涼宮ハルヒの憂鬱vsテレパシー少女蘭   作:Dr.JD

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どうして自分を責めるのですか?必要な時に他人が必ず責めてくれるんだから、いいじゃないですか。
――――アルバート・アインシュタイン

どうも皆さん、おはこんばんにちは。
Dr.JDです。

大変長らくお待たせしました!
前回の更新から半年以上、経ってしまいましたね。
他の小説の執筆に無我夢中になってしまったのです('・ω・`)

よければ、そちらの方もご覧下さいませ!




表編 New:Episode-Ⅰ第8話 休息、そして再び

[休息、そして再び]

2012年、7月14日、17;26;18

高校2年生 SOS団雑用

キョン

?????? 2階廊下

 

やっとの思いで戦闘禁止エリアにたどり着いた。

このエリアは地図から見て大分端にあり、誰も近づかないだろと名所が付きそうなほどの場所であった。

付近を注意しながら道を進むのはかなり骨の響く話だった。

 

キョン

「よし。開けるか」

 

扉を開け、中へ入る。

ノックはする必要、ないよな。

部屋は清潔で彩られており、家具もこれまた新品なものばかり。

おっと、こりゃIHクッキングヒーターじゃねぇか?

俺の家のやつよりいいもん使ってやがる。

部屋はいくつかの部屋に分かれており、恐らくどれかがもう一つの出口なんだろうが。

 

キョン

「誰だ!」

 

そんな俺の考えを隔てるように怒声が鳴り響いた。

そこには長沢の姿があった。

 

キョン

「お前………長沢か!?」

長沢勇治

「何だ、キョン兄ちゃんか。俺はてっきり他の参加者かと思ったよ」

 

長沢はどうやらベッドが置かれている部屋で寝ていたらしく、荷物がまとめられるところを見ると、もうこの部屋から出るらしい。

去ろうとする長沢の手を掴んで止めさせる。

 

長沢勇治

「悪いけど兄ちゃん、俺はもう行くよ。充分に休ませてもらったし。それじゃあね」

キョン

「待った長沢っ」

長沢勇治

「なんだよ兄ちゃん?」

キョン

「ちょっとこれを見てほしいんだが」

 

俺は先程撮影したムービーを長沢に見せる。

ほんの数分の内に長沢は表情を強張らせていく。

そりゃそうか。

 

長沢勇治

「何なんだ、こいつらは?どこかの特殊部隊か?」

キョン

「それは分からん。そいつを聞くためにお前さんに聞いたんだが」

長沢勇治

「うーん、分からないな。でも持ってる銃から限定はされるね。たぶんだけど、訓練されてるね。でも実力はあんまり高くないと思う」

キョン

「どうして分かるんだ?」

長沢勇治

「よくネット動画とかでさ。よく各国の軍隊や特殊部隊、警察の機動隊についての動画を上がってるのがあるんだよ。趣味でよく見てたんだけど、動きとかでどこの国の出身かは分かるぜ」

キョン

「そうなのか?………それで、どこか分かるか?」

長沢勇治

「アメリカ軍の特殊部隊。服装を見るに、シャドウ・カンパニー、かな?」

 

あの動画を見ただけで、そんな事まで分かるのか。

あれ?

こいつって何気にすごい?

いつも学校でよく、からかわれた、とかで鬱憤が溜まってるって言ってたが、鍛えれば強くね?

 

キョン

「おっと、それで次だ。この男が言ってる姫って、どう思う?」

長沢勇治

「姫って、このゲームを主催してるボスの娘って言ってるみたいだけど」

 

両腕を組んで冷静な自己分析をしているようだが、さて。

 

キョン

「そうじゃなくて、これってもしかして使えるんじゃないかなって思うんだ」

長沢勇治

「と言うと?」

キョン

「この子と遭遇して仲良くなれば、この子にそのボスってやつに説得させればさ、こんなゲームから脱出することが出来ると思わないか?」

長沢勇治

「つまり、その子を捕まえて脅せば、終わらせることだって出来るってこと?」

キョン

「脅しはダメだ。怖がって口を利かなくなるかもしれない。丁重に御もてなししなければ、姫は懐いてくれないぞ?」

長沢勇治

「兄ちゃん、すっかりロリコンになっちゃったね」

キョン

「うるせいやいっ、こうなったら手段を選んでるヒマはねぇ。まずはその姫とやらに遭わないと何も始まらない。だから、お前にも協力してほしい」

長沢勇治

「ふーん。分かった、良いよ。兄ちゃんと協力するよ。そんで今後の方針は?」

キョン

「………お前、なんかキャラ変わったな」

長沢勇治

「自分でもそう思ってる。最初は誰を殺そうか迷ってたんだけど、磯崎にあんなこと言われちゃったら、そんなこと出来なくなっちゃってさ」

 

てへへと頭を掻く長沢を見て。

ああ、こんな奴でも変わる時は変わるんだなと関心を示した。

 

キョン

「それで、俺としてはこんな案があるんだが・・・」

 

それから少し情報交換したあと、長沢と別れた。

ふかふかのソファーに腰掛けながら、ここで俺は状況を整理しようと思う。

俺が今いるところは2階の戦闘禁止エリア。

今迄で遭遇してきた参加者は磯崎を初めとする、御剣さん、姫萩さん、陸島さん、高山さん、手塚さん、八幡さん、長沢に郷田、そして死んでしまった漆山さんの9人の参加者と顔を合わせている。

 

残りでまだ遭遇していないのは北条かりん、葉月克己、綺堂渚、色条優希の4人だ。

今のところ俺のネタバレで殺し合いを起こそうというプレイヤーはいないが、まだ出会っていない北条と、運営の命令で他の参加者を殺しそうな綺堂の2人だ。

この2人にはいち早く接触したいのだが、首輪の探知ソフトもないのに探し回るのはかなり骨の折れそうな状況だった。

それに、俺達の首輪が本当に作動しないかどうか確かめるため、磯崎の首輪の解除条件でもあるPDAソフトを9つ、探す必要がある。

これらの作業と並行に進めながら他の参加者に殺し合いの仲裁を促さないといけないわけだ。

と、状況の整理とこれからの目標が新たに決まったところで少し遅めの昼食を、さっさと胃へ流し込み、この後の大仕事を控えた俺は、隣の部屋のベッドの中に潜り込んだ。

疲労感がかなり蓄積されたためか、不覚にも長い時間の間、眠ってしまったようだった。

 

[それは突然に]

2012年、7月15日、0;02;16

高校2年生 SOS団雑用

キョン

?????? 階段付近 2階戦闘禁止エリア

 

目が覚めたきっかけは、一発の銃声からだった。

不覚にもそれが無かったら俺はずっと眠り続けていただろう。驚いてベッドからずっこけると頭を振って状況確認をする。

 

キョン

「うおっ、なんだなんだ!?」

 

だが問いに答える者はいない。

ベッドから降りて、素早くキッチンに続く扉の隣の壁に張り付いた。そしてそっと、扉に耳を当てる。

しかし、誰かの歩く音や話声は一切聞こえてこない。

ま、戦闘禁止エリアであるこの部屋で銃火器を使ったら、首輪が作動しちまう。

もっとも、首輪を着けていない例の連中がこの部屋に入っていたらの話だが。

そう考えつつも、ドアノブをギュッと握りしめ、忍者顔負けくらいの音のなさを保ちつつ、キッチンへの扉を開ける。

開けては見たものの、中はやはり誰もおらず、寝る前の状態が保たれていたままだった。

どうやら、この部屋の外で何かが起きているようだった。

 

キョン

「くそ、まさか例の連中が動き出したのか!?だとしたら色条がもう、回収されている可能性が高いっ!」

 

俺は急いで荷物を整理して、手持ちのリボルバー銃をしっかり握りしめて扉をゆっくり開けて外を見渡す。

どうやらここで銃撃戦が行われてる訳ではなさそうだ。

そこでまた銃の連射音が響き渡る。

今度はしばらく続いた。

 

キョン

「おいおい、戦争起こすなら外でやってくれよっ………磯崎達の奴、無事でいるかな」

 

俺は磯崎の無事を祈りながら長い廊下をゆっくり歩き始めた。

 

2012年、7月15日、0;12;43

中学2年生 超能力者

磯崎 蘭(いそざき らん)

?????? 2階中部屋

 

階段付近の中部屋に到着して30分が経ち、2度目の休息に入った私達は今、食事を取っている。

埃が積もっていたので軽く掃除して、テーブルなどセットすると、咲実さんが持って来ていた缶詰を料理し始める。

その場には私と御剣さん2人だけになった。

色々な話題が飛び込んできた。

数十分前、銃撃戦がこの広い建物の中で多発していた。

銃弾がどこから飛んでくるのか分からない今、迂闊に飛び出しては危険だとの事で、近くに潜んでいる。

それと並行して、PDAのソフトツールを探していた。

まだ3つしか入手できてないところを見ると幸先はいいのだろうけど、悠長なことを言ってられないのもまた事実だ。

 

御剣 総一

「これってさ。今頃だけど、誰かが撃ち合いをしてるってことだよな」

磯崎 蘭

「そうだと思います。でも、これだけ撃ってまだ続いてるってことは、双方ともかなりの数の銃を持ってるか、人がいるってことだと思います」

 

外は今でも銃撃戦が続いており、弾の発射される音や誰かの怒号が聞こえてくる。

当初の目的としては誰かが襲われてる可能性があったので助けに行こうと案が出たが、その現場に近づいてもなかなか銃撃戦が止まず、それどころか激化していく有様だった。

もしかしたら、このゲームに好戦的な相手同士がぶつかり合って、そうなっているのだろう。

だから私たちはその相手がどちらかが去ってくれるのを待った方が良いと判断したのだ。

 

御剣 総一

「でもさ。こんな長時間に渡って銃撃戦を続けられるって、いったいどんな奴なんだろ?もしかしたら、このゲームに何度も参加してきてる古強者だったりして」

磯崎 蘭

「それが本当だとしたらキョンさん、大丈夫かな?」

 

不安を胸に、天に祈るほかなかった。

 

姫萩 咲実

「お待たせしました」

 

会話が終わると同時に咲実さんが料理を運んできてくれた。

 

御剣 総一

「おお!うまそうだ」

磯崎 蘭

「咲実さん、すご~いっ」

「それほどでも。家ではいつも家事全般を任されていましたから」

 

微笑んだ咲実さんの表情に僅かだが、影が映った――――

 

 

 

 

手塚 義光

「くそっ。何なんだあいつら!?」

 

手塚義光が怒号を上げる。

壁際を銃弾が飛び交って、タイミングを見計らい、スコーピオンを片手に壁の向こう側へ乱射する。弾が切れてマガジンを変える。

 

長沢 勇治

「それについては後で教えてやるっ。くそ、こんなんだったらお前と組まずに一人で探した方が良かったよ!」

 

長沢勇治も負けじと、ミニウージーで応戦しようとしたが銃弾が目の前にかすめたのでしりもちを付く。

 

高山 浩太

「お前ら、目の前の敵に集中しろっ。このままじゃ俺た達は全滅するぞっ」

 

高山浩太も銃で応戦する。

こちらはM4系列のライフル銃を使用している。

相手も何か言っているようなのだが、遠いので聞こえない。その代り秒速何百キロの鉄の弾が無造作に飛んでくる。

なぜこうなったのか、なぜ撃ち合いに発展したのか、今から20分前に遡る。

 

~~20分前~~

 

手塚 義光

「姫だぁ?知らねぇよ、んなやつ」

高山 浩太

「俺も見てないな。1階で一度、血まみれになった北条と言う少女なら見かけたが」

 

廊下でたまたま遭遇した手塚と長沢、高山は少しでも情報交換しようとしていた。

手塚は4階への階段を目指しながら歩いていたので歩きながらの会話となった。

 

長沢 勇治

「それじゃあもう一点。キョン兄ちゃんの見た、聞いた話なんだけどよ。どうやらこの施設の中にこのゲームの運営側の特殊部隊が、運営しているボスの娘さんを助けるために潜りこんでるらしいんだよ」

手塚 義光

「ほお。あいつと遭ったのか。なに?特殊部隊だぁ?ちょうどいい。そいつらとっ捕まえて、そのボスってところに連れてってもらおうか」

高山 浩太

「そうか、キョンは無事だったか………それにしても、特殊部隊か。出来れば交戦したくないな」

 

手塚は奮闘気味、高山は冷静な態度だった。

普段の長沢なら、ここで不意を着いて手持ちの武器、ミニウージーを使ってクリア条件を満たすのだろうが、キョンの話が合った手前、郷田がゲーム運営側であることをそれなりに評価している。

それに磯崎の事もある。

あんな言い方をされて、本当に人を殺してしまっては合わせる顔がないと言うものだ。

だから今は6階に向かっている最中なのだ。

そこで1発の銃弾が飛んできた。

 

手塚 義光

「うお!?」

高山 浩太

「伏せろ!」

長沢 勇治

「おわっ」

 

3人が反射的に壁に隠れると、銃弾が飛んできた。

通路から出てきたのは、どこかの特殊部隊のような服装をした男達がゾロゾロと現れたではないか。

最悪なことに、それが両通路から現れたのだ。

形としては、挟まれた状態だった。

 

手塚 義光

「おうおう早速お出ましかっ。こいつの試し打ちでもしようかね」

 

ショルダーバッグから、スコーピオンを取り出して、壁から身を乗り出し発砲する。が、

 

??????

「敵が二手に分かれたぞっ、撃ちまくれ!!」

 

今度は向こう側から発砲された。

しかも、敵が、二手に?

今、目の前にいる複数の黒い隊服に身を包んだ特殊部隊が誰かと通信を始めた。

 

??????

「まずいな。敵の前に参加者が間に入ってしまったっ。これでは敵が狙撃できない」

高山 浩太

「くそ、敵は二手に分かれて行動しやがった。油断するなよ。どこから攻撃されるか分からんからな」

 

反対側の軍人服を着ている男らは壁から銃口だけを覗かせて発砲を始める。

と言った感じがなぜか10分も続いており、回想を終わる。

 

手塚 義光

「んで、どうするんだ?マジで打つ手がねぇ」

 

スコーピオンを乱射しているうちに双方の敵に被弾させるも、相手もそれなりの兵力で来ているだけあって、なかなか手ごわかった。

 

手塚 義光

「くそ、撃っても撃っても敵がわき出てきやがる!何とかしてくれ!」

長沢 勇治

「高山のおっさん!発煙筒とかないの!?あれがあれば!」

高山 浩太

「持っているが、こんな狭い通路で使ったら、敵も回り込んでくるかもしれんぞ」

 

ミニウージーの高い連射で敵を怯ませるも、何発撃っても当たらないことに焦り始めていた。

 

高山 浩太

「仕方ないっ。ここは2方向に分かれるぞ。俺と長沢は目の前にあるY字通路に分かれるから手塚は反対の通路から離脱しろ!」

 

最後の叫び声を合図に、各々で分かれて走って行く。

背後からは怒声や銃声がこの廃屋内に木霊を響かせていた。

それから銃撃戦が鳴りやんだのは、しばらく後のことだった。

 

2012年、7月15日、0;33;35

高校3年生 一般人

御剣 総一

?????? 2階中部屋

 

磯崎 蘭

「銃声、収まりましたね」

 

ドアに耳を当てながら磯崎さんが俺に向かって頷く。

咲実さんは始終、震えながらドアの方を見つめていた。

あれからさらに数分後、銃声は徐々に小さくなっていった。終息を見せたのがついさっきだからもうそろそろ移動を開始しようと動き出すところだ。

 

御剣 総一

「咲実さん、もう大丈夫だよ。銃声はしなくなったし、好戦的な参加者ももういなくなったと思うよ」

姫萩 咲実

「………はい」

 

俺は咲実さんを励まそうと、下に伏せられたままの顔を覗く。

やはり不安で彩られていた。

でも、それって仕方ないことだよな。

いきなり誘拐されて、封鎖されたこの空間で殺し合いを強要するわ、訳の分からない銃撃戦が長時間続くわで、すっかりゲーム開始後の咲実さんに戻ってしまった。

しっかりしろ俺。

こんなことでどうする。

 

御剣 総一

「大丈夫だ。咲実さんは俺が絶対に守りきってみせる。何があろうとも」

 

俺は無意識に咲実さんの肩を掴んでいた。その華奢な身体は抱きしめたら折れてしまいそうでけれども放っておけなくて、何よりも、あいつに似ているから。

だから、俺は必ず帰らせるんだ。この子を元にいた世界へ。

 

磯崎 蘭

「………」

 

その姿を見ていた蘭さんがジッと俺達の顔を交互に見つめていた。

 

磯崎 蘭

「………御剣さん、本当に咲実さんと初めてここで出会ったんですか?」

 

蘭さんの表情はかなり真剣で、何でこんな真面目に聞いてくるか分からなかった。

 

姫萩 咲実

「は、初めてですよっ。御剣さんと出会ったのは!」

 

しかし答えたのは咲実さん自身だった。

頬に朱が走っている。

 

御剣 総一

「でもさ、どうしてそう思ったんだい?」

磯崎 蘭

「だって御剣さん、随分とあっさり咲実さんの肩、抱きしめてるじゃないですか。それを見て本当に初めてここで会ったのかって思うでしょそりゃ」

 

蘭さんは木箱に腰かけて両足をブラブラさせる。

俺はそれを無意識にやってしまうため、今両腕は咲実さんを包んでいる。

 

御剣 総一

「うわっ、ごめんっ。つい、その」

磯崎 蘭

「いえ、あまり気になさらないで下さい」

 

咲実さんはまた、下に俯いてしまった。

やっぱり、あいつに似ているから、つい癖でやっちまうんだな。

変な奴だって思われてないかな?

 

磯崎 蘭

「うーむ、これは属に言うリア充というやつですな」

姫萩 咲実

「………さっきから蘭さん、私たちで遊んでますよね?」

磯崎 蘭

「あーまぁ、ちょっとだけ」

御剣 総一

「肯定はするんだな」

 

最後に俺がツッコミを入れる。

咲実さんの方を見ると、いつの間にか蘭さんと笑っていた。

もしかすると安心しきっているのかもしれない。

やはりこう言った場面での対処方法は女子同士の方が適任なのかもしれない。

途中から俺も会話に加わったけれども。

 

御剣 総一

「咲実さんの調子が戻ったところで、これからどうする?もうちょっと頑張って上の階へ目指すか、今日はもうこの部屋で休んで、明日からまた移動を開始するか。どっちが良い?」

 

俺の問いにPDAで時刻を確認していた磯崎さんが顔を上げる。

 

磯崎 蘭

「私はこの部屋で休んで、また明日から移動を開始した方が良いと思います」

御剣 総一

「まぁ、例の連中がうろついてることもあるから、そうした方が良いかもしれないね。咲実さんはどう?」

姫萩 咲実

「私は、このエリアの部屋を探って、蘭さんの首輪の解除条件のためにソフトウェアーを見つけるのが先決だと思います」

 

穏やかに答える磯埼さんと違い、咲実さんは焦りの表情を浮かべていた。

磯埼さんのPDAの解除条件は9つのソフトウェアを自身のPDAにインストールすること。

なのにこの階へやってきてから、その捜索に一切手つかずの状態だった。

件の銃撃戦のおかげで、外へ出ることもままならなかったからだ。

今、外へ出てもあれだけの騒ぎが起こったのだから未知の敵もそう簡単には襲ってはこないだろうと言う咲実さんの意見だ。

 

御剣 総一

「うし、なら早めに動こう。敵は今、消耗していて動けないわけでも、注意に越したことはない。2人とも、準備してくれ」

磯崎 蘭

「待ってください御剣さん、何も私のために危険を冒さなくても大丈夫ですよっ。相手は銃をたくさん持ってるんですよ!そんな中、飛び出すなんて危険です!」

 

準備をするや否か、蘭さんが悲痛な声を上げる。

 

御剣 総一

「でもさ、君の解除条件を満たすためには、出来るだけ早めに行動した方が」

磯崎 蘭

「それでもだめです!それなら明日に備えて、早めに休んだ方がまだ安全ですっ」

 

蘭さんの剣幕に俺は少々戸惑ってしまった。

危険なのは重々承知だが、それでもみんなが生きて帰るには多少の危険も矢も得ないと考えていたが、確かに武装した人間を相手するのにこの行動は軽率だったかもしれない。

 

御剣 総一

「だったら、俺がこの近くの部屋を少し見て回ってくるからさ、蘭さんと咲実さんはここで待っててよ。近くに敵が潜んでいたら、安心して眠れないよ」

 

俺はそう言い繕う。

本当は他の部屋も回って、PDAのソフトを探すってのが本命なんだけどね。

 

磯崎 蘭

「……御剣さん今、口実を作って、実は私の解除条件のためにソフトを集めてくるって言うそんなことを考えてましたね?」

 

たちまち俺は背中から嫌な汗を、反射的に出してしまった。

蘭さんは想像以上に、勘の鋭い子だった。

 

姫萩 咲実

「だいたい、顔見れば分かりますよ。私だって今の反応を見れば、何か一人で危ないことをしでかそうとしてるんじゃないかって」

 

でも答えたのは咲実さんだった。

やれやれ、どんな状況下でも女の子たちからはいつも考えが筒抜けだな。でも。

 

御剣 総一

「悪い咲実さん、蘭さん。この件だけは譲れないんだ。多少の危険でも行動しなくちゃダメな時があるんだ。これだけは分かってほしい」

磯崎 蘭

「御剣さん……」

姫萩 咲実

「そこまでして……」

 

咲実さんと蘭さんが言葉を失う。

そうだ。

あの時みたいに、手遅れだったときまた何もできなかったと言いたくなんて、ない。

 

御剣 総一

「そんなに暗い顔しないでよ。別に死にに行くんじゃないからさ。安心して待っててよ」

 

暗い気持ちにさせまいと、あえて明るい声で言った。

 

磯崎 蘭

「何かあったら、呼んで下さいね」

姫萩 咲実

「私達、すぐに駆けつけますから」

 

2人はこの時になって、ようやく俺の案に乗ってくれたことに、ホッとしていた。

 

 

2012年、7月15日、0;33;35

高校2年生 SOS団雑用

キョン

?????? 2階戦闘禁止エリア付近 廊下

 

銃声が、止んだ。

先程までのやかましい銃撃戦は今では嘘のようになくなり、館全体が静まり返っていた。

 

キョン

「おいおい、こんなにハデに銃撃戦を始めちまっていいのか?客共がざわめかねぇか?」

 

廊下に設置されているカメラに向かって口走る。

赤いランプが点滅していてそのカメラの向こう側に世界中の大富豪共がゲームの行方を舌なめずりしながら見ていやがるのか。

くそ、忌々しい。

 

ま、もっとも後で偽の映像を流して客どもを誤魔化そうってんだろう。

 

あんなくそみたいなゲームとっとと潰しちまおう。

だがその前に一度、磯崎と合流しておきたいな。

北条かりんの件もあるしな。

 

………でだ、俺はこの騒ぎの原因を突き止めるべく、一度、1階へ戻ってきている。

だってさっきみたいな銃撃戦なんて、どのエピソードにもなかったんだぜ?

そりゃ、今後のためにも原因くらいは判明させないとな?

 

しかし、あれはどういう事なんだ?

いざ音源がした建物のエントランスホールへと辿り着いたのだが、そこには北条かりんがいた。

彼女の手には、大型のライフル銃で武装していた。

1階のフロアには重火器類を置いては無かったはずだし、それに衣服に付いているのは誰の血だ?

もしかして、他の参加者を殺して回ってるのか?

その瞬間、俺の背筋が急激に落ちていくのが分かった。

 

俺は急いで壁の影に隠れる。

心臓がバクバクと鳴っている、嫌な汗も出てくる。

北条は相変わらず血濡れになったままで、辺りを嗅ぎまわっている。

距離はおよそ10メートル。

ここで2つの道が分かれている。

1つ目は撃たれるリスクを背負って北条に交渉してみるか。

2つ目は安全を考え、撤退するか。

そうこう考えているうちに北条が残り5メートルと言うところまで迫って来ていた。

そして俺の下した決断は――――

 

このゲームを潰すために俺は交渉するっ。

奴の妹のために。

そして俺は決意を固め。

 

キョン

「おい!!」

 

壁からさっさと出ていく。

怯むなよ、俺。

 

北条 かりん

「誰!?」

 

案の定、北条はライフル銃を俺に向けてくる。

この間、俺の心臓はバクバク言っている。

 

キョン

「おい止めてくれっ。俺は君と戦うつもりはないッ、話をしたいだけなんだ!」

 

必死に銃を下ろすよう説得する。

すると北条は首を傾げる。

 

北条 かりん

「そう言えばあんた、1階のエントラスホールにいた男だよね?」

 

とりあえずは話を聞いてくれそうだ。

銃のサイトの部分が僅かに下を向いてくれた。

警戒心はまだ解けていないか?

 

キョン

「そうだ。情けない話だが、君のその血濡れた姿を見て、俺はビビッて逃げちまったんだ。すまない」

 

俺は頭を深く下げる。

あの時もっと冷静でいれば、こんな事態を招くこともなかったかもしれない。

 

北条 かりん

「いいよ別に。好きでこんな姿になったわけじゃないし、逃げたくなるのも当然だよ」

 

そう言ってくれると助かる。

でもよ、何でそんな恰好なんだ?

 

北条 かりん

「うーん、信じてくれるか分からないけど、目覚めたときにはこんな姿になってた」

 

マジでか?

 

北条 かりん

「うん。私も訳が分からなくってさ。最初はどこか怪我してたんじゃないかって思ったけど、ただ単に汚れてるだけだって気付いたの」

 

北条は右腕を上げて万遍なく血のような色をした服装を気にしていた。

そう言えば今気づいたんだが、北条ってこんなに他人と仲良く接せられる奴だったか?

どのエピソードでも最初は敵対をして、妹のために負けられないと言って、他人のことを信用しようとしなかったのに。

俺は安堵していた。

この子も何とかなりそうだなと。

殺人鬼にならなくてと。

だから背後からやって来た一本のクロスボウが飛んで時は、それが何なのか分からなかった。

 

北条 かりん

「きゃあああぁ!!」

 

北条が驚いて身を隠す。

俺も反射的に壁に隠れる。

そっと顔を出すと、ゲームマスターである郷田真弓の姿があった。

クロスボウで武装していて、距離は10メートルくらいあったが、その命中精度は低くなく、むしろどうしてわざと外したのかと、疑いたくなるほどだった。

そして郷田の口からとんでもない言葉が飛んできた。

 

郷田 真弓

「ナイスよキョン君。そのままその子を足止めして!」

 

慣れた手つきで、クロスボウに新たな矢を再装填する。

――――ゆっくり近づきながら。

 

北条 かりん

「!?あんた達、グルだったのね!」

 

俺はあんぐりと口を開けたまま動けなかった。

郷田の作戦内容に呆れたからだ。

俺が北条と話している最中に、後ろから狙撃。

訳が分からない状態で攻撃されてしかもそれが陽動によるものだとしたら、相手は会話を持ちかけてきた俺を疑う。

それで今度襲われた時には迷わず攻撃できる。

その北条の性格と妹を救いたいと言う圧力を逆手に取った代物だった。

 

キョン

「違う!俺はお前と話がしたかっただけだ!本当の敵はあの女だ!」

郷田 真弓

「ひどいわキョン君。今まで一緒に共にした仲間に敵だ、なんて」

キョン

「うるせぇ!俺はお前と話してなんかいねぇ、この狸が!」

郷田 真弓

「ぐっ、言ってくれるじゃない」

 

郷田はイラついて俺が潜んでる壁にクロスボウを向ける。

 

キョン

「今だ!早くこの場から去れ!」

北条 かりん

「え、え?」

 

北条は訳が訳が分からず、答えを求める声がするが、その答えはじきに分かる。

 

キョン

「良いから早く行け!郷田が俺の方に気を逸らしてるうちに!」

郷田 真弓

「そうはいかないわ!」

 

クロスボウの狙いが北条に変わる。

俺はその隙を逃さない。

 

キョン

「郷田ぁぁあああ!」

 

バックから、橘から貰った拳銃を郷田に向ける。

 

郷田 真弓

「うそ!?」

 

郷田の間抜けな声が廊下に響く。

だが、引き金は引かない。俺は咄嗟に北条の隠れていた壁に向かって走る。

そして。

 

北条 かりん

「え、ちょっと、何を!」

キョン

「いいから黙って走れ!」

 

俺は北条の腕を掴み、3階への階段を一気に登る。

今ここで北条を置いて行ってしまったら、彼女は間違いなく次から他人を攻撃するだろう。

だから俺はそれを防ぐために、今、彼女の手を引いて走っている。

 

郷田 真弓

「くっ、あれは脅しか!」

 

と、後ろから声が聞こえてきたが、そんなのに構わなかった。

本日何度目か分からない走りを、俺は生涯忘れることはないだろうと呆れていた。

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