ロナルド・レーガン
どうも皆さんおはこんばんにちわ。
Dr.JDです。
前作の投稿からかなり期間が空いてしまいましたね………。
今回の視点は御剣総一視点でお送りさせて頂きます。
早速どうぞ。
[名推理]
2012年、7月14日、10;43;13
高校3年生 一般人
御剣 総一(みつるぎ そういち)
?????? 1階大部屋
それぞれのPDAでルールを全て把握した彼らは、書かれていた内容を知って絶望感に包まれる。
首輪の解除、条件、殺害、作動、戦闘。
あらゆる負の感情が立ち込み始めていた。
そんな中、陸島がこの場の空気を壊すように口を開く。
陸島 文香
「この6時間が過ぎたら何が起きるっていうの?」
御剣の手によって書かれたルール表を確認している手を組むと、ため息交じりに独り言のように口走る。
手塚 義光
「俺の予想だと、酷いことになるだろうな」
手塚は笑みを浮かべたまま、陸島に返答する。
陸島 文香
「首輪を外すだけで、そんな事しなくちゃいけないなんて」
キョン
「うーん」
だが、キョンは他の皆とは違う表情をしていた。
それが気になり御剣は問いただす。
御剣 総一
「どうしたんだい?」
キョン
「ん?あ、いえ。ここに連れてきた連中は、どうしてこんなことをする必要があるのか考えてたんです」
ルールを確認しているキョンが御剣の顔に向けると、キョンは立ち上がり、中央へ立つ。
矢幡 麗佳
「どういうこと?」
その話に興味があったのか、矢幡はキョンに尋ねると、彼は中央で立ち止まる。
キョン
「これを話す前に、まず幾つか確認をさせてください。まず1点、ここに居る皆さんは、赤の他人ですよね?」
手塚 義光
「さっきも言ったろ?俺には大学生の知り合いも女子高生の知り合いも居ないって」
キョン
「なら次。皆さん、自分が持ってるPDAは本当に1台だけですか?」
”1台”と言う部分を強調して再び視線を送る。
長沢 勇治
「俺は1台しか持っていないよ。でもさ、仮に2台持ってる奴がいても、素直に2台持ってます、なんていう奴いないよ」
長沢は何分かりきったこと聞いてんの?と言わんばかりな口調でしゃべるが彼は気にしない。
キョン
「では最後に1つ、このルールの9番に書かれている首輪の解除条件のなかには殺人を要するものもあります。これは、間違いありませんね?」
御剣はこの時、キョンが何を言っているのか理解出来なかった。
――――何を言ってるんだ?さっき確認したばかりのことを聞いてどうするんだ?
郷田 真弓
「何言ってるの?それはさっき確認したばかりじゃないの」
御剣と同じことを考えていた郷田はキョンに視線を送るが、彼らの内心を知らない彼は尚も続ける。
キョン
「………分かりました。では、今の俺の中にある考えをここで言いたいと思います」
キョンは姿勢を整え、目をその場の人間に合わせる。
キョン
「連中共は何を考えているのか、そこからです。まず先程も言ったとおり、俺達は赤の他人です。それで怨恨の線は消えます。次に身代金目的の誘拐ですが、俺を誘拐している時点でそれも消えます。となると一番の可能性として挙げられるのは」
手塚 義光
「愉快犯の仕業ってことだろ?」
キョンが言い終わる前に手塚の言葉で隔てられる。
手塚 義光
「俺もその線であることは気付いていた。だが、その目的まではまだ分かりきってねぇ。情報が足りないから何とも言えないが」
キョン
「彼の言ったとおり、ここを作った連中は皆、愉快犯です」
目線を今度は反対側にいる人たちに合わせる。
御剣は、これが愉快犯の仕業である結論まで出せていなかった。
キョン
「次はその目的ですが、みなさん少し考えても見てください。こんな馬鹿でかい建物の中に、たった15人の人間が入るのにはいささか広すぎるとは思いませんか?1フロアあれば十分だと言うのに、それが6階まであるんですよ?」
陸島 文香
「確かにそうね」
それに同意見を持った陸島が頷く。
キョン
「ただ単に殺し合いをさせるには効率が悪すぎる。誘拐した連中が全員殺させたいなら最初から殺害してると思うからね。だが、ここを作った連中とは別の連中がこれを見ているとしたらどうですか?」
矢幡 麗佳
「待って。あなたまさか、これは、ショーだって言いたい訳?」
キョン
「俺は最初、愉快犯の仕業だって言ったはずですよ」
手塚 義光
「それだとしたら全て辻褄が合う。この大きな建物に高機能なPDAに首輪、警備システム。これらを用意するだけでも一苦労するのに、それを15人分も用意しなくちゃいけなくなる。だからこう結論が出た。そこの監視カメラが、映像越しに金の道楽どもがここの映像を見てるってことにな」
手塚の視線がカメラに向く。
郷田 真弓
「待って、仮にそうだとしてもこれがショーだと言う根拠はないわ!」
キョン
「いえあります。これがそうです」
キョンはそう言ってカバンから一つの手錠を取り出す。
郷田 真弓
「その手錠が、なんだって言うの?」
キョン
「解除条件の中には殺人や首輪の作動を要するものがありますが、考えてもみてください。これがある時点で、俺が言いたいことがハッキリする」
御剣 総一
「そうか!」
御剣は勢いよく立ち上がる。
御剣 総一
「手錠は本来なら相手を動けなくするためのもの。それはこの建物の中ではどれほど危うい状態なのか」
この建物は下の階から順に進入禁止エリアになっていく。
ならおのずと参加者は上の階へ登らなくてはならない。
しかし、もし手錠をされて柱などに拘束されるようなら、その場から動けない以上、首輪が作動して警備システムに殺害される。
だがこれを行う上で問題点がある。
それを行うくらいなら、最初から殺害しておけば良い。
首輪の作動なら殺害したうえで首輪を作動させれば良い。
どう考えても不要なものにしか見えないのだ。
キョン
「そう。御剣さんの言ったとおり、仮に解除条件で殺害や首輪の作動なら、本当に殺してから首輪の方を作動させた方がより安全に済む。なのになぜこれがあるか。これを付けられて、いかにこれを外し、手錠を付けさせた相手に復讐するか。そう言ったシナリオを望んでる観客がカメラ越しに見ているとしたら、もう分かるでしょう?」
キョンは結論付けると周りの人間一人一人の目を合わせていく。
彼らは驚いていた。
まさか自分たちがここへ連れて来られた理由が、まさかどこかのお客を楽しませるために連れて来られたという現実に、そしてそれをいち早く気づき、証拠まで付きつけたうえ、この場にいる全員を納得させたキョンの頭の回転の速さに圧倒されていた。
今、全員が黙っているのが証拠だ。
キョン
「………実はここからは俺の仮説なんですけど、この建物の警備システムを無効にする部屋があると思うんですよ」
そんなことをお構いなしにキョンはまた口を開く。
手塚 義光
「何だと!?」
その話題に食いついたのは、以外にも手塚だった。
――――手塚さん、もしかして最悪な条件でも引いてしまったのだろうか?
そう考えた御剣は、内心冷や汗が止まらなかった。
キョン
「まあ、これはあくまで仮説なので落ち着いて聞いてください」
手塚 義光
「………わあったよ」
キョン
「では。先程の話ですが、警備システムをダウンさせるための部屋、いわばそこを制御室と呼びましょうか、俺はその部屋がこの建物の中にある可能性を指摘します」
矢幡 麗佳
「その根拠は?」
矢幡の方でも、いつもの落ち着きは無く、少し興奮気味でキョンに視線を向ける。
キョン
「あくまで可能性ですが、運営側のシナリオの一つだと考えて頂ければ分かりやすいと思います。もし、そこの警備システムを奪還するようなシナリオがあったとしましょう。皆さんなら、どう行動しますか?」
そこでキョンは立ち止まり視線を回す。
長沢 勇治
「そりゃもちろん、そこに行って攻略するに決まってるさ」
陸島 文香
「私もそこの制圧に向かうはずだわ」
陸島も長沢と同じ考えのようだ。
キョン
「そう、ここの参加者が一致団結し、ラスボスと戦って勝利する。そう言ったシナリオもあるとしたら?」
郷田 真弓
「ちょっと待って」
そこで郷田が頭を挙げてキョンに抗議する。
郷田 真弓
「あなたはさっきラスボスがいるって言ったわよね?」
キョン
「はい」
郷田 真弓
「あなたの言い方だと、この中にそのラスボスがいるっていう風に聞こえるんだけど」
郷田が手を力いっぱい握りしめる。
その瞬間、キョンの顔が僅かにやける。
キョン
「郷田さん………墓穴を掘りましたね」
郷田 真弓
「え?」
キョンの思ってもみなかった発言に、全員の視線がキョンから郷田に変わる。
キョン
「確かに俺は、ラスボスと戦って勝利する、そう言いましたが、俺はその制御室にある警備システムのことを指したつもりなんですが、郷田さん。あなたは『この参加者の中にラスボスがいるかもしれない』そう言いました」
郷田 真弓
「そうよ」
キョン
「だとしたら、どうして『参加者の中』なんて限定されたところからラスボスが出てくるんです?本当は別の運営側の人間が制御室を操作しているかもしれないのに」
郷田 真弓
「そ、それは」
郷田は言葉に詰まり、顔を下に下げる。
キョン
「もう一つ、俺は最初に皆さんがPDAを一つずつしか持っていないかと聞いた時、あなたは1台しか持ってませんでしたね」
郷田 真弓
「そうよ、だって私は本当に1台しか持ってないわ」
キョン
「嘘です」
即答するようにキョンが言葉を遮る。
この時からだろう、郷田は少しずつ焦り始めていた。
郷田 真弓
「なっ、何を根拠に」
キョン
「根拠ならあります。さっき御剣さんとの会話ではっきりしました。そこであなたはこう言った。『知らなかった?PDAのルールは1台だけでは不完全だって言うこと』こう言いましたよね?」
郷田 真弓
「それが何よ」
郷田の口調が自然と厳しくなる。
眉間にもしわが寄り始める。
キョン
「ならどうして1台のPDAだけではルールは全て揃わないことを知っていたんですか?さきほどの話では、この部屋以外でルールの交換をし合った何て聞いてませんが?」
郷田 真弓
「うっ………」
郷田はとうとう黙り込んでしまった。
御剣にとって彼の口調は、このゲームの世界観を見抜いていたこともあり、迫力が増してみえた。
キョン
「これらのことを踏まえて、もう一つの仮説が立ちます。それは」
手塚 義光
「郷田がこのゲームの運営側の回し者だって言いたいんだろう、キョン君よ?」
キョンの代わりに手塚が補足した。
こちらも相変わらず眉間にしわが寄っているが、ニュアンスが正反対であった。
キョン
「さすが手塚さんです。物わかりが良くて助かります」
手塚 義光
「はぁ、お前さんが推理した奴の比じゃねぇよ。つか、あんな推理を聞いた後じゃ、嫌みにしか聞こえねぇよ」
手塚はため息交じりにぼやく。
先に推測されたのが悔しかったのかもしれない。
手塚 義光
「当初の目的としては、最初はペアとなる人物たちと行動して、仲が良くなったところで誰かを殺害すれば、そのチームの絆は壊滅。そうやって殺人を誘発させて観客を盛り上げる。ま、そんなとこかね?」
満足げに話した手塚は、煙草に火を付ける。
それでも若干のため息の色が含まれているが。
御剣 総一
「本当なんですか?郷田さん」
御剣は恐る恐る郷田に話しかけるが、当の本人は顔を下げたまま反応する気はないようだ。
手塚 義光
「でだ。俺達をここから出してもらおうかい、郷田さんよ?」
郷田 真弓
「………はぁ、せっかくあなたのことは知らないふりをしてあげようと思ったのに」
観念した郷田は顔を上げて、キョンを睨みつける。
この反応見て、御剣は確信してしまった。
彼女が、このふざけたゲームを運営している側の人間であると。
少なからず御剣に衝撃を与えた。
キョン
「またまた、心にもないこと言っちゃって。みっともないですよ?」
対するキョンは勝ち誇った笑みを郷田に知らしめる。
今までに見たことのない顔だった。
そして驚愕の顔に変ったときは、一瞬のことだった。
郷田がキョンにナイフを向けたからだ。
陸島 文香
「っ!!」
矢幡 麗佳
「ひっ!」
郷田 真弓
「あなたにはここで死んでもらうわ。このままゲームに支障が出たらたまったもんじゃないわ………と言いたいところだけど、まだ6時間経ってないのよね。あ~あ、残念ね。でも」
口調ではそう残念ではなさそうな感じで言うと、郷田はナイフをバッグにしまう。
傍から見れば、観念したようにも見える。
そんな郷田は、部屋へ出ていくであろうその直前に、一度だけ止まり、キョンの方へと振り返る。
郷田 真弓
「あなたはこのゲームの本来の参加者じゃないはずよ。磯崎さんもね。あなた達は、完全なイレギュラーよ。他の人達も気を付けたら?」
意味深な言葉を残して、部屋を出ていった。
その部屋では再び沈黙が訪れるが。
キョン
「あーあ、めっちゃ緊張した」
その沈黙は長くは続かなかった。
彼は疲れ切って大の字に転がり込むと、磯崎が心配して近くまで歩み寄る。
磯崎 蘭
「大丈夫?キョンさん。もう、あんな無茶して、心配かけさせないでよ」
キョン
「悪い悪い、ああでもしなかったら、みんなは本気でゲームに乗っちまうだろ?」
キョンは悪びれた調子で顔をにやける。
郷田 真弓
「でも、信じられないよ。あの郷田さんが」
御剣は肩をガックリと落とす。
彼女のことを信用しきっていた御剣は、彼の推理劇であっさりとその信頼が崩れ去ったことにかなりショックを受けていた。
キョン
「すみません、御剣さん。俺としてもあまりしたくなかったんですが、信用しきってしまう前に何とか裏切りを阻止したかったんです」
この推理劇で得られたものは大きかった。
この『ゲーム』は、自分達が知らない観客が見続けていること。
自分達を賭けて遊ばせていること。
そのゲームの参加者の中に黒幕を用意して、ゲームを盛り上げるて客を喜ばせること。
この首輪を無効にできるかもしれないことも判明した。
こう言った事実は早めに知れば知るほど後になってからの対策にも役立つし、何もしないよりかは何倍もマシであるが、それらを差し引いても、郷田と言う人物が裏切る枠内に入ってしまったほうがダメージとして大きかった。
だから、少しでも精神を安定させるために、早めに手を打とうと、キョンは考えたのだ――――
キョン
「それで、皆さんはこれからどうするんですか?」
動揺しながらも、何とか荷物を確認しながら、今でもこのゲームに戸惑いを隠せなかった一同に問いかける。
すると、矢幡が立ち上がってドアへ向かっていく。
様子から見るに、この場から立ち去るようにも見える。
陸島 文香
「麗佳ちゃん!?」
陸島が悲鳴じみた声を投げかける。
この部屋から出ていくと言うことはゲームに乗ると言うことだ。
矢幡 麗佳
「少し、周りの部屋を散策してきます」
ドアノブへ手をかけた時、キョンは咄嗟に彼女の腕を掴んだ。
キョン
「待ってください。散策なら、他の人も連れていけばいいでしょう」
矢幡 麗佳
「………他の人間と一緒に居ても、安全とは言えないのでは?」
冷たい口調とともに睨みつける視線が俺の全身を身震いを起こさせるが、俺は何とか奮闘して思い止まらせる。
キョン
「そう言って戻らないつもりでしょう?」
矢幡 麗佳
「そうよ、この場の人間がいつ裏切るかも分からないのに、こんなところになんかいられる訳ないじゃない!」
キョン
「暴れないでください、戦闘行為と見なされて、首輪が作動しますよ!?」
矢幡 麗佳
「手を出したのはお前の方じゃない!私は自己防衛としてお前の腕を解こうとしてるだけじゃない!」
キョン
「俺はただ、あなたの動きを止めただけです。だったら、どっちの首輪が作動するか、試してみますか?」
試してみますか?
その言葉が矢幡の耳に入り込んだ瞬間、動きが止まる。
先程の推理の手前、もし本当に首輪が作動しても不思議はないと、彼女自身がそう判断させたのだろう。
彼女も暴れるのを止めた。
キョン
「それにまだ戦闘禁止解除まで4時間近くあります。それから離れても遅くはありません。どうでしょうか?」
そしてキョンは笑顔を矢幡に向ける。
矢幡は少し考え込んでいた。
矢幡 麗佳
「分かったわ。そうする。だから、その手を放してくれない?」
キョン
「あ、すみませんっ」
ここまできて今気づいたんだが、彼はずっと矢幡の腕を掴んだままでいたらしかった。
まあ、少し恥ずかしかったのかな?
磯崎 蘭
「もう、何変な事考え込んでんの、キョンさん!」
そこで、ずっと成り行きを見守っていた磯崎が、キョンに肘で小突いた。
こうして見てみると、仲のいい兄妹に見える。
本人達の前で言ったら、色々と言われそうだけど。
磯崎 蘭
「だってそんな顔してたら誰だってそう思うよ!見てるこっちだって恥ずかしかったよ!」
キョン
「何おう!?少しでも仲間を集めるためだっ、背に腹は代えられんわい」
磯崎 蘭
「うそ、絶対ウソ!下心、少し持ってたでしょ」
キョン
「持ってねぇよっ。だったらお前が麗佳さんを止めろよ」
磯崎 蘭
「私じゃ麗佳さんを止められる程の説得力がある訳ないじゃないっ」
キョン
「開き直るんじゃありません!」
キョンと磯崎が口げんかを始めた。
別に矢幡のことを別にどうにも思ったこともないし、ただ単に仲間になれば心強かったという話をしたいだけだ。
どうのこうのしているうちに、陸島が笑い出す。
陸島 文香
「もうあなた達、緊張感なさすぎ。でも、そうね。こんな状況だからこそ、そう言った雰囲気が大事なのかもね」
陸島が2人の様子を見て、率直な感想を言うと両腕を組み、彼らを見据える。
陸島 文香
「そうね、あなた達2人のようなかわいらしいカップルを一度でも疑った私が馬鹿だったわ」
キョン
「陸島さん!俺と磯崎は恋人同士なんかじゃありませんから!」
磯崎 蘭
「そうですよ!それにさっき言ったように、私には大事にな幼馴染がいるから、キョンさんとはただ友人ですっ」
キョン
「それより、他の人たちはどうするんですか?」
だから俺はそんな空気を断ち切るように問いかける。
長沢 勇治
「ねぇキョン兄ちゃん、さっき首輪を無効にできる制御ルームがあるって言ったよね?」
御剣が書いたルールの一覧を写しながら、何となくな口調で彼に振る。
もしかして、嫌な条件でも引いたのかな?
例えば、誰かを殺害する条件とか。
キョン
「あくまで仮説でしかないがな」
長沢 勇治
「それって、どこいら辺りにあるのさ?」
キョン
「そうだな、少なくともこの階、1階にはないと思う」
長沢 勇治
「どうしてさ?」
キョン
「考えてもみろよ。俺みたいな参加者が現れて早々に、はいラスボス戦ってなわけにはいかないだろ?そう言った展開が早めに繰り広げられるなら、少なくともそれを防ぐためにこの階でなく、俺だったらラスボス戦ってな意味で、6階に建てるがな」
手塚 義光
「んじゃあ、お前の考えでは、その制御ルームには6階にあるってな訳なんだな?」
キョン
「はい。しかも、そこは簡単に分からないように、地図で投影されてない場所にある可能性があります。そう簡単にばれてしまっては、ゲームは毎回、同じ展開になってしまうから」
陸島 文香
「ちょっと待って」
そこでキョンの話を聞いていた陸島が言葉を隔てるように立ち上がる。
陸島 文香
「君の言い方だと、このゲームはこれが初めてじゃないって言う感じの響きに聞こえるんだけど」
キョン
「先程の話は一部に過ぎません。実は俺と磯崎は一度、皆さんと合流する前に、出口を探したんです。この建物から出るために」
手塚 義光
「それで、出口はあったのか?」
キョン
「いいえ、分厚いコンクリートで埋められてました。一部、掘った跡があったんですが、埃が溜まってそこから少なくともこのゲームは今回が初めてじゃない、そう思ったんです。この推論で合ってるよな?磯崎」
磯崎 蘭
「うんっ」
小さな顔が縦に振られる。
もしかして、彼女がさっきの推理を?
キョン
「実はこの推論は、磯埼が思いついた物なんです」
陸島 文香
「そうだったの!?」
陸島が興味本位で磯崎に近づく。
磯崎 蘭
「ええ、でも最初この考えが浮かんだときは、ゾッとしました」
磯埼は腕を抱えながら身震いをする。
こんな馬鹿げたゲームが何十回も繰り返されて、自分たちと同じ境遇の人間が大勢いると考えたとなると、普通でいるのがおかしい。
手塚 義光
「おいっ」
そんな考えをしていた時だ。
手塚がキョンの耳元で呟く。
手塚 義光
「————」
キョン
「はい?」
磯崎 蘭
「え?」
ここからではよく聞こえなかったが、2人の反応を見るに、仲間でもならないかと誘われてるのだろう。
先程の推理をゲーム開始から数時間しか経ってないのに、このゲームの裏側と運営側の人間を指摘したのだ。
その頭脳を買われたと思われる。
実際、御剣も彼らが仲間になってくれるだけで、どれほど心強いか。
キョン
「分かりました。組みましょう。ただし、条件があります」
手塚 義光
「ほう、そりゃ何だ?」
キョン
「磯崎は御剣さん達と同行させます。彼女を危険な目に遭わせたくありません」
手塚 義光
「おいおいそれじゃあ、俺たちが何か危険な目に遭うかもしれないってな感じの言い方だな」
キョン
「先程の郷田さんの顔を見たでしょう?俺が喧嘩吹っかけたせいで、この場にいる皆さんを危険な目に遭わせるわけにはいきません」
磯崎 蘭
「ダメだよ、キョンさんっ。やっぱり私も行くよ」
キョン
「ダメだ。郷田を敵に回した以上、郷田の正体をいち早く見破った俺がブラックリストに載っちまった。危ない橋を渡るのは俺一人でいい」
そう言い残して、キョンは部屋から出るために扉へと向かっていく。
彼の背中を目で追う磯崎。
手塚 義光
「はあ~あ、分かったよ。やっぱり俺一人で行く」
キョン
「え、どうして」
手塚 義光
「何かよ、お前ら2人を見てると、俺が無理やりお前さんを連れ行く悪者に見えちまって仕方ねぇ」
キョン
「………珍しいですね。手塚さんがそんなこと言うなんて」
手塚 義光
「あのなぁ、俺はこう見えて善良な一般市民なんだぜ?突然こんな訳の分からねぇとこに連れてこられた挙句、悪役になれだぁ?そいつはちょいと気が進まんね」
手塚は両手を広げて古泉と同じくらい大袈裟な表現をする。
この時のキョンは気付かなかったかもしれないが、手塚はキョンの言う制御ルームの話を信じていた。
この短期間でゲームの裏側を見抜いて、参加者の中にも運営側の人間が存在していることを見抜いたこともあり、手塚のキョンに対しての評価がかなり高かった。
キョン
「じゃあ、手塚さんはこのあと」
手塚 義光
「ああ、上の階に向かうつもりだ。出来れば最上階に行って、その部屋を叩きたいのよ」
磯崎 蘭
「手塚さんは、キョンさんの言った話を、その、信じてるんですか?」
手塚 義光
「まあな。いくつか辻褄も合うし、俺がもし運営側だったら、そんなシナリオも考えなくはないかもしれないからな」
手塚が思いっきりニヤケる。
手塚 義光
「そういうわけだからよ。俺はもうそろそろ行くぜ。6時間経って、郷田が襲ってくるか分からないからな」
キョン
「いえ、郷田は6時間経ってもすぐには襲ってこないと思いますよ」
手塚 義光
「何でだ?」
キョン
「郷田さんは、まあ言っちゃいけませんけど、かなりの年齢です。身体能力はかなり落ちてると思うんですよ。そんな状況で、武器もなしに襲ってくるのは、自殺行為に匹敵するかと。それに、そう簡単に参加者を始末してしまえば、賭けたお客さんに対して不公平ですから」
手塚 義光
「………やっぱりお前を仲間にしたいねぇ」
キョン
「俺は構いませんけど?」
手塚 義光
「冗談だ。んじゃお前ら、またなんか縁があったら会おうぜ」
キョン
「はい」
手塚は手を振り、部屋から出て行った。
彼が出て行ってもまだ、緊張感が漂っている。
磯崎 蘭
「長沢君はどうするの?」
長沢 勇治
「俺は、どうしようかな。兄ちゃんの言う通り、本当に制御部屋があるなら首輪を解除したいからな」
磯崎 蘭
「ていう事は、嫌な解除条件でも当てちゃったの?」
長沢 勇治
「それは、ちょっと、ノーコメントで」
磯崎 蘭
「私の解除条件はね、私のPDAに9つのソフトウェアをインストールする。だから、みんなの解除条件とは競合しないよ」
長沢 勇治
「え………」
磯埼が自分のPDAを取り出して、画面が見えるようにする。
そこには解除条件が書かれていた。
”このPDAにソフトウェアを9つ、インストールすること”、と。
キョン
「おい」
磯崎 蘭
「なに?」
キョン
「なにじゃねぇよ。何で簡単に解除条件なんてばらしてんだよ?」
磯崎 蘭
「いやだって、私からこの話を言い出したから」
陸島 文香
「蘭ちゃんっ、今の状況を分かってるの!?自分が何をしたか、分かってるの!?」
そこへ、いきなりの展開についていけない陸島が割って入る。
陸島 文香
「自分の解除条件を言うってことは、相手に弱みを握られるのと同じことなのよっ」
磯崎 蘭
「だって、ここにいるみんなは、いつもの日常から、無理やり連れて来られた人たちなんですよ?お互いに信じあえなくて、どうして互いに生き残ろうとする道をなくすんですか?」
陸島 文香
「それは………」
陸島は口を詰む。
彼女は長沢の今までの行動から、彼を危険な人物だと思い、情報をあっさり公開した磯崎を多少非難していた。
磯崎 蘭
「それにここに居るみんななら信じあえるなって、思ったんです。友達になれるって、感じたんです。それがバカなことだって言われても、別にかまいません。それが、私の気持ちですから」
そして磯崎は覚悟を決めた瞳を、部屋にいる全員を見渡す。
長沢 勇治
「そっか、磯崎は、そんなことを考えてたんだ………」
長沢はため息交じりな声で呟く。
それほど予想外なんだろう、顔を伏せていた。
長沢 勇治
「さっきも言ったけどさ、俺の解除条件は、みんなのやつと競合してんだ。だから、俺も手塚と同じ目的で6階に上がるよ。兄ちゃんの話が本当かもしれないしね」
長沢は荷物とPDAを持ち、俺と磯崎の顔を見ながら扉へ向かう。
磯崎 蘭
「長沢君、やっぱり行っちゃうの?」
長沢 勇治
「ああ、やっぱりさ、磯埼のこと信じてるんだけどさ。俺、臆病だから、磯崎となら行っても良いんだけどさ。磯崎は御剣の兄ちゃんたちと一緒に行くんだろ?」
磯崎 蘭
「え、うん、そうだけど」
長沢 勇治
「なら安心だな。グループでいる方が、このゲームは有利に運べるし」
一度振り返り、磯崎に微笑む。
磯崎 蘭
「長沢君は、このゲームに乗っちゃうの!?」
長沢 勇治
「いや、全面的に乗る訳じゃないさ。でもさ、他の参加者が乗ったりして襲われたりでもしたら?俺はその時になったら、相手を攻撃するかもしれない。俺は無抵抗に殺されるのが嫌なだけさ」
磯崎 蘭
「そんな………」
磯埼は力なくうなだれる。
やっぱり、年が近い彼がこのゲームに乗るかもしれない事実に、ショックを受けてるのだろう。
長沢 勇治
「でも、そんなに心配すんなよ。俺だってそんな人は殺したくないし、自己防衛として、自分を守るだけだよ。だからそんな顔すんなって」
磯崎 蘭
「そう、良かった。私、長沢君がこのゲームに乗っちゃったのかって心配しちゃったよ。長沢君とは友達になれそうな気がしてたから」
長沢の目が大きく見開く。
友達と言う響きを聞いて心に響いたのか、落ち着きなく辺りを見渡している。
長沢 勇治
「友達って………。あ、そうだ、俺もう行くよ。いつまでもしゃべってたら6階に行けないからさ。まあ、このゲームで生き残って帰れたら、またこんな風にしゃべってくれる?」
ボソリと呟く長沢に磯崎は力強く答える。
磯崎 蘭
「うん、もちろん!じゃあ絶対に生きて帰ろうね!」
長沢 勇治
「ああ、そっちもゲームクリアしろよっ、それじゃあな!」
長沢は照れ臭そうに部屋を後にする。
そんな成り行きを呆然と見ていた陸島たちがため息を付く。
陸島 文香
「あなたって、なんか、不思議な子ね」
ポツリと、けれど耳が聞き取れる程度の声で言う。
磯崎が扉から視線を外し、陸島に目を合わせる。
陸島 文香
「あたしから見て彼は相当な危険人物だって思ったんだけど、あなたと話してる時とは大分、違う口調になるわね」
磯崎 蘭
「彼も、本当は不安なだけなんです。こんなところに閉じ込められて、いきなり死体を見せつけられて、殺し合いをさせられそうで。そんな状況の中で平気な人なんて、いませんよ」
陸島 文香
「………」
そこで陸島は黙ってしまった。
何やら考え事をしているようだ。
キョン
「御剣さん」
御剣 総一
「何だい?」
キョン
「一つ頼みがあるんです」
御剣 総一
「頼みって、もしかして」
キョン
「はい、その頼みってのは――――」
磯崎を一度見て、すぐに視線を御剣に移す。
キョン
「磯崎を、御剣さんのチームに入れてください。俺にはやらなくちゃいけないことがあるんです。これ以上、連中の思うようにさせるのは癪なんです。全員で生きて帰るために!」
陸島 文香
「ちょっとキョン君っ。本気なの!?」
会話を始終聞いていた陸島が声を荒上げる。
御剣 総一
「危険すぎる!郷田さんが裏切り者だって分かった以上、君の身が危険だ!」
キョン
「はい、郷田に喧嘩を吹っかけたのは俺です。何も、皆が危険な目に遭う必要はありません。俺がチーム内にいたら、みなさんに危険が及びます」
彼は荷物を早々に整理すると、意外な人物が前に立ちはだかる。
矢幡 麗佳
「お前、さっき私にはみんなと一緒について行けと言ったくせに、自分が真っ先に出ていこう何て、都合が良すぎないかしら」
矢幡が俺の前に立ちはだかり、さらに磯崎までもが前に立つ。
磯崎 蘭
「考え直してキョンさんっ。みんなで一緒に言った方が安全だって」
キョン
「言ったろ、俺にはやらなくちゃいけないことがあるって。俺にしかできないことが」
その言葉につられるように彼は無理に2人の間に割って入り、出口へと向かう。
磯崎の顔がひどく落ち込むような気がした。
キョン
「大丈夫だ、磯埼。俺は死なない。みんなで生きて帰るんだ。奴らの思惑通りにはさせん」
磯崎に振り返ろうとした時、真正面から突然、力が掛った。
キョン
「うお!?」
一瞬の出来事で戸惑うが、原因が何かすぐに分かった。
磯崎が彼に抱き着いてきたからだ。
磯崎 蘭
「違う、私が心配してるのは――――」
彼女はグッとキョンに顔を近づける。
だから彼は、彼女の耳元で彼にしか聞こえない声でそっと呟く。
そして見る見るうちに、彼は驚きで両目が見開いていく。
キョン
「ありがとう、磯埼。そこまで、俺の事を気遣ってくれてたんだな」
彼は彼女の背中をそっと撫でてやる。
親が、子供を安保かのように。
キョン
「だが、やはりこれだけは譲れない。磯崎、お前がみんなを守ってやるんだ」
彼は一度、彼女の頭を撫でてやると、そっとその手を離した。
キョン
「そんな顔をするなって。そうだな、だったら次合う時の待ち合わせと時間を伝えておく」
彼は何かを耳元でささやき、出口に向かって再び歩き出す。
キョン
「陸島さん、御剣さん。磯崎をよろしくお願いします」
陸島 文香
「キョン君、絶対に、生きて戻って来てよね?」
御剣 総一
「ああ、この子は俺が守ってみせる。絶対にだ」
磯崎と姫萩を交互に見てから御剣はキョンに目を合わせる。
キョン
「御剣さん」
御剣 総一
「何だい?」
キョン
「皆さんを絶対に守ってください。男メンバーはあなただけですから」
御剣 総一
「あはは、確かにそうだな、任せろよ。キョンも、絶対に生きて帰れよ」
キョン
「もちろんですよ。俺はこんなところで死にたくはありませんし。それじゃあ、今度こそ」
最後まで言って、彼は扉を開けて部屋をあとにした。
すみません、あまり進んでいません。
ただ次回からストーリーは急激に進みます。
キョン達に現れる新たな勢力の暗躍&活躍に、ご期待下さい。