Infinite Days~獅子の姫達とその勇者~   作:のんびり日和

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そろそろヒロインと絡ませていきます。



12話

ミオン砦での事件から数日が経ったある日。

ガレット獅子団の拠点となっている城の庭では、ガウルと一夏が模擬戦を行っていた。

 

「行くぜぇ、一夏ぁ!」

 

「来い、ガウルぅ!」

 

そう叫びながら互いの武器をぶつけ合う。激しいせめぎ合いを遠巻きで見守る、ガウル直属の親衛隊『ジュノワーズ』とガウルの直属の配下、ゴドウィンと呼ばれる巨漢の男と城に属している兵士達だった。

 

「凄いですねぇ。ガウル様とあそこまでやり合うとは」

 

「ほんまやなぁ。てか、ガウル様もなんか生き生きしてやり合ってるやん」

 

「マジの戦いになってる気がする」

 

上から金髪のうさ耳の少女、ベール。金と茶髪の混じった虎耳の少女ジョーヌ。そしてセンター的ポジションを担っている黒髪の猫耳の少女、ノワール。

激しい戦闘を行っている2人に冷静、と言うよりも緩い感じで観戦していた。

 

「ふむ、あそこまでやるとは。流石勇者殿であるな!」

 

大きな声で感心した様子を見せたのはゴドウィンであった。彼もガウル同様好戦的で豪快な男性ではあるが、目上の者などに対しては例えプライベートの時であっても畏まるなど堅物の一面を持っている。

 

暫し2人のぶつかり合いが行われていると、青髪猫耳のメイド女性がパタパタと急ぎ足でやって来た。

 

「あ、此方の居られましたかガウル様」

 

「ん? ルージュか。何か用か?」

 

ルージュが足早にやって来た事に気付いたガウルは一時中断を一夏に伝え、ルージュの元に向かうガウル。

 

「はい。次の戦の事で少しお話があると、先ほどバナード様がお探しになられておりました」

 

「そうか、分かった。汗を流したら直ぐに部屋に向かうって言っておいてくれ」

 

「畏まりました」

 

綺麗な一礼をした後ルージュは城の中へと戻って行く。

 

「わりぃ、一夏。模擬戦の続きはまた今度でいいか?」

 

「おう、別に良いぜ」

 

一夏の返答を聞いたガウルはじゃあな。と言いながら城の中へと戻って行き、入れ違う様にレオが一夏の元へとやって来た。

 

「随分と激しい模擬戦をしておったの」

 

「激しいか? あれでもまだ普通だぞ」

 

「いや、あれは普通とは言わんじゃろうが。……まぁいい。一夏よ」

 

そう言いレオは自身の武器、グランヴェールを構える。

 

「ガウルの代わりに儂が相手をしてやろう」

 

「…へぇ、良いねぇ。一度もやった事が無いから受けるぜ」

 

そう言い刀状態のエクスマキナを構える一夏。

 

「ゴドウィン、合図を」

 

「はっ! では、両者構え! ……始め!」

 

ゴドウィンの合図と共に二人は間合いを詰め互いの得物を激しくぶつけあう。

金属同士がぶつかり合って甲高く鳴り響く音と飛び散る火花。

模擬戦とは言えない光景に周囲は茫然と言った表情で見守っていた。

 

「おいおい、姫さん。これは模擬戦だぜ」

 

「姫と呼ぶなと言っておろうがぁ!」

 

怒り顔で振り下ろしてくるグランヴェールをひょいと避け、刀を振る。

暫し一夏とレオとの模擬戦?は続き互いに息が荒くなる。互いの攻撃の所為か、地面や城壁には傷が出来ていた。

 

「全く。模擬戦だって言ってるのに本気で来るって聞いてないぞ」

 

「お主が姫なんかと言うからじゃ。それと、まだ終わっておらッ!?」

 

再度攻撃を仕掛けようとしたレオは地面に斬撃で出来た穴に足をとられ、バタンと倒れ込む。

 

「おいおい、大丈夫か?」

 

一夏はレオの元に向かい立たせようと手を差し出す。

 

「す、すまぬ。……痛っ!」

 

レオは突然足をとられた方を手で押さえ痛みから顔を歪める。一夏は直ぐにレオの抑えている脚に着いている防具などを外す。

 

「お、おい。自分で「いいからジッとしていろ」……」

 

飄々とし表情ではなく、真剣な表情でレオの脚の状態を見る一夏にレオは若干赤くなる。

防具等を外し終えた一夏はレオの足の状態を見ると、若干赤く腫れている程度だった。

 

「軽い捻挫だな。一応冷やした方がいいから、模擬戦はここまでだな」

 

そう言い立ち上がる一夏。表情は一安心と言った表情だった。

 

「す、すまぬな。それじゃあ、いっつぅ」

 

立ち上がるもレオは捻挫した足が痛く歩けそうな状態ではなかった。

 

「無理か。……仕方ないか」

 

そう言い一夏はレオに近付く。そして一夏は何の躊躇いもなくレオをお姫様抱っこする。

 

「お、おい! い、いきなり何を!?」

 

「あ? お前歩ける状態じゃないだろ。だったら大人しく運ばれろ」

 

そう言い一夏はレオを抱えたまま城の中へと入って行く。模擬戦を見ていた者達は皆、余りに驚愕な光景に驚き固まったままだった。

 

城の中へと運び込んだ一夏は、以前ビオレに場内を案内してもらった際に教えてもらった医務室へと向け足を運ぶ。

その間レオはずっと真っ赤に染まったまま俯いていた。

 

(な、何たる羞恥なのじゃァ!? ま、まさかこの儂が、お、お姫様抱っこで運ばれるなど……。王としての品格が損なわれるじゃろぉが!)

(というか、何故こやつは平然と儂を運べるんじゃ! わ、儂とてその、女子なんだぞ)

 

そう思いながらチラッと見上げると真剣な表情で前を見る一夏があった。すると視線に気付いたのか、ふと顔をレオの方に向ける一夏。

 

「どうかしたか?」

 

「い、いや。何でも、無いぞ」

 

そう言い黙るレオ。一夏は深くは聞かず、そうか。とだけ返し顔をまた前に向ける。

そして医務室へと到着し中へと入ると、数人程の看護医が居て一夏にお姫様抱っこされて運ばれたレオに驚いた表情を浮かべていた。

 

「ど、どうされたのですか!?」

 

「足に軽い捻挫だ。悪いが後頼んでいいか?」

 

「は、はい。此方にどうぞ、閣下」

 

降ろされたレオは看護医に肩を貸されながら治療用のベッドに座らされる。そして一夏は医務室から出て行った。

 

「大丈夫ですか、閣下?」

 

「あ、あぁ、平気だ」

 

そう言いながら看護医の治療を見ながら先ほどまで光景を思い返す。

 

(……な、何故だろうな。他の者と戦った事には感じた事が無い程の幸福感とかがあった。それに、運ばれた際も、その嬉しく思えたのは何故じゃ?)

 

そう思っていると、ズキッと胸が痛くなるような感じを憶えるレオ。

だがその痛みが何なのかは結局分からなかった。




次回予告
ガウル様直属の配下であるゴドウィンだ。閣下がお怪我をされて心配であるが、軽いケガで良かった。
そう言えば調理室でビオレ殿が何かやっていたようだが、何をやっていたんだ?

次回
お料理教室~腕には自信があるんで~

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