涼宮ハルヒの憂鬱vsテレパシー少女蘭   作:Dr.JD

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どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者のDr.JDです。

大変お待たせしました、次話の投稿となります。
今回上げるこのお話は、前回の選択肢の片方の世界へのお話となります。
目覚めた2人が今後どのような行動に出るのでしょうか。
正直に言ってこの話は、『シークレット・ゲーム、キラークイーン』をプレイしてから閲覧することをオススメします。
多少のネタバレが潜んでおりますので、ご注意下さい。

それでは早速どうぞ。


αルート
表編 Episode-Ⅰ第2話 Get Ready


[GET READY]

2012年、7月14日、9;31;34

高校2年生 SOS団

キョン

?????? 1階小部屋

 

どれくらい眠らされただろうか?部屋の明かりがまぶしくて、俺の意識が一気に深海から浮上する。

最初はぼやけていた景色も焦点が整いつつ明確に映し出される。

俺が目覚めたのは小さな部屋だった。

服装は、北高の制服のままだな。

そりゃそうか。

わざわざ誘拐してきたのに着替えさせるやつはいないか。

身体を起こし辺りを見渡す。

ベッドの隣にあるドレッサーの上に俺の通学用かばんが置かれている。

壊れた大きな棚、錆びが付いていて足が折れそうなイス、床に溜まった埃ども、スプリングが飛び出して危うく手を切りそうになったベッド。

ふと、俺の脳裏に同じ場面のものを最近見かけたような錯覚に陥る。

はて、俺はこの風景、状況をどこで見た?

 

――――俺の自宅、自室の小さな画面と睨めっこしながら熱中している姿。

あ、これってまさか………。

俺の縮こまった背中から嫌な液体が流れる感覚を味わいながら足を地面に着け部屋をウロウロしてみる。

壁の造りや色、床に何年も溜まった汚い床、そして外へ通じる扉。

………冗談、だよな?

不安を拭いきれず、不甲斐ない自分に言い聞かせ、扉のノブへ手を掛ける。

頼む、悪い冗談でいてくれ。

この一瞬後、俺はこれはこれで夢ではないと思い知ることとなった。

ガチャっ。

扉を少しずつ開けて外を見る。

ガチャっ。

そしてすぐ扉を音が大きいのに関わらず閉める。

扉に俺の背を付け汗がワイシャツにしみこむ

感覚を忘れ、混乱する頭をどうにかして落ち着かせようと努力する。

そうだ!首輪は!?

扉に手をついていた手を、大急ぎで自分の首に押し当ててチェック。

 

首輪は、ない。

 

いや待て、落ち着け。

仮に着いてなくとも、近くにあれがあれば、確実なものになる!

そう言うと今度は俺の荷物が置いてあるドレッサーにあるかばんの所までダッシュする。

我ながら素晴らしいスタートダッシュだったが、この時の俺は気が気でなかったのでそんなことを考えてる余裕など全くなかった。

かばんのチャックに手を掛け、破れそうな勢いで中を注視する。

勉強道具や体操服、筆箱なんかを引っ張り出して、そこで、黒い物体を見つける。

俺は動けなかった。

中身をぶちまけていた手も、息を荒くして酸素を供給を手助けする肩も、黒い物体を見つめる目も、何もかもが止まっている。

俺は恐る恐る黒い物体、PDAをかばんから拾い上げる。

この冷たい感触が脳裏に触れた瞬間、心臓の脈が明らかに上昇するのが分かった。

右手で持って、左手でPDAの画面に触れる。

ピッ

PDAはお構いなくやかましい操作音を部屋に響き渡せる。

触れてから間もなく、PDAの画面は14と表示されており、画面はじに3つの機能が陳列している。

………間違いねぇ。

 

――――俺はどうやらまた、いつもの”やっかいごと”に巻き込まれたらしい。

だけどよ、ただそれだけなら良かったんだ。

ここまで部屋の風景や作り、なのよりも圧迫感まで演出する必要なんて合ったか?この悪趣味な世界へ連れてこられたりしなければ。

俺は投げやりにベッドに座り込む。

こいつはPSPソフト、『キラークイーン』の世界観と全く同じだった。

俺の考えがその答えを導き出した。

先週谷口の野郎から借りた、いや、押し付けられたゲームの内容を振り返る。

が、その前にPDA画面を操作し時計を見る。

『ゲーム開始から、0時間35分22秒経過』

PDAにはそう表示される。

 

キョン

「しょうがねぇ、外に出てみるか」

 

俺の記憶が正しければ、あと5時間半は向こうも襲ってはこないだろう。

過去の経験があったおかげで、俺はどうにか錯乱せずに済みそうだ。

………誰が何の目的で俺をここへ連れてきたかは分からない。

正直に言って完全に手探り状態での攻略となるのは目に見えてる。

なら、これがどこまで現実世界なのかを確かめに行こうではないか。

不安と、僅かながらの期待をかばんと共に背負い込み、部屋を後にする。

 

2012年、7月14日、9;31;34

中学2年生 超能力者

磯埼 蘭

?????? 1階小部屋

 

明かりが眩しくて、閉じていた眼を少しずつ開けていく。

まだ視界はぼやけているものの、大体の風景なら分かる。

見たことのない真っ白な天井。

体を起こして体を手探りするように触れていく。

服装は制服のまま。

ベッドの隣にあるドレッサーの上に私の通学用かばんが置かれている。

そして辺りを見渡した。

壊れた大きな棚、錆びが付いていて足が折れそうなイス、床に溜まった埃。スプリングが飛び出して危うく手を切りそうになったベッド。

 

磯崎 蘭

「どこなんだろ、ここ?」

 

不安に駆られ、ベッドから降りようとした時、ポケットに入ってるものが体に触れる。

 

磯崎 蘭

「そうだ、携帯っ」

 

手をポケットに突っ込み、携帯電話を取り出す。

画面を開いて助けを呼ぼうとするけど。

 

磯崎 蘭

「………圏外になってる」

 

すぐに落胆する。

昨日襲われた連中を思い出して、そこでいくつかの疑問が浮上する。

ここってどこ?何で私を誘拐したの?何が目的で?

この疑問にぶつかりあることを思い出す。

拘束さてない!

誘拐をして人質を逃がす気がないなら、ロープか手錠で拘束するはずだ。

なのにそれはない。

金銭目的での誘拐?と考えてやはり否定する。

私の家はそんなに金銭で恵まれてるわけじゃない。じゃあ、どうして?

考えてもみたがやはり結論は出ず、かばんを持って部屋を出ようとした時――――

 

磯崎 蘭

「なにこれ?」

 

かばんの傍にあったPDAを拾う。

画面に触れると数字の”0”と表示されたディスプレイが光った。

 

磯崎 蘭

「………何かの手掛かりになるかもしれないし、一応持っておこう」

 

――――私を連れ去った人達が何の目的で私を誘拐したのかなんて分からない。

また、何かしらの事件に巻き込まれてしまったのだろう。

だけど、過去の事例と合わせても納得いかない部分がある。

どうして私が突然、誘拐されたのかだ。

今回は事件の前兆となるトラブルなど何も起っていない。

こんな事は一度もなかったのにっ。

だけど今じゃ、根本的な解決策なんて思いつかず、こんなやるせない気持ちを抱えながら、最後に部屋を見渡して忘れ物がないか確認したところで部屋を後にした。

 

2012年、7月14日、9;40;31

高校2年生 SОS団

キョン

??? 1階廊下

 

長く続く廊下をひたすら歩いている俺は、他の参加者に出くわさないか気を配っていた。

幸か不幸か、他の参加者にすら遭遇することなく真意を確かめるべく、出口を探している。

まあ、出来れば他の参加者を見つけて、ゲームの内容と同じなのか違うのかで今後の行動が決まってくる。

しかし、現時点で最も危惧すべき存在は、建物にある警備システムだ。

もし仮にこのゲームが現実世界で本物となった時、明らかに俺はイレギュラーな存在になってしまう。

なぜなら、このゲームの参加者数は全部で13人。

主人公である御剣総一やそのほかのヒロイン達、悪役などが1人も欠けずにこの表舞台から躍り出ているのだとしたら、俺を含めたら14人になってしまう。

そうなれば、そのルールに乗っ取り14人目である俺を運営側が潰しに掛かるかもしれない。

そして俺はここの警備システムと連中共を相手に3日間生き延びなければいけない。

何ともハードな肉体労働になろうか。

これで賃金が本当に出てくれれば頑張れなくもないのだがな。

 

??????

「きゃあああっ」

 

今後の対策を練っていると何処からか悲鳴が廊下に響き渡る。

まさか、他の参加者か!?

とにかく早く助けに行かないといけないような気がする。

俺は今後のことなど頭からほっぽり出して猛ダッシュで悲鳴のした方へ直行する。

この建物の広さはゲームの世界とは違って現実にできた俺の体に確実に疲労濃度を濃くしていく。

このゲームの中に入ったのか、現実のものになったのかはさておき、猛ダッシュした俺は直角

の道を右に曲がると、少し離れたところに目の前に大きな穴が開いていることに気付く。

これは、トラップか?

このゲームの場合、これがダミーで他のもっと強力な仕掛けが張ってあるケースがあった。

慎重に穴の方へ近づいていく。

すると………。

 

??????

「あ、た、助けて………」

 

指が痛いのか、少女はうめき声を発して助けを求める。

このゲームには居ないはずの少女が穴の僅かなデコボコに右指を引っかけて辛うじて落ちずに済んでいるようだ。

中学生くらいの小柄の少女で制服姿であり、助けを求めている眼差しが、こちらまで傷付きそうだ。

 

キョン

「待ってろっ、今助ける!!」

 

俺は屈んで少女の手を取り、思いっきり自分の方へ引っ張り出す。

ぜえ、ぜえ………。

過度な運動をしている訳でもないのに酸素量が足りず、心臓が大急ぎで全身に送り込もうと頑張る。

緊張してたせいか、あるいは少女を助けられて安堵しているかよく分からない心境に陥った。

 

??????

「あの」

 

少女が俺を不安そうに俺の傍までよって、俺の手を取る。

脈を測ってくれてるのか?

 

キョン

「怪我は、ない、か?」

??????

「は、はい、大丈夫です………」

 

少女の顔は、どうしていいか分からない表情をしている。

そりゃそうか。

こんな訳の分からないところに連れてこられて、おまけに落とし穴まで落ちそうになった挙句に誘拐犯の一味かもしれない男に助けられるの連続でさぞかし不安で一杯であったろうに。

 

??????

「確かに最初はすごく不安でした。こんな知らない場所に連れてこられて、探索している時だって、こういった落とし穴に落ちそうになったんだもん。でも、あなたに助けられた時、すごく安心しました。私と同じ境遇の人がいてくれて良かったと思ってる」

キョン

「そうだよな。普通の人間なら、そういった反応するのが普通だ」

 

俺と少女は世間話するようなノリで会話する。

ん、待てよ。

俺は自分の気持ちをこの子に言ったか?

俺はその疑問を投げかけようとした時、少女の顔から焦りが見えた――――。

 

2012年、7月14日、9;40;31

中学2年生 超能力者

磯埼 蘭 (いそざき らん)

??? 1階廊下

 

磯崎 蘭

「広いなー、この建物」

歩いて約10分。

歩いても歩いてもコンクリートの壁しか風景にないことに飽きてきた。

その他の部屋もみてみたのだが、何処もかしこも同じ部屋ばかりでなので手掛かりと言ったものはゼロである。

私の能力を使っても何も出てこなかった。

でもそんな中でも1つだけ目標があった。

それは出口を見つけることだった。

こんな広い建物なんだ、出口の1つや2つ見つかっても不思議はない。

だから、手掛かりを見つけつつ、出口を探そうとしているのだ。

 

磯崎 蘭

「でもその前に、ちょっと一休みしよう」

 

廊下の壁に腰を降ろす。

ガコンッ。

腰を降ろしたあたりが僅かながらへこむ。次の瞬間、

 

磯崎 蘭

「きゃあああっ!?」

 

へこんだ部分が床一面に大きく穴を開ける。

1m四方の巨大な穴で、普通なら掛らないのだが私の運のなさが不幸を呼んでしまったのかもしれない。

 

磯崎 蘭

「うっ」

 

だがそんな私にも幸があった。

落ちた穴の途中には僅かなへこみがあり、辛うじてそこに指を引っかけて落ちずに済んだ。

 

磯崎 蘭

「ううう」

 

磯埼蘭は兄の影響で柔道が得意ではあるが、基本的な柔道の形が出来ているだけで筋力はさほどない。

だから、彼女の指にも限度があり、あと1分たらずでで落ちてしまう。

指に全体重がかかり、痛みが走って上を向いた時、彼はいた。

お兄ちゃんと同年代の男性で、制服姿、驚愕な表情を露わにしている。

 

磯崎 蘭

「あ、た、助けて………」

 

私の声で我に返ったのか、男の人は。

 

??????

「待ってろ、今助ける!!」

 

男の人は手を差し出し、思いっきり自分の方へ引っ張り上げる。

はあ、はあ。

過度な運動をしている訳でもないのに酸素量が足りず、心臓が大急ぎで全身に送り込もうと頑張る姿が見えた。

緊張してたせいか、あるいは助けられたことに安堵しているかよく分からない心境に陥った。

そうだ、あの男の人は大丈夫かな?

私を助けてくれた人の傍まで駆け寄る。

大の字になって息を荒く繰り返している。

 

磯崎 蘭

「あの」

 

男の手を握る。

助けてくれた人に申し訳ないんだけど、この人が誘拐犯の一味じゃないとも限らない。

私はこの人が犯人じゃない事と祈りつつ、疑いを晴らしたいことを確かめたかった。

 

磯崎 蘭

「怪我は、ない、か?」

 

手を取ることを拒まなかったところを見ると、この人はかなり体力を消耗しているのかもしれない。

だから。

 

磯崎 蘭

「は、はい、大丈夫です・・・」

 

この人には余計な心配をさせたくない思いを込めてそう言った。

そして握った手からこの人の考えが流れてくる。

 

??????

『こんな訳の分からないところに連れてこられて、おまけに落とし穴まで落ちそうになった挙句、誘拐犯の一味かもしれない男に助けられるの連続でさぞかし不安で一杯であったろうに』

 

この瞬間、私はこの人の心を覗いたことに非常に後悔した。

この人はこんなに体力が消耗しているのに私のことを心配してくれている。

同じ境遇なのに、私はこの人を疑ってしまった。

頭が混乱し、思わずこう言ってしまう。

 

磯崎 蘭

「確かに最初はすごく不安でした。こんな知らない場所に連れてこられて、探索している時だって、こういった落とし穴に落ちそうになったんだもん。でも、あなたに助けられた時、すごく安心しました。私と同じ境遇の人がいてくれて良かったと思ってる」

 

言い終わると同時に私の中から血の気が引くのが分かった。

そして男の人は、不可解な視線を私に向けていた。

 

 

――――互いの視線は沈黙を呼び起こした。

キョンは、なぜ自分の考えが分かったのかと言う驚愕な表情を。

蘭は、自身の能力を他人に気付かれてしまう可能性がある発言をしてしまった後悔の表情を。

それぞれの表情が前進するのを拒んでいるようにも見えた。

 

キョン・磯崎

「………………」

 

この沈黙とした空気がいつまで続くのかと思った。

しかし、それも長くは続かなかった。

 

キョン

「………単刀直入で悪い、あんまりこういう事は言いたくはないんだが」

 

意を決したようにキョンが蘭に話しかける。

 

キョン

「君、もしかして」

 

超能力者?と言いかけて、今度はキョンの座っている床がへこむ。

へこんだ頃にはちょうどキョンの反対側の壁から、腰辺りに壁から穴が2つほど開いた。

だがこの一瞬が2人の命運を分けた。

 

磯崎 蘭

「危ないッ!」

 

蘭は素早くキョンの前に出て、両手を正面に出す。

そこから疾風の如く速度で壁から2本の矢が飛び出される。

それと同時に両手からピンク色の幕が2人を覆う。

 

キョン

「ぬおっ」

 

キョンが間抜けな声を出す。

――――そういえば、長門と朝倉が戦った時もこんな感じだったよな。

蘭が両手から怪しい光線を出して攻撃を防ぐのも、キョンが驚いて何も出来なかったことも、そしてキョン自身がまた、助けられたことも。

 

磯崎 蘭

「………ふう」

 

蘭はようやく壁から何も出てこないことに安堵し、両手をぶら下げる。

キョンはその小さな体をあの時と同じように掴む。

 

キョン

「おい、大丈夫か?」

 

蘭が倒れそうになるのをどうにか支える。

 

磯崎 蘭

「あ、ありがとう」

キョン

「何言ってんだ。助けられたのは俺だ、礼を言わせてくれ。ありがとう」

磯崎 蘭

「どういたしまして。………あの」

キョン

「ん?」

 

蘭はキョンに恐る恐る尋ねる。

自身が能力を使ったことをどう思っているのか。

他の人から化け物呼ばわれされないかどうか。

それに、こんな場所で一人になったらって考えると――――

 

磯崎 蘭

「どうして、なにも驚かないんですか?普通ならもっと驚くのに」

キョン

「………そんなに驚くようなもんじゃないさ。以前にも同じようなことがあったから」

 

今度は蘭が驚愕の表情でいっぱいになった。

 

キョン

「俺の知り合いにもいるんだよな。超能力者」

磯崎 蘭

「えっ、それって………?」

キョン

「だが、君の持ってるやつとは、少し違ったよ」

 

世間話をするような、そんな暖かい声だった。

普段と変わらないような、そんな一ページ。

 

磯崎 蘭

「あの、私が、怖くないんですか?」

 

勇気を振り絞りキョンに尋ねる。

ここでの反応も蘭を驚かせる。

 

キョン

「あのな、どうして俺が何処にでもいそうな少女を毎日びっくりしながら生活しないといけないんだ?」

 

尚もキョンは続ける。

 

キョン

「それに、超能力者なんてもんに驚いていたら、それこそこっちの身が持たない。覚えておきな。この世界、いやこの宇宙は、とんでもなく広いってことに」

 

キョンはこの発言に後悔はなかった。

相手が何て思われようと、罵られようといいような気がしてきた。

それに、相手がこの少女なら話しても良いような気分に駆られたのだ。

 

キョン

「ところでさ、君の名前。なんて言うんだ?」

磯崎 蘭

「え?」

 

蘭は意表を突かれた。

話が変わったのがそうだが、私のことを信用してくれるの?

 

キョン

「君やあなたじゃ分かりずらいだろ?だから、自己紹介でもしようじゃないか」

磯崎 蘭

「あ、そうだね、私は磯崎蘭(いそざきらん)。中学校2年生です。私は一般人に紛れ込んでる超能力者で~す」

キョン

「ぶっ」

 

キョンは思わずふいてしまう。

キャッチフレーズが微妙すぎて、いやむしろ自己紹介をそういった言い方にするのはどうかなと思うのだが、そこはあえて突っ込まないようにする。

 

キョン

「むふ、次は俺だな。俺は学校の皆からはキョンって呼ばれてる。特技は、どんなすごい超常現象を目の当たりにしても、全く動じないということ」

磯崎 蘭

「えー、嘘だーっ。さっき私の力を見て驚いてたじゃない」

キョン

「あれは壁から急に矢が飛んできたからで、磯埼の能力に驚いてたわけじゃありません!」

磯崎 蘭

「ふふーん、そういうことにしておくよ~」

キョン

「その挑発するような言い方はやめなさいっ」

 

2人の言い合いはしばらく続いたが、そのあと2人が笑いあったのは、言うまでもなかろう――――

 

磯崎 蘭

「それで、これからどうするの?」

 

磯埼が棚にある道具類をかばんの中に仕舞い込みながら今後の予定を聞き出す。

 

キョン

「そうだな、やっぱり出口を探してみるのが手っ取り早いと思うんだ」

磯崎 蘭

「出口を?」

キョン

「ああ、そうすれば、このPDAに書かれたことが嘘か事実かが分かる」

 

俺は結局、これがゲームの世界が現実化したなんて言えなかった。

もし言ってしまえば、頭が余計混乱するだろうし、言ったとしても信用するわけがない。

ルールが真実なら、出口は分厚いコンクリートで塞がれているはずだ。

そうなればこれがゲームの世界に入り込んだ証拠になる。

 

磯崎 蘭

「でもさ、他の参加者を探さなくていいの?何か知ってるかもしれないよ?」

キョン

「いや」

 

俺は首を横に振る。

 

キョン

「他の参加者と会うのは危険だと思う」

磯崎 蘭

「どうして?」

キョン

「このルールが本当なら、俺たちには首輪が付いてないといけない。ルールに乗っ取ってない奴らが目の前に居たら、どうするよ?」

磯崎 蘭

「あ、なるほど」

 

磯埼は納得してくれたようだ。

そう、もし他の参加者全員が首輪をしており、どういうわけか首輪をしてない俺たちが対面でもしてみろ。

有無を言わさず病院、いやあの世送りにされるかもしれない。

 

磯崎 蘭

「………やっぱり一番最初に会えたのがキョンさんで良かったよ」

キョン

「どうして?」

磯崎 蘭

「だってこんな広いところでこんな物騒なものが書かれてたものがいきなり配布されて、殺し合いをしろだなんて言われたら、私、気が狂いそうになりそうだったもん」

キョン

「それはお互い様さ。話はもどるが、もし会ったとしても首輪を解除したって言っても文句はないだろ。磯埼、首輪の解除条件を見せてくれ」

磯崎 蘭

「はい」

 

互いのPDAを交換しようとしたとき、それは起こった。

 

??????

「うわああああ、助けてくれ~!!」

 

今度は男の叫び声が響き渡る。磯埼も反射的に俺に振り向く。

 

磯崎 蘭

「キョンさんっ」

キョン

「誰かの悲鳴だ」

磯崎 蘭

「どうする?何か、嫌な予感がするんだけど」

キョン

「ああ、俺もだ」

 

この声を聞き間違える訳がなかった。

プレイヤーの1人である、漆山権造の声だ。

こういう時の叫び声は、あまり思いたくはないが、大抵死ぬ間際に発せられる声だ。

と言うことは、漆山さんが最初に死ぬエピソードは、01と03だ。

だがここはまだ1階だ。

後者の03は消え、残りは01だけだ。

その時のその場へ駆けつけた連中の顔を一人一人確認していく。

 

磯崎 蘭

「………キョンさん?」

 

磯埼の心配した声が、俺の鼓膜を通過する。

 

磯崎 蘭

「早く様子見に行こうよ。もしかしたらあの人助け求めてるかもしれないよ」

 

だが俺はすぐに返答できなかった。

本当に向かって大丈夫だろうか?俺一人で様子を見に行った方がいいんじゃないか?

ガチャっ。

結論が早く出るよりも、扉が開く音が耳に入る。

 

キョン

「おい、磯崎!」

磯崎 蘭

「危険な目に会ってるかもしれないのに、放っておけないよっ。私、様子を見てくるっ」

 

俺の制止も振り向きもせず、磯埼は部屋から出ようと扉を乱暴に開けた。

 

キョン

「待て、磯埼っ。だったら俺も行く!」

 

急いで壁に掛けてあったかばんを肩に担いで磯埼の後に続く。

 

2012年、7月14日、10;00;12

中学2年生 超能力者

磯埼 蘭

?????? 1階廊下

 

磯崎 蘭

「どこにいると思う?」

 

息を切らして辺りを見渡すキョンさんに意見を促す。

キョン

「どこって言われてもな。ここは結構広いしな」

 

確かにそうだった。

さっきPDAに表記されてる地図を見て愕然とした。広さは四方に1kmぐらいに渡って広がり、6階建ての巨大な建物の中に閉じ込められたと思った。

想像以上の広さに大きく肩が下がる。

ドカーーーン

また近くで爆発音が聞こえた。これで何度目だろう?これが人に向けられてないことにただ、願うのであった。

しかし、この後に起こる凄惨な出来事に対して全くの無意味であることを思い知らされる。

 

磯崎 蘭

「あ――――」

磯埼が口を両手で押さえて大きく目を見開かせる。

そこには変わり果てた、漆山さんの死体が横たわっていた。

辺りは爆発の後である黒い焦げがいくつも残っており、金属のパーツが散らばっている。

これは警備システムである丸いボールロボットの仕業だと物語っている。

漆山さんの体にも黒焦げた跡があり、皮膚は剥がれて悲惨な状態であった。

正直、俺もかなりテンパっていた。

去年の夏休みにあった田丸さん殺害事件(偽)の続きをやってんじゃねぇんだぞ!?

冗談じゃねぇぞ!?何でこんなことしやがる!てめぇらゲームの中の住民じゃねぇかっ、何勝手に現実世界でひと殺してんだ!?

怒り狂う思考回路を何とか蒸留水を掛けて落ち着かせる。

 

??????

「ひっ」

 

だから俺は、後ろからやって来た2人の人物が近づいてくることに全く気付かなかった。

 

??????

「なっ」

 

声がした背後を振り返る。そこには2人の人物が死体と俺たちを前に唖然としていた。

そこには、姫萩咲実と御剣総一の姿があった。

姫萩さんは口元を両手で押さえて体中を震えさせて、御剣さんは俺と漆山さんを交互に見つめていた。

 

御剣 総一

「これは、いったい」

 

御剣さんは尚も信じられないといったようなかなりの動揺を見せている。

俺だって信じられないさ、こんなもんなんて普通ならゲーム画面の中でしか見れないぜ。

 

キョン

「突然悲鳴が聞こえて、ここに来たときにはもうすでに」

 

事情を説明はしたが、あまり頭には入ってはいないようだ。

そして磯埼のことを気遣い。

 

キョン

「磯埼、大丈夫か?」

 

俺は遺体をそれ以上見せないように背を背けさせる。

磯埼は泣いていた。

こんな若いのにこんなひどいもん見せられて正気な奴の方がおかしい。

俺だって、今になってキレそうだ。

あの黒服ども、何でこんなもん見せるためにわざわざここに連れてきやがった。

 

キョン

「磯埼、ここに居ろ」

磯崎 蘭

「………キョン、さん?」

 

俺は磯埼の肩から手を離し、漆山さんの所まで歩み寄る。

精神的にかなり抵抗があったが………。

 

キョン

「漆山さん、すみません」

 

ここまで分かっていたのなら、どうして止められなかった?

どうして止められないところまで来ちまったんだ?

俺は実際に自宅でこのゲームをやった時、この人物はあまり好いてはなかった。

参加者の中で一番戦闘に向いてない男が、誰よりも女ったらしで、こいつのいいところがあったら俺に教えてくれと言いたいほどだったが、今になってそんな考えはどこかへ消え失せちまった。

現実世界で人が死ぬのは、やはりどうも見てられない。それが他人の行為によってならなおさらだ。

俺は漆山さんの目を、閉じた。

安らかに眠ってください、漆山さん。

俺は両手を着いて南無の言葉を捧げた。

 

2012年、7月14日、10;12;33

高校2年生 キョン

??? 1階廊下

 

??????

「おい、しっかりしろ。聞こえてないんじゃないんだろう?」

 

俺の肩を揺さぶる者がいたので、揺さぶる本人の顔を見る。

手塚義光。

チンピラ風の服装をしており、自称会社員を名乗ってる男だ。

人を踏み台にしか考えてない男で努力が嫌い、楽天的で頭の回転が非常に速い、だったかな。

俺は手塚の顔をじっと見ながら特徴を軽く頭からたたき起こす。

 

手塚 義光

「お前、俺とどっかで会ったことがあったか?」

 

ずっと自身の顔を見られたことに不信感を募らせたらしく、俺は軽く相手をする。

 

キョン

「いや別に。あんたのような怖い人を1度でも見たなら、記憶からあんたの顔が消えることはないだろうよ」

手塚 義光

「何だよ、人を指名手配犯かなんかみたいに」

キョン

「あんたが犯罪者なら、犯罪者はみな聖人君子だよ」

 

高山さんとの会話を思い出す。

同じ場面が見られるのかと思いきや、手塚は黙ったまま俺の方を見つめたっきりになってしまった。

ちょっと言い過ぎたかな。

そんな手塚をよそに後ろにいる他の人物に視線を向ける。

 

左からは矢幡麗佳(やはぎれいか)、大学2年。

確か数理と論理学を受講しているんだっけな。

それで計算高く、あの高山さんでさえも翻弄された恐ろしい女である反面、自分の命を優先し、少しでも危険があれば排除する思考を持った人物である。

その彼女は、俺と手塚のやり取りをいつもの冷静な態度で見つめている。

 

陸島文香(りくしまふみか)、どこかの企業の受付嬢。

しかしそれは表の顔で、実はこのふざけたゲームの主催者側を潰そうとしているテロ組織の一員、通称『エース』の一員。

もちろん本人は俺がこんなことを知ってるはずがないと思っているようだが、残念ですが文香さん、俺はあんたのこと、多少なりとも知ってんだぜ?

まあ、多少なりとも協力しますぜ。

 

長沢勇治(ながさわゆうじ)、中学何年かは不明。

自尊心が激しいガキで、過激なことを発してる反面、それを言う度胸がないせいで学校の連中からは除け者にされてる捻くれたガキだ。

あまり刺激しない方が良いな。

長沢は文字通り、漆山さんの遺体を調べたがってる雰囲気を嫌なくらい放射していた。

 

郷田真弓(ごうだまゆみ)、どっかの企業の社長で、商談の帰りに拉致されてると主張する女性だ。

しかし、それは偽りであり真の素顔は主催者側が送り込んでゲームの管理をする、言わばゲームマスターと呼ばれる人物である。

要注意人物だな、この人は。

その人が、イレギュラーである俺がなぜここに居るのか、ハテナマークを頭から大量に生産しつつ、今後の対策としてどう行動しようか困惑の色が顔から漏れ出してる。

その顔を見てると、混乱している連中共の顔が想像できて少し笑えた。

 

その4人の後ろには姫萩咲実、彼女はどこか有名な学校に通ってるらしく、勉強ができるお嬢様みたいな人だが、大規模な詐欺に会い、それ以来家族とは離れ離れになり、親戚を転々としている苦労人である。

この人は何としても守り抜きたい。

何て言うか、朝比奈さんのような雰囲気と似ていて、どこかほっとけない。

 

そして本作の主人公、御剣総一の姿がそこにあった。

そう言えば、彼の顔は何枚かのグラヒィックでしか見たことがないから、まともな表情を見るのは、これが初めてだな。

髪は整っており、真っ直ぐな緑色の瞳を携えており、どこか意志の強そうな人物である。

彼も今は驚愕の表情で俺と磯埼を見つめている。なぜ、そんな顔をするんだ?

どのエピソードでも唯一生き残ってる男であり、各ヒロインたちから好意を寄せられている人気者である。

羨ましいぜ、御剣さん。

 

以上が、この場にいる全員とプロフィール、終わり。

え?ネタバレ要素が多いって?その内分かるんだから良いだろ?

となると、俺は今後どういった行動を磯埼と取れば良いんだ?

今後の予定を、頭の中をフル稼働させて組み上げていくと、長沢が俺に疑問を、数百メートル規模の速さでぶつけてくる。

 

長沢 勇治

「ところで兄ちゃんさ、何で首輪付けてないの?」

 

一番感ずかれてはいけないところをクリティカルでぶつけられる。

別に忘れてたわけじゃないさ。

ただ考慮する時間があまりにも、無かっただけなんだっ。

その瞬間、俺の背筋と表情がマイナス200℃で氷漬けとなった。

 

キョン

「それはだな」

 

急ピッチでこの場を凌げる発案を洗濯機が高速回転する並みの速さで起動させる。

やべぇ、この場を何とかしなきゃ俺はこの場にいる連中をみんな相手しなきゃいけなくなる。

磯埼は俺の横で俺の手を掴みながらまだ俯き、啜り泣きをしている。

死体を見て動揺するのは分かるが、早く顔を上げてくれ磯埼。これじゃ逃げられん。

 

キョン

「俺の首輪、さっき解除したんすよ。それで、この子を助けた時に、落とし穴に落としちゃって、それで首輪はありませんけど」

この場にいた一同(咲実さんを除いて)、俺の表情を見て不信感を募らせる。すると、

 

矢幡 麗佳

「あなたのPDA、見せてくれる?」

沈黙を保持し続けていた矢幡さんが俺の目の前までやってきてPDAの提出を求める。

俺は迷わず上着のポケットからPDAを取り出す。

しくった、壊しときゃ良かった。それなら壊れたと言って言い訳できたのに。

 

矢幡 麗佳

「解除条件はっと………」

慣れた手つきでPDAの機能欄を閲覧されてゆく。

 

矢幡 麗佳

「………ふうん、なるほどね。分かったわ」

 

麗佳さんは納得したようで、どうやら俺の誤解が解けたのかと思ったのだが。

 

矢幡 麗佳

「あなたたちが私達をさらった連中だってことがね」

 

俺の脳がチキンナゲットの焼き加減を間違えたのと匹敵するくらいの熱を帯びた気がした。

 

矢幡 麗佳

「あなたの解除条件、『トラップに掛った人物を3人以上、助けること』ってなってるわ」

 

しまったっ、それを確認するときに漆山さんの叫び声が聞こえてたからPDAの中をちゃんと見るのを忘れてたぜっ。

 

キョン

「だから、俺はその解除条件を満たして」

矢幡 麗佳

「だったら、どうして、一緒に行動してるのがあなたとその子だけなの?こんな状況でその人達と別れる方が疑わしいわ」

 

最もなご意見だぜ麗佳さんっ。

俺はもうこれ以上、言い訳できる材料をもってないぜっ。

不安材料を抱えながら御剣さんの顔を拝んでみるが、彼は俺の顔を見つめ返すだけで唖然としていた。

 

手塚 義光

「だったら話は早ぇなあ」

 

指を何本か鳴らしながら近づいてくる手塚が俺と磯埼を睨み飛ばしている。

 

手塚 義光

「そいつらを捕まえろ!」

 

手塚の合図で長沢と手塚、郷田が俺と磯埼の捕まえようと走り出す。

 

磯崎 蘭

「待って!」

 

俺は目の前にある腕をじっと見つめていた。

磯埼が俺の前に出て近づいてくる3人をどうにかして手を出し、制止さていた。

 

磯崎 蘭

「私達を捕まえていいの?」

長沢 勇治

「はあ?」

 

長沢が呆れた様子で磯埼を眺める。

 

磯崎 蘭

「忘れたの?私達には首輪が付いてない、だけどあなた達には首輪が付いてる。ってことはあなた達が私達を捕まえようとするとそれは当然、相手に手を挙げるのと同じ行為」

 

磯埼は動揺する体を落ち着かせて、ゆっくりと言葉を選び出していく。

 

磯崎 蘭

「そしてその行為をした瞬間、ルール違反と見なし、館のシステムに追い回される。そうなったら、自分の首輪なんて外せないよね?」

 

磯埼はその場の空気を支配していた。

俺はこのゲームのルールを思い出す。

『開始から6時間以内は全域を戦闘禁止とする。違反した場合、首輪が作動する。正当防衛は除外する』

俺はすべてを悟った。

磯埼はそのルールを咄嗟に思い出し、もし俺たちを捕まえるようなら当然俺たちは反撃する。

そして反撃し返してくる連中の首輪が作動する。

ルールが仮にある程度本当だとしたら、相手は迂闊に手を出せない。

ルールが本当で首輪が作動するのは猶予しき事態だからだ。

もっとも、これはルールを知ってる奴でないと効果がないのだが、手塚はそれを知ってる。

それに、漆山さんの一件があるんだ、簡単に向こうも手が出せまい。

俺は磯埼がこれ以上死人を出させないようにしたいと言うような眼差しで手塚たちを睨んでいる。

磯埼はお得の超能力で俺の考えを悟ったのか、目の前で手を強く握りしめてみせた。

 

手塚 義光

「ち、そういうことか」

 

手塚が忌々しげに舌打ちをして、数歩下がった。

他のプレイヤー全員が、動きを完全に止める。

 

磯崎 蘭

「よし、今のうちに逃げよう」

 

磯埼が俺の手を掴むと、御剣さんたちの方向と逆の道を走り出す。

毎回思うのだが、どうして女はこんな華奢なのに男の図体を引っ張っていけるんだ?

 

手塚 義光

「待ちやがれ!」

 

手塚の怒声が廊下に響き渡る。当然俺たちは足を止めるはずなかった。

 

2012年、7月14日、10;40;55

中学2年生 磯埼 蘭

??? 1階廊下

 

どれくらい走ったのかは分からない。

ただ目に見えない脅威から逃れるために逃げているのかキョンさんを助けたくて必死で走り回っているのかが分からない。

恐らく後者だろう。

チンピラの人達は追うことは無く、すぐに撒けたと思ったがおじさんの死体、ものすごい敵意を向けられて不安に駆られ、今なお走り続けている。

 

キョン

「磯埼っ」

 

キョンさんが私の名を呼ぶ。

走ってきたペースを落し、彼は私の手を放す。

 

キョン

「もういいだろう。これだけ走れば、奴らは追ってこれない」

 

走り続けていたせいか、キョンさんは壁に手をついて荒い呼吸を繰り返している。

私も足を止め、その場に座り込む。

 

キョン

「少し休んだら、一気に6階まで上がっちまおう」

 

キョンさんは壁に手を着きながら言う。

 

磯崎 蘭

「あの人たちから逃げるため?」

キョン

「それもある」

 

この部分に引っ掛かりを覚えた。それもあるって?

 

キョン

「あいつらは首輪をしてたろ?してない俺たちが、このままゲームに参加したままじゃかなりまずい。当然他の参加者たちも不信に思う」

磯崎 蘭

「でも時間が経てば、首輪が解除した人が出ても不思議はないんじゃない?」

キョン

「問題はそのクリア条件だ。俺のPDAは彼女に取られたままだから取り返しようがないが、お前のは違う。クリア条件を見せてくれ」

磯崎 蘭

「うん」

 

私はかばんの中からPDAを取り出してキョンさんの手に乗せる。

すると彼の表情が強張る。

 

キョン

「うーん、微妙だな」

 

キョンさんは手を顎につけ靴をコツコツと鳴らし始めた。

 

磯崎 蘭

「何が微妙なの?」

キョン

「解除条件がだよ」

 

キョンさんが私のPDA画面を見えるように向ける。

解除条件は、『自身のPDAにソフトウェアを9つ、インストールすること』

PDAを横に振り、私の手の中に戻す。

ヒンヤリとした冷たさが手の感触に残る。

 

キョン

「幾つあるのかも分からないソフトを9つもだぞ?もしソフトをいくつもダウンロードしてる参加者が何人も現れたら言い訳なんてできないぞ?」

 

確かに。

仮に20個くらいのソフトがあっても、どこかしらのグループが過半数を超えるソフトをダウンロードしてたら?解除条件も満たしていないのに首輪が外れてるのも十分怪しすぎる。

 

キョン

「だから、これからはあそこにいた参加者以外の参加者には、PDAは壊れました、と言って誤魔化そう」

 

両腕を腰に当てて決意する。

 

磯崎 蘭

「それは分かったけど、6階に早く上がるって言うのは?」

キョン

「ああ、それはな」

 

と、言いかけて口が止まった。

何か考えてそうな雰囲気で私は見守っていた。

 

キョン

「それは後で言う。今は、上の階に上がって、今後の作戦を練ろう」

磯崎 蘭

「待って、それだったら何も上に上がる必要なんてなんじゃない?」

キョン

「どうして?」

磯崎 蘭

「だって私たち首輪してないよ。だから、時間ごとに1階から順に禁止エリアになるから、その時間になるまでどこかに隠れてればいいんじゃない?」

キョン

「いや、さっきも言ったとおり、俺たちはイレギュラーな存在だ。13人しかいないはずのゲームを俺たちがかき乱したりでもしたら、連中は黙っちゃいない。だから、」

 

悪戯を考えてそうな子供の表情を作りだし、満面な笑みを浮かべる。

 

キョン

「逆に俺たちで、このくそゲームをかき乱してやろうぜっ」

 




うーん、難しい(小波感

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