涼宮ハルヒの憂鬱vsテレパシー少女蘭   作:Dr.JD

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――――人と出会える一日は、百日分の価値がある――――マダガスカルの言葉

どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者であります。

実に3ヶ月ぶりの更新となります。
大変遅くなり、申し訳ありません。
作者はまだ生きております!


第7話 2日目

[2日目]

2012年、7月16日、10;30;52

高校2年生 SOS団雑用

キョン

尾阿嵯(おあさ)町 オルソラ教会前

 

今日も満点の青空が広がっている空を見上げるが、すぐにお天道様のやかましいほどのちらつく陽に負けて視線を巨大な教会の敷地内へと向けた。

人は意外にもそれなりの数が来場しているようで、その中でも目立つのがどこかの上流階級の出の人物らしき服装も少なくない。

全く、物好きな奴らだ。

 

昨日ぶりにやって来た、ここオルソラ教会に俺たちSOS団の面子全員が出動することになった。

オルソラの無理やりな説得、もとい招待と言う名の強制送還される囚人のような心境に陥ったことは、ハルヒ本人にはあまり言わないでいただきたい。

なぜかって?分かりきったことを聞くなよ。

 

涼宮 ハルヒ

「ねぇキョン。あそこの受付に行って、招待状を見せてくればいいのよね?」

 

俺と同じく周りを見渡していたハルヒが、教会の門の前に設置してある受付らしき場所を指差す。

そこにはテーブルが設置してあり、そこの受付には昨日見かけた仲の良いシスター、ルチアとアンジェレネのコンビが何やら他のお客さんに説明をしている最中だった。

 

キョン

「ああ。そのはずだ」

 

オルソラの説明によれば、受付に行って招待状を見せれば、確か胸につけるパッチを支給されるはずである。

それさえ付けていれば何度でも会場を出入りできると言っていた。

そのことを思い出しながら他の面々に一言言ってその場を離れると、受付に向かった。

先程の親子連れに説明が終わったのか、俺の姿を見てルチアは慇懃な礼をして、アンジェレネは手を振って俺を出迎えてくれた。

俺もそれを返すように右手を上げて一言。

 

キョン

「おはようさん、シスターコンビ」

アンジェレネ

「おはようございます!」

ルチア

「おはようございます。昨日に引き続きお越しいただいて、ありがとうございます」

 

アンジェレネは元気よく挨拶し、ルチアはペコリと頭を下げる。

いや、言っとくけど今日ここへ来る発端作ったのお前らだからな?

だがせっかく招待?してくれたんだ、そんな事を言っては台無しだろうから、決して口に出さない。

 

キョン

「早速なんだが、この招待状を見せて、バッチを貰えるとの説明をオルソラから聞いてるんだが」

 

手に持っていた招待状をテーブルに置いて2人に見えるようにする。

この会場のパーティに参加するには、この受付にいる人物に招待状を見せて、それから貰えるバッチをすぐに他人から見える所に付けておかないといけないらしい。

 

ルチア

「少々お待ち下さい………えっと、はい、確認できました。間違いなくシスター・オルソラの直筆の招待状です」

 

ここに居る招待客全員に直筆で全部、招待状書いたのかよ!

 

アンジェレネ

「そうですよ。シスター・オルソラはこういった手作業が凄く得意なんですよ」

ルチア

「シスター・アンジェレネ。喋っていないで彼に人数分のバッチを用意なさい」

アンジェレネ

「もう、分かってますよ。はい。こちらが付けて頂くバッチになります」

 

2人のやり取りを間近で眺めながら、テーブルの上に乗せたバッチを手で拾った。

 

キョン

「サンキュー、お2人さん。それと、今日は招待してくれてありがとな」

ルチア

「礼ならシスター・オルソラに言ってください。それでは、楽しいご時間を」

 

ルチアに言われて俺はその場を急いで去った。

後ろは長蛇の列になっていて、まだかまだかと言わんばかりにこちらを軽く睨んでいたので、その場から急いで離れていった。

 

涼宮 ハルヒ

「遅ーい!取りに行くのに何分かかってんの!」

 

敷地前にある門の所へ戻ると、早速ハルヒからの第一声が弾丸のように飛んできた。

 

キョン

「しょうがないだろ、人が大勢並んでたんだ。割り込むわけにもいくまい」

 

俺はいつも通りの対応でハルヒに言いながら、貰ってきたバッチを配った。

 

涼宮 ハルヒ

「む、それもそうね。じゃあ今回は見逃すから、次やったらあんたの奢りね」

 

へいへい。

 

古泉 一樹

「ほぉ、これは珍しい。入場券の代わりにバッチとは。しかもこれは”ケルト十字”と呼ばれる物品ですね。いやぁ一度はお目にかかりたいと思っていたところですよ」

 

古泉がこのバッチについて、何か豆知識程度に語り始めた。

確かにバッチは十字架のようで、色はシルバーで塗装されているものだ。

こんなのを入場券代わりにするのは確かに教会ぐらいなものだろうな。

 

朝比奈 みくる

「あの、あそこにいる教会の人たちから、こんなパンフレットを頂いたんですけどぉ」

 

いつにも増して、パンフレット片手に可愛らしく小首を傾げる朝比奈さんを見て、俺はつくづくちょっと幸せを感じられる。

あぁ、生きていてよかった。

 

涼宮 ハルヒ

「ちょっと。なにみくるちゃんに卑しい目で見てるのよこの変態。さっさと中はいる!」

 

だがそれも一瞬だけ。

後は団長様のありがたくもへったくりもない一言で俺は一気に寂しくなってしまった。

 

古泉 一樹

「大丈夫ですよ。今日は良いことが起こるように神頼みでもしときますよ」

 

男のお前に神頼みされてもちっとも俺の心は救われん。

それに、本物の神様だったら、俺とお前のすぐ目の前で長門と一緒にずかずかと歩いて行く奴に頼めよ。

いや、その前にシスターさん(武装仕様の)にでもお祈りでもしてみようかね。

 

古泉 一樹

「冗談です。真に受けないで下さい。とにかく、今回も涼宮さんの後を付いて行くしかないようですね」

キョン

「はぁ、それもそうだな」

 

ため息を付きながら俺は今回も変な事件に巻き込まれないように願いながら、古泉の後を追う事にした。

教会の敷地内は大勢の客とかで賑わっていた。

それは客だけに関わらず、昨日出会ったシスターたちや私服の少年少女らもだ。

飲み物を運んだり、お客さんに案内と並行して作業している。

俺はてっきりこの式典側を開いている彼女たちが何かこう、固い感じで催すと思っていたのだが、それは俺の偏見に終わりそうだった。

 

古泉 一樹

「これはこれは。異国のシスターさんたちを見られるとは、あなたに感謝しなければなりませんね」

 

おいおい。

お前まさか、シスター属性でも持ち合わせてるのか?

 

古泉 一樹

「とんでもない。一度他国の違った文化で育った方たちが、どのような人物なのかを間近で見たかっただけでして」

 

そうかい。まぁ俺にとってはどうでも良いが。

 

涼宮 ハルヒ

「わあ~、こんなにお客さんが来てるなんてビックリですっ。それに修道服を着た人たちもあんなに」

 

対する朝比奈さんはと言うと、どこもかしこも人、人、人の波を見つめては目で追っているのが分かる。

まさか、今度のコスプレ衣装にシスター服にするなんて言い出すのではないだろうか?

 

涼宮 ハルヒ

「あ、その考えはなかったわね。ナイスよキョン!今度の衣装はシスター服に決定!」

 

だが答えたのは朝比奈さんではなく、隣で中央の教会を眺めていたハルヒだった。

しまったっ。

俺はまた朝比奈さんに苦労人にしてしまうのか!?

 

朝比奈 みくる

「あ、大丈夫ですよキョン君。シスターさんなら私は一度なってみたいですし」

 

さすがは朝比奈さん。

俺の余計な一言によってもたらされる災害をものともせずに受け止めてしまうとは、流石は我がSOS団のアイドル、朝比奈みくるさんだ!!

 

??????

「あ、すみません。少々お待ちくださいませ」

 

こののんびりとした口調をする女性に、俺はその声の主の方向に言った。

 

キョン

「ああ、オルソラか。約束通り、全員連れて来たぜ」

 

人ごみの中から「少し通ります」など言いながら人の波をかき分けてようやく姿を現したオルソラに手を上げて出迎えた。

 

オルソラ・アクィナス

「ふぅ。皆様、おはようございます。そしてようこそ、『オルソラ教会』へ。私が当施設の責任者であるオルソラ・アクィナスでございます」

 

人の波を避けるのが辛かったのか、少し息が乱れているようだったが、新川さんに負けないくらいの姿勢で自己紹介を始める。

昨日見かけた時とは大違いだった。

 

涼宮 ハルヒ

「宜しくお願いします、オルソラさん。今日はあたしたちSOS団を招いていただいて、どうもありがとうございました」

オルソラ・アクィナス

「いえ。せっかくこの地へ足を運んで頂いたのですから、今日はとくとお楽しみ下さいませ。涼宮様」

朝比奈 みくる

「あれ、どうして涼宮さんの名前を?」

 

聞いたのは朝比奈さんだった。

そう言えばそうだな。

お前らいつ知り合ったんだ?

 

涼宮 ハルヒ

「昨日、あんたに電話した時に急に話す相手を変えられた際に事情を説明してもらった時のことよ。そこでオルソラさんのことを少し伺ったのよ」

 

あの時か。

俺が数と言う暴力で負けたあの時に、ね。

 

涼宮 ハルヒ

「それではオルソラさん、こちらの方からも自己紹介を。まずあたしの隣にいるこの子は」

長門 有希

「長門有希」

 

うまく言葉を引き継がせながら名乗っていくが、長門の場合ならどうしてもそれが長く続きそうにはないな。

 

涼宮 ハルヒ

「それでこっちはうちのマスコットキャラの」

朝比奈 みくる

「えっと、朝比奈みくるです。いつもはお茶くみくらいしか役に立ってませんけど、頑張ります!!」

涼宮 ハルヒ

「そんな事はないわみくるちゃん!あなたはいつも役立ってるわっ、特に萌え的な意味で!そしてこっちが我がSOS団、きっての副団長である」

古泉 一樹

「古泉一樹です。以後お見知りおきを」

 

おし、最後は俺か。

 

涼宮 ハルヒ

「そして最後はSOS団初の団員であるキョンです。あたしたちは基本的に5人で活動しています」

 

………あれ?

 

オルソラ・アクィナス

「はい。長門様に朝比奈様に古泉様、ですね。どうぞ宜しくお願い致します」

 

こちらのことなど気にも留めずに俺を除く5人は、それぞれ軽く会釈すると談笑を初めてしまった。

 

キョン

「………おいハルヒ」

涼宮 ハルヒ

「何よキョン。今オルソラさんと話してるんだから後にして」

キョン

「何で俺の時だけ自己紹介させてくれねぇんだよ。他の面子の時はちゃんとやってたのに」

涼宮 ハルヒ

「別にいいじゃない。あんたのことはみんな知ってるんだから、言う必要がないでしょうが」

 

まぁ、ごもっともと言えばそうなんだが、せめて一言は自分の自己紹介ぐらいはしたかったかな。

しかしまぁ、それにしてもすごい人の数だ。

地元の住民や外からの観光客が今でも賑わっている。

もしかしたら俺の知り合い、中学校時代からの友人も来ているのかもしれないな。

………いや、会う確率は限りなく低そうだから、それは考えられないか。

 

シスター

「シスター・オルソラ」

 

ハルヒと朝比奈さん、オルソラで会話をしている中、片手のトレイに乗ったジュースやらワインのボトルなんかを大量に乗せた1人のシスターがオルソラに話しかけてきた。

見るからにボトルの総重量のせいで持ってる腕が細かく震えているが、シスターは億尾にも出さずに持ちこたえている。

 

オルソラ・アクィナス

「どうしたのでございましょう、シスター・アガター」

アガター

「来賓の方があと10分でいらっしゃいます。迎えるための支度をお願いします」

 

シスターが軽く会釈する。

恐らくその時だろう。

無理して片手で大量のボトルを持ったまま頭を下げたせいでうちの一本が朝比奈さんに向かって落ちていく。

しかも、中身が入っていたうえ栓が開いたのでボトルが倒れる角度に従って液体が零れ始め――――

 

アガター

「わっ」

 

赤い大量のワインが朝比奈さんの頭上に派手にぶちまけられた。

そのシスターは朝比奈さんよりも背が高かったので、全体的にその液体を被ってしまった。

 

朝比奈 みくる

「あ、あううう」

アガター

「ひっ、も、申し訳ございません!すぐに拭くものをっ」

オルソラ・アクィナス

「大丈夫でございますか、朝比奈様?」

涼宮 ハルヒ

「ちょっとみくるちゃん、大丈夫?」

 

そのシスターは相当焦った様子ではあったが、トレイを近くのテーブルに置いて、すぐに懐から漂白剤を使ったからか、真っ白なハンカチを取り出して急いで朝比奈さんの服を上から拭いていく。

 

朝比奈 みくる

「あ、大丈夫です~。ちょっとボーっとしちゃってて」

アガター

「本当に申し訳ありませんっ。あぁ、せっかくのお洋服が」

 

シスターさんがあっちこっちを拭きながら朝比奈さんの私服を指した。

今日の朝比奈さんの服装は去年の豪華客船に乗り合わせた時と同じ、黄色を基調としたファッションで去年と違うところと言ったら、昨日買った蝶の形をしたブローチを頭に付けている所だろう。

だがそのブローチも赤いワインが降り注いだせいで、変な色に変色していた。

 

朝比奈 みくる

「洋服でしたら、ホテルに戻ったらありますのでそんなに気にしないで下さい」

古泉 一樹

「ですが朝比奈さん。ホテルからこの教会までかなりの距離がありますよ?さすがに汚れたままでホテルまで戻るのは厳しいかと」

 

携帯画面で地図を見つめたまま古泉が横から口を挟んだ。

バスでここまで来たのでは確かに時間が掛かってしょうがない。

 

朝比奈 みくる

「うううう。でも、これから本格的にパーティが始まってしまうのに、この服のままじゃ恥ずかしいです………」

 

しょんぼりとする朝比奈さんはとても愛らしい姿なのだが、男として放っとけない。

このままでは朝比奈さんは周りからの視線が痛く感じられてしまう!

そうなる前に何とかせねば!

 

オルソラ・アクィナス

「それでしたら朝比奈様。僭越ながら私からの提案を一度、聞いてもらえないでございましょうか?」

 

俺よりも先にオルソラが頬に手を当て、朝比奈さんはオルソラを見つめる。

 

朝比奈 みくる

「はいっ、何でしょうか?」

 

自分でも服をタオルで拭く手をいったん止めてのを見届けて、オルソラが一言。

 

オルソラ・アクィナス

「これも私たちの責任でございます。いかがでしょう?予備ではありますが、私たちと同じこの修道服を1着、お貸しして本日を過ごしてもらうと言うのは?」

 

2012年、7月16日、11;00;12

高校2年生 SOS団雑用

キョン

尾阿嵯(おあさ)町 オルソラ教会 婚姻聖堂の中

 

オルソラの提案で修道服を1着借りて早速着替えることになった。

そのためここ婚姻聖堂の空き部屋を着替え部屋として使用しているが、俺らSOS団とオルソラ以外の面子はこの聖堂の中にはいない。

最初この提案をした時、真っ先に飛びついたのはハルヒだった。

当然、その答えを出したのもハルヒだ。

ここは普通、ワインを掛けられた朝比奈さんが答えるべきところだろうに。

まぁ俺としても、修道服に身を包んだ朝比奈さんの姿をこの目に焼き付けられるのは、とても目の保養に良いから構わないけれど。

まさかハルヒの奴、それを無意識に願ったせいでワインを掛けられる事件が起きたのか?

 

古泉 一樹

「それは十分に考えられますね。涼宮さんの事ですから、朝比奈さんの新たなコスプレ集に次にどんな服装が良いかを考えての事だったのでしょう」

 

古泉が横に長い椅子に腰かけながら爽やかスマイルで大袈裟に両腕を広げて見せた。

 

キョン

「あいつが願ってることがこれくらいの平和利用なら何でもいいがな」

 

朝比奈さん本人はちっとも良くないような気がするが。

 

古泉 一樹

「まぁ僕らが良くも悪くも思っている時点で、涼宮さんが一度考え始めたら、僕らはそれに付いて行くしかありません。それはあなたが一番ご存じのはずでしょう?」

キョン

「そんな事は分かってるよ。それより、長門はどうした?さっきから姿が見えないが」

 

長門はずっと俺らの傍に確かにいた。

それはこの婚姻聖堂に来てからもそうだ。

もしかしてトイレか?

 

古泉 一樹

「長門さんでしたら、涼宮さんと一緒に朝比奈さんのいる試着室に行ってしまわれましたよ」

 

なにっ、あのバカっ、オルソラの目の前で朝比奈さんの服を無理やり引っぺがそうってことで一緒に行った訳じゃないよな!?

 

古泉 一樹

「落ち着いて下さいっ。涼宮さんの事です、さすがに今日初めて出会ったオルソラさんの目の前でそのような暴挙は起こりえないと思いますが」

 

その暴挙が今までで何度もあったんじゃねぇか!

 

古泉 一樹

「それは認めますが、涼宮さんは常識のある人物ですっ。それを信じて待つしか」

 

バタンッ。

古泉のセリフを隔てるように、今まで固く閉ざされていた扉が勢いよく開けられる。

そんなことをするのは当然一人しかいない訳で。

 

涼宮 ハルヒ

「へーい、お待ち!着替えるのに意外と手間取っちゃって」

 

生き生きと出てきたハルヒを先頭に、長門と朝比奈さんがなんと3人とも修道服姿で俺たちの前に出てきたのだ。

朝比奈さんはオルソラと同じ、上から下まで黒を基調とした生地の上から白い十字のマークの刺繍が入った修道服を着ている。

長門は朝比奈さんと似ているっちゃ似ているが、下半身のベルトの下から白い布地が出てきており、言葉で表現するならアンジェレネと同じような修道服で。

最後にハルヒだが、ハッキリ言ってお前修道女舐めてるだろレベルのもので、一言で表すならルチアと同じく短いスカートにハイソックスを履いてるような感じだった。

それを言ったらルチア本人にも失礼か。

 

オルソラ・アクィナス

「サイズはいかがでございましょうか、涼宮様」

最後に部屋の鍵を閉めてからこちらにやって来たオルソラがハルヒに問いかける。

 

涼宮 ハルヒ

「バッチリよ、オルソラさん!サイズもちょうどピッタリだったし、なんと言っても有希とみくるちゃんがあり得ないほど似合ってると言うか可愛い!」

 

言うよりも先にハルヒは後ろで控えてる長門と朝比奈さんに思いっきり抱き着いていた。

いつの間にかオルソラに対して砕けた口調になっていたハルヒに半分だけ唖然としながらも、俺はハルヒに聞きたいことを言った。

 

キョン

「なぁ、ハルヒ。ワインで汚れた服を取り替えるために、朝比奈さんがその服装になったのは理解できるんだが、どうして長門やお前まで修道服に着替えてるんだ?」

 

この場合、長門ことだからどうせハルヒに言われて着替えたのなら分かる。

だがハルヒまでその服になった理由がいまいち分からない。

あ、でもこの場合だと――――

 

涼宮 ハルヒ

「どうしてって、決まってるじゃない。せっかく教会に来て、修道服を貸してくれるってオルソラさんから特別に許可を貰ったんだから、着なくちゃ損じゃない!」

 

いつもの護岸不遜な態度のまま、内心では俺は何となく理解できた。

まぁ、いつも通りのハルヒだわな。

 

オルソラ・アクィナス

「本当に申し訳ありませんでした、朝比奈様。すぐにお洋服の方はクリーニング店にお届けいたしますので、しばらくお待ちください」

朝比奈 みくる

「こちらこそすみません。私がボーっとしてて」

オルソラ・アクィナス

「そう仰らずに。お詫びと言ってはなんですが、テーブルにて料理を作って置いてありますので、宜しければそちらの方をどうぞ。それとあと小一時間で演奏会を始めますので、こちらも是非聞いてほしいのでございますよ」

 

ほぉ、そいつは初耳だな。

シスターさんでも楽器を演奏することもあるんだな。

 

オルソラ・アクィナス

「我々のような修道女の性格こそ、十人十色の様な存在なのでございますよ。そんな様々な性格を持った人々によって、世界は回っているものなのでございますよ」

 

そりゃまたえらく規模が大きくなったな。

まぁ、その意見には俺も激しく同意だ。

 

シスター

「シスター・オルソラ」

 

聖堂内に新たにシスターがオルソラの名を呼んだ。

 

シスター

「もう来賓の方が到着いたしました。外でお待ちです」

オルソラ・アクィナス

「分かりました。では皆様、服装は窮屈ではございますが存分にお楽しみくださいませ」

 

オルソラは会釈すると、そのまま外へ出ていってしまった。

しかしまぁ、ハルヒら3人のシスターの姿を見ていると、また新鮮なシーンが見れてこれはこれでレアだな。

 

涼宮 ハルヒ

「ちょっとキョン。なにジロジロ見てんの?そんなにあたしらのこの姿が珍しいかしら?」

 

ハルヒがいつもの鋭い勘で、俺の考えを的確に読みだしていく。

毎回思うんだが、そのいつもの勘はどこから発揮されるんだ?

 

涼宮 ハルヒ

「あんたの顔を見れば誰でも分かるわよ。それと、服はこの部屋で預かってるから、いつでも着替えられると思えばいつでも出来るわ。残念だったわねキョン」

 

何が残念だ、俺は朝比奈さんの修道女姿をこの目で拝められるならそれでいいのさ。

でも、その姿のお前もお前でかなり似合ってるぞ。

いや、比喩とかじゃなくて。

 

涼宮 ハルヒ

「ふ、ふん、まぁいいわ。とにかく会場に戻りましょう。美味しい料理とかが全部なくなっちゃうわ」

 

ハルヒは顔を少し赤くして、先頭を歩いて建物から出ていく。

その後ろ姿は不覚にも誰もが魅了しそうなほど、美しいものだった。

元々、こいつのスタイルはかなり抜群だから、その服装での姿は色々と反則かと。

内心じゃあ、なぜか俺まで顔が赤くなりそうだ。

 

古泉 一樹

「のろけているところ申し訳ありませんが、表情があまり他人から見て良しくないかと」

 

うるさいな。

他の奴らが見てなければいいんだよ。

ハルヒらはもう前を見ながら会話してるんだから。

 

古泉 一樹

「確かに涼宮さん達の姿は僕でも多少のどぎまぎしていますが、あなたの今の顔になるほどではありませんよ」

 

そんなに酷い顔してんのか、俺?

 

古泉 一樹

「ええ。なんでしたら、鏡でも見てみますか?」

 

いいよ別に。

見たくもない。

そんな会話をしていたら、聖堂の中から出て来れた。

外は相変わらず晴れ模様で、鬱陶しいくらいの熱気が全身を一瞬で包み込んでいた。

お客さんの方も先程の数よりも増えていて、会場内は人でそれなりに込み合っている。

 

涼宮 ハルヒ

「うわぁ、さっきよりも人増えてるじゃない。料理、残ってるかしら?」

 

先に外に出ていたハルヒが、頭に被った布を払いのけて深くため息を吐きだした。

 

キョン

「だったら俺が取りに行こうか?全員分は無理だろうけど」

涼宮 ハルヒ

「あら珍しいわね。あんたが自分からぱしりって」

キョン

「違ぇよ。今日は3人の珍しい姿が拝められたんで、その見返りに取りに行こうと思っただけだよ」

涼宮 ハルヒ

「い、いいわよ別に、そこまでしなくても。あんなに人が居るんだから、皆で行った方が手っ取り早いわ」

 

こりゃまた珍しいことにハルヒはまたも先導して人ごみの中に入っていく。

いつもならば俺1人でぱしらせるくせに。

 

キョン

「ん?朝比奈さんと古泉は行かないんですか?」

朝比奈 みくる

「あ、えっと、私は今は特にお腹は減っていないので、お料理とかは結構です。キョン君たちだけで行ってくれて大丈夫ですから」

キョン

「そうでしたか。古泉は?」

古泉 一樹

「僕も同じです。外国の手料理は気になりますが、それは後ほど楽しみますよ」

 

そうかい。

なら俺とハルヒ、長門で行ってくるわ。

 

古泉 一樹

「お気をつけて」

朝比奈 みくる

「行ってらっしゃ~い」

 

2人に見送られて俺も続いて、人ごみの中に紛れていく。

しかし。

このくそ熱い中、タキシード姿のおっさんも少なくないって、どんだけこの教会の式典に出席したがってんだよ。今何度だと思ってんだよ?35度だぞ?

一番服装とかでまともそうなのは、会場の端っこで壁に寄りかかりながら何かを話している親子連れくらいだろうかね。

 

キョン

「すみません、ちょっと通ります。あー。料理、やっぱり全部なくなってら………」

 

ようやく人ごみと書いて分厚い壁と読む障害物を乗り越えて、ここまでやって来たのに、目当ての料理がすべてキレイな皿に変身しているさまを見て、俺は大きく落胆したね。

テーブルの上には真っ白な皿しか残っちゃいなかった。

 

キョン

「………はぁ。戻ってハルヒたちを待つか」

 

俺は踵を返して元の人ごみの中に戻っていく。

その戻っている最中に色々な会話が飛び交っている。

 

偉そうなご老人

「日本最大級の教会が、まさかうちの近くに建造されるなんて、思っても見ませんでしたな。これで祖母も毎日、お祈りが出来ると言って張り切っていましたよ」

気高そうなご婦人

「この地にこの教会が建てられたなんて予想外だったけど、これはこれでありかもしれないわね」

偉そうなご老人

「懺悔でもしてみますかね?悪いことをした事について、何か心当たりがあるのならば」

気高そうなご婦人

「あら。前回のゲームの事を言っているのかしら?あの参加者たちも、さぞかし賞金を手にして、幸せに過ごしていることでしょうね」

偉そうなご老人

「おいっ、この場でゲームの話をするなっ。誰かに聞かれたらどうする!?」

 

おっさん、それ言ってる時点でもうアウトだよ。

だって今の会話、全部俺の耳に入ってるぜ。

それに本当に聞かれたくないなら、もっと声を小さくして言えよ。

それにしても、はて。

何だろうか、この違和感は。

特別、危険なシグナルを脳内で検知されたわけでもなく、かと言って無視できるようなものでもないような、かなり曖昧な表現でしか示せないような妙な引っ掛かりを覚えていた。

 

朝比奈 みくる

「キョン君、お帰りなさい。あれ?手に何も持ってませんけど、料理は無かったんですか?」

 

考えているうちに聖堂の前に戻って来れた俺は反射的に頷く。

 

キョン

「はい、やっぱりここまで人数が増えると、テーブルのもんが無くなるのは通例だったようですよ」

 

戻った俺に素敵な朝比奈さんボイスを聞けて、若干の精神緩和剤になってくれたから良かったものの、俺は一つだけ気になったことがあった。

 

キョン

「古泉と朝比奈さんが持ってるそれはなんだ?」

 

汗だくになった顔をタオルで拭く。

古泉が美味しそうにソーセージをもぐもぐと食ってる姿は、何というか腹立たしかった。

 

古泉 一樹

「これは先程、修道女の方から貰ったものです。あなたと入れ違いになったようで」

 

なにぃ、じゃあ俺はあのまま待っていれば、飯にありつけられたのか!?

 

古泉 一樹

「運が悪かったようですね。なんでしたら、僕の分を少しですけど分けましょうか?」

 

いらん。

何が悲しくてお前が食ったもんを俺が食わなきゃならんのだ。

 

古泉 一樹

「でしょうね。ともかく、先に行った涼宮さんと長門さんを待ちましょう」

 

くそ、俺だけ飯抜きかよ。

今さら長門とハルヒは美味しい飯をありついているんだろうな。

 

朝比奈 みくる

「でしたらキョン君。私の貰った分を少しあげましょうか?ちょっと多かったので」

 

あー、せっかくのお誘いですが朝比奈さん、それは出来ません。

男としての俺のプライドがズタボロになってしまうかもしれないんで。

 

朝比奈 みくる

「あ、そうですよね。もし涼宮さんに見られたら………」

 

朝比奈さんは心配そうに辺りを見回して、ハルヒが居ない事に安堵する。

俺はそっちを心配してる訳じゃないので。

だが俺の思いはあまり伝わった様子もなく、虚しく両肩を落としながらもハルヒと長門の帰りを待つことにした。

 

2012年、7月16日、12;00;43

高校2年生 SOS団雑用

キョン

尾阿嵯(おあさ)町 オルソラ教会 婚姻聖堂前

 

キョン

「遅い。遅いぞ………」

 

俺は猛暑に耐え切れずとうとう聖堂の中で、30分近く待っているのだが、一向に戻ってくる気配を見せないことにいら立ちながら踵をコツコツと鳴らしている。

いつもの爽やかスマイル野郎と全身真っ黒の修道服を着た愛らしいマスコットさん(ただし黒を基調としているので熱を吸収するしたせいで熱中症寸前でバテバテになって横になってる)と共に待っているのだが。

 

古泉 一樹

「涼宮さんと長門さん、遅いですね」

 

古泉も腕時計を見下ろしながらハルヒと長門が消えた方向を眺めている。

未だに人の数が減ることはなく、開いた扉からは多くの人が賑わっているのが確認できる。

 

朝比奈 みくる

「はぅ。このお洋服、意外と熱いです………」

 

長椅子に寝そべる様にぐったりしている朝比奈さんは、見るも無残な姿に成り果てていた。

 

キョン

「朝比奈さんっ、すぐに飲み物でも持ってきます。黒い服、しかも長袖物を長時間も着ていれば、嫌でも脱水症状になります!ちょっと待っててくださいっ。古泉、朝比奈さんを頼む!」

朝比奈 みくる

「分かりましたっ、お気をつけて」

 

俺は大急ぎで再びあの人ごみの中へ紛れていく。

本来なら、バッグに飲み物でも持参すべきだったのだろうが、ハルヒはただ飯が食えることに目が行っていて、必要ないの一点張りで、結局は何も持たずに来てしまった訳だ。

人ごみの中も結構な温度があるが、先程とはマシなくらいには順序良くテーブル席に移動できたようだ。

 

キョン

「ん、あれは、ハルヒか?」

 

俺の目先にはちょうど、修道服姿のハルヒがお客さんに飲み物を配っているところだった。

右手にはウェイトレスのようにトレイを、左手にはどこぞのワインが入ったグラスを持って、お客さんに今まさに渡そうとしている最中であった。

 

キョン

「おいハルヒ。お前は一体、何をやっていらっしゃるのか?」

 

そのお客さんが居なくなったタイミングを見計らって、俺はハルヒに近づいた。

 

涼宮 ハルヒ

「何って、見て分からない?飲み物とか、空のグラスを持って行ったりしてるのよ」

 

お客さんに見せるスマイル顔からSOS団特有の笑顔に戻るハルヒを見て、俺はますます頭が混乱しそうになった。

 

キョン

「お前は確か飯を食いに、長門と行ったんだろうが。なのになんでウェイトレスなんかやってんだよ?それに長門はどこ行った?」

涼宮 ハルヒ

「それがさぁ、あたしも最初はそれが目的でテーブル席の料理を食べてたんだけどさ、いきなりお客さんから『そこの君、ワインを持って来てくれ』なんて言い出すから、あたしは客なんですけどって言ったら、『修道服を着てるじゃないか』って言われて」

 

ああ、なるほど。

修道服を着ている人らは大抵この教会、つまりは開催している側の人間であり、同じ修道服を着たハルヒが手伝いもせずに料理を食っていることに不信を抱いて、そんな注文を取らされたってところだろうな。

 

涼宮 ハルヒ

「だからさっきから、そんな事の繰り返しよ。しかもどういう訳か、他のシスターとかには注文はあまり入らないのに、なぜかあたしにばっかり指名が来るっておかしいでしょ」

 

ハルヒは頭の布を乱暴に払い上げる。

言っちゃぁなんだが、お前のそのスタイルにその服装が異常なほどマッチしてるから、お客さ

んからすごく人気が出ちまったんじゃないか?

 

涼宮 ハルヒ

「あまり嬉しくないわね。一応は招待してくれたオルソラさんに泥を塗るような真似はしたくないから、今はウェイトレスとして動いてるから良いけどさ………有希なんてあんなに慣れてるのに」

キョン

「は?」

 

俺はハルヒが鬱を浮かべた表情で指差す方向を見てみると、ハルヒと同じくウェイトレス係をやらされている長門の姿があった。

片手にグラスが山積みになってるトレイを抱え、もう片方の手で素早く、的確に飲み物を順当に運んでいく。

 

長門 有希

「お待たせしました」

男性客

「おう、すまないねぇ」

女性客

「こっちにも2つちょうだい!」

男性客2

「俺には3つくれ!」

長門 有希

「少々お待ちを」

 

いつもの無表情ではあるものの、実力は健在のようで、他のシスターも長門の素早さを見て、唖然としているのが丸分かりだった。

おい長門、こんなところで宇宙人パワーを使っちゃいかんぞ。

 

涼宮 ハルヒ

「はぁぁぁぁ。そんな訳だから、あたしと有希の分の食物確保しといて。さっきも言った通りほとんど何も食べてない状態だから、たくさん頼むわねー」

キョン

「そうだっ、思い出した!おいハルヒ、急いで飲み物をくれ!朝比奈さんが熱中症で危ない状況なんだ!」

朝比奈 みくる

「え、みくるちゃんが?」

キョン

「ああっ、それで飲み物を取りに来たんだ!何かないか!?」

涼宮 ハルヒ

「急に言われても、もうこのトレイにはないから、食堂とかに行けばあると思うわ。あ、待ってっ。すぐそこにあったわ!」

 

ハルヒの指差す方に、俺は全速力で走り出す。

 

キョン

「分かったハルヒ!今からそっちに行くっ、あと出来たらたくさんの手料理、確保しとくから待ってろ!」

 

俺はハルヒの返答をまたずに、急いで飲み物が入ったグラスを手に持つと、さらに大急ぎで朝比奈さんの元へ戻って行った………。

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