Infinite Days~獅子の姫達とその勇者~   作:のんびり日和

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10話

オルコットと一夏の決闘から翌日、一夏達1組では昨日のISの戦いの話題で持ちきりだった。

 

「いやぁ、昨日の決闘本当に凄かったね」

 

「うんうん。あんな激しい戦いを間近見たのは初めてだよ」

 

「だね。てかオルコットさんはどうして近接で戦ったんだろ? BITがあるなら遠距離に持ち込めば勝てそうだと思ったけど」

 

そう一人が零すと

 

「それは私が土方さんの武術と戦いたかったからですわ」

 

談笑していた生徒達に説明するかのようにオルコットが輪に入って来た。

 

「あ、オルコットさん」

 

「どう言う事?」

 

「土方さんは御父上から学んだ剣術に対し誇りを持っておられます。そして私も代々受け継がれてきた槍術と射撃を合わせた銃剣術に誇りを持っております。互いに誇りを持って学んできた武術、どちらが強いのか試したくなったからですわ」

 

「なるほど。それでBITとか外してたんだ」

 

「えぇ。互いに誇りを持った武術で戦うのです。それ以外の武器など邪魔でしかありませんわ」

 

そう告げるオルコットに生徒達はおぉー。と感嘆の声を漏らす。

すると教室の扉が開き、廊下から一夏達が中へと入って来た。一夏達が来たのを見た生徒達は口を開く。

 

「あ、土方君。昨日はお疲れ様!」

 

「凄い戦いだったよ!」

 

「そんな凄い戦いだったか? IS同士だから派手に見えただけだと思うが」

 

「いやいや、代表候補生相手にあそこまで接戦した戦いはなかなかできないよ」

 

生徒の一人がそう言うと他の生徒達もそれぞれうんうんと首を縦に振る。当の本人はふぅ~ん。とあんまり実感が無いと言った感じを出す。

 

キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン

 

と、チャイムの音が鳴り響き1組の生徒達は急げ急げと自分達の席へと座りに行く。

そして生徒達が全員座ったと同時にチャイムが鳴り止み、前方の扉から千冬と真耶が教室内へと入って来た。

 

「皆さんおはようございます」

 

「「「おはようございます!」」」

 

「それでは朝のSHRを始めたいと思います。まずクラス代表ですが昨日のアリーナでの決闘の結果、土方君に決まりました」

 

真耶がそう報告すると生徒達はわぁー!と拍手していく。

 

「では土方、就任のあいさつを」

 

「え? マジっすか…」

 

千冬からの言葉に一夏は嫌そうな顔を浮かべつつ席を立ち教壇前に立つ。

 

「えぇ~、クラス代表になる事になった土方です。まぁ可もなく不可もない程度に頑張るんで、よろしく」

 

そう言うと千冬ははぁ~。とため息を吐き、真耶やレオ達は苦笑いを浮かべていた。

生徒達も気怠そうな一夏の態度にアハハと苦笑いを浮かべ、セシリアも苦笑いを浮かべながら本当に嫌そうですわね。と零す。

 

それから時刻は進み昼休み時。

一夏達は何時も通り食堂で適当に席を取って昼食をとっていた。するとその傍に1組の生徒達がやって来た。

 

「あ、土方君達ちょっといい?」

 

「ん? あぁ、清水さん達か。なんか用か?」

 

「うん。実は今日の放課後此処で土方君のクラス代表決定のお祝いパーティーを開こうと思っててさ」

 

「それで是非出席してほしいんだけど…どうかな?」

 

「パーティーとな? おい一夏よ、パーティーをやるのであるなら出席せねばならぬぞ」

 

「なんでだよ?」

 

「当たり前だ。折角お前を祝うために催そうとしておるのだ。当人が居らねばただの食事会だぞ」

 

「一夏殿、これには拙者も同意でござる」

 

「ダルキアンさんもですか?」

 

「うむ。初陣でしかも勝利を収めたのだ。誰しも祝い事を催したと思うのは当然でござる。それに拙者も一夏殿の初陣による勝利を祝いたいと思ったござるからな」

 

「…は、はぁ」

 

「そ、その一夏様。私も一夏様の初勝利、お祝いしたいです」

 

「ユキカゼもでござる!」

 

「……はぁ~分かったよ、参加する。あと準備とかして貰ったお礼になんかこっちも料理持って行くわ」

 

一夏がそう言うと生徒達は驚いた表情を浮かべる。

 

「えっ!? 土方君、料理できるの?」

 

そう言うと何故かレオ達がそれに対して口を開く。

 

「うむ。一夏の作る手料理は最高だぞ」

 

「確かに一夏様の料理を食べると、お店で同じものを食べようとは思えなくなってしまいますね」

 

「うむ、一夏殿の作る料理はどれも絶品であるからな」

 

「確かにでござりますな。一夏殿、またあのどら焼きを作って欲しいでござる」

 

「へいへい、また今度な。てか、何でお前等が説明するんだ?」

 

「「「「気にしない、気にしない(でござる)」」」」

 

「なんじゃそりゃ」

 

と4人と会話する一夏。その光景に生徒達は本当にこの5人仲いいなぁ。と羨ましそうな顔を浮かべるのであった。

 

 

 

そして放課後一組生徒達は食堂にて勢ぞろいしそれぞれ食堂が作ってくれたオードブルを並べる手伝いをしていた。

そんな中一夏達5人が食堂へとやって来た。

 

「すまんな少し時間がかかった」

 

「ううん、別に大丈夫だよ。て、土方君が持ってるそれって…」

 

「あぁ、スコーンだ。しかもおからで作ったから低カロリーだぞ」

 

「「「えぇ~!?」」」

 

一夏が持ってきたバスケットに入った大量のおからスコーンに一組の生徒達は驚いた表情を浮かべながらスコーンを見つめる。そんな中、一人の少女がひょっこり現れる。

 

「ねぇねぇひじちゃん」

 

「ひじちゃん?」

 

「うん。土方だから、ひじちゃん」

 

小柄の少女にそう呼ばれ、一夏は困った表情を浮かべる。

 

「もしかしてだめぇ?」

 

「いや、駄目って言う訳じゃねぇがそんな呼ばれ方されたのは初めてだったからな少し困惑しただけだから気にしないでくれ。で、何だ?」

 

「うん。一個食べてもいいぃ?」

 

そう言い少女は口の端から涎を垂らす。物欲しいそうに指を口の所まで持って。

 

「もう、本音ったらぁ。ごめんねぇ土方君。この子お菓子好きでさぁ」

 

「あぁ、なるほど。大量に作ってあるから、一個くらい問題ないぞ」

 

そう言い一夏はバスケットからスコーンを一つ取り本音と呼ばれた少女の口元まで運ぶ。本音は嬉しそうな顔でそれにかぶりつく。

かぶりついた本音は暫く咀嚼した後、顔をほにゃんとした笑顔を浮かべる。

 

「美味しぃ~。外はサク、中はふんわりしててさいこうぅ」

 

と食レポする本音。その光景に生徒達も私も食べたいと言った表情を浮かべる。

 

「それでこれ、何処に置けばいいんだ? 料理とか並んでいるあたりで良いのか?」

 

一夏がそう言うと全員今日はパーティーだったと思い出し慌てて一夏に空いている箇所を伝える。

 

そして

 

「それでは土方君のクラス代表就任パーティーを開きます!ではかんぱ~い!」

 

 

「「「「かんぱ~~い!!」」」」

 

進行役の合図と共にグラスが掲げあげられると他の生徒達も一斉にグラスを上げる。そしてそれぞれオードブルの料理を食べる中、一夏達も端の方でジュースやらオードブルの料理を食べていた。

 

「元気な奴らだなぁ」

 

「ふふふ。まぁいいではありませんか。こういった催しをするのは良い息抜きになりますし」

 

「うむ、適度な息抜きは必要だ」

 

「息抜きせずに幼馴染を救おうとした奴が言っても説得力無いぞ」

 

「うぐっ。も、もう終わった事であろうが、一夏! あ、あれについては儂が完全に悪かったし…」

 

そう言いレオはシュンとしおらしくなる。すると一夏がレオの頭をポンポンと叩く。

 

「まぁ…ちゃんと反省したからいいけど」

 

その動作にレオは若干嬉しそうな顔を浮かべる。

 

「お館様、レオ様が顔を赤くさせているでござる」

 

「全くでござる。羨ましいでござるな」

 

「はい、全くです」

 

とダルキアンとユキカゼはにやにやと笑い、ビオレは少し口を尖らせる。

3人の反応にレオはなっ!と顔を真っ赤にさせる。

 

「う、うるさぁい! えぇい一夏も何時までも頭に手を置くなぁ!」

 

「へいへい、難しいお姫様」

 

「姫様言うなぁ!」

 

と賑やかになる一夏達。

 

 

 

その頃

IS学園入口。

 

「此処がIS学園。待ってなさいよ、一夏ぁ!」

 

小柄のツインテールの少女がそう叫びながら肩に掛けたボストンバッグを掛け直すと、勢いよく走り出そうとした。が

 

「ちょっとちょっと、貴女待ちなさい」

 

と走り出そうとした少女を呼び止める女性。

 

「な、なによ、私急いでいるのに!」

 

「急いでいるのは分かるけど、入学書類の記載を終えてからよ」

 

少女を止めた学園職員の女性はそう言い机の引き出しから書類関連を出していく。

 

「えぇ! そんなのそっちで書いても「駄目に決まってるでしょ、大事な書類なんだから。ほら、身分証明書類だして」…はい。……あれ?」

 

少女は職員に言われた入学時に必要な身分証明書類を出そうとボストンバックに手を突っ込むが、違和感を感じる。

暫く手をボストンバッグの中で動かすも、出て来ず最後にはボストンバッグをひっくり返して中身を全部出して漁る。が、

 

「……ない」

 

「え?」

 

「身分証明書類がない!」

 

「えぇ!? 忘れたの?」

 

「も、もしかたら、中国の、家。うそぉーーー!?」

 

大事な書類を家に忘れた事に膝から崩れ落ち天に向かって顔を上げながら頭を抱える少女。すると

 

「こぉのぉ、馬鹿娘ぇ!」

 

職員たちや少女は声がした方に顔を向けると、目を思いっきり吊り上げ凄い土煙を上げながら走ってくる一人の女性がやって来た。

その女性を見た瞬間、少女が顔を真っ青に変わる。

 

「お母さん!? 何で此処にぃ!?」

 

「アンタが家に大事な書類を忘れている事に気付いて、急いで政府に電話したのよ!

!そうしたらすぐに日本に向かって飛んで下さいって言われたから追いかけてきたのよ!」

 

少女にそう説明した後、女性は少女に向かって問答無用にアイアンクローをかました。

 

「ふぎゃーーー!!??!!!」

 

「あれほど大事な書類なんだからカバンに入れておきなさいって言ったのに、忘れるってどう言う事よぉ!」

 

「ず、ずいまじぇ~~ん!???!!!」

 

「二度と忘れ物しないって誓うかぁ!」

 

「は、はいぃ~、ちかいましゅ~!」

 

少女がそう言うと女性はパッと少女を放す。少女は掴まれていたこめかみを押さえながら暫し悶えていた。目の前で起きた突然の光景に茫然と言った表情を浮かべる女性職員に、女性が頭をぺこぺこと平謝りを始めた。

 

「本当にこの馬鹿娘がすいません! 忘れ物は今届けたので入学取り消しとかだけは勘弁してあげて下さい! お願いします」

 

「あ、いえ、あの、書類は届きましたし、後は書類に不備等が無ければ問題無く入学できますのでご安心ください」

 

「ありがとうございます! では私はこれで失礼します。娘の事宜しくお願いします」

 

そう言い女性は、頑張りなさいよ!と少女に向かって言いそのまま歩いて帰って行った。

 

悶えていた少女は何とか復活し女性職員の前に立つ。

 

「そ、それで書類の方は問題ありませんでした。ようこそ、IS学園へ、鳳鈴音さん」

 

「は、はい」

 

こうしてあわてんぼう?の少女こと、鳳鈴音は無事に入学することが出来たのであった。




次回予告
千冬だ。何だか騒々しいやつが来たな。まぁいいが。
さて、次回だが無事に入学した鈴が一夏に一組に来たらしい。まぁ、当然一夏の周りにいるレオ達も知るだろう。まぁ、色々大変になると思うが一夏なら何とかするだろう。

次回
中華娘、参上!

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