Infinite Days~獅子の姫達とその勇者~   作:のんびり日和

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3話

一夏が土方道場に入門し、幾日が過ぎた。道場の館長を務める土方政宗は一夏の成長具合に驚きを隠せなかった。若干小学低学年で天然理心流の柔術、棒術を網羅した。そして現在は剣術を習っているが、それも近いうちに完璧に覚えるかもしれない。と。

 

「いやはや、これ程の逸材が居たとはな…」

 

「全くですね。このままいくと俺もその内抜かされるかもしれませんね」

 

一夏や他の生徒達が素振りをしている様子を眺める政宗と洋二はそう呟く。

 

「ほぉ~? お前の口からそんな言葉が出るとはな。世の中珍しいものがあるもんだ」

 

政宗は笑みを浮かべながら隣に立つ洋二向けると、洋二は「フッ」と笑い目を瞑る。

 

「最初アイツの振り方を見て、合っていないと感じたんだ」

 

「振り方がだと?」

 

「あぁ。何だかアイツのフォームにあっていない、そう感じたんだ。で、もしこいつに天然理心流を教えたらどう化けるのか見て見たかったんだ」

 

洋二の説明に政宗は、なるほどな。と呟き生徒達の素振りをまた眺め出した。

 

 

 

その頃千冬は友人の家に訪れていた。その部屋は薄暗く灯りが付いていなかった。

 

「おい、束! 呼んでおいて留守なのか?」

 

そう叫ぶと奥からドタドタと走ってくる音が聞こえ、千冬ははぁーとため息を吐く。

 

「やっほぉ~~~、ちぃ~~~ちゃぁああああああ!!!?? あ、頭がちゅぶれるぅぅううぅう!!??!!」

 

と叫ぶ千冬の友人、篠ノ之束。束が行き良い良く抱き着こうとしてきたため、千冬は問答無用のアイアンクロウをお見舞いしたのだ。暫くして千冬は束の頭から手を離すと、束はズキズキと痛む頭を抑える。

 

「うぅうう~、ひどいよぉちーちゃん! 束さんの頭を捻り潰そうとするなんてぇ!」

 

「いきなり抱き着こうとして来たからだろうが。それで呼んだ用は何だ?」

 

そう言い千冬は呆れた表情で用件を聞く。束はあ~、それね。と言いながら奥に置かれているパソコンの元に行く。

 

「この前私が学会に発表して、見向きもされなかったISって憶えてる?」

 

「あぁ、あれか。それがどうしたんだ?」

 

束はパソコンのディスプレイに手書きで描かれたある絵を見せた。

 

「…何だこの絵は?」

 

「これ? 束さんの壮大な計画図。題して『ISは本当にすごいんだぞぉ! 分かったか、凡人野郎どもぉ!』だよ!」

 

そう言われ千冬は顔に手を置き壮大なため息を吐く。自分の友人がこんな阿呆な計画図を建てるとは。と。

 

「……ちーちゃん。もしかして呆れてる?」

 

「よく分かったな。今盛大に呆れている」

 

そう言われ束はガクッと膝から崩れ落ち四つん這いになる。

 

「あ、呆れるなんて、ひ、酷いよぉおぉぉ。もういっくんに慰めて貰いに行ってくるぅうぅぅうぅ!」

 

そう叫びながら束は部屋を飛び出していこうとしたが、千冬が逃がさまいと束の肩を掴む。

 

「止めんか、一夏に迷惑だろうが」

 

「だってぇぇ、ちーちゃんが呆れたって言ったんだもぉおぉおん! それにいっくん道場辞めて来なくなったから寂しいぃんだもぉおぉんん!」

 

泣き叫びながら部屋から出て行こうとする束に千冬は盛大なため息を吐く。

 

「一夏が辞めたのは仕方が無いだろ。篠ノ之流があいつに合わなかったんだからな」

 

「うぅぅううぅ。いくぅぅうぅん」

 

ボロボロと泣きながらも扉へと目指す束。ズルズルと引き摺られる千冬は3回目の盛大なため息を吐く。

 

「分かった、分かった。お前の計画と言うのが終わったら家に来い。飯くらいは作ってくれるかもしれんぞ」

 

その言葉に束は先程の泣き顔が嘘のように無くなり、笑顔を浮かべていた。

 

「よっしょぁああ! さっさと終わらせようぜ!」

 

そう言いながら椅子に座りパソコンのキーボードーに何かを打ち込む束。

 

「はぁ~、全く一夏の料理が食べられると分かった途端、泣き止むんだ?」

 

「だっていっくんの料理って美味しいじゃん。この前お邪魔した時にご馳走になったけど、あの味が忘れられないだもん」

 

そう言いながら束は涎を垂らし「今日は何の料理が出るんだろうぉ」と呟く。

 

「……はぁ~。お前にも妹がいるだろ? 普通自分の妹の方を可愛がるだろ?」

 

千冬はそう言うと先ほど笑顔だった束の顔から笑顔が消える。

 

「だってアイツ、可愛げないもん。自分の都合が悪くなるとすぐに暴力で解決しようとするんだよ? 何処に可愛げがあるのさ」

 

そう言いながらキーボードを叩き終えた束は顔を千冬の方へと向ける。

 

「それじゃあちーちゃん。其処に鎮座しているISに乗って」

 

そう言われ千冬は首を傾げる。

 

「おい、まさかこの格好で乗れと言っているのか?」

 

「おっと、いけない。これに着替えてからね」

 

束がそう言いながら千冬に手渡したのは、スクール水着の様な物だった。

 

「なんだこれは?」

 

「それはIS用のスーツで、ISを自在に操るためには必要な物だよ。操縦者の保護も兼ねているから着ておいた方が良いよ」

 

そう言われ千冬はそれを着に向かう。暫くして着替え終えた千冬はISの前に立つ。

 

「それで、これがお前が最初に作った機体か?」

 

「そうだよ。名前は白騎士。白い羽を広げながら舞うイメージで作ったんだぁ」

 

そう言いながら画面を見つめる束。

 

「それじゃあそれに乗ったら、後は任せてね」

 

そう言われ千冬はISに身を委ね、身に纏う。

 

「本当に大丈夫なんだろうな?」

 

「大丈夫大丈夫。束さんを信じなさいな」

 

そう言いながら束はキーボードのエンターキーを押す。

 

「よぉ~し。それじゃあちーちゃん、おさらいするよ。此処から飛び出したら真っ直ぐ宇宙に向かってね。そしたら束さんが衛星をハッキングしてちーちゃんが乗った白騎士を映すから。で、録画等が終わったら帰って来てね」

 

「分かった。ほ・ん・と・うに大丈夫なんだな?」

 

「くどいよぉちーちゃん。大丈夫だって!」

 

念入りに確認した千冬は束に渡されたバイザーを被り、飛び立てる様準備する。

 

「よし、それじゃあ頑張ってねちーちゃん!」

 

その声と共に千冬はカタパルトから射出された。ステルス迷彩が施された白騎士はそのまま大空に上がって行く。

 

「さて、空に上がったのは良いが、後どの位で『た、大変だよぉちーちゃん!』どうした、束?」

 

突然慌てた様子の束の通信に千冬は技術トラブルかと思いその場で留まる。

 

『どっかの馬鹿な連中が作った軍用のネットAIが暴走して数十発ミサイルを日本に向けて撃ちやがったんだよぉ!』

 

「な、なに!? 日本の何処に向かって落ちる?」

 

「おおよその計算だと…。っ!? 不味いよちーちゃん! いっくんがいる道場が予測範囲に入ってるよ!」

 

そう言われ千冬は目を見開く。

 

(一夏の居る道場だと! 何でこんな日に限ってこんなことが起きるんだ!)

 

そう思いながらギリッと歯を噛み締める。

 

「……束、まさかと思うが『ち、違うよぉ! 束さんだってこんな馬鹿なことしないもん!』…そうだよな」

 

そう思いながら千冬はどうすべきだと悩む。

 

『……こうなったら仕方がない。ちーちゃん、その機体でミサイルを迎撃に向かって』

 

「っ!? 待て、この機体はお前の夢の為に作った機体だろ! もし迎撃に向かえばISは兵器として見られるかもしれないんだぞ!」

 

『それしか方法がないんだよ! 自衛隊や在日米軍の戦闘機やイージス艦じゃ間に合わない! 今迎撃に向かえるのはちーちゃんが乗っているISしか無いんだよ!』

 

そう言われ千冬は力強く拳を作る。

 

「……分かった。ミサイルは今どの辺りだ?」

 

『今は海上を飛行してる。陸の上で迎撃すれば地上に被害が起きるから、海上で全部落して。それと――』

 

「分かっている。迎撃に来た戦闘機や船には一切に関わらず、すぐに逃げる」

 

千冬はそう言い、ミサイルが飛来している方向へと向けブースターを吹かした。

 

 

 

 

 

それから数時間後、日本に向け飛来したミサイル群はたった一機のISによって迎撃された。戦闘機やイージス艦はISを追うも、直ぐに離脱された。地上に被害は一切なく、死傷者は居なかった。後にこの事件は白騎士事件と呼ばれ世界中を大きく震撼させた。




次回予告
白騎士事件により日が経つにつれ世界が変わっていく中、千冬は土方政宗と会っていた。その訳が一夏に関する事だった。
次回
養子

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