どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者です。
はい、今までの更新が遅れてしまい、すみませんでした。
理由としては、
データが損失→やべぇ、更新できない→だったら新しく書けば良いだろ!→死ぬ思いしてやっと完成した(←今ここ)
と言うわけですので、更新が遅れてしまった次第です。
それと、リアル世界でもかなりのゴタゴタが起きてしまったので、色々と対応に追われていました、はい。
まぁ、長く話していても仕方がありませんので、早速続きの方をどうぞ。
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2012年、7月14日、11:00:00
高校2年生 キョン
?????? 1階中部屋
キョン
「どうだ、磯埼」
両目を閉じてどこかに力を入れている様子は分かっているのだが、応援することしかできない俺は、隣に座って磯埼を何とか力づけようと躍起になっていた。
磯崎 蘭
「ううん、ダメ。さっきので終わりみたい」
目をゆっくり開き、首を横に振る磯埼はどこか疲れた表情になり、肩をドッと降ろした。
ゲーム開始から数時間近く経っていた。
俺たちは上へ続く廊下を歩いていると、磯崎が急に止まり、『何か聞こえる』と言って両目を閉じて研ぎ澄まされた感覚に集中しているようだった。
以前から磯崎は、自分の親友と脳の中で会話できると聞いていたが、まさかこんな形で見ることになろうとは、正直思っても見なかった。
そして、近くにある中部屋に入り磯埼の気を紛らわすため中に入った。
幸いにも誰も居なかったので、ここを利用させて貰おう。
磯崎 蘭
「もしもし翠?」
耳の裏で聞こえてくる、そんな声だった。
へぇ、こんな感じの口調なのか。
至って普通の会話に聞こえるのは気のせいではあるまい。
?????
『蘭、今どこや!?』
出てきたのは、女の声だった。
ただし、気になったのは今の口調が関西弁だったと言うことだ。
なに、関西人か何か?
磯崎 蘭
「分からない、でも今は男の人が傍にいるから大丈夫」
?????
『それで蘭。捕まった時のこと、話せる?』
磯崎 蘭
「うん、黒服の人に捕まって、薬みたいなものを嗅がされて………」
磯崎は連れ去れたことを思い出したのか、口元を手で押さえて顔をしかめる。
分かるぞ、その気持ち。
俺だって、未だに鼻の裏がツーンと痛むことがあるからな。
??????
『薬を………それで、誘拐犯たちの目的は?』
磯崎 蘭
「分からない。でも、キョンさんが言うにはっ」
??????
『ちょい待ち、蘭。キョンさんって誰や?』
磯崎 蘭
「ああ、今一緒にいる男の人がそう呼ばれてるからそう呼んでるだけ」
どうやら俺の話をしているらしい。
おーい、頼むから変な事言って、時間を潰さないでくれよ?
いつまでもお前さんのその力が通じるとは思えないからな。
??????
『緊張感がないのう。それで、そいつの言い分はなんて?』
磯崎 蘭
「これは、大きな組織によるものだって言ってた」
??????
『組織!?』
なんでだろう。
さっきからこの2人の会話が筒抜けになって聞こえてくるのは。
ってそんなこと言ってる場合じゃねぇ。
キョン
「おい磯崎っ」
磯崎 蘭
「え、なになに?」
会話してるとこ悪いが、そいつらに伝言を残さなくちゃいけない。
肩を揺すられて困惑した表情になるが、俺はそんなこと気にせず磯崎に伝言を言う。
キョン
「今から俺が言うことをお前の友人に伝えてくれ」
磯崎 蘭
「あ、うん」
磯崎は目をパチクりさせるが、俺はそんなことを気にしている余裕までは無かった。
キョン
「今すぐに県立北高校に行ってくれと言うのが一点。もう一つはその高校の在学中の古泉一樹と長門有希ってやつに今回のことを伝えてほしいと言ってくれ」
磯崎 蘭
「うん、わかった」
それから、磯崎は正面を向き直し会話を続ける。
磯崎 蘭
「ごめん、あまりしゃべれる時間がないから手短に言うね」
??????
『何や、蘭』
磯崎 蘭
「あのね、県立北高校ってとこに行ってほしいんだって」
??????
『ちょい待ち』
そう言って相手は会話を少しだけ断ち切る。
恐らくメモでも取ってんだろう。
正直に言ってありがたい。
磯崎 蘭
「そこに行ったら、えっと、古泉一樹って人と長門有希って生徒に会って、今起きてること全部話してほしいって」
名前が合ってるかどうか不安だったのか、2名の名前を確認するような目を度々俺に送る。
俺は合っていることを頷くことでその場を収拾する。
??????
『それは、そいつの言い分なの?』
磯崎 蘭
「うん、だから早くその人たちに伝えてほしいの」
??????
『よし、分かった!後はこっちで――――!!』
磯崎 蘭
「翠!!」
相手の声が徐々に低くなっていくのが分かる。
力を使いすぎてのことなのか?
磯崎 蘭
「大丈夫。お兄ちゃんと留衣にも平気だって言っておいてね?」
それを期に、相手からの声は途絶えてしまった。
人生初のテレパシー?を使った会話を垣間見ることが出来て、少しだけ嬉しさが込み上げる。
磯崎 蘭
「翠、ちゃんと伝えてくれたかな?」
少し休んだ後、俺たちは再び上階へ行ける階段を磯埼のPDAの地図を確認しながら向かっていた。
ゲーム開始から4時間近く経っていることもあり、他の参加者たちの遭遇率を抑えるために慎重な足取りかつ、迅速に行動することで精一杯だった。
キョン
「まぁ、会話が終わってからまだそんなに時間が経ってないから何とも言えないが、今はそいつに賭けるしかないだろうよ」
磯崎のPDAの地図機能を確認しながら廊下を歩いていたので質問の回答にはそれらしいものを選んでいた。
ふとここで気付く。
この先にはY字の分岐点が存在している。
右へ曲がれば上の階への階段に、左へ行けばエレベーターに続く通路が展開されていた。
ちなみにこの階には4カ所の階段が存在しているが、×印が付いていることから、俺たちは×のついていない唯一の階段へと向かっている。
磯崎 蘭
「あ、道が分かれてる」
磯崎の声につられて俺もその場に止まり、例のY字分岐点に到達していた。
磯崎 蘭
「ねぇ、どっちに行った方が良いと思う?」
キョン
「そうだな。PDAによれば、右へ曲がれば2階への階段、左に行けばエレベーターに着くが磯埼はどっちが良い?」
PDA画面を磯崎に見せると、顎を手に付けて考え込んでいるようだ。
磯崎 蘭
「うーん、私としては他の参加者に合わない為には、左へ行ってエレベーターを使って一気に6階へ上がった方が良いと思うんだけどな」
両腕を組ませて磯崎に結論を出す。
キョン
「なら、このままエレベーターのところまで行こう」
磯崎 蘭
「そうだね、他の参加者たちに会わない為にはこれが一番の方法かもね」
それで俺たちはエレベーターがある左へ歩き始めた――――
PDAのソフトを使ってどうにかスムーズに再びエレベーター前にたどり着けた。
今度は人影もなく、周囲を警戒しつつ、見渡したところでエレベーターの中を見る。
磯崎 蘭
「どう?」
キョン
「ああ、特に問題はなさそうだ。ほら、2階にあったエレベーターがもう少しで到着するぞ」
指差す方を見上げると、ちょうど2から1になるところだった。
チンッ
磯崎 蘭
「着いたみたいだね」
エレベーターが止まるお決まりのチャイムが鳴ると、俺は再度、安全確認をする。
よし、異常なし。
キョン
「よし、乗り込むか」
俺がスイッチの近くに立ち、磯埼は奥の方へ入り込む。
入ってみて気付いたが、中は思ったよりも広く、床はフローリング使用で清掃が行き届いていた。
そして………6階のボタンを押す。
磯崎 蘭
「それでキョンさん。6階に行ってその制御ルームに行って装置を破壊すれば、首輪の警備システムを止められるんだね?」
キョン
「ああ、だが問題は、その部屋に行けるかどうかが問題なんだ」
中央制御ルーム。
その部屋はこの建物にある警備システムを管理しており、いわばこの建物の中枢部分だ。そこさえ潰せればこんなクソみたいなゲームを終わらせられる。
問題はその場所までどうやって行きつくかだった。
その場所は当然、地図にない場所にあり、探すのに一苦労だ。
どこかに探知できる装置があれば良いのにな。
磯崎 蘭
「・・・私この建物を透視出来るよ?」
だよな、できる訳ないよな。
磯崎 蘭
「ちょっと聞こえてる?今、出来って言ったのっ」
そうか、って出来んの?
そんなこと?
磯崎 蘭
「うん、出来るよ」
キョン
「………」
どうやら俺は隣にいる少女を侮りすぎたようだ。
最近の若者はそんなことができるのか。
しかし、超能力ってのはそのこまで高機能だったとはな。
磯崎 蘭
「まあ、そんな大きな力使えるのは翠と2人の時だけど、最近になって使えるようになったんだ。でもその後は、反動でしばらく休まないとダメだけどね………」
なるほどな。
まさしくハイリスクハイリターンな能力だというのだな。
しかし、先程から出てくる翠と言う少女も侮れんな。
磯崎 蘭
「今度合わせてあげるね。私のお兄ちゃんや友達に………っと、もうすぐ6階だね」
エレベーターはちょうど6の数字を表示していた。
チンッ
よし、6階に到着したな。
キョン
「よし、誰も居ないな」
エレベーターを降りてホール周辺に人影がないことを確認すると背後を振り返り、磯埼に呼び掛ける。
だからだろう。
すっかり安心してエレベーター近くに小型爆弾が設置されていたことに気付たのは。
キョン
「!?磯崎、あぶねぇ!」
エレベーターをちょうど降り切っていた磯埼が爆弾のことに気付いてるわけがなかった。
俺は咄嗟に磯埼の腕を思いっきり手前に引っ張ると同時に体を反転させる。
爆風から磯埼を守るためだった。
ドカーーーーーンッ
その瞬間に爆弾が爆発して、爆風に巻き込まれた。
最後に見たのは、驚愕に満ちた磯崎の顔だった。
それから俺の意識は闇の中へと引きずり込まれてた――――
ピロリンピロリン
俺が目覚めたのはやかましいアラームのせいだった。
キョン
「う、ううう………ここはどこだ、っつ」
全身に痛みが走る。
自身の身体をよく見てみると、服が脱いであり、ところどころ包帯が巻かれている。
俺は音源のする方へ眼を傾ける。
磯崎のPDAがあったのだが、近くには彼女の姿はなく、俺一人だけが大部屋に取り残されていた。
キョン
「磯埼は、どこだ?まさか、一人であそこに行ったのか?いや、それよりもPDAを止めなくちゃな」
いつまでもやかましく鳴り響くPDAを止めるため、PDAを取り出すと、あの胡散せぇやろうの顔がテロップの音楽と共に召喚された。
??????
「やあ久しぶり。僕の名前はスミス」
ジャックオーランタンの、だろ?
スミス
「そんな細かいことは省こうよ!そんなことよりさ、今、重大な発表があるよ!」
ほう、また変なエクストラゲームでもやろうってんなら無理な話だぜ。
お生憎様、俺はリアルタイムで満身創痍なんでな。
くそゲームをご所望なら、他のやつを当たってくれ。
スミス
「そんなんじゃないよ。君がずっと寝ていたせいでなかなか打ち出せなかったんだ。それじゃ発表するよ」
再びやかましいテロップがPDAと部屋のスピーカーから大音量で流れだす。
いいから早く発表しろ。
鼓膜が破けそうになるぜ。
スミス
「実はね、もう何時間も前にゲームは終わってるんだ!」
………はい?
今、こいつ何て言ったんだ?よく聞こえなかったな?
スミス
「だからね、ゲームは終わったんだよ。君はあの爆発のあと目覚めなくてね。それで君が起きたのはゲーム終了の1時間前だったのさ。だからアラームを鳴らしたんだよ?何回も」
俺の頭の中は混乱の渦に巻き込まれていた。
ゲーム終了1時間前。
ずっと前に終わっていたゲーム。
爆発後、目覚めなかった俺。
スミス
「それでね、肝心の勝者は、これは異例のことなんだよね」
だからこいつの次の言葉で俺の中にあった嫌な予感は最悪の形で現実となった。
スミス
「なんとずっと寝ていた君だけが、どうどうの勝者になったんだ!おめでとう!」
スミスが言い終わる前に、俺は痛む身体を動かしながら部屋を飛び出していた――――。
部屋を飛び出してどれくらい掛っただろう。
長く続く廊下を、ただひたすら走っていた。
走っていたと言っても、足の方の怪我も相当なもので、立っていられるのがやっとなんだが、そんなことを気にしている暇はコンマ1秒もない。
磯崎はどうなった!?
他の参加者はどうなった!?
そんな思いを胸いっぱいにためていると、血生臭いにおいが俺の鼻をどうどうと襲ってきやがった。
この臭いは魚の血生臭さの比ではなく、それも一人や二人の血の量ではなかった。
その証拠にそこにあった死体から、かなりの大きさの血の池が出来ていた。
キョン
「北条………」
そこに壁に背もたれていたのは、妹のために奮闘していた北条かりんの変わり果てた姿があった。
傷は複数あり、体中に穴が開いてあり、ほぼ即死だったと思わせる雰囲気があった。
キョン
「すまないな、北条。お前を助けられなかったな………。安心しろ。お前の妹、かれんは俺が何としても助ける。絶対にだ」
俺は北条の見開いた両目をそっと閉じる。
やるせない思いに駆られたが、俺は無理矢理視線を逸らして気を紛らわせた。
キョン
「あと、これは貰っていくぞ」
北条のポケットから携帯電話を取り出す。
幸い、これは壊れてなかったようだ。
待ち受けには北条姉妹の写真が貼られていた。
そいつを仕舞い込み、次に見たのは、廊下を這いずった矢幡の死体があった。
こちらは心臓を一突きされたあとがあり、矢幡の服の胸部分にある十字架の形をしたチャック?が壊れていた。
俺はそいつを拾い上げると、PDAがないか調べる。だがない。
キョン
「北条も矢幡も持ってない、か」
何もかもやる気をなくした俺は、とうとう、血生臭い部屋の扉の前に到達する。
俺は意を決して扉を開く。
血の臭いが一層ひどくなる。
そこには、まさに地獄図絵をそのまま再現したような光景が広がっていた。
北条や矢幡、漆山を除く全プレイヤーがその場で横たわっていた。
御剣さんや姫萩さんのそこにいた。
彼女を庇うように死んでいた。
俺は唖然とした。
どのエピソードでも、どんなひどい罠や強襲に会っても決してめげなかった男が、屈指の自己犠牲精神で他のヒロインと生き残った男が、こんなにも呆気なく死んで行ってしまったことに俺はひどく放心されてしまっていた。
部屋を見渡しているうちに。
キョン
「磯崎!!!」
そして俺は見つけちまった。磯埼の を。
キョン
「おい、磯埼………」
俺は彼女の傍までかけより、彼女の小さな体を持ち上げると何度も必死で声かける。
彼女の両目は閉じられたままだった。
キョン
「おい磯埼っ、しっかりしろ!死ぬなよ!」
脈を確認すると、俺は制服を脱ぎ、ポケットからハンカチを引きちぎって傷に押し当てる。
磯崎の怪我はひどいと言うレベルを軽く超えていた。
体中に銃弾の跡があり、足や腕、胴体にも及ぶ銃弾が磯崎の身体を蝕んでいた。
磯崎 蘭
「ごほ、ごほ」
傷の手当てをしているうちに磯埼が苦痛の咳を立てる。
ハンカチの布を引きちぎろうと手を伸ばすが、彼女の手によって阻まれた。
キョン
「おお、磯埼っ、待ってろ今血を止める」
磯崎 蘭
「いい、よ、キョン、さん。こんな傷じゃ、もう、無理だよ」
声が途切れ途切れになっている。
肺に穴でも開いてるのかもしれない。
キョン
「何言ってんだ!お前はこんな事じゃ死なない!お前は、世間に紛れ込んだ、超能力者なんだろ!?」
肩を揺さぶって磯崎の意識をつなごうとする。
これが無駄なことぐらい、すぐに分かった。
分かっているのに、手が全然止まってくれなかった。
磯崎 蘭
「いくらちょう、のうりょ、くしゃでも、死ぬことは、さけられない、よ」
俺は嫌な確信をしてしまった。
このままでは確実に死ぬ。
何とかして磯埼を手当てしようも手段がない。
時間がない。
知識がない。
八方塞だった。
だがそれでも俺は助かる方法を考えずにはいられなかった。
磯崎 蘭
「わたし、ここで、キョンさんに、会えて、良かったよ」
そんな考えが伝わったのか、磯崎が話しかける。
頼むから黙っててくれ、考えてるんだ。
磯崎 蘭
「最初に、会えてたのが、キョンさんで、良かったよ」
キョン
「なに、ただ運が良かっただけさ。巡り合えてなかったら、俺は誰とも合わずに死んでたさ」
磯崎 蘭
「そんなこと、ないと、思うよ。キョンさん、結構頭、良いし、ずっと、頼りにしてた」
キョン
「お前の方がずっとすごかったよ。バリアみたいなもんで矢を防いだり、咄嗟の判断であの場をやり過ごしたり」
磯崎 蘭
「でも結局は、みんな、死んじゃった。こんなおかしなゲームで、永遠に、会いたい人に会えなく、なっちゃった」
磯崎の目から涙が次々にこぼれ出る。悔しさ、無力さ、絶望感で一杯だった。
磯崎 蘭
「私、くやしいよ、かなしいよ、くるしいよ。こんな形で、終わっちゃうなんて。翠に、留衣に、お兄ちゃんに、みんなに、最後に、会いたかった、よ」
その言葉と同時に、磯埼の目から生気がなくなっていき、徐々に目が閉じられる。
キョン
「おい、磯埼っ!死ぬな!」
磯崎 蘭
「ごめんなさい、キョンさん。私、先に、行くね」
キョン
「行くな!磯埼!会いたい奴がいるんじゃなかったのか!?そいつらとまた楽しい時間過ごすんだろ!?」
磯崎 蘭
「みんなには、ごめんね、っていっておいて。それじゃ、さよう、なら」
両目がとじら、れる。
両腕に掛かる体重も、徐々に増えていった。
キョン
「磯埼?おい、磯埼?」
肩を揺さぶっても、彼女は微動だにしない。
両目も開かれない。
息もしない。
ただの、身体になってしまったのだ。
キョン
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
これほどかつてない叫びが館を包んでいた。
怒りの咆哮。
涙の雨。
絶望の闇。
この時彼の中では、それしか存在していなかった。
――――どれほど無力感に包まれただろう。
その場に座り込んだだろう。
その場には、静寂と息のする音しかなかった。
PDA
『ゲーム終了時間になりました。おめでとうございます!あなたは見事にクリア条件を達し、生存することに成功いたしました。またのご利用をお待ちして』
ガシャンッ
言い終わる前にPDAを叩きつけた。それだけではたらず、何度も足で踏みつけた。
キョン
「ふざけんなっ、何がゲームだ!何がルールだ!こんなもんのためにアイツらは死んだんだぞ!?色条みたいな小学生くらいの奴が何で死ななくちゃいけねぇんだ!?葉月さんには家族がいて帰りを待ってるんだぞ!?姫萩さん何てこんなもんの比じゃねぇんだぞ!!」
バキッ
PDAはとうとう粉々になり、再度周辺を見渡す。
横たわった人々の姿。
出血して凄惨な光景。
その匂い。
すべてが彼を不快なものにしていく。
キョン
「くそっ」
今度は粉々になったPDAを蹴り飛ばす。
怒りや憎しみなどが渦巻いていたからか。そこにいる人物に気付くのが、それが初めてだった。
??????
「ダメですよ。ちゃんとものは大事にしないと」
聞き覚えのある声が俺の脳に走り抜ける。
朝比奈さん誘拐事件の首謀者であり、佐々木らとつるんでいた超能力者………橘京子。
そいつはいつも笑みを浮かべていたのとは裏腹に、怒りの表情を浮かべていた。
橘 京子
「覚えていてくれたんですね。よかった、忘れられてたらどうしようかと思いました」
キョン
「………何の用だ?」
驚愕や怒りを通り越して、自分でも分かるくらい低い声で問いただす。
今、てめぇの相手をしてる余韻は1ngともないね。
橘 京子
「あなたに用がなくともこちらにあるんです」
キョン
「ああ、そうかい………いや待った。一つだけ教えろ」
橘 京子
「何ですか?」
キョン
「………この話は、終わらないんだろう?」
終わらない。
この単語にすぐ納得したようで、橘は頷く。
橘 京子
「ええ、厳密な意味ではこの話は一定の条件以外では終わりません」
俺は唇を噛みしめる。
またこんな話がループするしるのか。
去年の夏休みじゃねぇんだぞ。
橘 京子
「仕方がありませんよ。そのループで長門さんが暴走して、あなたが今回と同じような瀕死状態がこれから続くとなると、鬱になりますね」
キョン
「なんだと、お前っ」
聞いてもいられず睨みつける俺だが、橘は磯埼の近くに屈み、彼女の遺体をそっと抱き上げていた。
その目には涙がある。
同じ超能力者からの同情心からか、俺には分からないが。
橘 京子
「確かに彼女は死にました。変えられぬ過去です。それでもキョンさん、あなたにはこれだけは忘れないでほしいんです」
橘は磯崎を抱えたまま俺の方へ振り返る。
橘 京子
「あなたは、この子によって生かされたんです。それを決して無駄にしないでください」
そう言って橘は背を背け、部屋を出ようとする。
キョン
「おい、待てよ」
橘 京子
「では、あの時間軸に戻ってもらいます。少しだけヒントを言うと、漆山さんを助けに行こうとした時、蘭ちゃん、真っ先に飛び出ようとしましたよね?」
キョン
「あ、ああ」
橘 京子
「その時に、彼女を止めて下さい。あなた方の選択で、このゲームは思っても見ない方向へ進むことがあるので」
キョン
「ちょっと待てよ。さっき言ってた俺に用があるって言ったのは何なんだよっ」
そこで橘は立ち止まり、磯埼を近くの机に乗せると、俺の方へ近づいてくる。
橘 京子
「これを」
そう言って渡したのは、大きさが異なる2つの首輪と、一丁の拳銃、手錠だった。
リボルバー式の銃で6発装填で、全弾空になったらリボルバーの部分がまとめて取り替えられるリロード用の弾丸もいくつか手渡された。
こいつは見たことがあるぞ。
確か………スピードローラーと呼ばれる代物だったはずだ。
キョン
「おい、こんなのを俺に使えってのか?」
橘 京子
「こんな状況ですし、仕方がありません」
キョン
「………それで、この首輪は偽物なんだろうな?」
手に乗せられた首輪を睨みつけながら問いただす。
橘 京子
「大丈夫よ。それは他の参加者のやつとは全くの偽物。それを付けてルール違反に走っても、首輪が偽物だから作動することは無い」
言葉を一度切る。
橘 京子
「怪しいのなら、首輪にPDAを差し込んで試せばいいでしょ………でも最後のPDA、あなたが壊しちゃったし」
キョン
「あっ」
俺は自分でも分かるようくらいの間抜けな声を出してしまった。
橘が呆れた声色で呟いた。
橘 京子
「全く、この状況になって怒りたい気持ちは分かりますが、それで大事なものを守れなくって後悔しないで下さいよ」
悲しげな表情を見せる橘であった。
が、何か言いたげそうな顔をこちらに向けるが、俺に背を向け廊下に向かい始める。磯埼を抱えて。
橘 京子
「やっぱりあの話は、もう少し後の方が良いでしょう。その時は私が相手じゃないと思いますが、頑張ってくださいね」
尚も廊下に向かう橘に俺は声を送り続ける。
キョン
「まだだ、まだ聞きたいことがある!」
橘 京子
「さようなら」
だがそれも虚しく、辺りが光につつみこまれ始める。
それでも俺はなお叫んだ。
キョン
「お前は、どうしてあんなくそ組織に加担してるんだ!?以前のお前ならそんなことするやつじゃなかったはずだぞ!それに、それにあいつはどうしたんだ!?佐々木は今、どうしてるんだ!?」
橘 京子
「………それも、まだです」
言葉と同時に、辺りは闇に包まれた。
まだ聞きたいことはあったのだが奴の性格上、かなり切羽詰った状況だというのは分かった。
そして俺は、あの時間へと戻った。
はい、堂々のバッドエンドです。
すみません、途中からかなり蛇足になってしまいました。
まさかの初っぱなからほぼ全員死亡エンドDEATH!
いやぁ、でもこの後の物語を形成する上では絶対に必要な構成だったんですよ!
ソンなわけで、次回もお楽しみ下さいませ!