言うか、いきなり魔術とかどうのこうの言われても俺には分からん。

長門と朝倉の対決シーンや古泉が青白い巨人と戦っている姿を目の当たりにしていると言う妙な経験値を持っているから、俺はそんな簡単には驚きません。

 

キョン

「んー、正直に言うと、魔術って言われてもな。俺はそれに近いもんをたくさん見てきたから、そんなに驚きはしないのさ」

オルソラ・アクィナス

「あら、ではあなた様は”超能力”の筋をお持ちなのでございましょうか?」

 

今度は超能力が来たか。

 

キョン

「あのなオルソラ。俺はこう見えても普通の高校生なんです。そんな似非超能力者とか、魔術師とか言われても分からないの」

 

俺がそんなことを言ったからか、それを聞いた少年少女らは何かぶつぶつと話し始めた。

 

魔術師1

「もしかして、あの方はあの方と同じような位置の人物なのでしょうか?」

魔術師2

「いやいや、魔術を目の前で行われて驚かないとなると」

魔術師3

「やはりあの殿方もあの方と同じくらいの鍛錬を」

 

と、俺の視線に気づいたのか、綺麗にハモッった口調でこう言った。

 

魔術師一同

「「「……怪物?」」」

キョン

「おいてめぇら。人を見るなりその曲りに曲がった評価は一体なんなんだよ?」

 

よし、もう決めた。

俺もう故郷の実家に帰らせて貰うわ。

こんなにアーウェーじゃ話にならん、誰が何と言おうが俺は帰る。

 

オルソラ・アクィナス

「そうはいかないのでございますよ」

 

ここでタイミングを見計らっていたように、オルソラ嬢が俺の手をまた掴んできた。

 

オルソラ・アクィナス

「案内はまだ終わっていないのでございますよ」

 

何度言ってもオルソラ嬢のほうが力が強かった。

あまりにしつこく腕を引っ張るので俺は頭の血管が破裂しそうなほどキレた。

 

キョン

「オルソラ!何であんたはそこまでして俺を案内したがってんだよ!まだ行けるか分からないって言ってんのによ!」

オルソラ・アクィナス

「そう言わずに。少しでも良いので中に入ってほしいのでございますよ」

キョン

「分かった!俺が悪かったから、手を引っ張るのはやめてくれっ」

 

その言葉が耳に入ったのか、オルソラは俺の手をパッと離し、俺は僅かによろけそうになる。

 

オルソラ・アクィナス

「では、どちらから案内しましょうか?」

キョン

「決まってねぇのかよ!ああもうっ、じゃあ、今目の前にあるでかい教会の中から案内してくれ!」

オルソラ・アクィナス

「はい。ではこちらの方へどうぞ」

 

今でもニコニコー!っと笑顔をさらし続ける天然シスターさんは、先導して案内を始める。

俺はその場に今でも呆然としているシスターどもや私服のガキどもを置いて行った。

それにしても、と思う。

この町に来てちょっとばかしピリピリしているこの空気の中、何が間違って教会の案内までに発展しちまったのか理解に苦しむぜ。

まぁ、理解したとしてもなんてことはないんだろうぜ。

だから俺は言わせてもらう。

オルソラ嬢に聞こえないような音量でいつもの口癖を言い放つ。

 

キョン

「まったく、やれやれだ」

 

――――どうやらこのオルソラ教会は7つの聖堂により構成されているらしい。

聖堂の大きさも均一ではなく、使う頻度や重要度によって建物のサイズや構造が変わってくると言う。

因みに俺が今いるのはこの教会の中でも一番の広さを持つ、婚姻聖堂と呼ばれる結婚式場である。

あとは葬式にまつわる終油聖堂やその他にも叙品聖堂、堅信聖堂などがる。

これらの小さい建物は彫刻や絵画、ステンドグラスなどの芸術品で飾られている、とオルソラが説明してくれた。

んでもって俺がいるこの婚姻聖堂はオルソラ嬢の言ったとおり、かなりの広さがある。

入り口から眺めると、左右にはそれぞれステンドグラスで彩られたものが迎えてくれる。

さらに正面には巨大な金色の十字架が建てられている。

テーブルの上に装飾品が乗っかっていると言うことは、明日はここで立食パーティを行うのかもしれん。

 

オルソラ・アクィナス

「とまぁ、この教会はこのような構成になっているのでございます」

 

今まで説明していたオルソラ嬢がこっちに振り向いてニコニコーと笑顔を送る。

しかしよくもまぁ、いつでもそんな笑っていられるな。

シスターさんってのは、毎日こんな感じなのだろうか?

 

オルソラ・アクィナス

「それで、御決断して頂いたでしょうか?」

笑顔でいたオルソラ嬢が、今度は懇願するように両手を胸の前で組む。

 

オルソラ・アクィナス

「え、ああ。確かにここは良いところだし、皆は優しく接してくれるだろうが、本当にいいのか?俺たちのようなよそ者がこんな神聖なところへ招待されちまっても」

 

そんな彼女の前で、再度確認する。

実は明日、ここでオープンパーティが開催されるそうだ。

それで今日、俺がオルソラの手助けをしたお礼に、SOS団全員を招待してくれるそうな。

 

オルソラ・アクィナス

「はい。もちろんなのでございますよ。この町の外からやって来た方でも、無法者でも大歓迎でございますよ」

 

何を分かりきった事をと、言わんばかりにやっぱりこの場面でもニコニコが好きな方だった。

 

キョン

「その気持ちは嬉しいんだが、やっぱり俺の一存だけで決められることじゃないから、今からその団長様にメールを――――」

 

と、弁明している時だった。

胸ポケットから着メロが教会内に響き渡る。

やばいやばい、作業に取り掛かってたシスターさんや私服のガキどもがみんなしてこっちを見てきやがった。

俺は大急ぎで電話に表示されてる名を見て、戦々恐々とした。

なぜよりにもよって、このタイミングでこいつなんだ?

 

オルソラ・アクィナス

「?どうかしたのでございますか?」

 

いつまで経っても電話に出ないことに疑問を持ったオルソラ嬢が、俺の携帯電話を指差した。

分かってる、今出るさ。

 

キョン

「………どうしたんだハルヒ?道にでも迷ったか?生憎と俺は今、人生と言う名の迷路で絶賛迷子中だ」

涼宮 ハルヒ

『何バカなこと言ってんのよ。あんたが道に迷っていようが、迷路で迷っていようがそんなことはどうでも良いのよ』

 

そりゃありがたいお言葉で。

んで、俺に何の用だ?

 

涼宮 ハルヒ

『それよりもっ、早くホテルに帰ってきなさい!団長であるあたしから重大な発表があるので早急に戻ってきなさい!』

 

いきなりだな。

まぁ、いつものことだが。

と、俺は横目でオルソラ嬢の顔を見ていた。

ただ見ていただけだ、それだけだ。

それだけなのだが、どういう訳かオルソラ嬢は違う意味での笑みを浮かべていた。

 

オルソラ・アクィナス

「………そう言えば先程あなた様は、私の会話を無理やり切ろうとしていたのでございますよね?」

 

突然、話しかけてくるもんだから、俺の右手は反射的に電話のスピーカーを抑えてしまった。

 

キョン

「悪い、オルソラ。その件だったら、あとで謝るから今は黙っててっ」

オルソラ・アクィナス

「それは少々、都合が良すぎるのではございませんか?あの時はあんなにむきになっていたのに」

キョン

「あーもうっ、悪かったって!謝るからその、今から悪事働きますんでよろしくぅ、見たいな表情はお止めになって!」

オルソラ・アクィナス

「もー、彼女との電話なら言ってくれればよろしいのに。この、幸せ者さんめー、でございますよっ」

キョン

「もう駄目だ。このシスターさん、頭がイッちゃってるよ」

オルソラ・アクィナス

「という訳で、その電話をこちらに寄こすのでございますよ!」

キョン

「うおぉーい!いくらなんでもその仕打ちはねぇだろ!そこのシスターさんっ、お願いですからこの暴走している娘を早く何とかして下さいっ」

 

俺はその間にオルソラから電話を取られないように背伸びして、何とか取られないように死守しているが彼女は、俺から携帯を奪おうとしている訳で当然、胸や息がちょくちょく触れてくるので、自然と顔が赤くなるのを止めることは出来なかった。

 

シスター

「シスター・オルソラ!」

 

ここでようやく、他のシスターさんが援護に来てくれたようだ。

私服のガキどもはどう動こうか迷っているところだが、今は保留だ。

 

オルソラ・アクィナス

「皆様!この方を後ろからガッチリと抑えてほしいのでございますよ!」

おいおい何を言っているんだオルソラ。

敬虔な彼女らが、今まさにピンチな状態の中で被害者である俺を見捨てるわけが――――

 

シスター

「すみませんっ」

 

駆け寄ってきたシスターさんの1人が、少しジャンプして俺の携帯を奪って行った。

一瞬だけ唖然とする俺だったが、それが敗因となってしまった。

その一瞬の隙に、俺の背後から2人のシスターさんが俺の両肩をそれぞれガッチリと掴むと、俺は不覚にも身動きが取れなくなってしまった。

 

キョン

「シスターどもが裏切りやがった!?そんでもって、隅で笑ってるお前ら!何を笑いを堪えようとして結局、爆笑してんだ!お願いオルソラっ、それマジで返して!」

 

などと吠えたが、すでに遅かった。

俺から携帯を奪ったシスターがオルソラにそれを渡して、彼女はにっこりと微笑んだ。

 

オルソラ・アクィナス

「突然、お電話をお変わりしてしまったことをどうかお許しください。実は私――――」

そこから長々と事情を説明した。

待つこと約5分。

 

オルソラ・アクィナス

「はい、そうでございます。では明日、お待ちしております」

 

オルソラが携帯電話の通話を切ると、俺にそれを返してきた。

返答の内容から見てハルヒの奴、まさか………。

 

オルソラ・アクィナス

「はい。現時刻を持って、明日のセレモニーにご招待することが、正式に決まったのでございますよ!」

 

それを聞いた瞬間、周りのシスターとガキどもがワーッと盛大に歓喜を上げたのだった。

本日何度目か分からない両肩落としが決まった瞬間でもあった。

 

 

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