ジョージ・ジャン・ネイサン
どうも皆さんおはこんばんにちわ。
作者であります。
最近天気の変わり目が激しいですね。
皆さんはどのようにお過ごしでしょうか?
[嵐前の静けさ]
2012年、7月14日、12;56;00
中学2年生 超能力者
磯崎 蘭(いそざき らん)
?????? 1階中部屋
PDAソフトを捜索して早10分。
近くの古い木箱から食料を見つけるが、それよりもずっと小さなソフトを探すのは正直言ってかなりきつい。
物理的にはなんともないんだけど、精神的に発狂してしまいそうな状況だった。
御剣 総一
「ふう。ソフトを探すって言っても、やっぱり個数とか、最初から分かればいいんだけどな」
3つ目の木箱を調べ終わった御剣さんが、蓋を閉めて愚痴り始める。
確かに、この部屋だけで木箱の数はずっと多かった。
その中で、小さなソフトウェアを探し出すなんて、確かに至難の業だった。
体力に自信がある私でさえ、早くも億劫になりそうになる。
………もっとも、ソフトを探す根気強さと体力があるのとでは、全く違うだろうけど。
磯崎 蘭
「すみません、やっぱり私のせいで、こうなっちゃんたんですよね………」
本当に申し訳なく、頭を下げる。
姫萩 咲実
「頭を下げないでください、蘭さん。これは皆が無事に帰るためです。そのために、私たちが協力し合えないでどうするんですかっ。こういう時の仲間、ですよ」
力強く言ってくれるのが、咲実さんだった。
さっきまでは暗い顔をしていただけに、ここまで回復してくれるのは正直嬉しかった。
御剣 総一
「ごめんよ蘭さん。俺さ、なかなかソフト見つけ出せなくて、焦ってたみたいだ。愚痴なんて言うつもりなかったのに」
御剣さんが、箱から頭を上げて謝罪する。
別に気にしてないのに。
彼は続けて言う。
御剣 総一
「この部屋にはなさそうだね。別の部屋に移ろうか?」
さらに5分経過したところで部屋を移ろうと言う案が出た。
ゲーム開始時間から4時間ちょっと。こうやって普通に喋れる時間が、どれほど幸せだっただろう。
この後の待ち受ける惨劇を知らずに。
2012年、7月14日、14;20;12
高校2年生 SOS団雑用
キョン
?????? 1階 階段付近小部屋
しばらく走り続けていた俺だったが、疲れも溜まっているはずなのに、休みたいと言う思いが全く起きなかった。
それで仕方なく近くの小部屋で休息を無理やりでも起こそうと言う脳内会議で議決された。
扉をそっと開け、中に誰も居ないと言うことを確かめてから慎重に部屋に踏み込む。
キョン
「あそこの木箱に腰かけるか」
近くにいい高さで積んである木箱を見据えて、そっと腰かけて、深いため息を漏らす。
ゲームが始まってから心休まることなんてなかったからな。
その分、ため息もかなり濃い。
キョン
「少し休んだら、また行動するか」
独り言を虚しく演じている俺だったが、床に落ちていた新聞記事を拾い上げ、何気なくパラパラめくっている。
キョン
「日付は、10年前のものだな」
新聞記事は黄ばんでおり、相当年季の入ったものらしかったが、つい最近になって持ち込まれものの様だった。
そのうち、大きな赤いマジックで囲まれている記事を発見した。
キョン
「『御陸東学園、校長殺人事件』?」
俺はその内容が少し気になり、小さな文面に目を向ける。
キョン
「7月14日、午後4時20分ごろ、御陸東学園敷地内にある1号館2階にある校長室で、校長である水野智弘(63歳)が遺体となって発見された?」
さらに記事を捲る。
部屋には虚しく紙を捲る音しか聞こえないが、続ける。
キョン
「死因は、刀で身体を刺された際による出血多量。容疑者は、この学校の生徒である、15歳の女子生徒であった。おいおい、こんな子供が殺人なんて」
そしてそのページにある写真を見て、俺はまたとしても驚愕する。
そこに写っているは、今出てきた少女、俺が連れ去られる前に昇降口で会った彼女と共に、その後ろには、懐かしいあの3人の姿が一緒に写っていた。
キョン
「古泉!」
俺はその時、いつの間にか携帯電話を片手に古泉に電話を掛けていた。
無駄だと分かっていたのだが、これほどあの3人の顔がうれしく映ったことはないかもしれない。
キョン
「頼む、繋がってくれ」
俺の願いが通じたのか、1コールが終わらない内に、スマイル男の声が耳に浸透する。
古泉 一樹
『もしもし、あなたですか?』
キョン
「もしもし!?よかった、繋がった」
古泉 一樹
『体の様子は?怪我とかはしてませんか?』
ほっとした内心、今すぐにでも俺の状況を伝えたかったが、久々の戦友との再会がうれしく、質問に答える。
キョン
「俺は何ともないッ。ちょっと火傷を負ったが」
古泉 一樹
『火傷ですって!?』
古泉にしては珍しく、声が張っていた。
だけど、俺にだって言いたいことはある。
キョン
「大したことはねぇよ。それよりも、お前に伝えたいことがある」
古泉 一樹
『伝えたいこと、ですか?』
出来るだけいつも通りに装って向こうに心配を掛けまいと奮闘する。
キョン
「ああ、よく聞けっ。実はこの後、お前らのいる学校で――――」
??????
『うきゃああああああっ!』
突然甲高い叫び声が携帯からしたせいで、俺は思わず電話から耳を離してしまった。
鼓膜がキーンとするけど、疑問が勝った。
キョン
「古泉、今の叫び声は!?」
古泉 一樹
『分かりませんっ、ですが、すぐに行った方が良さそうですね。電話を切らずに待っててください!』
古泉は言うなり、通話を保留モードにしてやかましい着メロが耳に張り付く。
俺はしばらくそこでじっと待っていたが、とうとう耐え切れずに辺りの木箱から別の新聞記事を探すことに専念する。
キョン
「もしかしたら、続きが書いてある記事があるかもしれないっ」
先程読んだ新聞には、事件の詳細な記述は載っておらず、古泉たちとあの少女がどうなったか分からなかった。
だからこうやって奮闘しているのだが、とうとう見つからなかった。
キョン
「そうだ、そろそろ古泉の方から何か進展があるかもしれん」
携帯を取り出し、耳に押し当てると、ちょうど古泉の声が聞こえる。
古泉 一樹
『もしもし、聞こえていますか?』
キョン
「ああ、しばらく繋がらなかったから、心配したぜ。それで、その学校の水野校長は?」
古泉 一樹
『すでにお亡くなりになられていました』
古泉のその一言で、電話の向こう側から落胆の含まれたため息が漏れだしたのが聞こえた。
古泉 一樹
『それで、なぜあなたが、ここの校長が殺害されると分かったのですか?』
ここで殺害と言い切ったのは、あの状況を見れば誰だってそう判断することが出来るからだろう。
キョン
「新聞記事に載ってたんだ。その学校で殺人事件が起こった記事が、俺の目の前にあるんだ」
古泉 一樹
『ちょっと待ってください。新聞記事?いくらなんでも刊行されるのが早すぎませんか?何かの間違いじゃないでしょうか?』
キョン
「俺も、そう思ったんだ。だから古泉、お前に連絡してるんだ」
そこへ突然ノイズが混入し、うまく聞き取れなかった。
古泉 一樹
『何で・・・・?もう・・・お願・・・すっ』
キョン
「古泉、悪い。こっちもノイズが入っちまったみたいだ」
ザーーーーッ
いきなり入り込んだと思ったら、本格的なノイズが発生し、音信不通を伝える音声が流れる。
くそっ、切れちまいやがった!
舌打ちしつつも、その後、俺は一応その他に何か手がかりになるような品を探して彷徨っていたが、特に何もなく、僅かながらの食糧が見つかった程度である。
キョン
「それにしても、不可解な事ばかりだ」
俺はこの建物で起きた一連の言動を振り返ってみた。
突然迷い込んだゲームの世界。
その作品に出てきていない人物、磯崎蘭。
俺の推理(と言ってもネタバレ)の披露によって変わる物語。
別行動をとって遭遇したプレイヤー、高山浩太と北条かりん。
その北条の血濡れた全身。
そしてさきほど見つけた新聞記事に古泉、朝比奈さん、長門の3人が映っていてそこで殺人事件が発生したこと。
これらの現象は今の俺にとって、どれも常軌を逸脱しているものばかりであり、過去の経験があったこそ俺は平常心を保っていられるが、それがなかったら今頃俺は数分も経たない内にミンチになっていただろう。
いや、正確には平常心を保ってはいないだろうが、先程の出来事よりも頭から少し血が引けたようなので大分落ち着いたと思う。
腕時計を見て、思わず舌打ちをする。
キョン
「くそ、あと10分もしない内に戦闘禁止時間が過ぎちまうじゃねぇか!」
今の時刻は午後2時51分10秒。戦闘開始時間まで、あともう少し。
キョン
「しょうがない、上の階に登って、早く磯崎たちと合流しよう」
2012年、7月14日、15;00;00
高校2年生 SOS団雑用
キョン
??? 2階 階段付近小部屋
ピロリン、ピロリン、ピロリンッ
PDAのやかましいアラームが部屋を包み込む。
1階の部屋にあったパンを口に放りこむと、PDAに書かれている内容を確認する。
『ゲーム開始から6時間が経過しました!これにより館全域の戦闘禁止が解除されました!』
くそったれ。とうとう始まりやがったか。
磯崎たちは大丈夫なんだろうが、やはり不安は当分消えそうにない。
再び今後の活動方針について考えることにする。
と言っても、郷田の奇襲に神経を使って、他の参加者に殺し合いを邪魔すれば良いんだろうが果たしてあいつらがそれを許してくれるかね?
あいつらの事だから、とっくに俺の事はバレてるだろう。
そうなると、やはり回収部隊を送り込んで色条優希を奪還するついでに俺を始末させるか?
俺の持ってる武器はコルト・パイソン1丁と呼び弾丸1つ分だけだ、奴らとぶつかり合うのは危険すぎる。
それに俺は素人だ。モデルガンは扱ったことはあっても実弾なんて高校生がいじるもんじゃねぇ。
かと言って、集合地点に遅れていくのも不味い。
因みに俺と磯崎が集合するのは4階の階段付近で、ゲーム開始から50時間経ってから集合だと伝えてある。
時間はまだあると言って余裕かましていると、後々面倒なことになることくらいすでに学習済だ。
だが、その前に。
キョン
「やっぱりどこかで休みたいな。戦闘禁止エリアにでも行くか?いや、連中が張り込んでたら終わりだ」
郷田が例の一件で俺のことをディーラーに言ってるに違いない。
そんでもって、偽の映像を使われたら終わりだ。
そのあと俺が殺される映像を流してしまえば俺はゲーム・オーバーだ。
キョン
「でもやっぱり休みたい。誰かが戦闘禁止エリアに居て、一緒に居られる奴だったら理想的なんだがな」
俺はとりあえず荷物をまとめて整理する。
あと、古泉たちが載ってる記事は見つからなかった。
続報がかなり気になる。
部屋に忘れ物がないか確かめると、ドアノブを掴んで部屋をあとにする。
戦闘禁止エリアを目指して。
それにしても、何度目だろうな。
ドアノブ掴んだの。
[]
2012年、7月14日、13;19;23
高校3年生 一般人
御剣 総一(みつるぎ そういち)
?????? 1階小部屋
結局、PDAソフトは1つしか見つけられなかった。
『地図の拡張機能』。
その名の通り、地図を大幅に見やすくしたもので、トイレや倉庫などと言った場所の名前や位置などが詳しく書かれており、複雑な迷路を迷うことなく進むことができた。
収穫は大きい。
このソフトは蘭さんのPDAにインストールすることにした。
そもそも彼女のPDAの解除条件を解くためと言う理由でだ。
今、待ち合わせ時間が迫っているため、大急ぎで集合地点に向かっている。
御剣 総一
「もうすこしで集合場所だよ」
俺はPDAで地図を確認して、階段付近の大部屋を指差した。
廊下には、他の参加者の姿がなかった。
注意深くまわりを見てから扉に近づく。
御剣 総一
「何とか待ち合わせ時間に間に合ったね」
ドアノブに手を掛ける俺は扉を開くと――――誰も居なかった。
磯崎 蘭
「あれ、居ない?」
辺りを見渡すが、部屋にはガラクタや埃が溜まった床面、でも足跡がくっきり残っていたのでここで待っていたのだろう。
御剣 総一
「おかしいな………。集合場所を間違えたかな?」
姫萩 咲実
「いいえ、私もPDAで今、地図を確認してますが、文香さんが言っていた場所に違いはなさそうです。階段付近の大部屋と言ったらここしかありません」
確かに、俺も拡張したPDAを見てるけど、階段付近の大部屋と言ったら、ここ以外には存在していなかった。
御剣 総一
「足跡も、そう古くはないし、確かにここに居たんだろうけど、どこにいったんだろう?」
磯崎 蘭
「トイレでしょうか?近くにそれらしき場所がありますけど」
御剣 総一
「それだとしても、みんなで一斉に行くかな?向こうは4人いる訳だし、1人くらいここに残っていても、すれ違いにならないと思うよ」
姫萩 咲実
「それに、待ち合わせ時間も迫ってるのに、集まらないのも妙ですしね」
咲実さんが、磯崎さんが、俺が、広い大部屋に集合した。
だけど、他の4人の姿がなかった。
これは、なぜだろう?
まさか、俺たちがその時間を使って、何か武器になるようなものを見つけて、それを使って、襲うと考えてしまったのだろうか?
俺はそんな考えを隔てるように部屋の周囲を見渡す。
埃の被った棚、酸化によって黄ばんだ木箱、床の足跡、もう一方のドア付近に落ちてる筒。
……………筒?
俺は何かと思い、ドア付近に近づいていく。
磯崎 蘭
「どうしたんですか、御剣さん?」
蘭さんの声も聴かず、ただ、ドアに近づいて行った。
そしてそれを拾い上げると。
御剣 総一
「あつっ」
掴んだ途端、筒が熱かったので思わず落としてしまった。
姫萩 咲実
「大丈夫ですか、御剣さんっ」
御剣 総一
「ああ、ちょっと火傷しただけで」
人差し指が少し火傷を覆ったが、大したことないと言って筒を拾い上げて蘭さんに手渡す。
磯崎 蘭
「それ、何でしょうか?」
あとから咲実さんもこちらにやって来て俺の顔を覗き込む。
御剣 総一
「これって、たぶん、銃とかで撃ち終わった時に出てくる、薬莢だと思うんだ」
薬莢を指で回しながら説明していく。
御剣 総一
「うん。映画とかでしか見たことないんだけど、たぶんそうだよ。しかし、これは」
この部屋に、3人に戦慄が走る。
銃そのものがこの館に存在していると言うのはもちろん信じがたい事実ではあるが、それよりもその銃を使った誰かが存在していたと言うことになる。
まだ戦闘禁止時間が過ぎていないと言う場面でだ。
その状況下で使うことは、つまり使った本人の死が確定するのと同義だ。
しかし、辺りを調べても死体おろか人すらいないと言うことだ。
つまり、それは俺たち参加者以外の人物が、葉月さんたちを襲ったことになる。
御剣 総一
「咲実さん、蘭さんっ。ここはいったん、この場から離れよう!」
焦りの念がこもった声が、部屋に響き渡る。
御剣 総一
「もしかしたら、銃を使ったやつがまだ近くにいるのかもしれないっ。そんな奴に襲われたら俺達はお終いだ!」
俺は周りを見渡して、身を守れるものを探す。
そして木箱の蓋部分だけを取り外し、左手に持ち代える。
俺たちに身を守ってくれるはずのルールが適応しない。
と言うことは、仮に武器を持っていても戦ったら、戦闘と見なされ首輪が作動する。
御剣 総一
「だから、少しでも遠くここから避難するんだ!」
姫萩 咲実
「でも、文香さんたちはどうするんですか!?」
御剣 総一
「それは後で考えるっ。今はこの場から逃げるのが先決だ!」
咲実さんの手を取り、蘭さんに告げる。
御剣 総一
「蘭さんっ、正面は俺が守るから後ろを見張っていてくれ!もし、誰か来たら俺に言ってほしい!この盾で君を保護するっ」
磯崎 蘭
「分かりましたっ。後ろはお任せ下さい!」
俺達3人はどうにかして意を1つにして部屋から飛び出していく――――
俺達はあのあと、慎重に行動せざる負えなかった。
銃を持っていて、なおかつ首輪を付けてないと思われる第3の勢力。
それに、未だに遭遇していない参加者らのことも考えて、行動していた。
例の薬莢の件もあって、悠長に構えてる余裕もなかった。
常に体中から汗が吹き出し、緊張感がこの場を乗っ取っていた。
おかげで3人の疲労感は溜まり、思考も行動もあやふやになりつつあった。
磯崎 蘭
「御剣さん、ちょっと休みませんか?さすがにしばらく歩き続けて疲れました」
蘭さんが壁に寄りかかっている。
壁に寄りかかった彼女の身体から汗が出ているのが見える。
姫萩 咲実
「たしかに私ももうそろそろ休みたいところです。ずっと歩き続けで疲れました。けど、どこで休みますか?例の銃を持った、首輪の付けていない相手の対応などのことをゆっくり考えられる場所が良いですね」
咲実さんが俺の方に首を向ける。
そうだ。
ここで俺が引っ張らなくちゃいけないっ。
しっかりしろ、俺。
御剣 総一
「その点なら、俺の予測が正しければ、大丈夫だと思うよ」
出来るだけ、笑顔で2人に振り向いてみせる。
磯崎 蘭
「どうしてですか?」
御剣 総一
「それは後で説明するよ。とにかく、戦闘禁止エリアに行ってからにしよう」
俺は蘭さんにPDAの地図拡張機能を起動させるとその部屋に向かって歩き出した。
2012年、7月14日、15;03;56
中学2年生 超能力者
磯崎 蘭(磯崎 蘭)
?????? 2階戦闘禁止エリア
中に入ってみると、他の部屋と違う世界が広がっていた。
部屋は埃一つなく、清潔感があふれていた。
台所にテーブルセット、ちょっとした遊戯物もあった。
逆にそれが私の不快感を煽った。
磯崎 蘭
「他の部屋とは違って随分と綺麗ですね」
私の言葉を代弁するように咲実さんが部屋を見渡し始める。
御剣さんは近くの椅子の近くに座ると、私と咲実さんを呼び出して座るように促す。
姫萩 咲実
「それで御剣さん、首輪を付けてない人がいても安心だって言いましたけど、どうしてなんですか?」
咲実さんが早速、本題に入る。
私もそれが気になった。
御剣 総一
「うん。考えてみたんだけど、あの薬莢って1発しかなかったじゃない?」
御剣さんはバッグの中から、1つの筒を取り出す。
念のために、持ち歩いての事だった。
磯崎 蘭
「はい。詳しく調べた訳じゃありませんけど、確かに1発だけです」
私も一応、部屋の隅まで見渡し限りでは、筒は1発だけしかなかった。
御剣 総一
「逆にさ、何で相手が弾を1発しか撃たなかったんだろう?もし、こんなこと言いたくないけど、葉月さんたちを全員殺すなら、1発だけじゃ済まないんじゃないかな?」
筒を弄りながら、御剣さんは続ける。
御剣 総一
「それにさ、あの部屋には血痕らしき跡が無かったじゃない?それって、あの時点ではまだ誰も傷ついてないってことになるんじゃないかな?」
詳しく調べてないけどねと、付け加えて御剣さんは笑う。
姫萩 咲実
「確かにそうですけど、断言はできないじゃないですか?」
御剣 総一
「それを言ったらきりがないよ。それにさ、キョンの言っていた、このゲームは誰かのためのエンターテインメントだって。もしその要素の一つとして第3の人間、つまり例の銃を持った連中の仕業で、俺達が今後の展開が変わったとすれば?」
展開が変わる。
その一言が私の背筋を凍らせる。
人の命を弄ぶだけでなく、私達の行動を見て面白がってる連中の気がしれなかった。
御剣 総一
「だからそんなに心配する必要はないと思うよ。俺も最初はパニクってたけど、大丈夫だって思えたからさ」
御剣さんはどっかりとソファーに背中を預ける。
そんな彼の表情は不思議と安堵感に包まれていた。
御剣 総一
「そんな訳だからさ。今は、休ませてもらおうよ。奴はそんなに俺たち参加者を襲ったりはしないって。そう言うことだから、2人は休んでなよ。2時間したら起こすから」
さっと立ち上がると、咲実さんが机に手を置いて続いて立ち上がる。
御剣 総一
「咲実さん?」
姫萩 咲実
「御剣さんが休んでください。今から手料理を作りますので、蘭さんと休んでいてください」
咲実さんが御剣さんの手を取ってソファーに座らせる。
どこからどう見ても、恋人同志だ。
磯崎 蘭
「それでしたら、何か手伝います」
姫萩 咲実
「ダメですよ。蘭さんも御剣さんと一緒に休んでいてくださいっ」
手伝おうとしたけれど、咲実さんに止められてしまった。
磯崎 蘭
「私だって一応、お手伝いとかできるんですけど?」
姫萩 咲実
「ですから、御剣さんは私の手を引いてくれたし、蘭さんは後ろを見張っていてくれたので、そのお礼がしたいんですっ」
吹っ切れた咲実さんがキッチンに向かっていく。
それを私と御剣さんが顔を見合わせる。
御剣 総一
「咲実さん、そんなことでお礼なんてしなくていいのに」
磯崎 蘭
「そうですよ。私はあなた達2人を守りたいから後ろを見張ってたんですっ」
姫萩 咲実
「だからそのお礼をさせてほしいと言ったんです!」
咲実さんはプンスカ怒っていたが、笑っていた。
私もこの会話自体、緊張がかなりほどけた。
しばらくして、咲実さんお手製の料理が運ばれてきた。
缶詰や保存食ばかりだったが、見栄えは非常によく、おいしそうだった。
その関連性として、食卓の話が出てきた。
磯崎 蘭
「それで私のお兄ちゃん、結構料理がうまくてさ。食卓全般はお兄ちゃんが担当してるんだ」
姫萩 咲実
「へぇ、一度お会いしてみたいです。そしてその人の手料理を食べてみたいです」
カレーを口に運ぶと、咲実さんが嬉しそうに笑う。
御剣 総一
「俺なんて、料理なんてあまり作ったことなかったから、家庭科の授業じゃいつも黒こげになっちゃってるんだよなっ」
御剣さんもつられて笑い出す。
本当にこの2人と一緒にいると、仲のいいカップルのようで、不意に留衣の顔が見たくなってしまった。
今頃留衣は、何をしてるんだろう。
留衣だけじゃない。
翠やお兄ちゃんはどうしてるんだろう。
私を探すために、危険な目に遭ってないだろうか?
御剣 総一
「蘭さん?どうしたんだい?」
笑い続けていた御剣さんが、私を気遣ってくれていた。
磯崎 蘭
「いえ、私の友達やお兄ちゃんはどうしてるかなって、思ってたんです。今はこんなに………いや、今だけですけど。楽しく時間を過ごしてますけど、向こうはどんな気持ちで、私達のことを思ってるんだろうって」
自分で言っておいて、悲しくなった。
ゲームに巻き込まれてから良いことなんて、本当になかった。
学校生活から切り離されて、悲しい出来事の連続で、誰かの悪意で私たちが殺し合いをさせられそうになる。
それが何よりも、悲しかった。
御剣 総一
「大丈夫だよ、蘭さん。俺、絶対に君たち2人を生きて帰らせてあげるから。絶対に」
勇気づけて、私の手を握る。
暖かく、大きな手だった。
お兄ちゃんに昔、撫でて貰ってた温かさに似ていた。
なんやかんやで、そのあとは交代交替で休むことになった。
そして、ゲーム開始から6時間が経過する。
[ゲームの始まり]
2012年、7月14日、16;34;59
高校2年生 SOS団雑用
キョン
?????? 2階廊下
ゲーム開始から6時間経過、もとい、戦闘禁止が解けて早くも1時間30分経過した。
2階へ到着した俺は、周りに警戒しながら行動していた。
他の参加者に出会えていないことの安心感と、目的達成までの道のりがかなり険しかった。
参加者の中でまだ遭遇していないのは葉月さん、綺堂さん、色条、北条の4人だったかな?
しかしまあ、今に思えた事ではないがマジでデカいな、この建物。
今向かっている戦闘禁止エリアに行くには、曲がりくねった迷路を通過しなくちゃいけない。
あいつら、絶対これ嫌がらせで造ってるだろ?
因みに俺は念のために、PDAソフトを1つ持っていた。
英語で書かれていてどういう意味かは知らないが、磯崎の解除条件には必要なものだからな。
一応持っている。
そして俺はPDAソフトの地図機能を見ながら角を右へ曲がろうとした時だった。
キョン
「うお!?」
慌てて入ってきた道に戻る。
口元を必死に抑えて大声を出すのこと自体、何とか防いだが、本気で何年か寿命が縮まった。
心臓がバクバクと地脈を打っている。
廊下をそっと覗いてみると、アサルトライフル・スカーを装備した黒服部隊が前方約5mの地点にいることが分かった。
いやしかし不幸中の幸いだ。
向こうは全員、俺たちと同じPDAで何か調べていたり、他のやつらはタバコを吹かしながらくっちゃべっている。
そのおかげで俺の存在には気づいてないらしい。
まぁ、俺の付けてる首輪は偽物だから、相手が首輪の探知ソフトを使っていても、探知される心配はねぇ。
人数は………だいたい、9人くらいかな?
手前のやつ4人と後方の5人で何やら相談をしているよだった。
俺は後ろを振り返る。
しかしそこには誰も居ない廊下が広がっていただけだった。
もし回り込まれたら、挟み撃ちにされてサンドイッチのハムにされるからな。
だがそんな心配は気憂だった。
そして通信している奴に耳を傾けると、こんな会話が聞こえてきた。
おっと、何かに使えるかもしれん。
携帯の録音機能で盗み撮りしよう。
司令室
『ティンシプル9。そちらの状況を報告せよ、オーバー』
よし。
カメラの角度を合わせて男どもの顔にズーム・イン。
ティンシプル9隊隊長
「我々は今、2階にある例の迷路状の通路にいる。姫どころか他の参加者にも遭遇できる気配がない、オーバー」
司令室
『PDAソフトを使って、捜索をしているのだろうな?』
ティンシプル9隊隊長
「それを使ってこの様だなんだ!」
司令室
『一刻も早く見つけ出せ。早く見つけ出してボスの元に連れ戻せ!いいな?オーバー』
おお、さすが指揮官。
もう冷静さを取り戻してらっしゃる。
ティンシプル9隊隊長
「了解した。だがこの階には参加者は2名ほどしかいない。上の階へ行って、部隊と合流するオーバー」
司令室
『了解。そのことは上の部隊にも報告しておく。それじゃ幸運を祈るアウト』
通信を終えた隊員の一人が唾を吐く。
汚ねぇな。
もっとも、連中がいる通路を通らねぇから関係ないが。
ティンシプル9隊隊長
「まったく。好き勝手言ってやがる。こっちの気も知らないで」
気分が荒れている男を宥めようと部下の1人が近づいていく。
ティンシプル9隊隊員
「仕方ありませんよ。今回は飛び入り参加者が2人も入って、ゲーム始まって以来、異例の事態が連発してるんですから」
ティンシプル9隊隊長
「ああ、それは分かってる。まさか、代々受け継がれてきたこのゲームにボスの娘さんが参加している上に他の参加者にも俺達の顔を見られちまったからな」
なに?
他の参加者に見られた?
ティンシプル9隊隊員
「あれは仕方ありませんよ。妨害電波が発生していて、そのせいで首輪の探知機能が無効化されていたんですから」
ティンシプル9隊隊長
「確かにそうだが、それでも始末書いきだな」
俺は頭を引っ込めた。
他の参加者にも、顔を見られた?
それに、妨害電波?
それはどのエピソードにもない話だな。
これは、未だかつてないことが起きようとしている。
俺の勘って、いやなやつだけにはよく当たるんだよな。などと言ってる場合じゃない。
俺はもう一度、通路を覗くと9人の隊員らはその場に集まって、移動していった。
これは一刻も早く、磯崎たちと合流しなくてはいけない。
そして俺は奴らが通って行った道とは違う方向へ駆けだした。
2012年、7月14日、18;35;19
中学2年生 超能力者
磯崎 蘭
?????? 2階戦闘禁止エリア
姫萩 咲実
「こんなに休んでいて良かったんでしょうか?」
荷物をまとめていた咲実さんが心配そうに御剣さんを見つめる。
この時、咲実さんが心配したのは、何時間か経ったらこの階が進入禁止になってしまうのではないかと心配しているようだ。
でも、ここは2階なんだし、1階がまだ進入禁止になっていない時点でその心配は必要ないと思う。
まぁ、1階を通り越してこの階が進入禁止と言う荒業をしない限りだけど。
御剣 総一
「大丈夫だよ。このエリアじゃ、戦闘行為は一切禁止されてるんだから、問題ないよ。それに休めるときに休んどかないと、不測の事態時に動けなくなるかもしれないからさ」
咲実さんを落ち着かせようと、ドアを一度そっと開いて外の様子を確かめる。
御剣さん、咲実さんが心配している点はそこじゃありません。
御剣 総一
「うん。誰もいない」
再びそっとドアを閉めると、荷物を肩に背負いこむ。
どうやら私の心の声は聞こえなかったらしい。
御剣 総一
「みんな、準備はいいかい?」
御剣さんが先陣を切り、後方が私で間には咲実さんが土鍋を頭に担いで、少しでも強襲に備えようという、対策だった。
御剣 総一
「よし、行くぞ!」
そこから一気に外へ駆けだした。
さらに上の階を目指すために。